公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第29巻 p.223-224(DK290068k) ページ画像
明治37年11月月-12月(1904年)
栄一、日露戦役ニ於テ戦死セル陸軍大尉横山富三郎・陸軍中尉吉田盛三郎ヲ悼ミ、又同戦役ニ従軍セル耳鼻咽喉科医賀古鶴所ヲ慰問シテ和歌ヲ詠ズ。
竜門雑誌 第一九八号・第三一頁 明治三七年一一月 ○和歌(DK290068k-0001)
第29巻 p.223 ページ画像
竜門雑誌 第一九八号・第三一頁 明治三七年一一月
○和歌
○上略
○陸軍大尉横山富三郎ぬしの戦死せられたるを悼みて
栄一
打払ふ其しこ草の露ちりて
玉とくたけし君そかなしき
なきたまは西比利亜の野にとゝまりて
大御いくさをまちやわふらん
○横山富三郎ハ渋沢家ノ家庭教師。横山徳次郎ノ弟。
○横山未亡人の男児を挙けられけるよし聞きて故大尉追悼の情いやましつゝ
ひな鶴の声きくたひにしのふかな
雲かくれせし親鳥の影
竜門雑誌 第一九九号・第二七頁 明治三七年一二月 ○挽歌(DK290068k-0002)
第29巻 p.223 ページ画像
竜門雑誌 第一九九号・第二七頁 明治三七年一二月
○挽歌
○吉田中尉戦死の後十一月末つかた又旅順総攻撃始まれりと聞て
渋沢栄一
いさをのみ家にかへして亡きたまは
あたのとりてを今日やぬくらん
○吉田中尉ハ八十島親徳ノ弟。吉田盛三郎。
竜門雑誌 第一九九号・第二八―二九頁 明治三七年一二月 ○和歌(DK290068k-0003)
第29巻 p.223-224 ページ画像
竜門雑誌 第一九九号・第二八―二九頁 明治三七年一二月
○和歌
- 第29巻 p.224 -ページ画像
渋沢栄一
○賀古国手の軍に従ひて此頃金州に在るに消息しける時
春霞わけてたちにし旅衣
今日は時雨に袖ぬらすらん
△秋風そふく白川といへりしにもおとらぬ御調にて殊にこれは事実にもとつくものなれは更に感深き心地さへしはへり
君かゐます宿は黄金の里なれは
庭にもつまん雪のしろかね
△たくみに興深くよみなし給へり
○賀古国手ハ医学博士賀古鶴所(ツルト)。
○菊
霜におこる姿けたかし世の秋を
きそふ色なき園のしら菊
△いろなき白菊いといとおかし
国をあけてえみし打つともしら菊の
ものしつかにも匂ふ色かな
△けに白菊の咲たるさまこそはへれ
○紅葉
染めにけるあかき心はもみち葉の
ちりゆくまてもかはらさりけり
△百折不挫といふらん心も言外にしられていとをかし
○軍国募債の景況につきて歌よめと云ひおこせし人に答へて
かきりなくさかゆく御代は一と年に
三たひさへ咲く山吹の花
△おもしろくうけ給はる
○下総国野田なる茂木ぬしの需めにより至徳泉に題して
隣ある徳のいつみのわき出てゝ
こゝにもすめる野田の玉川
△徳の字音もかくつゝれはうるはしき歌詞となれり、おもしろし