デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

8章 其他ノ公共事業
2節 祝賀会・歓迎会・送別会
12款 伊藤韓国統監歓迎会
■綱文

第28巻 p.774-790(DK280126k) ページ画像

明治40年9月13日(1907年)

是ヨリ先、韓国統監伊藤博文帰朝ス。栄一、東京市長尾崎行雄・東京商業会議所会頭中野武営等ト共ニ発起シテ、上野公園元博覧会場内貴賓館ニ於テ、是日歓迎会ヲ催ス。栄一、理事総代トシテ式辞ヲ朗読ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四〇年(DK280126k-0001)
第28巻 p.774-775 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四〇年     (渋沢子爵家所蔵)
八月十三日 曇 暑             起床六時 就蓐十一時三十分
○上略
東京市役所ニ抵リ河田助役ニ面会シ、伊藤侯歓迎ノ事ヲ談ス
   ○中略。
八月十九日 晴 暑             起床六時 就蓐十一時三十分
○上略 午餐後東京市役所ニ抵リ、伊藤統監歓迎ノ事ニ関シ中野武営氏等ト協議ス ○下略
八月二十日 晴 暑             起床六時 就蓐十一時三十分
○上略 十時二十分新橋停車場ニ抵リ伊藤統監着京ヲ迎フ、十一時東京市役所ニ抵リ伊藤統監歓迎会開催ノ事ヲ協議ス ○中略 伊藤侯ヲ訪ヒ歓迎会開催ノ事ヲ談ス ○下略
   ○中略。
八月二十六日 雨 冷            起床七時 就蓐十二時三十分
○上略 午後電話アリテ、明日伊藤統監ノ歓迎会ハ延引ヲ請ヒシ旨報シ来ル、始テ聊カ焦慮ヲ緩フスルヲ得タリ
○下略
   ○栄一、八月十八日ヨリ九月一日ニ至ル間、時ニ出京等ノ事アリシモ、主トシテ箱根小涌谷ニ滞在中ナリ。
   ○中略。
九月二日 晴 暑              起床六時
○上略 伊藤統監ヲ訪問シ、歓迎会ノ事ヲ談話ス ○下略
   ○中略。
九月四日 晴 暑              起床六時三十分 就蓐十一時三十分
○上略
是ヨリ先午前十時東京市役所ニ抵リ、伊藤統監歓迎会ノ事ニ関シ理事会ヲ開キ諸事ヲ協議ス、正午帝国ホテルニ抵リ、統監ニ面会シテ歓迎会ノ事ヲ請ヒ、其承諾ヲ受ク ○下略
   ○中略。
九月六日 晴 暑              起床六時三十分 就蓐十二時
○上略 午前十時東京市役所ニ抵リ、伊藤統監歓迎会ノ事ヲ尾崎市長其他ノ人々ト協議ス、畢テ帝国ホテルニ於テ午餐シ、食後伊藤統監ヲ訪ヒ
 - 第28巻 p.775 -ページ画像 
歓迎会ノ事 ○中略 ヲ談話ス、更ニ桂伯爵ヲ訪ヒ、統監歓迎会ニ関シ演説ノ事ヲ依頼ス。 ○下略
   ○中略。
九月九日 雨 暑              起床七時
○上略 午後四時瓢屋ニ抵リ、伊藤侯歓迎ノ事ヲ談ス ○下略
   ○中略。
九月十三日 半晴 冷            起床六時 就蓐十一時三十分
○上略 午後四時上野ニ抵リ、統監歓迎会ニ出席シ式辞ヲ朗読ス、歓迎会ハ充分ノ設備ニテ、且天気清朗、気候人ニ可ナリ、賓主共ニ十分ノ歎ヲ尽シ夜九時散会ス、此夜会スル者凡四五百人許ナリ ○下略


伊藤統監歓迎会報告書 同会事務所編 第一―六四頁 明治四〇年一二月刊(DK280126k-0002)
第28巻 p.775-790 ページ画像

伊藤統監歓迎会報告書 同会事務所編  第一―六四頁 明治四〇年一二月刊
    ○発起
伊藤統監は韓国に赴任せられし以来、一意同国の経営に尽瘁せられ、殊に日韓新協約の締結に関し努力せられたる多大の功労は、日本国民たる者の斉しく感謝に堪へざる所なり、此れを以て本年八月統監入京の報一度伝へらるゝや、此の機会を利用し、歓迎会を開催すべしとの議市内有志の間に唱道せらる、是に於て東京商業会議所会頭中野武営男爵渋沢栄一、東京市長代理者としての東京市助役山崎林太郎諸氏、同月十九日午後一時を卜して東京市役所に会合し、右に関する大体の方針に就き種々凝議の結果、東京市及市内実業家等聯合して一の団体を組織し、元東京勧業博覧会場内貴賓館に於て之を挙行することゝ定め、仍委曲の方法に就ては、翌二十日午前十一時更に発起人会を開きて熟議を遂くるものとし、直に左の人々を発起人に選定し、通知状を発送したり
      人名                (いろは順)
    伊藤幹一      岩永省一   男爵 岩崎弥之助
 男爵 岩崎久弥      池田謙三      波多野承五郎
    服部金太郎     原六郎       早川千吉郎
    浜政弘       浜口吉右衛門    堀越善重郎
    星野錫       豊川良平      大橋新太郎
    大倉喜八郎  子爵 岡部長職      渡辺治右衛門
    渡辺専次郎     加藤正義      川崎金三郎
    柿沼谷蔵      田中平八      田村利七
    高橋義雄      高橋是清      高橋新吉
    高田慎蔵      高松豊吉      武井守正
    団琢磨       園田孝吉      佃一予
    根津嘉一郎  侯爵 鍋島直大      中村清蔵
    中沢彦吉      牟田口元学     村井吉兵衛
    久米良作      山中隣之助     山口宗義
    安田善三郎     安田善次郎     馬越恭平
    前川太兵衛     松尾臣善      松方巌
    福原有信      児島惟謙      近藤廉平
    阿部泰蔵      浅田正文      浅野総一郎
 - 第28巻 p.776 -ページ画像 
    朝吹英二      雨宮敬次郎     佐竹作太郎
    佐々木勇之助    薩摩治兵衛     木村長七
    菊地長四郎  男爵 三井八郎右衛門   三井八郎次郎
    三井養之助     三井高保      志村源太郎
    荘清次郎      荘田平五郎     日比谷平左衛門
    森村市左衛門    首藤諒       末延道成
    杉原栄三郎
    ○発起人会
八月二十日午前十一時発起人会を市役所内に開き、協議の末大要左記の事項を決定し、且即時に尾崎市長・中野会頭・渋沢男爵三氏を挙げて理事総代と為し、其他十二名の理事は之れが選定方を同総代に一任したり
      発起人会協議事項
一伊藤統監歓迎会場は上野公園元博覧会場内貴賓館の内外を以て之れに充て、来る二十七日に挙行すること
一本会に理事十五名を置くこと
一会場設備歓迎方法等は理事総代に一任し、其他重要なる事項は理事会にて決定すること
一会費は金拾円以上とすること
一本会の経費は会員の出金及寄附金を以て充つること
一本会の事務所は東京市役所内に置くこと
    ○理事
発起人会の決議に基き、本会理事として選定せられたる人名左の如くにして、数々集会会務に付協議せらる、蓋し其労尠からざるものあり
                       (いろは順)
 男爵 岩崎久弥     早川千吉郎    中鉢美明
    尾崎行雄     大倉喜八郎 子爵 岡部長職
    渡瀬寅次郎    中野武営     丸山名政
    松尾臣善     近藤廉平     佐竹作太郎
    三井八郎次郎   荘田平五郎 男爵 渋沢栄一
    ○事務所
市役所内に事務所を設置せしも、別に役員を置かず、河田・山崎の両助役指導の下に市の吏員等之に従事す、熱心なる両助役の尽力は幸に総ての事を完了せしめたり
    ○開会期日の変更及確定
八月二十一日理事総代渋沢男爵は統監を帝国ホテルに訪ひ、其臨場を懇請して了諾を得たるに依り、曩きの決定に基き、同月二十七日を以て本会を挙行する事となし、直に来賓及会員に対して案内状を発送したり、然るに数日来険悪なりし天候は二十三日頃より連日の強風猛雨となり、市内・郡部の諸川為に一時に汎濫して、堤防を破り、橋梁を壊き、濁流滔々として幾万の人家に浸入し、或は之れを流失せしめ、稀有の惨状を現出するに至りたるを以て、本会は勢其期日を変更するの已むべからざるものと為し、此旨統監を始め一般関係者に通告したり、統監は斯かる風水害の為めに市民の蒙れる損害甚大なるを憂へ、
 - 第28巻 p.777 -ページ画像 
特に秘書官古谷久綱氏をして歓迎辞退の意を伝示せしめられたるも、九月四日午前九時市役所内に開かれたる理事会は、強て其臨席を懇請せむとの議を決し、再応理事総代渋沢男爵より交渉の結果、茲に愈同月十三日開催の事と確定したり
    ○会員
                  東京市参事会
一金千円也              東京市長    尾崎行雄
                          (いろは順)
一金拾円也   井上辰九郎   一金拾円也     井上敬次郎
一金拾円也    井上公二   一金拾円也      伊藤幹一
一金拾円也    伊沢修二   一金拾円也       飯田巽
一金拾円也    飯田義一   一金拾円也     飯塚仁兵衛
一金拾円也    岩原謙三   一金拾円也     岩橋謹次郎
一金拾円也    岩永省一   一金拾円也      岩谷松平
一金拾円也     岩崎一   一金拾円也      岩崎清七
一金拾円也    糸川正鉄   一金拾円也      市原盛宏
一金拾円也   犬丸鉄太郎   一金拾円也     稲延利兵衛
一金拾円也   稲茂登三郎   一金拾円也      今村繁三
一金拾円也    池田竜一   一金拾円也      池田成彬
一金拾円也  波多野承五郎   一金拾円也     袴田喜四郎
一金拾円也    畠中友次   一金拾円也     服部金太郎
一金拾円也     原六郎   一金拾円也      原亮三郎
一金拾円也   原田虎太郎   一金拾円也     原田金之祐
一金拾円也   原田金太郎   一金拾円也     早川千吉郎
一金拾円也     林民雄   一金拾円也      林九兵衛
一金拾円也     林謙三   一金拾円也      林謙吉郎
一金拾円也   長谷川吉次   一金拾円也    浜口吉右衛門
一金拾円也    浜本義顕   一金拾円也     仁科粂次郎
一金拾円也   西脇長太郎   一金拾円也      西川忠亮
一金拾円也      堀達   一金拾円也     堀越善重郎
一金拾円也   細田安兵衛   一金拾円也    星井忠左衛門
一金拾円也     星野錫   一金拾円也     本多貞二郎
一金拾円也    本城清彦   一金拾円也       土岐僙
一金拾円也    豊川良平   一金拾円也      富食林蔵
一金拾円也   千葉松兵衛   一金拾円也      小川専助
一金拾円也    小川䤡吉   一金拾円也  伯爵 小笠原長幹
一金拾円也    小野金六   一金拾円也      小倉穀豊
一金拾円也   小倉久兵衛   一金拾円也      尾高次郎
一金拾円也    尾崎正若   一金拾円也     緒明菊三郎
一金拾円也   織田昇次郎   一金拾円也     大橋新太郎
一金拾円也    大岡育造   一金拾円也     大河内輝剛
一金拾円也   大谷善八郎   一金拾円也     大滝勝三郎
一金拾円也   大倉喜八郎   一金拾円也      大木宗保
一金拾円也    大森清禎   一金拾円也   子爵 岡部長職
 - 第28巻 p.778 -ページ画像 
一金拾円也   岡田治衛武   一金拾円也      岡田来吉
一金拾円也   岡村善五郎   一金拾円也      岡野栄蔵
一金拾円也    岡崎邦輔   一金拾円也      岡本貞烋
一金拾円也    和田豊治   一金拾円也      和田嘉衡
一金拾円也     和田屯   一金拾円也       渡辺享
一金拾円也   渡辺勘十郎   一金拾円也      渡辺対三
一金拾円也   渡辺大治郎   一金拾円也      渡辺甚吉
一金拾円也   渡辺専次郎   一金拾円也      加藤正義
一金拾円也   賀田金三郎   一金拾円也     川上直之助
一金拾円也     川田鷹   一金拾円也     川崎金三郎
一金拾円也   各務幸一郎   一金拾円也     片桐万兵衛
一金拾円也   笠原小十郎   一金拾円也      柿沼谷蔵
一金拾円也   神谷伝兵衛   一金拾円也      神戸挙一
一金拾円也    神田鐳蔵   一金拾円也     米山利之助
一金拾円也   横田清兵衛   一金拾円也      吉井友兄
一金拾円也    吉井安吉   一金拾円也    吉田丹左衛門
一金拾円也   吉田丹次郎   一金拾円也     吉村鉄之助
一金拾円也   吉村甚兵衛   一金拾円也      田中平八
一金拾円也   田中長兵衛   一金拾円也     田中嘉藤治
一金拾円也    田中常徳   一金拾円也     田中栄八郎
一金拾円也   田中銀之助   一金拾円也      田村利七
一金拾円也    谷村小作   一金拾円也     谷崎久兵衛
一金拾円也   立川勇次郎   一金拾円也      高橋義雄
一金拾円也    高橋義信   一金拾円也      高橋是清
一金拾円也   高田小次郎   一金拾円也      高田慎蔵
一金拾円也   高津伊兵衛   一金拾円也      高松豊吉
一金拾円也    高木豊三   一金拾円也     高木与兵衛
一金拾円也   辰沢延次郎   一金拾円也     玉塚栄次郎
一金拾円也    武井守正   一金拾円也      武智直道
一金拾円也   滝本八十八   一金拾円也      園田孝吉
一金拾円也    津村重舎   一金拾円也     土田政次郎
一金拾円也    土谷秀立   一金拾円也     塚原元兵衛
一金拾円也     佃一予   一金拾円也       辻新次
一金拾円也   根津嘉一郎   一金拾円也   侯爵 鍋島直大
一金拾円也   成島菊次郎   一金拾円也      成瀬正恭
一金拾円也   中井新右門   一金拾円也     中西儀兵衛
一金拾円也    中村元嘉   一金拾円也 子爵 中牟田倉之助
一金拾円也    中野武営   一金拾円也      中山佐市
一金拾円也    中沢彦吉   一金拾円也      長島吾助
一金拾円也   長森藤吉郎   一金拾円也      長瀬富郎
一金拾円也   牟田口元学   一金拾円也     村井貞之助
一金拾円也   村井吉兵衛   一金拾円也     村上太三郎
一金拾円也    内田耕作   一金拾円也     植田小太郎
一金拾円也   植村澄三郎   一金拾円也      梅謙次郎
 - 第28巻 p.779 -ページ画像 
一金拾円也    梅浦精一   一金拾円也     牛山武兵衛
一金拾円也     野津澡   一金拾円也      久米良作
一金拾円也   黒須竜太郎   一金拾円也      栗林幸助
一金拾円也  栗生武右衛門   一金拾円也     草郷清四郎
一金拾円也    日下義雄   一金拾円也      串田万蔵
一金拾円也    矢野恒太   一金拾円也      矢島平造
一金拾円也    柳生一義   一金拾円也      山田喜助
一金拾円也    山根正次   一金拾円也     山中隣之助
一金拾円也    山口嘉三   一金拾円也      山口宗義
一金拾円也    山口荘吉   一金拾円也     山口善兵衛
一金拾円也   山崎繁次郎   一金拾円也      山本達雄
一金拾円也   山本熊太郎   一金拾円也      安田源蔵
一金拾円也   安田善三郎   一金拾円也     安田善次郎
一金拾円也   安田善四郎   一金拾円也      安田善彦
一金拾円也    安田善助   一金拾円也      馬越恭平
一金拾円也  前川太郎兵衛   一金拾円也     前田圭太郎
一金拾円也   町田豊千代   一金拾円也      俣野幾三
一金拾円也    松尾吉士   一金拾円也      松尾臣善
一金拾円也     松方巌   一金拾円也      松田精一
一金拾円也    松村清吾   一金拾円也     松本忠次郎
一金拾円也    牧田義雄   一金拾円也      益田英作
一金拾円也    藤岡市助   一金拾円也     藤田藤一郎
一金拾円也    藤山雷太   一金拾円也      藤山安次
一金拾円也    古市公威   一金拾円也      古川孝七
一金拾円也    福沢桃助   一金拾円也     福島甲子三
一金拾円也    小池国三   一金拾円也      小林弁三
一金拾円也   小林安之助   一金拾円也     小柳津要人
一金拾円也   近藤陸三郎   一金拾円也      近藤廉平
一金拾円也    江副廉蔵   一金拾円也      江間俊一
一金拾円也    江守善六   一金拾円也     照内芳次郎
一金拾円也  安部林右衛門   一金拾円也    安孫子貞次郎
一金拾円也    阿部吾市   一金拾円也      有賀長文
一金拾円也   青木正太郎   一金拾円也      浅田正文
一金拾円也    朝吹英二   一金拾円也      秋山一祐
一金拾円也    秋山平吉   一金拾円也   子爵 秋元興朝
一金拾円也   雨宮敬次郎   一金拾円也      安藤兼吉
一金拾円也   安藤保太郎   一金拾円也      安藤三男
一金拾円也     安藤浩   一金拾円也     佐竹作太郎
一金拾円也  佐久間福太郎   一金拾円也      佐々田懋
一金拾円也  佐々木勇之助   一金拾円也     西賀藤三郎
一金拾円也    斎藤平蔵   一金拾円也      斎藤紀一
一金拾円也    坂本則美   一金拾円也      酒勾常明
一金拾円也   三枝光太郎   一金拾円也      三枝守富
一金拾円也   鮫島武之助   一金拾円也      木村長七
 - 第28巻 p.780 -ページ画像 
一金拾円也   木村清四郎   一金拾円也      桐島像一
一金拾円也    菊島生宜   一金拾円也       三田佶
一金拾円也    三井高保   一金拾円也      三村君平
一金拾円也    三浦泰輔   一金拾円也       水野升
一金拾円也    宮田栄助   一金拾円也      宮崎善吉
一金拾円也    志賀直温   一金拾円也     志村源太郎
一金拾円也   柴田清之助   一金拾円也      荘清次郎
一金拾円也   荘田平五郎   一金拾円也      白岩竜平
一金拾円也   白石甚兵衛   一金拾円也      渋谷正吉
一金拾円也    渋沢篤二   一金拾円也   男爵 渋沢栄一
一金拾円也  日向野善太郎   一金拾円也      日比翁助
一金拾円也 日比谷平左衛門   一金拾円也     檜山鉄三郎
一金拾円也    諸井恒平   一金拾円也     本吉伝次郎
一金拾円也   守田治兵衛   一金拾円也     森友徳兵衛
一金拾円也  森岡平右衛門   一金拾円也      森竹五郎
一金拾円也  森村市左衛門   一金拾円也     森久保作蔵
一金拾円也    森下岩楠   一金拾円也     籾山半三郎
一金拾円也     首藤諒   一金拾円也      須田利信
一金拾円也     菅川清   一金拾円也     杉原栄三郎
一金拾円也   鈴木宗兵衛   一金拾円也      鈴木正蔵
    ○寄附者
本会の経費は東京市の出金及会費を以て之に充て、尚不足を生ぜしに依り理事会の決議を経て市内の有力者に寄附を仰ぐことゝなり、而して若、残余を生ぜしときは、之が保管を東京市に託し、他日の準備金に充つるの条件に依り左の如く寄附ありたり
                     (いろは順)
 一金六百円也                 岩崎家
 一金六百円也                日本銀行
 一金六百円也              日本勧業銀行
 一金六百円也              日本興業銀行
 一金六百円也            日本郵船株式会社
 一金六百円也                第一銀行
 一金六百円也                 三井家
 一金三百円也            東京瓦斯株式会社
 一金三百円也            東京鉄道株式会社
 一金三百円也            東京電灯株式会社
 一金三百円也               大倉喜八郎
 一金参百円也               安田善次郎
 一金百円也              東京株式取引所
 一金百円也                浅野総一郎
 一金百円也            男爵   渋沢栄一
    ○会場準備
本会会場の設備は挙行期日変更の為、一時中止せらるるに至りたるも更に其の決定を告げしに依り、概要左の如き準備を為すこととせり
 - 第28巻 p.781 -ページ画像 
      一 緑門
御成門には一大緑門を作り、「歓迎」の二字を表はしたる額面を掲げ国旗を交叉す
      二 式場
式場は演芸場を以て之に充て、緑葉を以て柱を包み、各国旗章を天井の縦横に掲げ美観を添ふ
      三 立食場
立食場は貴賓館及同館裏庭の仮設食堂を以て之に充て緑葉・造花・国旗等を以て美麗に装飾を施し一隅には洋画家山本芳萃氏の筆になれる統監の肖像を掲げ、更に無数の電灯を設備して採光上遺憾なからしむ
      四 受付所
受付所は貴賓館門側に之を設け来会者の迎接を掌る
      五 休憩所
貴賓館内の一部を以て来賓の休憩所と定め、同館門前の旧茶店を利用し会員休憩所に充つ
      六 奏楽所
奏楽所は式場及立食場の二箇所に設け、陸軍戸山学校の派遣に係る軍楽生徒隊之を奏す
      七 余興場
余興場は演芸場を以て之に充て、式後新橋芸妓の手踊を演す
      八 号砲打揚所
貴賓館裏手広場に之を設け、主賓来場の際打揚げしむ
    ○来賓及案内状
      一 主賓案内状
 謹啓、閣下歓迎会来る十三日午後五時三十分元東京勧業博覧会場内貴賓館に於て相開き候間、御光臨の栄を得度、此段得貴意候 敬具
  明治四十年九月七日
               歓迎会理事総代
                理事     尾崎行雄
                同      中野武営
                同   男爵 渋沢栄一
    韓国統監 侯爵 伊藤博文閣下
      二 陪賓
陪賓人名左の如し
      人名
   統監所
 警務総長       岡喜七郎    秘書官     古谷久綱
 書記官        俵孫一     書記官     国分象太郎
 書記官     子爵 児玉秀雄    技師      小山善
 陸軍少将       村田惇     海軍少将    宮岡直記
 財政監査長官     目賀田種太郎  通信管理局長  池田十三郎
 鉄道管理局技師    石川石代
  外に
         男爵 高崎安彦            横山孫一郎
 - 第28巻 p.782 -ページ画像 
   大臣
         侯爵 西園寺公望        子爵 田中光顕
            寺内正毅            松岡康毅
            斎藤実             阪谷芳郎
            山県伊三郎           松田正久
            原敬              牧野伸顕
         子爵 林董
   大臣待遇
         伯爵 松方正義         伯爵 井上馨
         伯爵 大隈重信         伯爵 土方久元
         子爵 榎本武揚         子爵 芳川顕正
         伯爵 板垣退助
   内閣
 書記官長       石渡敏一   法制局長官    岡野敬次郎
   枢密院
 副議長     伯爵 東久世通禧  顧問官   伯爵 樺山資紀
 顧問官     男爵 伊藤巳代治  顧問官   男爵 西徳二郎
 顧問官     男爵 金子堅太郎  顧問官   男爵 末松謙澄
   宮内省
 次官      男爵 花房義質
   外務省
 次官         珍田捨巳
   内務省
 次官         吉原三郎
   大蔵省
 次官         水町袈裟六
  元帥府
 元帥      侯爵 山県有朋   元帥    侯爵 大山巌
 元帥      伯爵 野津道貫   元帥    子爵 伊藤祐亨
   軍事参議院
 参議官     伯爵 桂太郎    参議官   男爵 井上良馨
 参議官     男爵 黒木為楨   参議官   男爵 乃木希典
 参議官     男爵 山本権兵衛
   陸軍省
 次官         石本新六
   参謀本部
 総長      男爵 奥保鞏
   東京衛戍総督部
 総督      男爵 川村景明
   海軍省
 次官         加藤友三郎
   海軍軍令部
 長          東郷平八郎
   司法省
 - 第28巻 p.783 -ページ画像 
 次官         河村譲三郎
   文部省
 次官         沢柳政太郎
   農商務省
 次官         久米金弥
   逓信省
 次官         中小路廉
   会計検査院
 院長      男爵 田尻稲次郎
   行政裁判所
 長官         山脇玄
   警視庁
 警視総監       安楽兼道
   東京府
 知事      男爵 千家尊福
   貴族院事務局
 書記官長       太田峰三郎
   貴族院議員
 議長      公爵 徳川家達   副議長   侯爵 黒田長成
         公爵 二条基弘         伯爵 吉井幸蔵
         子爵 堤功長          子爵 堀田正養
         子爵 三島弥太郎        子爵 松平正平
         男爵 松平正直         男爵 船越衛
         男爵 有地品之允        男爵 高木兼寛
         男爵 平田東助            小松原英太郎
         男爵 野田豁通         男爵 石黒忠悳
         男爵 沖守固          男爵 中川興長
         男爵 杉渓言長         男爵 小早川四郎
            谷森真男            中島永元
            南郷茂光            武井守正
            奥山政敬            岡田良平
            高橋新吉            内藤宇兵衛
            鎌田勝太郎           沢原俊雄
   衆議院事務局
 書記官長       林田亀太郎
   衆議院議員
 議長         杉田定一   副議長      箕浦勝人
            犬養毅             大石正巳
            河野広中            長谷場純孝
            元田肇             柴四朗
            横田虎彦            林有造
   新聞社及通信社
                    (いろは順)
  五十嵐光彰    伊藤欽亮    市成乙成
 - 第28巻 p.784 -ページ画像 
  池辺吉太郎    林貞次郎    本田精一
  徳富猪一郎    大岡力     改野耕三
  川田力夫     高橋一知    高木利太
  竹村良貞     漆間真学    野崎広太
  黒岩周六  男爵 楠本正敏    松井秀吉
  藤原清華     福沢捨次郎   権藤震二
  足達荒人     秋山定輔    溝口雄吾
  箕浦勝人     島田三郎    清水康太郎
      三 陪賓案内状
拝啓、統監伊藤侯爵閣下歓迎会来る十三日午後五時三十分元東京勧業博覧会場内貴賓館に於て相開き申候間、御臨席の栄を得度、此段御案内申上候 敬具
  明治四十年九月七日
               歓迎会理事総代
                理事     尾崎行雄
                同      中野武営
                同   男爵 渋沢栄一
      宛
 追て当日此案内状御示し被下度希望仕候
    ○主人側案内状
謹啓、統監伊藤侯爵閣下歓迎会挙行の義延期相成居候処、来る十三日午後五時元東京勧業博覧会場内貴賓館に於て開催致候間、御差繰御出席被成下度、此段得貴意候 敬具
  明治四十年九月七日
               歓迎会理事総代
                理事     尾崎行雄
                同      中野武営
                同   男爵 渋沢栄一
      宛
 追て本件挙行期日変更に付ては御都合も可有之存候条、甚た乍御手数御賛否更に別紙端書に依り御一報相煩し申候
 尚左の事項御承知被下度申添候
  一来る十日迄に御返事なきときは御賛成と相心得準備可致候
  一当日御服装は「フロツクコート」「シルクハツト」と相定候
  一会費金拾円申受候
  一当日御出入は御成門に御座候
  一当日此案内状受付へ御示しの上、徽章・順序書等御受取被下度候
    ○徽章
本会は予め左記雛形の徽章を作製し、当日来場の人々に之れを交付せり
   ○来賓・理事・会員・係員ノ各雛形略ス。
    ○挙行順序書
本会は又左の順序書を印刷に付し徽章と共に当日の来場者に交付せり
 - 第28巻 p.785 -ページ画像 
      統監伊藤侯爵閣下歓迎会順序書
               明治四十年九月十三日挙行
 一午後五時式場(演芸場)ニ参集
   奏楽
 一歓迎文朗読(理事総代)
 一来賓演説
 一伊藤統監閣下挨拶
   奏楽
 一余興(手踊)
  右終テ場外ニ於テ少憩
 一午後七時奏楽ト共ニ食堂(貴賓館)ヲ開ク
    ○開式
時維れ明治四十年九月十三日、統監伊藤侯爵閣下歓迎会を元東京勧業博覧会場内貴賓館に於て挙行す、時方に仲秋、天気晴朗にして気候春の如し、予定の時刻を報ずるや、来賓及会員は陸続として場内に参集し、互に主賓の来臨を待てり、暫くにして統監伊藤侯爵は二・三の随員と共に、会員歓呼の声に迎へられつゝ貴賓館に到著されたり
斯くて主客一同式場に臨み、各著席し了るや、理事総代渋沢男爵は起ちて先づ左の挨拶を陳べ、次で式辞を朗読せり
      挨拶 (速記)
 統監閣下、臨場閣下、諸貴紳及会員諸君、私は本会を代表いたしまして、茲に驩迎の式辞を朗読する光栄を荷ひまする。
 三十七八年以来我々国民は種々なる驩迎を致しましてございます、殊に一昨年・昨年勇武絶倫なる陸海軍の諸将校閣下の凱旋に対しての驩迎は、数回我々共御同様に驩迎いたしましたが、又特に今般の如く文勲を荷はせられて樽爼の間に我が帝国の国威を宣揚し、我が帝国の国光を発揮せられたる統監閣下の驩迎を此に致しまするは、我々の最愉快とする所でございまする、我々打揃うて先月御帰京を期とし、速に此会を開かうといふ企でございましたけれども、客月二十七日を卜したるに拘らず、不幸にして風災水害駢至つた為に挙行することが出来ませなんだ、余儀なく閣下に対して日を延す事を懇願致した次第でございます、本月の初めに於て閣下は斯かる災害の際は好意は辱いけれども寧ろ見合せて呉れたが宜からうといふ御沙汰を蒙りましたけれども、特に此会の理事相会して評議しました所では、如何に水災は甚だ憂ふべき事でございますけれども、閣下の効績や更に大、決して水災の為に効績を滅することは無からうと考へますれば、既に我々此の如く企てたことはどうぞ是は此侭已みたくございませぬといふのが、一同の希望でございます、斯かる趣意を以て再応懇願いたして、然らば多数の意嚮に従はうといふ仰に依つて、乃ち今夕を卜した次第でございます、幸に今日は誠に天気も朗晴、気候も穏和、且欣んて尊臨を下さるといふ此好機会を得ましたのは、我々共実に驩喜極まりない所でございます、茲に謹て式辞を朗読いまします
      式辞
 - 第28巻 p.786 -ページ画像 
 侯爵伊藤統監閣下
 夙に国家の柱石として万機を翼賛し、名声封域に溢る、曩に重荷を負ふて韓京に〓むや、尊爼縞紵宜しきに適し、遂に新協約を創定して日韓千有余年の雲霧を掃滅す、是れ偏に極天一系、聖主威徳の隆赫に由ると雖、亦閣下の計図雄大策画機に応ずるに非らずんば、曷ぞ能く此に至るを得んや、惟みれば帝国の兵を大陸に動かす前後実に再次、皆韓国を事難に救ひ、帝国の福利を衛るに由らざるはなし今や紛を解き糾を断じ、大事一朝にして定まる、即ち東洋の和局も亦千載を渝へす、是皆閣下河海の盛徳に依らずんばあらず、思ふに韓国の事之より弊根芟除、禍源壅塞、実業を振興し富源を開発し、群僚徳に化し民寃抂無く、撃壌鼓腹、徳政を謳歌するの日亦甚だ遠からざらんか、夫れ外交は機微なり、厥の機惟れ微厥の謀惟れ密固より常経を以て律すべからず、文徒に燦々たるは易く、質誠に彬々たるは難し、偉略雄図徐に計り漸く進み、以て其実果を全ふするは蓋其要義なり、閣下深謀遠慮、燭照亀卜、事皆機宜に合ふ、懿なる哉閣下の功業や、某等同志此盛事に遭逢し、偶々閣下闕に伏して大命を奏せらるゝに会す、即ち閣下の徳を頌し、併せて赤誠を披瀝して敢て積旬の労を謝す、希くは区区の微衷を諒せられん事を
  明治四十年九月十三日
                   歓迎会総代
                    男爵 渋沢栄一
                       尾崎行雄
                       中野武営
次に当日の来賓たる桂伯爵は左の挨拶を陳べたる後、祝詞を朗読せられたり
      挨拶 (速記)
 閣下及諸君、今日は伊藤統監閣下の此度帰朝になりましたに付きまして、諸君が驩迎会を御催になるといふ事に付きまして、拙者にもどうか臨席の栄を荷ふ様にといふ御案内を辱う致しまして、今日此末席を汚すに至りました次第でございます、然るに私は何か此席に於きまして演説を致せといふ発起人諸君よりの御請求を受けました御承知の如く私は誠に此演説には不慣な者でございまして、到底此の如き御席に於きまして諸君に御満足を与ふることは出来ませぬ、殊に統監閣下の今日此盛大なる驩迎の会に於きまして演説を致しまするのは、最赤面に堪へぬ次第でございます、併し折角の御希望に対しまして、之を辞退するも亦甚だ其当を得ぬと考へます、茲に聊か演説に代へまするに、私の意を筆記しましたものを朗読致しまして、以て暫く諸君の御清聴を煩はさうと考へます
      祝辞
 閣下茲に諸君
 伊藤統監の韓国に於ける偉勲に対しては、発起者総代の言至れり尽せり、予は更に蛇足を添ゆるの必要なきなり
 若し夫れ統監閣下の重大なる責任の自覚と、沛然として禦ぐ能はざる報効の積誠とに到りては、予は諸君と与に之を看取し、転た敬愛
 - 第28巻 p.787 -ページ画像 
の感を熾ならしむるものあり、予は諸君が統監閣下に対する信頼の心将来に於て愈よ切実なるを疑さるなり、此の機会に際して一言已む可らさるものあり、蓋し対韓問題たるや、維新以来の宿題にして漸く今日に於て解決の花を発きたるものなり、其の果実の良否は一に今後の経営如何に属す、是れ吾人が伊藤統監閣下の超卓周到なる識慮と其の老熟練達せる手腕とに期待し、而して更らに官民合意、全国同心、以て統監をして孤掌鳴り難きの憾なからしめ、茲に全日本の力を一にし、全国民の力を挙げて其の最善の結果を収めんことを希望する所以也、是れ蓋し統監閣下の志にして復た諸君の心たらずむばあらず、而して驩迎会の本意恐らくは此に存せん歟、聊か蕪辞を陳して統監閣下及諸君の清鑑を仰ぐ
右の朗読を畢るや、統監伊藤侯爵は満場の拍手に迎へられつゝ演壇に進み、徐ろに答辞を陳べて曰く
      答辞 (速記)
 臨席の閣下及満場の諸君、諸君は本官が統監として昨年以来韓国の扶殖に任ぜられ、爾来今日に至つて最後の協約を締結したる微労に対して、我が大帝都を代表されて、特に驩迎の宴を開かれて今日の待遇を辱うするに至つては、無限の感に撃たれて、諸君に対して感謝の辞を選ぶこと能はさる心地が致します、殊に諸君の意志を代表されて、渋沢男爵より本官に対して諸君が驩迎さるゝ所の趣旨を朗読されて、之を拝聴したるの余、殆ど自ら諸君に対して御答申す所を知らぬ、其式詞中の称讃の言辞に至つては決して当る所て無いと考へる、固より重大の任務を帯びて韓国に駐在いたし、自己の身力の有らん限を竭して大命の附託に背かざらん事は、平素みづから期する所でありますが、今日の事を以て成功なりとすれば、唯、本官が其使命に尽したに過ぎずして、即ち我が 至尊の御威徳と、且輓近に於ける大戦に於て、陸海軍が勇武戦闘の効績に由るものと、及我が日本帝国の臣民一致協同して、我が国威の発揚に力を致されたるの結果と謂はざることを得ぬと存じます、本官は則ち上は
 至尊の大命、下は文武の諸官は固より言ふに及ばず、我が全国国民の力の余光に依つて其目的を果すことを得たものと自ら考察する所であります、決して自分之を以て自己の偉大なる効績とは認めませぬ、併ながら諸君より微労に対して此の如くに盛会を設けて、懇篤なる待遇を蒙る事に付ては、其当と不当とを論ぜずして感激拝謝の至に堪へませぬ、尚来賓の一人たる陸軍大将桂伯爵の唯今陳述せられたる所に対しては、我が微力の有らん限、諸君否寧ろ我が国家の後援の余光の下に、死力を竭すことの一言を御答申して置きます
 韓国の情態或は将来に於ける希望等に付ては、多少考慮する所はありまするが、御承知の通りに韓国の形勢は一昨年以来隠謀又は暴動等の為に、今日と雖も人心尚動揺の中に在る形勢てありますから、今諸君の前に予言しても、或は実行上に於ては形勢に随つて変移せざることを得ぬかも知れませぬから、遺憾ながら故らに今日は省きまするが、唯、一言申述べて置きたいのは、愚察に依れば、果して我が今日の国是を貫き得るや否といふ事であります、其国是とは何
 - 第28巻 p.788 -ページ画像 
物てあるかと云へば、今は韓国に日本国を代表して臨んで、内政外交ともに日本の指導の下に於て、彼国の改良を謀りて、彼国民を数百年廃頽して居る所の災厄の中より救出して、之を文明の域に誘導しやうといふのであります、必ずしも朝鮮国民頑愚なりと言ふにあらず、必ずしも我が日本の彼に対する施設の至当なる事を知らざるにあらずして、彼等みづから前んて改良を行ふ事能はず、而して又人の指導に従ふ事も甘んぜぬといふ有様ゆゑに、将来尚我に対して抵抗を試みれば、我より進んで之を滅するにあらずして、自棄自暴みづから速くといふやうな域に至りはせぬか、本官に在つては実に是は我が
 至尊の叡慮にあらず、我が日本国々民の韓人に対するの希望にあらずして、而して事望む所に反する様な事になりはしないかといふ杞憂を抱いて居る、本官は死力を竭して之を解除せしめ、而して之を養ひ、之を育し、之に教へ、以て我が 聖皇の恩沢に浴せしめん事を偏に希望いたして居りまするが、彼が若し自棄自暴にして計此に出てざるに至つては已を得ぬと考へる、併し是は敢て望む所で無いから、乃ち本官は今日まての方針を以て、誠心誠意我が国是の在るところを実行する覚悟であります、唯、目下の情勢などに付て将来を推して憂慮する所であります、何れにしても事至難に属することでありまするから、特に諸君の後援に俟たざれば、本官の微力に依つて之を救治することは益々困難かと考へます、是は偏に日本国政府及日本国々民諸君の御援助を願つて置きます、自分一己としては力の及ぶ限を致すといふことを諸君に陳述致して置きます、尚将来の事に付ては、或は事実に依つて明鑑を垂られむ事を望む、今日は此盛会に対して重ねて諸君の御款待を感謝仕ります
此の時又拍手急霰の如く起りて、茲に全く当日の儀式を終れり
    ○立食
余興終りを告ぐるや、来賓及会員は少時休憩の後、午後七時洋々たる奏楽に連れて立食場に集合し、各祝盃を挙ぐ、美妓数十名其間に斡旋して、頗盛況を極む、宴半なる頃、君か代の吹奏あり、尾崎理事乃ち起ちて
天皇陛下の万歳を三唱し、次て又統監の万歳を三唱す、全員斉しく之れに和せり、斯くて主客一同充分の驩を尽し、和気靄々の間に散会したるは九時を過ぐる頃なりし
    ○接待
当日接待方尽力せられたる人々は、理事及東京市の河田・山崎両助役東京商業会議所書記長白石重太郎、渋沢家の八十島親徳、東京市内記課長見山正賀の諸氏等なり、記して其の労を深謝す
    ○寄附者に挨拶
      (其一)
京橋区南伝馬町平松角次郎氏は、本会の挙行を賛し特に紀念絵端書四百組を寄贈せられたり、依て左の挨拶状を送りて感謝の意を表せり
 拝啓、先般侯爵伊藤統監歓迎会挙行の節は、紀念絵端書四百組御寄贈被成下感謝の至に御座候、茲に乍延引右御挨拶申述度、如此に御
 - 第28巻 p.789 -ページ画像 
座候 敬具
  明治四十年十月七日
               歓迎会理事総代
                理事     尾崎行雄
                同      中野武営
                同   男爵 渋沢栄一
    ○寄附者に挨拶
      (其二)
本会経費不足補充の為め寄贈せられたる方々に対しては、左の挨拶状を送りて謝意を表せり
 拝啓、先般挙行せし伊藤統監歓迎会に関し費用不足の為め御寄附相仰ぎ候処、早速御承諾の上金 円御寄贈被成下候段不堪感謝候、何れ精算次第詳細御報道可申上候へ共、不取敢御挨拶申述度、如此に御座候 敬具
  明治四十年 月 日
               歓迎会理事総代
                理事     尾崎行雄
                同      中野武営
                同   男爵 渋沢栄一
    ○収支精算
      収入
一金九千八百八拾円
  内訳
 金壱千円                東京市出金
 金弐千八百八拾円            会費
 金六千円                寄附金
      支出
一金九千百六十五円
  内訳
 金千四百参拾弐円            設備及装飾費
 金弐千六百七拾九円九拾銭        接待費
 金参拾六円弐拾五銭           楽隊費
 金千七百六拾四円五拾壱銭        余興費
 金弐千六百円              電灯費
 金参拾円                号砲費
 金参拾五円五拾銭            徽章費
 金百六拾五円拾壱銭           通信及印刷費
 金弐百八拾七円参銭           報酬及雑費
 金百参拾四円七拾銭           報告書及残務費
   差引残金
  金七百拾五円
右の如く収支差引残金を生じたるに依り、寄附者の意志に基き東京市に保管を依托し、他日の準備金に充つることゝ為せり、而して本件に関しては十月十五日の理事会に於て、収支に関する認定と同時に予め
 - 第28巻 p.790 -ページ画像 
之を決議したり


竜門雑誌 第二三二号・第二三頁 明治四〇年九月 ○東京市及市内実業家の伊藤統監歓迎(DK280126k-0003)
第28巻 p.790 ページ画像

竜門雑誌  第二三二号・第二三頁 明治四〇年九月
○東京市及市内実業家の伊藤統監歓迎 伊藤統監の上京せらるゝや、東京市と市内実業家とは相聯合して之を歓迎することゝなり、青淵先生等主として其事に尽力せられしが、其結果八月二十日の発起人会に於て諸般の協議を為し、先生は理事に推選せられ、更に尾崎市長・中野商業会議所会頭と共に理事総代となりて統監を招待せし処、折柄水害の為め統監は辞退せられしが、本月四日の発起人会に於て更に統監に向て出席を懇請することゝなり、先生は総代として統監に懇請する所ありしに、統監は漸く之に快諾せられ、同月十三日午後五時半より上野博覧会場内演芸場に於て歓迎の式を執行し、式後余興として新橋芸妓の手踊あり、午後七時半貴賓館に於て立食の饗応ありしが、当日先生が理事総代として式場に朗読せられたる歓迎文左の如し
○下略
   ○本資料第十六巻所収「韓国ニ於ケル第一銀行」明治四十年九月十六日ノ条及ビ第六巻所収「東京銀行集会所」明治三十九年十二月十三日ノ条参照。