デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治33年5月9日（1900年）

是日栄一、華族ニ列シ男爵ヲ授ケラル。

渋沢栄一　日記　　明治三三年　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
四月九日《（五月）》晴
昨夜三宮式部長ヨリ通知アリテ、本日九時三十分授爵相成ルニ付参内ノ事ヲ申来ル、依テ午前九時三十分大礼服着用、宮城ニ抵ル、東御車寄ヨリ昇殿ス、暫時休憩シテ後、数間ヲ越テ奥殿ニ召サレ、華族ニ列セラルヽノ宣旨ヲ宮内次官ヨリ授与セラル、後更ニ美麗ナル一室ニ抵リテ、男爵ヲ授ケラルノ宣旨ヲ宮内大臣ヨリ授与セラル、畢テ賢所ヲ拝シテ誓詞ヲ奉ス、十二時帰宅ス　○中略　此夜親戚来会、授爵ノ歓ヲ述フ
○下略

官報　　号外　明治三三年五月九日
　　　　授爵叙任及辞令
　　　　　　　　　　　　　　　従四位勲四等　渋沢栄一
　依勲功特授男爵
　　　　　　　　（五月九日宮内省）
　　　　　　　　　　　　　　　　従四位勲四等　渋沢栄一
　特旨ヲ以テ華族ニ被列（五月九日宮内省）

竜門雑誌　　第一四四号・第四三―四四頁　明治三三年五月
○青淵先生授爵の恩命を忝ふせらる　青淵先生には去る八日　宮内省式部職より、九日午前九時三十分大礼服着用出頭すへき旨通蝶に接せられたるを以て、翌朝参内せられたるに、左の恩命を忝ふせられたり
特旨を以て華族に被列　　　宮内省
依勲功特授男爵　　　　　　宮内大臣奉
先生が明治初年官を辞して、第一国立銀行を設立せられし以来二十余年間、一日の如く我商工業の振興に尽瘁せられし効績は、天下輿衆の認むる所にして、遂に盛名天聴に達し、今回の栄誉を荷はるゝ、敢て偶然に非すといふべし、而して官界以外に於ける偉勲に対し、かゝる殊典あるは実に今回先生に於けるものを以て嚆矢となす、啻に先生の為に栄とするのみならず、実に我実業社界の一大面目といふべきなり

（八十島親徳）　日録　　明治三三年　　　（八十島親義氏所蔵）
五月九日　晴
○上略　青淵先生ニハ昨夜突然宮内省ヨリ今朝九時三十分出頭スヘキ旨御沙汰アリ、従四位ノ大礼服着用、将ニ御出向セラレントスル時ナリシ軈テ十一時半帰邸アリ、宮内省ヨリノ辞令ハ勲功ニ依リ特ニ男爵ヲ被授（以特旨被列華族）トノ宣示ナリシ　○下略
 - 第29巻 p.267 -ページ画像 
五月十一日　晴午後風アリ
○上略
青淵翁男爵ニ叙セラレタルニ付テハ親属書《（族）》・系譜・戸籍届・履歴等提出ノ必要アリ、昨今ハ夫レ等ノ調査ヲモナセリ
○下略

親族書　　　　　　　　　　　　　　　　（宮内省宗秩寮所蔵）
奉啓、兼テ御照会有之候親族書ノ義、別紙ノ通取調ヘ封中差出候間、可然御取計被下度候
尚又履歴書ノ義ハ四・五日中提出可仕と存候、余リ延引相成候ニ付為念申上置候、右之段得貴意度如此御座候　敬具
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　爵位局
　　　　　　　　御中
（別紙）
　　　　　　親族書
　　　　　　　　　　　　本人　　　男爵　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　東京府平民亡伊藤八兵衛長女
　　妻　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　兼子
　　長男　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　篤二
　　二男　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　武之助
　　三男　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　正雄
　　四男　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　秀雄
　　　　　　　　　　　　東京府平民穂積陳重妻
　　長女　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　歌子
　　　　　　　　　　　　同府平民阪谷芳郎妻
　　二女　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　琴子
　　三女　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛子
　　　　　　　　　　　　長男篤二長男
　　孫　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬三
　　　　　　　　　　　　同人二男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　信雄
　　　　　　　　　　　　東京府平民穂積陳重長男
　　外孫　　　　　　　　　　　　　　　　　　　穂積重遠
　　　　　　　　　　　　同人二男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同律之助
　　　　　　　　　　　　同人三男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同貞三
　　　　　　　　　　　　同人四男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同真六郎
　　　　　　　　　　　　同人長女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同孝子
　　　　　　　　　　　　同人二女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同光子
 - 第29巻 p.268 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　同人三女
　　外孫　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同晴子
　　　　　　　　　　　　東京府平民阪谷芳郎長男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　阪谷希一
　　　　　　　　　　　　同人二男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同俊作
　　　　　　　　　　　　同人長女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同敏子
　　　　　　　　　　　　同人二女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同和子
　　　　　　　　　　　　同人三女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同八重子
　　　　　　　　　　　　同人四女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同千恵子《（千重子）》
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民渋沢市郎妻
　　妹　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　てい
　　　　　　　　　　　　同人長男
　　甥　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢元治
　　　　　　　　　　　　同人二男
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同治太郎
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　吉岡新五郎
　　　　　　　　　　　　同県平民吉岡平三郎妻
　　姪　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いく
　　　　　　　　　　　　東京府平民
　　従兄弟　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢喜作
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾高惇忠
　　　　　　　　　　　　栃木県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　福田彦四郎
　　　　　　　　　　　　同県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同直三郎
　　　　　　　　　　　　群馬県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　須永伝蔵
　　　　　　　　　　　　群馬県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢市郎
　　　　　　　　　　　　同県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢愛吉
　　　　　　　　　　　　同県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢政吉
　　　　　　　　　　　　東京府平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大亦信吉
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民諸井鼎衛妻
　　従姉妹　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さく
 - 第29巻 p.269 -ページ画像 
　　同　　　　　　　　　同県平民亡栗原貫平妻
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しま
　　　　　　　　　　　　同県平民笠原金作妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まつ
　　　　　　　　　　　　群馬県平民福田彦次郎妻《（福田彦四郎）》
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　のぶ
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民亡渋沢文左衛門六女
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひさ
　　　　　　　　　　　　群馬県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　新島せき
　　　　　　　　　　　　同県平民藤生才次郎妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うた
　　　　　　　　　　　　同県平民蓮沼運平妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はま
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民大川脩三妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みつ
　　　　　　　　　　　　群馬県平民岡部幸右衛門妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こう
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民尾高幸五郎妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くに
　　　　　　　　　　　　同県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　峰岸みき
　　　　　　　　　　　　群馬県平民田島武平妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しげ
　　　　　　　　　　　　同県平民
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢よし
　　　　　　　　　　　　同県平民町田勘十郎妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しま
　　　　　　　　　　　　埼玉県平民森田喜四郎妻
　　同　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　のぶ
　　　　　　　　　　　　群馬県平民柳沢喜三郎妻
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　よふ
　　　　　　　　　　　　　　　以上
　　右之通相違無之候也
　　明治三十三年六月四日
　　　　　　　　　　　　　　　従四位男爵　渋沢栄一印
　　　　宮内大臣従二位子爵　田中光顕殿