デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

1章 社会事業
4節 保健団体及ビ医療施設
18款 其他ノ関係諸事業 2. 在ホノルル日本人慈善会附属日本人病院
■綱文

第31巻 p.212(DK310042k) ページ画像

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■資料

社会と救済 第一巻第六号・第五二一頁 大正七年三月 ホノルルの日本人病院(DK310042k-0001)
第31巻 p.212 ページ画像

社会と救済  第一巻第六号・第五二一頁 大正七年三月
    ▽ホノルルの日本人病院
          □改築費と寄附金の募集□
          □邦人の唯一の救恤機関□
布哇ホノルル在留日本人間の救恤機関たる日本人慈善会附属日本人病院は、年々日本人の増加するに従ひ病室の狭隘を告げ、且つ建物腐朽して使用に堪えざるより、会費と一般特志家の寄附金を以て新築に着手したるも、物価騰貴の為め経費の不足を告ぐるに至りしより、会長本川源之助氏は、寄附募集の為め帰朝奔走しつゝあり。氏は右の計画に対して左の如く語れり。
  在留民唯一の救恤機関で、畏くも曩に伏見大将宮殿下・久邇宮中将宮殿下ホノルル御寄港の際、御下賜金のあつたのを始め、本国の名士で寄附した人々が多い、今回も後藤内相・田逓相・渋沢男爵等が力瘤を入れ、頗る好況に進捗して居る、新築の病院は普通病室の外、伝染病室・結核病室・研究室・屍体室等完全無欠のもので、外人の設立に成る中央慈善会附属の病院にも敢て譲らない。目下収容して居る患者は七十人以上で、其内無料の入院患者が十五・六人である。現在布哇に在留して居る同胞は十一万数千人、布哇全島の人口二十四万の殆んど半数は我が同胞である。而して一年の出産増加率が約四千人で、死亡を差引いても三千人は増加して行くのである。
  男子は丁年に達すれば皆完全に市民権を有する資格はあるが、その親達は比較的低級の者が多く、一にも二にも外人は豪らいものと信じて居る。それは何れの社会でも上に立つ者が英米人であるから外国人は豪らいものと直接に感じて居るのだ。此の観念を除却するには、日本人慈善会が誘導者となり、一方には慈善の目的を達すると共に、青年の教育をも奨励して、祖国の為めに尽す有為な人物を養成せねばならぬ。