デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

1章 社会事業
1節 東京市養育院其他
1款 東京市養育院
■綱文

第30巻 p.203-210(DK300018k) ページ画像

大正11年7月29日(1922年)

養育院慈善会ハ、ソノ創立以来当院ノ為メ尽力スル所多カリシガ、是日神田青年会館ニ於テ三浦環独唱大演奏会ヲ開催ス。栄一之ニ臨ム。


■資料

東京市養育院月報 第一〇四号・第一三頁 明治四二年一〇月 ○東京市養育院婦人慈善会開催予告(DK300018k-0001)
第30巻 p.203 ページ画像

東京市養育院月報  第一〇四号・第一三頁 明治四二年一〇月
○東京市養育院婦人慈善会開催予告 同会は今回其第十七回を開催することに決し、会興として新富座に於て来る十一月二十一日より同二十七日まで演劇を興行するよし、而して外題は未定なるも、出演者は旧派梨園中の錚々たるものゝみを以て組織したるものなりといふ
 - 第30巻 p.204 -ページ画像 


東京市養育院月報 第一〇二号・第一五―一六頁 明治四二年一二月 ○東京市養育院婦人慈善会(DK300018k-0002)
第30巻 p.204-205 ページ画像

東京市養育院月報  第一〇二号・第一五―一六頁 明治四二年一二月
○東京市養育院婦人慈善会 同会は予告の如く十一月二十一日より同二十七日まで一週間京橋区新富座に於て余興として旧派劇を演ぜられたり、今回の慈善会に対しては従前のごとく 皇后陛下より金参百円下賜相成、又 皇太子殿下並に各宮殿下よりも夫れ夫れ御下賜金ありたり、如斯は慈善会空前の光栄と云ふべし、扠て外題は富士三升扇曾我・伊達実録・五条の橋・元禄歌舞伎・喜劇御座り奉る等にして連日盛況を極め階上階下殆ど立錐の余地を余さず、階下の右側には本院収容児の製作品を陳列し、階上の右側には各諸大家寄贈の書画を陳列して販売に附せり、会の為め特志揮毫せられしは村瀬玉田・跡見玉枝・松本楓湖・望月金鳳・橋本永邦・佐藤紫煙・馬杉青琴・佐竹永邦・佐竹永陵・端館柴川・尾形月耕・川端茂章・跡見花蹊・高橋玉淵・森脇雲渓・野口小蘋・野口小蕙・佐竹永村・野村文挙・野村雪江・島崎柳塢・武村耕靄・益頭峻南・佐久間鉄園・佐原重寿・平林探溟・小室翠雲・村上委山・木村香雨・井上雲陵・立岡快雪・牧野永昭・近藤樵仙根本樵谷・根本雪蓬・畑仙齢・石川迪畝・小堀鞆音・五島耕畝・尾形月三・登内景淵・金井一章・寺崎広業・橋本秀邦・橋本正素・越塚友邦・池上秀畝・今井爽邦・川合玉堂・島内松南・高橋広湖・長安稚山尾竹竹坡・高森翠巌・中倉玉翠・吉原雅風・山田敬中・町田曲江・藤野成美・中島光村・坂巻耕漁・吉川桃客・椎名仙山・田中鉄斎・島田墨仙・高島北海・伊藤竜涯・竹田敬方・倉石松畝・三原穂谷・渡辺雪峰・河出水真水・津村耕南・菅井雲樵・朽木古敏・小林呉嶠・長谷川紫峰・岡田華筵・小林蓬雨・内海高鳳・菱田春草・荒木寛畝・保間素堂・渡辺華石・山脇皜雲・中村不折・島田延一・望月青鳳・丸山古香戸森松華・土方伯爵・東久世侯爵・清浦子爵・南条博士・下田歌子等にして何れも稀世の逸品ならざるはなし、閉場後会の報告する所に拠れば収支左の如し
    収支決算
      収入
一金壱万九百四拾弐円壱銭
  内訳
 金参百円           御下賜金
 金弐千四百八拾弐円五拾銭   会員醵金
 金弐千弐百五拾八円八拾弐銭  寄附金
 金六百参円参拾銭       売店売揚
 金五千弐百九拾七円参拾九銭  入場券売揚
      支出
一金五千八百八拾四円八拾六銭
  内訳
 金八拾六円四拾四銭      印刷費
 金百五拾参円五銭五厘     売店仕入
 金参千六百円         演劇費
 金百四拾円          装飾費
 - 第30巻 p.205 -ページ画像 
 金四拾九円拾八銭       備品消耗品費
 金四百拾九円五拾七銭五厘   入場券販売費
 金七拾壱円拾五銭       集金及通信費
 金五拾七円参拾四銭      人足及車馬賃
 金八拾六円八拾銭       接待費
 金弐百六拾六円拾参銭     賄費
 金参拾五円          席借料
 金八百七拾円拾九銭      雑費
 金五拾円           残務費
収支右の如くして、残額利益金五千五拾七円拾五銭はこれを本院へ寄附せられたり
   ○栄一ハ渡米中。


東京市養育院月報 第一一七号・第一六―一七頁 明治四三年一一月 ○東京市養育院慈善会報告(DK300018k-0003)
第30巻 p.205-207 ページ画像

東京市養育院月報  第一一七号・第一六―一七頁 明治四三年一一月
○東京市養育院慈善会報告 同会は本院の基金増殖と事業の進歩発達を助成するを目的とする婦人会にして、毎年一回開会し会員醵出の金品と会員外慈善家の寄附金品並に会員外の入場料とを整理し差引残金を本院に寄附せらるゝ例となれり、而して明治十八年創立以来四十一年の十六回迄に寄附せられし額は現金及建築物合計七万参千四百弐拾六円弐拾七銭に達し、尚目下計画中に属する寄附の物件は安房分院隣接地千弐百余坪、及び其地均工事並に病室壱棟、本院のエツキス光線装置並に装置場蒸気装置、水治療法の装置等にして此金高亦九千参百余円に昇る、今同会第拾七回の報告を得たれば左に掲ぐ。
    △第拾七回東京市養育院慈善会報告
本会は明治四十二年十月三十日の議定員会に於て、第拾七回の開会を京橋区新富座に於てすることに決し、前例によりて事務委員長を市助役原田十衛氏に、事務委員を市内記課長見山正賀氏・庶務課長松尾儀一氏・養育院幹事安達憲忠氏、其他市役所及養育院事務員諸氏数名に委嘱し、各区に於ける本会事務は各区長諸氏に並に各区一名の主任を書記諸氏に嘱託したり。
本会規定により成立せる職員は左の通りにして、開会中は交替出席せられ、慈善市の販売店の物品販売及諸事に斡旋尽力せられたり。
      会長        男爵 渋沢栄一殿 令夫人
      副会長           阿部浩殿 令夫人
      同            尾崎行雄殿 令夫人
      議定員      侯爵 蜂須賀茂昭殿 令夫人
      同         伯爵 板垣退助殿 令夫人
      同          男爵 岩佐純殿 令嬢
      同        男爵 波多野敬直殿 令夫人
      同            原亮三郎殿 令夫人
      同            橋本節斎殿 北堂
      同            浜野虎吉殿 令夫人
      同            原田十衛殿 令夫人
      同            西村節子殿
 - 第30巻 p.206 -ページ画像 
      議定員          穂積陳重殿 令夫人
      同            穂積八束殿 令夫人
      同           堀越喜重郎殿 令夫人
      同           堀田生次郎殿 令夫人
      同           富田鉄之助殿 令夫人
      同         男爵 尾崎三良殿 令夫人
      同            大岡育造殿 令夫人
      同           大倉喜八郎殿 令夫人
      同            大倉粂馬殿 令夫人
      同           大川平三郎殿 令夫人
      同           岡田治衛武殿 令夫人
      同         男爵 高木兼寛殿 令夫人
      同           高島小金治殿 令夫人
      同           高橋藤兵衛殿 令夫人
      同           田川大吉郎殿 令夫人
      同            園田実徳殿 令夫人
      同            角田真平殿 令夫人
      同            中沢彦吉殿 令嬢
      同            中島行孝殿 令夫人
      同            中野武営殿 令夫人
      同            梅浦精一殿 令夫人
      同           楳川忠兵衛殿 令夫人
      同            浦田治平殿 令夫人
      同            栗塚省吾殿 令夫人
      同           安田善次郎殿 令夫人
      同             山脇玄殿 令夫人
      同         男爵 松平正直殿 令夫人
      同             益田孝殿 令夫人
      同            古川孝七殿 令夫人
      同            寺見時子殿
      同           浅野総一郎殿 令夫人
      同            佐藤正興殿 令夫人
      同           坂入宗兵衛殿 令夫人
      同         男爵 阪谷芳郎殿 令夫人
      同         子爵 清浦奎吾殿 令夫人
      同            三井高生殿 令嬢
      同            皆川四郎殿 令夫人
      同           宮川鉄次郎殿 令夫人
      同         男爵 渋沢栄一殿 令嬢
      同            渋沢篤二殿 令夫人
      同            清水梅子殿
      同            清水釘吉殿 令夫人
      同            清水幸子殿
      同            清水一雄殿 令夫人
 - 第30巻 p.207 -ページ画像 
      同           白石元治郎殿 令夫人
      同            平野鶴子殿
      同         男爵 千家尊福殿 令夫人
      同             鈴木隆殿 令夫人
○下略


九恵 東京市養育院月報第一五四号・第二六頁 大正三年一月 東京市養育院婦人慈善会(DK300018k-0004)
第30巻 p.207 ページ画像

九恵 東京市養育院月報第一五四号・第二六頁 大正三年一月
○東京市養育院婦人慈善会 東京市養育院婦人慈善会は十月十八日議定員会を本院事務室楼上に開催し、決議の結果帝国劇場へ交渉して、十一月一日より同月二十五日まで其興行期限に於て毎日其一部の入場券売揚げ高の内、若干を割きて慈善会へ寄附する事となりぬ、而して其演劇番組は義経千本桜、喜劇女天下土蜘蛛等にして、頗る盛会なりき、今回も亦辱なくも 皇后陛下より各宮殿下より李王宮世子殿下より観劇券御買上の光栄に接したるは、単に同会のみならず感激に堪えざる所なり、其他有志者の寄附金等ありて、其結果金参千弐百円は遠からず本院へ寄贈せらるゝ手筈となれり。


九恵 東京市養育院月報第一八一号・第二四号 大正五年二月 慈善観劇会(DK300018k-0005)
第30巻 p.207 ページ画像

九恵 東京市養育院月報第一八一号・第二四号 大正五年二月
○慈善観劇会 本院婦人慈善会に依つて毎年開催さるゝ慈善観劇会は二月一日より同二十五日まで丸ノ内帝国劇場に於て開催せられたり。外題番組は雛鶴三番叟一幕・飛行芸妓二幕・壇ノ浦兜軍記一幕・遺伝一幕・松竹梅湯島掛額二幕、而して出勤俳優は、宗之助・菊四郎・長十郎・四郎五郎・春五郎等の名題外女優一同大車輪にて観客の受け頗るよかりし為め連日盛況を極め、殊に宮中宮家よりは観劇券御買上げの光栄に接し同会の名誉この上もなく、収支未だ精算を経ざるも例年になき好結果を得たるものゝ如し、追て次号に於ては収支決算を報告し、謹て同情の諸君に謝する所あらんとす。


東京市養育院月報 第二三八号・第九―一〇頁 大正九年一二月 ○本院慈善会大演奏会(DK300018k-0006)
第30巻 p.207-209 ページ画像

東京市養育院月報  第二三八号・第九―一〇頁 大正九年一二月
○本院慈善会大演奏会
十一月二十五日、同二十六日の両日神田青年会館に於て本院慈善会主催にかゝる大演奏会開催さる、両日共聴衆場に漲れ予期以上の盛況なりき、主なる曲目は左の如し。
   二十五日
一、絃楽四重奏    ―ハイドン、クワルテツド
    四重奏曲、作曲六四、第五
    アルレゲロ モデラート
    アダヂオ  カンタビーレ
二、合唱     ―東京混声合唱団
    イ、夜曲
    ロ、夜曲
三、テノール独唱    沢崎定之氏
    イ、野の寂莫
    ロ、小なものすら
 - 第30巻 p.208 -ページ画像 
    ハ、愛を嘲けらば嘲けれ
四、ヴイオリン独奏    クローン氏
    イ、ワルタスのブライスリード
    ロ、カプリスヹンノス
五、アルト独唱    斎藤英子夫人
    イ、夕映
    ロ、哀れなるピーター
                クローン氏
六、ピアノヴイオリン合奏
                シヨルツ氏
    ホ短調奏鳴曲
七、合唱     東京混声合唱団
    雲雀の歌
    早春
八、絃楽四重奏    ハイドン、クワルテツト
  四重奏作品五一
    アルレグロ アツサイ
    スケルツオ アンダンテ
九、バリトン独唱    外山国彦氏
    演奏会用抒情調
一〇、ピアノ独奏    シヨルツ氏
    ラプソディ第一
          武岡鶴代嬢
一一、二重奏
          柳兼子夫人
    三月
一二、合唱     東京混声合唱団
    秋の歌(四季の曲)
   二十六日
一、絃楽四重奏    ハイドン クワルテツト
  四重奏曲、作品六四、第五
    アルレグロ モデラート
    アダヂオ カンタビーレ
二、合唱     東京混声合唱団
    イ、夜曲
    ロ、夜曲
三、ベース独唱    矢田部勁吉氏
    歌劇麑笛中抒情調
    歌劇「フイガロ」中のガヴイテイ
四、ヴイオリン独奏    クローン氏
    イ、ワルタスのプライスリド
    ロ、カプリスヹンノス
五、アルト独唱    花島秀子夫人
  歌劇「予言者」
    フイデスの抒情調 嗚呼我子よ
                クローン氏
六、ピアノヴイオリン合奏
                シヨルツ氏
    ホ短調奏鳴曲
七、合唱     東京混声合唱団
 - 第30巻 p.209 -ページ画像 
    雲雀の歌
    早春
八、絃楽四重奏    ハイドン クワルテツト
  四重奏曲、作品五一
    アルレグロ、アツサイ
    スケルツオアンダンテ
九、バリトン独唱    船橋栄吉氏
    歌劇「道化師」中の抒歌
一〇、ピアノ独奏    シヨルツ氏
    ラプソデイー第一
          武岡鶴代嬢
一一、二重唱
          柳兼子夫人
    三月
一二、合唱     東京混声合唱団
    秋の歌(四季の曲)


東京市養育院月報 第二五八号・第一七―一八頁 大正一一年八月 ○本院婦人慈善会大演奏会(DK300018k-0007)
第30巻 p.209-210 ページ画像

東京市養育院月報  第二五八号・第一七―一八頁 大正一一年八月
○本院婦人慈善会大演奏会
養育院事業後援団体たる本院婦人慈善会は、七月二十九日午後七時より神田美土代町青年会館に於て世界的声楽家として名声嘖々たる三浦環夫人を聘して女史の独唱大演奏会を開催せり、当日は開会前既に来会者堂に満ち殆ど立錐の余地なき盛況を呈し、為めに殺到せる多数の入場希望者に入場券の発売を謝絶するの止むなきに至れり、蓋し近来稀に見るの盛会にして、渋沢子爵より女史に対する「ブーケー」の贈呈等あり、斯くて予定の番組を終り大喝采裡に午後九時無事閉会を告げたり
 因みに当日の番組は左の如し
      第一部
 一、カンツオーネ………………(伊太利語)…レオン・カバルロ作
    a汝の碧き眼を開け……(仏蘭西語)…マセネー作
 二、
    b夜の調べ………………(日本語)…グーノー作
                     中内蝶二氏作歌
 三、日本の胡蝶(特作)………(日本語)…
                     山田耕作氏作曲
          (三浦環夫人に捧げしもの)
    a五月なりき(ヱラ・デイ・マージヨ)(伊太利語)…フランケツチー作
 四、 b薔薇よ語れ(デレイ・テウ・ローザ)(伊太利語)…フランケツチー作
    cバチ・パチヨー(新作)(日本語)…フランケツチー作
          (三浦環夫人に捧げしもの)
        (休憩十五分)
      第二部
 五、蝉の歌……………………………(仏蘭西語)…メサージヱー作
          (歌劇「お菊さん」より)
    aゴー、ツー、スリープ……(英語)…スロツト作
          (三浦環夫人に捧げしもの)
 六、 b日の光………………………(英語)…米国俚謡
    cカミング、スルー、ザライ(英語)…蘇克蘭俚謡
 - 第30巻 p.210 -ページ画像 
    a来るか、来るかと…………(日本語)…長唄越後獅子
 七、
    bキンニヤ、モニヤ…………(日本語)…鄙歌
 八、晴れたる日の海路はるかよ……(伊太利語)…ブツチニ作
        (歌劇「お蝶夫人」より)
    「ピアノ伴奏、アルド・フランケツチー氏」
   ○本資料第二十四巻所収「東京市養育院」明治十九年七月三日ノ条参照。
   ○当会ハ後、養育院後援会ト称シテ尚ホ存続セリ。(二井院長室主事談)



〔参考〕九恵 東京市養育院月報第一四五号・第二三―二四頁 大正二年三月 院資増殖会の慈善演劇会寄附(DK300018k-0008)
第30巻 p.210 ページ画像

九恵  東京市養育院月報第一四五号・第二三―二四頁 大正二年三月
○院資増殖会の慈善演劇会寄附 本院々資増殖会は嚮に本院資金の増殖を図る目的を以て創立せられたるものにて、院は既に拾参万余円の寄贈を受け、事業経営上多大の援助を与へられたるが、今回猶本院寄附の目的を以て、慈善観劇会を丸の内帝国劇場に於て開催せられ、二月二日より同二十六日までの興業揚り高弐千百五拾六円五拾参銭を得たり。
○中略
○慈善演劇会 別項院資増殖会に於ける慈善演劇会は、女優劇一派に補導として松本幸四郎外男優数十名出演、狂言は悲劇あきらめ一幕、時代劇太平記忠臣講釈一幕、浄瑠璃朝比奈釣狐一幕、歌劇夜の森二場時代喜劇珍竹林二幕等にして連日盛況を極めたり。
   ○養育院院資増殖会ニツイテハ本資料第二十四巻所収「東京市養育院」明治三十九年六月、同四十一年三月二十日ノ各条参照。ナホ同会ハ予期ノ目的ヲ達シ大正二年十二月解散セリ。(養育院六十年史・九恵第一四五号)