デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

2章 労資協調及ビ融和事業
1節 労資協調
2款 財団法人協調会
■綱文

第31巻 p.496-507(DK310079k) ページ画像

大正9年2月3日(1920年)

是日栄一、当会理事会ニ出席ス。爾後理事会・評議員会・常議員会・幹部会等ニ屡々出席ス。


■資料

渋沢栄一 日記 大正九年(DK310079k-0001)
第31巻 p.496-497 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正九年      (渋沢子爵家所蔵)
二月三日 曇 寒
○上略 午後三時華族会館ニ抵リ、協調会理事会ニ出席ス ○下略
   ○中略。
二月九日 晴 寒
○上略 午前十時協調会事務所ニ抵リ、常務ヲ談ス、松岡・桑田・谷口諸氏ト要件ヲ協議ス ○下略
二月十日 晴 厳寒
○上略 午飧後宮内大臣ヲ官舎ニ訪フテ、協調会其他ノ御下賜金ノ事ヲ依頼ス ○中略 協調会ヘノ御下賜金ハ未定ノ由内話セラル ○下略
   ○中略。
二月十三日 晴 厳寒
○上略 午飧後事務所ニ抵リ ○中略 協調会松岡・谷口二氏来話ス ○下略
   ○中略。
二月十六日 晴 寒 雪晴レテ天気晴朗且寒威少シク減スルヲ覚フ
○上略 午前十時半協調会新事務所ニ抵リ、専務理事三氏ト談話ス、清浦副会長モ来会ス
○中略
午後四時ヨリ浜町常盤屋ニ抵リ、協調会役員一同ト共ニ中島・和田・大橋三氏ノ開催セル宴ニ出席シ、一同会務ヲ談話シ、将来ニ施設《(ノ)》ニ完全ナル方針ヲ与フルヲ得ル ○下略
   ○中略。
二月二十日 半晴 寒
○上略 午飧後協調会参事高橋豊太郎氏来リテ、本会基金ノ利殖方法ヲ談
 - 第31巻 p.497 -ページ画像 
シ、諸支払ニ付テ証印ヲ需メラル
○下略
   ○中略。
二月二十三日 曇 厳寒
○上略 協調会理事谷口氏来リテ会ノ要務ヲ談ス ○下略
   ○中略。
二月二十四日 雪 厳寒
○上略
協調会高橋豊太郎氏来リ、小切手ノ捺印ヲ請ハル ○中略 夜飧後協調会橋本能保利氏来リ、八幡製鉄所同盟罷工ヲ視察シタル顛末ヲ詳話ス ○中略 八幡製鉄所ノ近状ハ上下共ニ一致ヲ欠キ、徒ラニ規則ニ拘泥シテ執業活溌ナラス、今日ノ有様ニテハ到底改善ノ見込少シトノ観察ナリキ
二月二十五日 晴 寒
○上略 北爪子誠氏来リ、協調会ニ関スル談話アリ ○下略
   ○中略。
二月二十七日 晴 厳寒
○上略 午後三時事務所ニ抵リ、松岡均平氏来リ、協調会ノ件其他ノ要件ヲ談ス ○下略
二月二十八日 雪 厳寒 朝来飛雪、夜ニ入ルモ尚歇マス、積テ七八寸ニ至ル
○上略 午前十時半協調会ニ抵リ、谷口理事・橋本参事等ト、要務ヲ談ス
○下略
   ○中略。
三月一日 晴 寒
○上略 午前十一時協調会ニ抵ル、徳川公爵来会セラル ○中略 午後二時頃再ヒ協調会ニ抵リ、理事諸氏ト本会ノ事務ヲ談ス ○下略
   ○中略。
三月四日 晴 寒
○上略 五時過ヨリ、千駄ケ谷ナル徳川公爵邸ヲ訪ヘ、協調会ノ事ヲ談ス
○下略
   ○中略。
三月八日 晴 寒
○上略
午前十時協調会ニ抵リ、要務ヲ談ス ○下略
   ○中略。
三月十一日 晴 寒
○上略 添田敬一郎氏来リ、協調会ノ事ヲ談ス ○下略
三月十二日 曇 寒
○上略 三時華族会館ニ徳川公爵ヲ訪ヘ、協調会松岡氏ノ事ヲ談ス ○下略
三月十三日 曇 軽寒
○上略
(欄外記事)
清岡子爵《(浦カ)》ト、協調会松岡氏ノ事ヲ内話ス ○下略

 - 第31巻 p.498 -ページ画像 

集会日時通知表 大正九年(DK310079k-0002)
第31巻 p.498 ページ画像

集会日時通知表  大正九年      (渋沢子爵家所蔵)
二月十六日(月) 午前十時 協調会幹部会(同会)
   ○中略。
三月廿九日(月) 午前十時 協調会幹部会(同会)
         午後三時 協調会評議員会(築地精養軒)


竜門雑誌 第三八三号・第四九―五〇頁 大正九年四月 ○協調会の事業と予算(DK310079k-0003)
第31巻 p.498 ページ画像

竜門雑誌  第三八三号・第四九―五〇頁 大正九年四月
○協調会の事業と予算 財団法人協調会にては三月二十九日午後三時より築地精養軒に於て第一回評議員会を開催せり。出席者は会長徳川公、副会長清浦子爵・青淵先生、及松岡・桑田・谷口の三常務理事、団琢磨・和田豊治・大橋新太郎・大谷嘉兵衛諸氏以下七十余名にて時節柄頗る熱心なる質問あり、青淵先生専ら其の衝に当り真摯なる説明を与へられ、後ち徳川会長座長席に着き「寄附行為施行細則」及「九年度予算」二項を審議の上之を可決し、閉会後晩餐を共にし、午後七時散会せる由なるが、本年度の事業財源其他は左の如くなりといふ。
 △事業財源 同会の本年度に於て為す可き各種事業の財源には、前年度繰入金百三十七万千八百四十六円と、本年度内に寄附納入さる可き予定金額百十九万円との利子、及び元金より三十余万円を引出し、都合四十四万三千九百四十円を以て充つる事となし、即ち其事業項目中注意を喚起す可きものに左の数項を挙ぐるを得たり。
 △出版調査 労資問題に関する比較的公正なる出版をなす為めに三万二千六百円を投じ、以て労資問題の帰趨を明にする一助となし、又海外に於ける労働問題に関する特別なる事情の調査及び我が国に於ける労働者の生計に対し、何等調査の見る可きなきを補はんが為に、其生計調査の準備に取掛る費用として、合計二万三千円を支出し、労働問題解決の根本材料に供ふ。
 △宣伝講習 又一方二万円の経費を以て、労資問題解決の衝に当る可き人々の為めに、之が基本知識を養成せしむる一策として講習会を開催すると同時に、一万円を以て一般工場の講演依頼の応需及び労資問題に対する一般的観念の向上を期する方便として、之が宣伝用の小冊子乃至はビラを配頒し、旁々他の事業遂行の上に反映的声援の連絡機関となす可し。
 △職工教育 円満なる労資闘争の解決を得ん為めに相互の知識の均等を要すとの見地より、取敢ず一万二千円を投じ、本所・深川の両区に一校宛、都合二校の簡易なる労働学校を創設し、又軈て来る可き不況時代の失業者救済の統一機関として、中央職業紹介の創設に対する研究準備費として二万円を計上せり、以上各項の事業予算は右評議員会に於て屡々決定せるものなるが故に、松岡・桑田・谷口三常務理事は即刻部署を定めて其実現に取掛りたるが、尚ほ聞く所に拠れば、前掲出版費の一部を割き時代に沿ふ可き編輯法の下に、会としての機関雑誌を発行するやも知れずとの事なり。


集会日時通知表 大正九年(DK310079k-0004)
第31巻 p.498-499 ページ画像

集会日時通知表  大正九年      (渋沢子爵家所蔵)
 四月五日(月)  午前十時  理事会(協調会事務所)
 - 第31巻 p.499 -ページ画像 
          午后五時  協調会ノ件ニ付御会合(丸ノ内中央亭本店)
   ○中略。
十二月十三日(月) 午前十一時 床次内相御訪問(内相官邸)
          午后三時  協調会理事会(同会)


渋沢栄一 日記 大正一〇年(DK310079k-0005)
第31巻 p.499 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一〇年      (渋沢子爵家所蔵)
三月十四日 晴 寒
○上略 協調会ニ抵リ理事会ニ出席ス、徳川・清浦・大岡氏等来会ス、本会予算編製ニ付意見ヲ述フ、理事会ニ於テ予算ノ逐条審議アリ ○下略
   ○中略。
三月二十四日 曇 軽寒
○上略
(欄外記事)
午後四時協調会高橋・中村二氏来リ、来ル二十八日開催ノ評議員会ニ関スル書類ヲ調査ス


集会日時通知表 大正一〇年(DK310079k-0006)
第31巻 p.499 ページ画像

集会日時通知表  大正一〇年      (渋沢子爵家所蔵)
三月廿八日(月) 午後三時 協調会評議員会(築地精養軒)


竜門雑誌 第三九五号・第五四頁 大正一〇年四月 ○協調会評議員会(DK310079k-0007)
第31巻 p.499 ページ画像

竜門雑誌  第三九五号・第五四頁 大正一〇年四月
○協調会評議員会 協調会にては、三月二十八日午後三時より築地精養軒に於て評議員会を開き、徳川会長、青淵先生・清浦・大岡三副会長、床次顧問、添田・永井・田沢各常務理事及評議員諸氏七十余名出席し、徳川会長の開会辞に次ぎ、青淵先生の挨拶(本欄参照)あり、更に添田理事より十年度歳出予算の説明ありて原案を可決したる由なるが、同予算は経常費七十四万円、臨時費五十一万一千円、合計百二十四万一千円《(マヽ)》なりと云ふ。
 因に同会の新規計画を挙ぐれば左の如しと
 (一)社会政策・労働事情及生計調査(二)労働雑誌「人と人」の刊行(三)社会政策短期講習会・定期講演会及労働者講習会の開催(四)蔵前工業専修学校(東京高等工業学校附属工業補習学校継承)の経営(五)職業紹介従業員の養成及失業調査(六)大阪支所の新設(七)会館及隣保館新営(会館は二ケ年継続、隣保館は十年度中開始の予定)


竜門雑誌 第三九五号・第二六―二七頁 大正一〇年四月 ○協調会評議員会に於て(青淵先生)(DK310079k-0008)
第31巻 p.499-500 ページ画像

竜門雑誌  第三九五号・第二六―二七頁 大正一〇年四月
    ○協調会評議員会に於て (青淵先生)
 本篇は、青淵先生が、去る三月二十八日午後三時、築地精養軒に於いて開催せる協調会評議員会の席上に於いて試みられたる挨拶なりとす。(編者識)
 本会創立以来僅かに一年余でありますが、寄附金の払込及国庫補助金の下附に依りて、漸く財政上の基礎を築き上ぐるに至りました。爾来事業の計劃及準備も着々進捗して、中央職業紹介所の新設、社会政
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策講習所の開始、社会政策時報其他研究資料の刊行、蔵前工業補習学校の継承等、事業の見るべきもの少くありません。唯惜むらくば常務理事中松岡氏は昨年四月、桑田・谷口両氏は同十月を以て辞任せられ新に添田・永井・田沢三氏の就任を見るに至りましたが、十一月常議員会の議決を経て部制の改正を行ひ、添田氏総務部長として会務の整理各部統一の任に当り、永井氏第一部長、田沢氏第二部長として夫々会務を担任して責任を分ち、協力一致専心事に当らるゝことになりました。部制の変更に伴ひて分課分掌の規程をも改正し、弘く人材を集めて陣容を新にし諸般の事業計劃を立てゝ、内容の充実に努力しました。尚又本会の主義精神に就ても、未だ以て能く充分に世の諒解を得るに至らざるの虞がありましたから、一の宣言書を発表して、本会の基く主義、本会の立脚地を一層明瞭に致しまして、爾来関係各官庁公共団体との連絡を一層密接にしたることは勿論、労資の団体其他の諸機関とも意思の疏通を計りて、本会の立場を諒解せしむることに努めました。本日の議案たる大正十年度予算に掲げたる諸種の事業及計劃は、新常務理事の熱誠なる劃策の産物でありまして、既に実行又は準備に着手したるものも少くありません。先づ社会政策及労働事情に関する組織的調査、労働者の教化を目的としたる講習会の開催及労働雑誌の刊行、中央職業紹介機関の改善、大阪支所の新設、会館及隣保館の新営等其最も著しきものでありまして、殊に会館の設置を見るに至らば、宣伝・講演・講習其他本会活動の中心淵源地を得る許りでなく直接労働者に接して教化的福利増進施設をも行ふことが出来るのであります。経常部予算総額約七十四万円中、予備費を除くときは約七十二万円となり、更に事業上の諸収入を差引したる純支出は約六十万円でありまして、臨時部予算たる会館等の新営費二ケ年継続約五十万円を加ふるときは、聊か経費膨脹の観がありますが、一として時勢に適切なる施設ならざるものはないと信ずるのであります。終りに大正八年度の決算は僅かに三ケ月に過ぎざるものなるも、本会の承認を経る為め併せて提出した次第であります。


集会日時通知表 大正一〇年(DK310079k-0009)
第31巻 p.500 ページ画像

集会日時通知表  大正一〇年      (渋沢子爵家所蔵)
九月三十日(金) 午後三時 協調会常議員会(築地精養軒)


竜門雑誌 第四〇一号・第五三頁 大正一〇年一〇月 ○協調会委員会(DK310079k-0010)
第31巻 p.500 ページ画像

竜門雑誌  第四〇一号・第五三頁 大正一〇年一〇月
○協調会委員会 協調会にては九月卅日午後三時より築地精養軒に於て常議員会を開会し、会長徳川公爵・副会長青淵先生其他会合の上、工場委員会制度に関する件、並に労働会館に事務所を附設するの件を附議し、前者は委員附託となり、後者は満場一致を以て可決したる由なるが、越えて十月六日午前九時より、同会に於て特別委員会を開会し、該案に対する委員諸氏の意見を徴する所ありたりと云ふ。


集会日時通知表 大正一一年(DK310079k-0011)
第31巻 p.500 ページ画像

集会日時通知表  大正一一年      (渋沢子爵家所蔵)
三月三十日(木) 午後四時 協調会評議員会(日本クラブ)

 - 第31巻 p.501 -ページ画像 

協調会第三回評議員会議議事録(DK310079k-0012)
第31巻 p.501 ページ画像

協調会第三回評議員会議議事録      (財団法人協調会所蔵)
    渋沢副会長の挨拶
 唯今会長より申述べられました通りでありますから、宜しく御了解を願ひます。予算には、昨年よりの継続事業もございまして、是等は是非共完成せしめなけれはならぬと思ひます。
 私は昨年 ○大正一〇年十月の始め海外へ旅行致し、漸く本年一月末に帰朝したやうな次第であります。殆んど四ケ月余り全く会務にたづさはらず、会の事業に対して等閑に附し去つたやうなことで実に恐縮に存じます。私共は今回提出の予算に対しては十分の注意を致し、尚ほ常務の方々とも相談の上、成るべく経費の支出に就き慎重に考へて事業を完成せしめなければならぬと思ひつゝあります。微力ながらも注意を怠らぬやうに致して居る次第で御座います。元来、会では在り金で、それより生ずる利率で以て、事業に対して支弁すると云ふことは、今日の場合では為し能はざることでありまして、御考慮を願はねばなりませぬ、此の予算に計上せられた費用は、事業の上より言へば適切に計上せられて居ると思ひます。又、今日に於て、会館に支出したのも前評議員会に於て計画しました行懸り上、已むを得ぬと思ひます。最も経費は、多額の如うな嫌ひはありませうが、然し夫れ夫れ必要の事業に要するのであります。
 然し、成るへく費用を節約したいと思ひまして、斯う言ふ感じを以て、予算に計上致しました次第であります。此の会館を完成せしむれば、相当の効果のあらうと思ひます。本日提出の予算は、過多であらうとの御懸念もありませうが、会の事業の上より考へますれば、已むを得ませぬ、それで、玆に予算を提出致しましたが、一応申上げて置きます。先程も、此等の事情に就ては、会長よりも御話しがありましたが、吾々の愚論は到底、事足らぬことと存し甚た遺憾と思ひます。但し報告と言ふことも或は至らぬことと思ひますが、尚ほ専ら其の局に当らるる方々も、平生に於て良好の成績を挙げ得るやうに致したいと希望致します。昨年旅行の為めに不在を致しましたから、旁々玆に其の御詫をも申します。


渋沢栄一 日記 大正一二年(DK310079k-0013)
第31巻 p.501 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一二年      (渋沢子爵家所蔵)
一月三十一日 晴 寒
○上略 二時頃ヨリ協調会ニ抵リ理事会ニ列席ス、工場法改正ニ付種々ノ討議アリ、六時過散会○下略


集会日時通知表 大正一二年(DK310079k-0014)
第31巻 p.501 ページ画像

集会日時通知表  大正一二年      (渋沢子爵家所蔵)
一月卅一日(水) 午後二時 協調会理事会(同会)
   ○中略。
二月十五日(木) 午後三時 協調会常議員会(日本クラブ)


協調会事業一斑 協調会編 第六三―六九頁 大正一二年六月刊(DK310079k-0015)
第31巻 p.501-504 ページ画像

協調会事業一斑 協調会編  第六三―六九頁 大正一二年六月刊
    六、建議意見
○上略
 - 第31巻 p.502 -ページ画像 
(三) 工場法改正案に対する意見
 本会は従来我現行工場法中改正を要する点に就き、各国立法の趨勢及び我国の現状に鑑み調査研究を為し来つたが、恰も政府は第四十五議会に提出の目的を以て工場法の改正を企て、新社会局に於て之が改正案を作成し、各関係団体に内示して其意見を徴したるに際し、本会も亦左の如き意見書を提出するに至つた。
     工場法改正案に対する意見書
 今次政府は時勢の推移に鑑み、今期議会に提出の目的を以て工場法の改正を企て、既に社会局に於て之が改正案を作成し、之を各関係団体に内示して其意見を徴せられたるは、機宜に適したる措置なりと謂ふべし、本会は右改正案に対し二三の修正を試み、更に改正意見を加へ、別紙意見要綱を提出す、幸に採納あらむことを切望す。
 右本会常議員会の決議を経て提出候也
  大正十二年二月十五日
                協調会々長 徳川家達
    内閣総理大臣
    内務大臣
    文部大臣
    農商務大臣
    工場法改正案に対する意見要綱
一、工業労働者の最低年齢を規定するに方り、小学校令第三十三条第三項は之を削除し、且貧困児童に対して尋常小学校の教科を修了せしむべく、適当の施設を講ぜられむことを望む
  理由 改正案に依れば、貧困の故を以て義務教育を免除せられたる少年と雖も、満十四歳に達するにあらざれば工業上何等の業務に就くこと能はざるを以て、彼等は風紀及衛生上不良なる環境の裡に其の期間を空費するの已むを得ざるに至るべく、是れ却つて彼等を保護するの所以にあらざるのみならず、貧困者の子弟が就業に依りて家計を助くること能はざるの結果を招致するに至るべきを以て、此際宜しく小学校令第三十三条第三項は之を削除し、且つ貧困児童をして義務教育を修了せしむるに付き、適当なる施設を講ずるの必要あるものと望む
二、少年職工の年齢十五歳未満を十六歳未満とする改正案中、三年の猶予期間は之を削除せられむことを望む
  理由 少年職工年齢引上げに就ては、施行の際十五歳以上十六歳未満の者を引続き使用する場合に付き、経過規定を設くるを以て足れりと認む
三、器械生糸製造の業務及び輸出絹織物に関する業務につき、例外的に就業時間の延長を認むる期間は、之を三年に短縮せられむことを望む
  理由 器械生糸製造の業務及輸出絹織物に関する業務は、近時著しき発達を遂げたるを以て、相当の猶予期間を設くるに於ては生産能力の上に悪影響を及ぼすことなかるべきのみならず、是等の業務に従事する者は多くは保護職工なるを以て、例外的就
 - 第31巻 p.503 -ページ画像 
業時間を久しきに亘つて延長することは、彼等を特に保護するの趣旨にも悖るものなるを以て、成可く速に此の例外を廃止するの必要あるものと認む
四、深夜業禁止に関する猶予期間を三年とする改正案は、之を二年に短縮せられむことを望む
  理由 深夜業の禁止は、之に依りて影響を蒙るべき工業の正常なる発達を阻害することなく、且つ失業其他の著しき悪影響を社会に与ふることなく、円滑に之を実施せむとせば、諸般の準備の為め相当の猶予期間を必要とすべきは勿論なるも、当該工業の生産設備の現況、生産物の需給関係、其の他各種の事情に鑑み、二ケ年の猶予期間を以て足れりと認む
五、業務上の災害疾病扶助に関する改正案中「本人の死亡当時其収入に依り生計を維持したるもの」に関しては、本人の指定したる者に限らざる様改められむことを望む
  理由 改正案に依れば、業務上死亡の場合に於ては、遺族の外本人の死亡当時其の収入に依りて生計を維持したる者は扶助を受くることを得べきも、本人の指定したる者に限るは、改正の趣旨を貫徹すること能はざるものと認む
六、業務上の傷病扶助に関する工場法第十五条中「自己の重大なる過失に依らずして」を削除せられむことを望む
  理由 現行法に依れば、業務上の負傷疾病又は死亡の場合に於ける工業主の扶助責任は、職工自身の重大なる過失に依らざる場合に限らるゝも、業務災害に関しては被害者の過失の有無に係らず、産業自体として其責を負ふべき事は近来の立法並に学説の趨勢なるのみならず、之を我国の実際に徴するも、官営事業に於ける共済組合に於ては既に此の原則を採用し、民間の事業に在りても大工場に於ては同様の慣例行はれ居るのみならず、資力微弱なる小工業主は、却て此の規定に藉口して当然の責任をも回避せんとするの傾向なきにあらざるを以て、工場法適用範囲の拡張せるるゝに際し、工業主の扶助責任に関する条件を削除し、以て職工の生活の安定を図るの必要あるものと認む
七、工業主は勅令の定むるところにより職工規則を定め、之を職工に公示すべき旨、工場法中に規定せられむことを望む
  理由 職工の雇入・解雇・就業時間・賃金支払方法・扶助、其他工業主と職工との間の関係を規定する職工規則を定めて之を職工に周知せしむることは、職工の保護待遇上緊要の事項に属するものなるを以て、之に関する条項を新に追加するの必要あるを認む
八、工業主は勅令の定むる所に依り、一般職工に対して雇入の際に於ける身体検査及毎年一回以上の健康診断を行ふべき旨、工場法中に規定せられむことを望む
  理由 職工の健康を保持し、且つ産業能率の増進を図る為必要ありと認む
 右意見要綱中(一)に就ては、政府は何等の措置を採らざるも、貴
 - 第31巻 p.504 -ページ画像 
族院は『尋常小学校の教科を修了せざる十四歳未満の者の工場労働を禁ずるは、児童の精神身体を保護する上に於て適当なるも、政府は貧困の為め就学し得ざる児童の就学を保護する法制を速に制定せられむことを望む』との希望条件を附して可決した。(二)(三)(四)に就ても政府は何等の措置を採らざるも、(五)(六)に就ては大体本会の意見通りに案を改めて議会に提案し、その可決するところとなり、(七)(八)に就ては近く発布せらるべき勅又は命令中に同じく本会の意見を容れ、相当の規定を見るべき予定である。
   ○工場法ト栄一トノ関係並ニ工場法成立ノ沿革ニ就テハ、本資料第十七巻所収「東京商法会議所」明治十三年十一月十五日、第十八巻所収「東京商工会」明治十七年五月二日、第十九巻所収「東京商業会議所」明治二十四年八月二十九日、第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十一年五月二十日、同年十月二十二日、同三十六年三月二十八日、第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十五年十二月八日、第二十三巻所収「農商工高等会議」明治二十九年十月二十三日、同三十一年二月二十八日、第二十七巻所収「社会政策学会」明治四十年十二月二十二日、第三編第二部第六章所収「生産調査会」明治四十三年十一月一日ノ各条参照。


渋沢栄一 日記 大正一二年(DK310079k-0016)
第31巻 p.504 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一二年      (渋沢子爵家所蔵)
三月五日 晴 軽寒
○上略 二時協調会ニ出席シテ、理事会ヲ開キ、十二年収支予算ニ付討議ス、多数ノ理事出席シテ議論百出ス、種々審議ノ後終ニ原案ニ決ス、但シ将来経費節約ノ要アルニ付、理事者ニ於テ努メテ其意ヲ体シテ、力ノ能フ限リ経費ヲ減省スヘキ事ヲ企望スル旨ノ附言アリタリ ○下略


集会日時通知表 大正一二年(DK310079k-0017)
第31巻 p.504 ページ画像

集会日時通知表  大正一二年      (渋沢子爵家所蔵)
参月廿七日(火) 午后五時 協調会評議委員会(芝公園協調会館)
   ○是日ノ栄一日記ヲ欠ク。


白石喜太郎手記 大正一二年(DK310079k-0018)
第31巻 p.504 ページ画像

白石喜太郎手記  大正一二年      (白石喜義氏所蔵)
九月十六日
協調会理事会ニ出席シ ○下略


竜門雑誌 第四三三号・第三七頁 大正一三年一〇月 青淵先生動静大要(DK310079k-0019)
第31巻 p.504 ページ画像

竜門雑誌  第四三三号・第三七頁 大正一三年一〇月
    青淵先生動静大要
      九月中
○中略
二十五日 協調会理事会(同会)
○中略
三十日  協調会財務委員会(同会) ○下略


集会日時通知表 大正一四年(DK310079k-0020)
第31巻 p.504 ページ画像

集会日時通知表  大正一四年      (渋沢子爵家所蔵)
壱月廿七日(火) 午後壱時 協調会理事会(同会)


竜門雑誌 第四三七号・第六五頁 大正一四年二月 青淵先生動静大要(DK310079k-0021)
第31巻 p.504-505 ページ画像

竜門雑誌  第四三七号・第六五頁 大正一四年二月
 - 第31巻 p.505 -ページ画像 
    青淵先生動静大要
      一月中
○中略
廿七日 協調会理事会 ○中略 (以上東京銀行倶楽部)ヘ出席。


竜門雑誌 第四三八号・第七三頁 大正一四年三月 青淵先生動静大要(DK310079k-0022)
第31巻 p.505 ページ画像

竜門雑誌  第四三八号・第七三頁 大正一四年三月
    青淵先生動静大要
      二月中
○中略
十九日 協調会(同会)ヘ出席。


竜門雑誌 第四四五号・第五九頁 大正一四年一〇月 青淵先生動静大要(DK310079k-0023)
第31巻 p.505 ページ画像

竜門雑誌  第四四五号・第五九頁 大正一四年一〇月
    青淵先生動静大要
      九月中
○中略 協調会理事会(二十四日) ○下略


集会日時通知表 大正一四年(DK310079k-0024)
第31巻 p.505 ページ画像

集会日時通知表  大正一四年      (渋沢子爵家所蔵)
九月廿四日(木) 午后壱時 協調会理事会(協調会)


集会日時通知表 大正一五年(DK310079k-0025)
第31巻 p.505 ページ画像

集会日時通知表  大正一五年      (渋沢子爵家所蔵)
参月廿五日(木) 午后四時 協調会理事会(同会)


竜門雑誌 第四五一号・第七七頁 大正一五年四月 青淵先生動静大要(DK310079k-0026)
第31巻 p.505 ページ画像

竜門雑誌  第四五一号・第七七頁 大正一五年四月
    青淵先生動静大要
      三月中
○中略
廿五日 ○中略 協調会理事会(同会)


協調会計算書(一)(DK310079k-0027)
第31巻 p.505 ページ画像

協調会計算書(一)           (財団法人協調会所蔵)
          
          十五年三月三十一日評議員会《(栄一鉛筆)》ニ於テ多少ノ質問アリシモ後全会一致議決及承認之事
    評議員会順序
一、会長挨拶
一、議事
 一、大正十五年度一般会計歳入歳出予算
 二、蔵前工業専修学校建設費継続費予算ニ関スル件
 三、大正十五年度特別会計蔵前工業専修学校歳入歳出予算
 四、大正十五年度特別会計協調会館歳入歳出予算
 五、大正十五年度特別会計特別積立金歳入歳出予算
 六、大正十四年度特別会計蔵前工業専修学校歳入歳出追加更正予算
 七、大正十三年度一般会計及特別会計歳入歳出決算
右終テ晩餐


集会日時通知表 昭和二年(DK310079k-0028)
第31巻 p.505-506 ページ画像

集会日時通知表  昭和二年      (渋沢子爵家所蔵)
 - 第31巻 p.506 -ページ画像 
参月廿二日(火) 午后四時 協調会理事会(同会事務所)
   ○中略。
参月廿九日(火) 午后四時 協調会協議員会(同会)


竜門雑誌 第四七〇号・第九一頁 昭和二年一一月 青淵先生動静大要(DK310079k-0029)
第31巻 p.506 ページ画像

竜門雑誌  第四七〇号・第九一頁 昭和二年一一月
    青淵先生動静大要
      十月中
○中略
三日 協調会理事会(同会)


集会日時通知表 昭和二年(DK310079k-0030)
第31巻 p.506 ページ画像

集会日時通知表  昭和二年      (渋沢子爵家所蔵)
十二月廿四日(土) 午后弐時 協調会理事会(同会)


竜門雑誌 第四七五号・第七九―八〇頁 昭和三年四月 青淵先生動静大要(DK310079k-0031)
第31巻 p.506 ページ画像

竜門雑誌  第四七五号・第七九―八〇頁 昭和三年四月
   青淵先生動静大要
     三月中
○中略
廿四日 ○中略 協調会理事会(同会)
○中略
廿八日 ○中略 協調会評議員会(同会)


集会日時通知表 昭和三年(DK310079k-0032)
第31巻 p.506 ページ画像

集会日時通知表  昭和三年      (渋沢子爵家所蔵)
三月廿八日(水) 午后四時 協調会評議員会(同会)


協調会書類 【(謄写版) 評議員会順序 昭和三年三月廿八日午后四時会議室】(DK310079k-0033)
第31巻 p.506 ページ画像

協調会書類              (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    評議員会順序   昭和三年三月廿八日午后四時会議室
一、会長挨拶
一、議事
 一、昭和三年度歳入歳出予算
 一、昭和二年度一般会計歳入歳出追加予算
 一、昭和二年度特別会計東京工業専修学校歳入歳出追加予算
 一、昭和二年度特別会計協調会館歳入歳出追加予算
 一、昭和二年度特別会計労働雑誌「人と人」歳入歳出追加更正予算
 一、昭和二年度特別会計善隣館歳入歳出追加更正予算
   大正十五
 一、    年度歳入歳出決算
   昭和元
右終テ晩餐


集会日時通知表 昭和三年(DK310079k-0034)
第31巻 p.506 ページ画像

集会日時通知表  昭和三年      (渋沢子爵家所蔵)
九月廿一日(金) 午后弐時 協調会理事会(同会)


集会日時通知表 昭和五年(DK310079k-0035)
第31巻 p.506 ページ画像

集会日時通知表  昭和五年      (渋沢子爵家所蔵)
拾月二十日(月) 午后一時 協調会理事会(同会事務所)

 - 第31巻 p.507 -ページ画像 

集会日時通知表 昭和六年(DK310079k-0036)
第31巻 p.507 ページ画像

集会日時通知表  昭和六年      (渋沢子爵家所蔵)
三月三十日(月) 午后二時 協調会評議員会(同会事務所)
   ○中略。
五月廿六日(火) 午后五時 協調会理事会(同会事務所)
   ○中略。
十月三日     正午   協調会理事会(同会事務所)