デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会 其他関係諸資料
■綱文

第35巻 p.256-257(DK350050k) ページ画像

昭和3年8月8日(1928年)

是日栄一、帰国中ナルアメリカ合衆国特命全権大使チャールズ・マックヴェニ一書ヲ寄セ、マックヴェガ過日サン・フランシスコニ於テ同国千九百二十四年移民法ヲ改正シ日本国民ニモ亦比率ヲ適用スベシトノ意見ヲ発表セルニ対シ謝意ヲ表ス。


■資料

渋沢栄一書翰 控 チヤールズ・マクヴエー宛昭和三年八月八日(DK350050k-0001)
第35巻 p.256-257 ページ画像

渋沢栄一書翰 控  チヤールズ・マクヴエー宛昭和三年八月八日
                    (渋沢子爵家所蔵)
                  (栄一鉛筆)
                  八月六日一覧明六
      案
 ワシントン市
 外務省
  チヤールス・マクヴエー大使閣下
                   東京
                     渋沢栄一
拝啓、御帰省後益御清適御座可被遊奉遥賀候、然ば老生の病気に付ては種々御高配を賜り候処遅々として全快に不至、為に御出発前拝光の機を失し残懐の至に御座候、乍去爾来順快頃者漸く外出も出来且徐々執務も致し得るまでに相成候間御省念被下度候
桑港に於て御発表の御意見は同市よりの通信としてジヤパン・アドヴアタイザーに掲載せられ候に付翻訳により一読致候処、移民法《(日本移民に対しても亦入国比率)》を採用すべしとの御主張を拝承仕、老生は衷心より欣喜罷在候、蓋し閣下の御声明は千鈞の重きをなし必ずや貴国民に至大の刺撃を与ふべしと信ずるが故に御座候
最近金子子爵よりの伝言に依れば、閣下と同子爵との御談話中移民問題は渋沢の存在中是非満足なる解決を見ざるべからずと同子爵に於て主張せられ候由に候処、老生は内外親友との会談中日米国交之事に論及致候際には、常に移民問題の改正を見ぬ内は死んでも死切れぬと申居、貴国の友人諸氏に対しても会談の機ある毎に繰返し居候義に付、金子子爵は老生の衷情を御伝へ被下候事と存候
米国を熟知する日本の有力者諸氏の本問題に対する態度は閣下の最も
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能く御承知の事と奉存候、従つて同問題が如何に強く日本人に不満を抱かしめ居るかをも御諒解の義と拝察仕候
閣下のステートメントに対して強烈なる反動あるは想像に不難所に候処、果然加州に於けるマクラツチー氏一派の活動と相成、排日移民法は再び貴国民の注意を喚起致候、此際貴国に於ける輿論の指導宜敷を得ば、効果の大なるべきもの可有之と確信罷在候、就ては賢明なる閣下の御尽瘁に待つ所益々多大なるべきに付、此上共御高配の程切に奉願上候
擱筆に臨み閣下を始め御家族御一同の御健康を祈上候 敬具
 追白 先般粗末なる果物一籠拝呈仕候処、令夫人より御懇篤なる御挨拶に接し恐縮仕候、よろしく御鳳声願上候
  昭和三年八月八日
  ○右英文書翰ハ同日付ニテ発送セラレタリ。