デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

2章 労資協調及ビ融和事業
3節 内鮮融和
2款 財団法人相愛会
■綱文

第31巻 p.751-759(DK310113k) ページ画像

大正10年12月23日(1921年)

内地ニ渡来セル朝鮮人ノ救済並ニ内鮮融和ヲ企図シテ李起東・朴春琴等、是日相愛会ヲ組織ス。栄一之ガ顧問ヲ依嘱セラレ、種々尽力ス。


■資料

事業施設の概要 相愛会総本部編 第六―一六頁 大正一五年一月刊(DK310113k-0001)
第31巻 p.751-753 ページ画像

事業施設の概要 相愛会総本部編  第六―一六頁 大正一五年一月刊
 ○第一、沿革の大要
    三、会則
   目次
第一章 名称及位置
第二章 目的及事業
第三章 会員組織
第四章 役員組織
第五章 名誉職機関
第六章 議決機関
第七章 基金及会計
第八章 賞罰規定
      第一章 名称及位置
第一条 本会ハ之ヲ相愛会ト称ス
第二条 本会ハ総本部ヲ東京ニ、地方本部ヲ各府県ニ置ク
 本部ハ便宜枢要ト認ムル地ニ支部ヲ設クルコトヲ得
      第二章 目的及事業
第三条 本会ハ左ノ各号ニ掲ケタルコトヲ以テ目的トス
 一、人類相愛ノ精神ニ基キ、日鮮融和ノ徹底的実現ヲ図ルコト
 二、正義公道ノ精神ニ基キ、民族的差別観念ヲ撤廃スルコト
 三、自由平等ノ本義ニ立脚シテ、思想及生活ノ安定ヲ計ルコト
 四、共存同栄ノ本義ニ立脚シテ、特ニ朝鮮人ノ教化及救済ニ努ムルコト
第四条 前条ノ目的ヲ達セムカ為メ、左ノ各号ニ掲ケタル事業ヲ行フ
 一、知識交換及相互親睦ノ為メ随時各種ノ会合又ハ適当ノ施設ヲ為スコト
 二、会員及一般貧困者ノ為メ、保健衛生ニ関スル機関ヲ設クルコト
 三、会員及一般貧困者ノ為メ、無料宿泊所・無料職業紹介所等ヲ設クルコト
 四、日鮮人ノ争議協調及会員ノ結婚葬儀ノ世話、其他一般ノ人事相談ニ応スルコト
      第三章 会員組織
第五条 本会ニ入会セムトスル者ハ、入会願書ヲ会長ニ提出シ其ノ許可ヲ受クヘシ、脱会セムトスル者亦同シ、会員ニハ会員章ヲ交
 - 第31巻 p.752 -ページ画像 
付ス
第六条 本会々員ハ通常・名誉・特別及賛助ノ四種トス
  通常会員ハ朝鮮人ヲ以テ之ヲ組織ス
  名誉会員・特別会員及賛助会員ハ、何国人タルヲ問ハス左ノ各号ニ該当スル者ヲ以テ之ヲ組織ス
 一、精神的ニ本会ヲ愛護スル者
 二、本会ニ功労アリタル者
 三、賛助金又ハ義捐金ヲ提供セル者
第七条 会員ノ権利及義務ハ左ノ如シ
 通常会員ハ、選挙権・被選挙権及会務ニ関シ発言又ハ決議権ヲ有ス名誉会員・特別会員及賛助会員ハ、会務ニ関シ意見ヲ述フルコトヲ得
 会員ハ会則ヲ遵守シ、且ツ会費負担ノ義務ヲ有ス
      第四章 役員組織
第八条 本会々務執行ノ為メ総本部及地方本部ニ左ノ役員ヲ置ク
   会長     一名
   副会長    若干名
   総務     若干名
   幹事     若干名
   書記     若干名
○中略
      第五章 名誉職機関
第十四条 本会ニ左ノ名誉職ヲ置ク
   顧問     若干名
   相談役    若干名
   嘱託     若干名
第十五条 何国人タルヲ問ハス第六条第二項各号ニ該当シ且ツ学識名望アル者ハ、本会ノ顧問・相談役又ハ嘱託ニ推薦スルコトヲ得
第十六条 顧問・相談役及嘱託ハ、役員会又ハ総会ノ詮衡ニ依リ総本部会長之ヲ推薦ス
第十七条 顧問及相談役ハ、会長ノ諮問ニ応シ又ハ会務ニ付キ意見ヲ述フルコトヲ得
 嘱託ハ会ノ特定事務ニ限リ其ノ意見ヲ徴スルコトヲ得
      第六章 議決機関
第十八条 本会ノ会議ハ大会・総会及役員会ノ三種トス
第十九条 大会ハ之ヲ定期大会及臨時大会トナス
 定期大会ハ毎年一月之ヲ総本部ニ於テ開催ス
 臨時大会ハ総本部会長又ハ総本部ノ役員会ニ於テ必要ト認ムル時、又ハ大会ノ参加資格者半数以上ノ請求アリタル場合ニ総本部会長之ヲ召集ス
第二十条 総会ハ定期総会及臨時総会トナス
 定期総会ハ毎年春秋二期各地方本部及各支部ニ於テ之ヲ開催ス
 臨時総会ハ本部会長及支部長又ハ役員会ニ於テ必要ト認ムル時、又ハ各本部ニ在リテハ会員百名以上、各支部ニ在リテハ会員三十名以
 - 第31巻 p.753 -ページ画像 
上ノ請求アリタル場合ニ限リ、本部会長及支部会長之ヲ召集ス
第二十一条 役員会ハ会長又ハ其他ノ役員ニ於テ必要ト認メタル場合随時之ヲ開催ス
第二十二条 大会ニ於テ決議スヘキ事項左ノ如シ
 一、会則変更ニ関スル事項
 二、本会一般ニ関スル事項
 三、総本部会長ニ於テ必要ト認メタル事項
 四、各総会ニ於テ決議シタル議案ノ執行ニ関スル事項
第二十三条 総会ニ於テ決議スヘキ事項左ノ如シ
 一、大会ニ附議スヘキ議案
 二、役員会ニ於テ審議シタル事項
 三、本部会長及支部長ノ必要ト認ムル事項
第二十四条 役員会ニ於テ審議又ハ決定スヘキ事項左ノ如シ
 一、大会又ハ総会ニ附議スヘキ議案及其会議開催ニ関スル事項
 二、予算及決算ニ関スル事項
 三、第四条各項ノ事業遂行ニ関スル事項
 四、各部細則ノ規定及改廃ニ関スル事項
 五、会長又ハ支部長ノ必要ト認ムル事項
第二十五条 大会ノ参議権ハ各会長・副会長・総務各部長ニ限リ之ヲ有ス
第二十六条 総会ノ参議権ハ、各地方本部ニ在リテハ其管内ノ会員、各支部ニ在リテハ其管内ノ会員ニ限リ之ヲ有ス
第二十七条 議案ノ決議ハ出席会員過半数ノ同意ヲ要ス
   ○第七章基金及会計・第八章賞罰規定略ス。
    四、役員氏名
              顧問
○中略
                  子爵 渋沢栄一
○下略


青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二一頁 昭和六年一二月刊(DK310113k-0002)
第31巻 p.753 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調  竜門社編
                竜門雑誌第五一九号別刷・第二一頁 昭和六年一二月刊
    大正年代
 年  月
一〇 一〇 ―相愛会顧問―昭和三・四、―財団法人〃〃―昭和六・一一。


相愛会の現状と其善後策 同会編 大正一五年一月刊(DK310113k-0003)
第31巻 p.753-755 ページ画像

相愛会の現状と其善後策 同会編  大正一五年一月刊
謹啓 陳者拙者等の組織に係る相愛会は、今般別記の事情に依り現事業所を他に移転新築せざるべからざる境遇に立到申候に付ては、之が善後策に付き賢明なる各位の御諒察と御後援とを得度、此段謹而御依頼申上候 敬具
  大正十五年一月
              東京市本所区太平町二丁目一番地
 - 第31巻 p.754 -ページ画像 
                 相愛会代表者
                  会長  李起東
                  副会長 朴春琴

    相愛会の現状と其善後策
本会は、設立以来其趣意書に示せる如く、人類相愛の精神に基き、共存同栄の本義に立脚して、日鮮融和の徹底的実現を図る為め、特に朝鮮人の保護救済及教化指導に努むることを以て目的とし、之が貫徹を期すべく、嘗て東京府下の南千住に事業所を設け、各種の救済事業・教化事業、及保健事業等を経営し来れるも、偶々東京大震火災の為め事業所の全部を焼失し、其後幸に朝鮮総督府に於て、陸軍省と交渉の結果、市内本所区太平町所在陸軍糧秣廠構内に、約二千坪の敷地を借受け、六百余坪の事業所を建築し、大正十三年一月本会総本部を此所に移転し、無料宿泊所・無料職業紹介所・簡易診療院・人事相談所・簡易食堂・内職工場及日用品廉売所等を設置し、以て今日に至れり、然る所右地所は今般復興局の所管となり、不日立退の已なき境遇に際会し、事業所を他に移転せざるべからざるも、当該建物は震災当時のバラツク式仮構に属し、今日に於ては既に腐朽頽落し、之を取毀せば建築材として役に立たず、燃料に利用するの外途なく、従て事業所建築に要する費用を調達するの必要を生じたり
而して本会附属学生寄宿舎相愛館は、東京府及大震災善後会より受けたる六万余円の補助金を基とし、約十一万円の経費に依て建築され、大正十三年十二月一日開館し、八十余名の学生を収容し来りしが、客臘二十八日午前六時頃に漏電の為め祝融の侵すところとなり、霎時にして全部烏有に帰し、焼出されたる八十余名の学生は、冬日の寒天に褌一枚の儘途方に暮れ、実に名状すべからざる惨境を呈せり、之か一時の応急策として本会の合宿所に収容救護中なり、然れとも本会の事業所は前記の通り早晩立退の運命に遭遇せるを以て、速かに之が移転改築の方法を講せざるべからざるに至れり
日に月に激増する朝鮮人労働者の為め、本会は毎日五百名以上に達する失業労働者の職業紹介に奔走し、且つ七百余の常住労働者を合宿所に収容し、之に関聯して如上の総ゆる機関を設け、随て此等の事務に鞅掌する数十名の従業員及五十余組の世帯持労働者を包擁し、恰もアパートメント・ハウスの如き観を呈せり、殊に冬季より春季に掛けては無慮数千の失業労働者蝟集し来る為め、無理に定員以上の人員を収容合宿せしむるの止むなき実状なるを以て、今日の場合彼等は仮令其起臥に於て甚しく狭隘の苦痛を感しつゝも、尚之に甘じて武陵桃源の如く安住し来れり、現に本会に寄寓する多数の労働者は、孰れも水草を逐ふて漂流来り、孤独の悲哀に嘆きつゝ糊口の途に汲々とする其の真情、実に見るに忍びざるものあり、若し是等の労働者にして現在の居所を取払はれたる暁には、生活の不安定より自暴自棄を起し、更に一転して思想の悪化を来さむか、或は不逞化の傾向を誘起して、動もすれば内鮮融和の前途を沮害するの憂なきを保し難き状勢なり、是故に不肖等日夜憂慮し、之か慰撫保護に心身を労する所以のものは、彼
 - 第31巻 p.755 -ページ画像 
等に生活の安定を与へ、而して思想の善化を図らむとする微衷に外ならざるものなり、東京及地方を併せて約十余万の会員を有せる本会は恒に総本部の挙措動静に細大の別なく、直ちに各地方本部に反響すること頗る多し、斯の如く十数万の労働者を背後に置き、会全体の中枢機関として活動する本会の総本部は、一刻たりとも其の事業の中絶を許すべからず、若夫れ総本部にして余議なく現業地を立退かれ、未だ改築移転の運びに至らず五里霧中に彷徨するあらむか、其の悲惨なる想像に余りあるべく、又憂慮すべき事象の起り得ることは決して推測するに難からざるべし
要するに本会は上述の如き立場に存するを以て、爾今労働者及苦学生の救護及教導の十全を図らむ為めには、五六百の人員を収容すべき約八百五拾坪の建物を必要とす、而して其建物は耐火及防火の設備として鉄筋コンクリート建を以て適当と認めるものなり、斯る建築物を要する所以のものは、目下の処労働者宿泊所及学生寄宿舎を各別に建築することは事情の許さざるものあり、此際合併集中するは指導監督上最も理想的なるべく、其実情に於ても逐年激増する労働者の失業救済や、それに関聯する医療及教育機関、又は特殊の労働者及従業員の世帯生活に伴ふ各種の施設等の為め欠くべからざるものなり、現に本会の所有する土地及立退料・内務省補助金等を総計すれば約十万余円に達すべし、之を基として事業所建築に要する資金の調達を得ば、本会は従前の通り事業の継続及発展を計り得べし、尚之が予算は大体次の如し
      新築費予算額
収入 一金弐拾九万七千五百七拾九円八拾六銭也
   内訳
一金弐万円見当             本会所有麹町区一番町三十四番地売却代金ノ内金四万円ヲ差引キタル残金
一金壱万五千円見当           本所区太平町所在本会総本部立退料金
一金弐万五千円也            本会所持ノ現金
一金五万円也              内務省社会局ヨリ補助金
一金拾八万七千五百七拾九円八拾六銭也  当局並其他篤志家ヨリ補助若クハ義捐ヲ受クベキ金額
支出 一金弐拾九万七千五百七拾九円八拾六銭也
   内訳
一金四万二千五百円也          敷地六百坪買収並ニ費用
一金弐拾壱万弐千〇七十九円八十六銭也  鉄筋コンクリート建築費八百五拾壱坪九合七勺坪当リ弐百四拾八円九拾三銭也
一金弐万八千円也            附帯工事費
一金壱万五千円也            諸雑費
   以上


渋沢栄一 日記 大正一五年(DK310113k-0004)
第31巻 p.755 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正一五年      (渋沢子爵家所蔵)
四月二日 晴 軽暖
○上略 肥田景之・鮮人李起東氏来リ、鮮人救獲《(護)》ノ事ヲ談ス ○下略


(肥田景之) 書翰 渋沢栄一宛 (大正一五年)四月五日(DK310113k-0005)
第31巻 p.755-756 ページ画像

(肥田景之) 書翰  渋沢栄一宛 (大正一五年)四月五日
                    (渋沢子爵家所蔵)
 - 第31巻 p.756 -ページ画像 
粛啓、先日ハ参上御麗敷尊顔を拝し、而已ならす久々振種々御同情之御言葉を頂戴、別而難有、李起東氏ニも大ニ恐悦仕候、相愛会におひても具陳通之事情に而、野生儀も不肖微力をも顧みす、関係罷在次第御座候間、何卒乍此上諸事可然御援助之程切ニ奉希候、先者不取敢御礼旁奉願如斯御座候 草々敬白
  四月五日                 景之拝
    渋沢子爵閣下
            侍史
二白、時下不順之候、為国家精々御愛護御貢献之程奉願上候


集会日時通知表 大正一五年(DK310113k-0006)
第31巻 p.756 ページ画像

集会日時通知表  大正一五年       (渋沢子爵家所蔵)
四月五日(月) 午前十一時 李起東氏来約(事務所)


相愛会総本部寄附金勧誘状(DK310113k-0007)
第31巻 p.756 ページ画像

相愛会総本部寄附金勧誘状         (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
謹啓、時下秋冷の砌に候処、愈々御勇健奉慶賀候
扨て本会に於ては各顧問・相談役諸賢の御同情を得て、日と共に大に発展を見るに至り、将来其の事業をして時代に順応し、遺憾無からしめんか為めには、益々其の責任の重大なるを覚悟し、従つて其の施設経営に一般の努力を要する事に有之候
当総本部にては今回別紙 ○欠ク趣旨書の如き理由の下に内務省社会局より下賜せられたる五万円と本会所持の麹町区所在地家屋を処分し之れを基礎とし会館新築の計画準備中に有之、経費予算は約参拾万円に達し拾九万円に近き不足額を生じ、該資金の調達に関しては是非共当局の援助と一般篤志家の寄附を仰がざるべからず、既に其筋の許可を得近日着手の見込に御座候、右は予て親しく御相談申上ぐるが順序と存じつゝ、遂に其の意を得ず今日に及び候次第、悪しからず御諒承賜はり度、尚該事業は財界不況の際、中々容易の事にあらず、頗る懸念せられ候も、本会曾て寄附金募集により一般の援助を乞ひし事等無之、今回初めて多数篤志家の御援助を求め事業完成致度決心に御座候へば何卒充分の御声援相願度、玆に状況報告旁々只管御依頼申上候 敬具
 大正十五年十月 日      東京市本所区太平町二丁目
                      相愛会総本部
                       電話墨田三八二三番
          殿


集会日時通知表 大正一五年(DK310113k-0008)
第31巻 p.756 ページ画像

集会日時通知表  大正一五年       (渋沢子爵家所蔵)
十月廿日(水)   午前八時 李起東氏来約(飛鳥山)
   ○中略。
十一月廿一日(日) 午時   李起東氏来約(飛鳥山)


(李起東・朴春琴) 書翰 昭和二年七月一七日(DK310113k-0009)
第31巻 p.756-757 ページ画像

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竜門雑誌 第四六七号・第一一七―一一八頁 昭和二年八月 青淵先生動静大要(DK310113k-0010)
第31巻 p.757 ページ画像

竜門雑誌  第四六七号・第一一七―一一八頁 昭和二年八月
    青淵先生動静大要
      七月中
○中略
廿五日 相愛会に出向。日鮮会館に出向。
   ○中略。
廿九日 内鮮懇話会相談会(東京銀行倶楽部)
○下略


(李起東・朴春琴) 書翰 渋沢栄一宛 (昭和二年)七月三〇日(DK310113k-0011)
第31巻 p.757 ページ画像

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相愛会本部新築費寄附金勧誘状案(DK310113k-0012)
第31巻 p.757-758 ページ画像

相愛会本部新築費寄附金勧誘状案   (渋沢子爵家所蔵)
    案
拝啓、盛暑ノ砌益々御清康ノ段奉賀候
陳者相愛会ノ事業並従来同会カ内鮮融和ノ上ニ致セル功績ニ付テハ、曩ニ御会合ノ席上ニ於テ会長李起東氏ヨリモ縷々開陳ノ次第モ有之、大体御諒承相願候事ト存候処、同会ニ於テ事業遂行ノ為、今回其ノ組織ヲ財団法人ニ更ムルト共ニ総本部ノ新築ヲ計劃シ、総経費予算額弐拾九万余円ヲ要シ候処、其ノ内九万五千円ヲ内鮮懇話会ヨリノ寄附ニ
 - 第31巻 p.758 -ページ画像 
仰キ度旨申入有之、四万五千円ハ既ニ三井・三菱・安田・鮮銀及東拓等ニテ寄附承諾済ニシテ、残五万円ノ醵集ヲ要スル次第ニ御座候、就テハ甚タ僭越ニハ御座候得共、右金額試ニ別紙ノ通リ割当申候ニ付、時節柄御迷惑ノ儀トハ存候得共、何卒同会事業御翼賛ノ趣旨ニ依リ、枉ケテ右寄附ノ義御承引被成下度、此段御依頼得貴意候 敬具
 追テ右ハ御都合ニ依リ本年度ヨリ最長五年賦ノ分払ニテモ結構ニ有之尚   及  ニ於テハ右割当額御快諾被下候ニ付御含迄申添候
  昭和二年 月 日
                    子爵 渋沢栄一
                       鈴木島吉
                       渡辺勝三郎
   相愛会総本部新築費寄附金額
 金壱万円也      三井合名会社
 同          三菱合資会社
 同          安田保善社
 金五千円也      無名氏
 同          朝鮮銀行
 同          東洋拓殖株式会社
 計金四万五千円也  以上寄附承諾済
   割当額       貴名(順序不同)
 金五千円也      第一銀行
 同          南満洲鉄道株式会社
 同          大日本麦酒株式会社
 同          京城電気株式会社
 同          大倉組
 同          朝鮮鉄道株式会社
 金弐千円也      日本銀行
 同          横浜正金銀行
 同          日本郵船株式会社
 同          日本勧業銀行
 同          日本興業銀行
 同          大川事務所
 同          王子製紙株式会社
 同          古河合名会社
 同          東京商業会議所
 同          渋沢栄一
 計金五万円也


財団法人相愛会寄附行為変更通知状 渋沢栄一宛 昭和四年五月二一日(DK310113k-0013)
第31巻 p.758-759 ページ画像

財団法人相愛会寄附行為変更通知状  渋沢栄一宛 昭和四年五月二一日
                     (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 陽春ノ候益々御清福奉賀候
陳者予而申請中ノ当会寄附行為中変更ノ件、今般左記ノ通リ認可指令有之候間、此段報告申上候
    寄附行為変更ノ件
 - 第31巻 p.759 -ページ画像 
一、財団法人相愛会総本部ヲ相愛会館ト改称トス
一、事務所々在地ヲ東京市本所区柳島町十九番地トス
  右認可年月日  昭和四年五月十三日
    渋沢栄一殿
   ○右ハ葉書、スタンプ日付ハ四・五・二一。



〔参考〕事業施設の概要 相愛会総本部編 第一―二頁 大正一五年一月刊(DK310113k-0014)
第31巻 p.759 ページ画像

事業施設の概要 相愛会総本部編  第一―二頁 大正一五年一月刊
 ○第一、沿革の大要
    一、設立の動機及経過
 今を距る十余年前の事であつた。当時水草を逐うて漂流する朝鮮人の中、無縁に苦しみ孤独に嘆き、糊口に由なく、夜露に晒さるゝ者等を見るに忍びざる惨状であつた。是等の鮮人労働者は生活の不安定より思想の悪化を来し、更に一転して自暴自棄の結果、民族的感憤を惹起して不逞の行動に出で、之が為め動もすれば日鮮融和の前途を阻害する憂なきを保し難い状勢なるを鑑み、爰に深く感ずるところあつて彼の憐なる同胞を救ひ、且つ生活の安定を保障し、以て日鮮両民族の融和親善に寄与すべく苦心惨憺の余り、若干の私財を捻出して、一の救済機関をば設けたのが、今日の所謂相愛会であるが、最初は相救会と称して若干の救済事業を経営した。而して此の相愛会が社会事業団体として正式に組織されたのは、大正十年十二月二十三日であつた。東京府下南千住に矮小なる事業所を設け、会の目的を達成すべく、其の急先の事業として失業者に職業を紹介して衣食の途を与へ、或は無料宿泊所を設けて安息の途を与へ、或は衛生の機関を置いて保健の途を与ふるが如き、縦へ微弱なりとは言へ、漸く彼等に労働及生活の途を保障するの域に達することを得たのである。会の総本部を東京に置き、大阪・名古屋・甲府・静岡・京都等の地方には各本部を設けて、今や会員の総数約十万余を数ふるに至つたのである。
○下略