デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正13年11月24日（1924年）

是ヨリ先、赤十字社聯盟ハ国際社会事業大会開催ヲ決定シ、日本赤十字社ヘ準備委員会ノ組織ヲ申達セリ。仍テ日本赤十字社ハ栄一、並ニ同社社長男爵平山成信連署ノ該委員推薦状ヲ発セントシ、是日当協会副会長窪田静太郎右ニ就キ栄一ニ承諾ヲ求ム。栄一之ヲ承諾ス。

財団法人中央社会事業協会書類（一）　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　覚書
一、別紙発状案ハ十一月廿四日窪田静太郎氏兜町事務処ニ増田ヲ訪問持参セラレシモノナルガ、折柄増田ハ他ニ来客ト対談中ナリシ為メ同氏ハ其名刺ニ要件ヲ認メテ辞去セラレタリ
一、廿五日増田之ヲ飛鳥山邸ニ携ヘ子爵ニ言上シタルニ、子爵ハ事業協会ガ之ニ携ハルコトハ如何アルベキヤ、経費ハ如何ニ支弁スル積ナリヤ、左ナキダニ不足勝ノ協会ハ其支出ノ途アラザルベシ、内務省ガ同協会ニ対シ頗ル冷淡ナリ、予ハ其会長タルヲ辞スル考ナリ、等種々ノ御話アリテ結局赤十字社長ト連名出状ヲ謝絶スベシト申聞ラレタリ
一、廿六日前日子爵御話ノ次第ヲ窪田氏ニ転話シタルニ、同氏ハ子爵ノ御配慮御尤ナルモ該出状ハ赤十字社ガ特ニ協会々長ニ御連名ヲ請フニ至リシハ、準備委員ヲ嘱託スルニ好都合ナルコトノ由ニテ特ニ願出シモノニテ、又同委員会設置ノ為ニ要スル費用ハ極メテ少額ニシテ夫レハ赤十字社ニテ負担スル筈ナリ、又会長御辞任ノ件ハ先ニ
 - 第30巻 p.557 -ページ画像 
御話アリシモ当分御留任ノコトヽ御承諾ヲ受ケ居ル次第ニテ、内務省ノ冷淡ハ御同感ナルガ、兎ニ角今回ハ抂テ御同意与ヘラレテハ如何アルベキヤ一応子爵ニ伺呉レトノコトナリ
一、廿七日子爵ヲ飛鳥山邸ニ訪問、窪田氏ノ談話ヲ御話シタルニ折角ノ御話ニ付今回ハ御同意可致モ、目下病臥中ニ付キ夫ガ為メニ起ル凡テノ用件ハ窪田氏ニ於テ引受処置セラレタキ旨申伝ヘヨト申聞ラレタリ
　依テ其旨同日午後窪田氏ニ通シタリ
　　　　　　以上
　　　○欄外ニ「白石」ノ印アリ。欄外日付「大正十三年十一月二十八日」。
（別紙）
謹啓時下益々御清祥奉慶賀候、陳者本年五月赤十字社聯盟総会ニ於テ国際社会事業大会ヲ開催スルコトニ決議相成、之ニ基キテ各国社会事業ノ有志ハ実行ノ計画ヲ定メ、明年夏季巴里ニ於テ開会ノ予定トシ巴里ニ於ケル赤十字社聯盟本部ニ於テ其事務ノ執行ニ就キ斡旋スルコトト相成候、先ツ大会ノ準備トシテ各国ニ於テ準備委員会ヲ設クルニ就キ、我国ニ於テモ之ヲ組織スルコトニ尽力致スヘキ様、聯盟本部ヨリ日本赤十字社ヘ申来候、依テ日本赤十字社ハ中央社会事業協会ト協議ノ上該委員会ヲ組織スルコトニ決定致候、就テハ貴下ヲ右委員ニ御推薦申上度存候ニ付御多忙中御迷惑トハ存候得共、何卒御承引被成下度悃望ノ至ニ御座候、先者不取敢以書中御願迄如斯御座候　敬具
　二伸、国際社会事業大会ノ計画ニ関スル別冊報告御送致候ヘバ御瀏覧被下度候
　　大正十三年　月　日
　　　　　　　　　　中央社会事業協会長　子爵　渋沢栄一
　　　　　　　　　　日本赤十字社長　　　男爵　平山成信
　　　　　　　　殿
　　追テ来ル　月　日（　曜日）午　時ヨリ　　　ニ於テ第一回ノ協議会開催致候間、何卒御差繰ノ上御臨席被下度願上候
○下略
　　　○別冊報告添付ナシ。

本件ハ急速発送致度旨赤十字社長ヨリ屡申越有之万々社会事業協会ノ迷惑ニ相成候虞ハ無之候間、発信方取計可申候、何卒御承諾被下度候也
　　十一月廿四日　　　　　　　　　　　　　　窪田静太郎
　右之趣子爵ヘ御申上被下度候也
　　　　増田様
　　　○右ハ窪田静太郎名刺ニ記入サレ、前掲（別紙）ニ添付サレタルモノナリ。