デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会
■綱文

第35巻 p.62-64(DK350009k) ページ画像

昭和2年12月22日(1927年)

是日、当委員会主催、アメリカ合衆国人ジョン・ダブリュー・ウッド招待茶会、丸ノ内東京銀行倶楽部ニ開カル。栄一病気ニヨリ出席スルヲ得ズ、阪谷芳郎代リテ司会ス。


■資料

日米関係委員会往復書類 (二)(DK350009k-0001)
第35巻 p.62 ページ画像

日米関係委員会往復書類 (二)      (渋沢子爵家所蔵)
拝啓、益御清適賀上候、然ハ目下来邦中ノ米国聖公会外国伝導主任ニシテ本邦ノ教育及社会事業ニ尽瘁セラレツヽアルジヨン・ダブルユーウツド博士ヲ招待シ、来廿二日(木)午後二時丸ノ内東京銀行倶楽部ニ於テ茶話会相催候間御差繰御来会相願度、此段御案内申上候 敬具
  昭和二年十二月十四日    日米関係委員会
                 常務委員 渋沢栄一
                 同    藤山雷太
    会員各位
  乍御手数御諾否折返シ御回示願上候


日米関係委員会集会記事摘要(DK350009k-0002)
第35巻 p.62-64 ページ画像

日米関係委員会集会記事摘要        (渋沢子爵家所蔵)
 昭和二年十二月二十二日午後二時、於東京銀行倶楽部、ウツド博士の為に御茶の会開催
 出席者
 来賓 ジヨン・ダブルユー・ウツド博士。エル・シー・サンフオド監督。ジヨン・マキム監督。チヤールス・ライフスナイダー監督。アール・ビー・トイスラー博士。元田作之進監督。阪井徳太郎氏。福井菊三郎氏。関屋貞三郎(宮内次官)氏。杉浦貞二郎氏。
 委員 添田寿一氏。頭本元貞氏。藤山雷太氏。浅野総一郎氏。阪谷男爵。
 - 第35巻 p.63 -ページ画像 
 幹事 服部文四郎氏。増田明六氏。小畑久五郎
    記事概要
阪谷男爵 渋沢子爵が微恙の為め出席叶はざる為め、私に代つて御挨拶を申上くる様にとの電話かありましたが、鋼鉄問題で大蔵省に会議を開いて居りました為めに遅刻致しまして失礼致しました。子爵は今日俄に出席を思ひ留るに至りしことを遺憾とする旨私より皆様特に来賓諸君に申上くる様との言伝でありましたから一言此事を申述べます。唯今元田君よりウツド博士及サンフオド監督に関し一言御挨拶があります。
元田氏 聖公会の由来、ウツド博士が委員長となられ居るナシヨナルカウンシルリ教務委員会の性質、ウツド博士が日本に於ける聖公会の宗教、教育及社会事業方面に深き関係を有せらるゝ事、大震火災後には救済事業の為め五十万円、復興事業の為八十万円の金額を募集して日本の聖公会へ送附せし事。移民法改正の為め直接間接に尽力せられ居る事を述べられ。又サンフオド監督に就ては、加州サンウオーキン地方に根拠を据ゑて、排日の盛なる加州にあつて在加州十万の同胞の為に同情を表せらるゝ事を述べて右両氏を紹介せらる
阪谷男爵 此処に集まりたる我委員会員は何れも多忙の人々にて、特に年末に際して多忙を極めらるゝもウツド博士を迎へて日米親善の実を挙げんか為め出席したる次第であるが故に、ウツド博士に於ても腹蔵なく御談話あらんことを願ふ
ウツド博士 阪谷男爵閣下並に日米関係委員諸君、其他の諸君、私は渋沢子爵が御病気の為め御出席なきを非常に遺憾に存じます。日米親善、世界の平和等の為めに専心一意御尽力下さる其御熱精及高潔なる御動機に関しては、殆んど類を見ないと申しても過言で無いと存じます。私は子爵が一日も早く御健康を御恢復あらせらるゝ様切に祈る次第であります。私は大震災後四年目にて再び東京に参りましたが、其復興の進歩の著しきを見て驚愕に堪へない次第であります。日本人の勤勉・勇気及活動に就ては全世界が宜敷教訓を受くべきであると考へます。世界平和に関する日米両国の責任は重且つ大と思ひます、其れにつけても日米両国は親善を全ふすべきと思ひます。明治神宮に参拝致しまして、日本の過去の働、又将来の発展等を想像し我事の如く快感を催ふした次第であります。
サンフオド監督 ウツド博士が私の申述べんとする所を十分述べられましたので私には別に申述べる事は御座いません、渋沢子爵の御健康が速に恢復せられんことを皆様と共に切に希望致します、私の住居地には二千人以上の日本人が住んで居られます。日本の学童は清潔で温良であります。欧洲大戦の際赤十字社が募金を致しました際フレスノの日本人に負ふ所が多大でありました。一九〇六年に於ける桑港大地震の際同市に居りましたから、其場合に於ける日本人の活動又は日本よりの義捐金なとを知つて居ります。私は何処までも日米親善を濃厚に導くべきであると信じます。
阪谷男爵 何れ小畑幹事より渋沢子爵に対して今日の模様を報告せらるゝことゝ存じます。之れより粗末な御茶を差上け度いと思ひます
 - 第35巻 p.64 -ページ画像 
ので別室に御越を願ひます。
  ○ウツドニ就イテハ本資料第三十六巻所収「聖路加国際病院」参照。