デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
1款 喜賓会
■綱文

第36巻 p.5-10(DK360001k) ページ画像

大正3年3月11日(1914年)

是日、喜賓会解散式帝国ホテルニ挙行セラル。栄一出席シテ挨拶ヲ述ブ。


■資料

竜門雑誌 第三一〇号・第八三―八四頁 大正三年三月 ○喜賓会解散始末(DK360001k-0001)
第36巻 p.5-6 ページ画像

竜門雑誌 第三一〇号・第八三―八四頁 大正三年三月
○喜賓会解散始末 喜賓会は大正二年十二月役員会を開き、本邦に来遊する外賓接待機関として「ジヤパン・ツーリスト、ビユーロウ」の設立せられたる今日に於て、尚ほ同会存続の必要ありや否やに付協議せしに、全会一致を以て解散を可決せしに由り、会長は伊藤欽亮・小川䤡吉・鏑木誠・田中常徳・弘岡幸作の五氏を同会整理委員に指名し資産及其他に関する処分を委嘱せられしが、爾後右委員に於て整理処分を了し、本月十一日午後六時帝国ホテルに於て解散式を挙行せり、其席上に於ける会長青淵先生《(副会長)》の挨拶は左の如し
 諸君、発会式又は創立会なれば此頃ろ所々に起りますが、解散式を挙行するといふことは其例少なく聊か珍らしき感が致します、今夕は東京市長を始め有力なる諸君が、御多用にも係はらず特に御繰合の上御出席下さいましたことを深く感謝致します次第で、玆に簡単に本会が今日に至りました概況を御話し申上ます
 本会は明治二十五年十月発起員相談会を開き、二十六年三月発会を挙げました、尤も其両三年前から東京商業会議所などに於て来遊外賓歓待の必要を唱へて居ましたが、専ら之が接待機関として設備するに至りましたのは二十六年以後でございます
 会名は我有嘉賓中心喜之といへる詩句より採り来つたものでございます、即ち観光外客を歓待することを始終一貫努力したのみでございます、過去二十二年間に於ては申迄もなく海外より幾多知人《(名)》の人が来遊せられました、本会に於ては此等顕著なる人に対し、時には歓迎会を催ふしたり、又は相当の敬意を払ひまして款待の意を表しました、併し本会が主として紹介の労を執りましたのは、本邦人間に知友少なき普通観光者に対する場合が多くありましたので、斯る我事情に不案内なる人々を好遇致してまして、其旅行上及視察上出来得丈助力を与へましたのでございます
 本会創立当時に於きましては、外人旅行携帯に適する案内地図類は極めて欠乏して居ましたから、本会は先づ英文日本案内地図を刊行して此欠を補ひました、続いて各種の案内書冊類を多数発行致しまして内地旅行視察の便益を供し、又一面に於ては之を海外へ汎く頒
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ちまして本邦来遊の手引と致しました
 本会は此出版物に依て大なる成功を収め得たと自負することは素より出来ますまいが、本会は資力に相当する範囲内に於まして極力尽瘁致しましたことは事実でございます
 随て過去に於ける海外よりの観光客中直接本会の紹介に依り、若くは出版物等により便益を享け遠来の目的を遂げ、中心我邦に対する良感を抱いて帰国したる人々も随分沢山ありしことゝ確信致します然らば何故解散するかと申しますれば、今や我邦に於きましては運輸交通業者等に依て本会と目的を同ふする機関が出来ましたから、此際本会の解散は丁度時機を得たことゝ考へます、玆に庭園栽培者ありと仮定致しませう、園内に一古木あるため他の新芽の生長を害する場合がありますれば、此古木を截り捨てゝ、より良き新芽を充分に発育せしむる手段を執るの必要なることは、謂ふ迄もございませぬ、而してそれが単に眇たる新芽に非ずして、既に已に大に頭角を伸ばし生長せんとするものなれば、尚更之が発育に障害の嫌ある古木を除去することは当然の処置でございませう
 此意味に於て本会は玆に解散式を挙げまして、将来大に新機関が発展致しますことを邦家の為めに切に希望する次第でございます、終に臨み満場諸君の御健康を祝します
当夜の出席者は左の如し
       会長 青淵先生
       池田謙三  岩谷松平  服部金太郎
       浜岡光哲  林愛作   原田貞之介
       荻原昌暉  堀谷左治郎 徳田孝平
       小池国三  小野金六  小野英二郎
       渡辺源吉  鏑木誠   吉田丹次兵衛
       高崎親章  高楠順次郎 田中経一郎
       田中常徳  滝沢吉三郎 添田寿一
       根津嘉一郎 野村洋三  日下義雄
       青木鉄太郎 阪谷男爵  木下淑夫
       宮川久次郎 富藤左衛門 南貞助
       執行弘道  弘岡幸作


喜賓会解散報告書 同会本部編 第一―二六頁 大正三年三月刊(DK360001k-0002)
第36巻 p.6-10 ページ画像

喜賓会解散報告書 同会本部編 第一―二六頁 大正三年三月刊
    喜賓会解散之始末
我邦に於ける運輸交通機関たる鉄道、汽船会社及ホテル営業者等の協同に因つて組織せられたる「ジヤパン・ツーリスト・ビユーロー」は其の目的極東来遊の旅客を款待して旅行及観覧の便宜を謀るに在り、斯る有力なる営利業者に依て外賓接待機関の設備せられたる今日、会の内外より此上にも金品・労力の犠牲を乞うて本会を存続する必要有無に関し大正二年十二月役員会を開き協議せしに、全会一致此際解散することに可決せるを以て、蜂須賀会長、渋沢副会長は合議の上、左記の五氏を整理委員に指名し資産其他の処分を委嘱せられたり
  伊藤欽亮君 小川䤡吉君 鏑木誠君 田中常徳君 弘岡幸作君
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爾後整理委員は数回の審議を重ね左の処分案を可決し、之を実行せり
一本会創立以来の事蹟、収支計算及解散理由を記載し、本会々員に報告すること
一寄附者其他創立以来本会の為めに尽力せられたる人々に対し感謝状を送呈すること
一海外に於ける関係者に解散通知書を発すること
一本会発行案内書及地図類の現存せる部数を無償にて需要ある相当の向に配付すること
一地図原銅版は東京基督教青年会に寄附すること
一本会備付の参考書籍類及其他の什器雑品は東京商業会議所に寄附すること
一左記の会長及役員其他従来特に本会の為めに尽力せられたる各位に対し紀念品を贈呈すること
  侯爵蜂須賀茂韶君・男爵渋沢栄一君・伯爵大隈重信君・大倉喜八郎君・益田孝君・伯爵広沢金次郎君・益田英作君・伊藤欽亮君・小川䤡吉君、土方久徴君・串田万蔵君・執行弘道君・益田太郎君男爵目賀田種太郎君・大森鍾一君・牛場卓蔵君・野呂邦之助君・服部一三君・小野友次郎君・青木鉄太郎君・宮川久次郎君・谷井保君、藤井治三郎君・斎藤重高君・佐藤友太郎君・西村仁兵衛君木下淑夫君・中野武営君・弘岡幸作君・牧野成一君・原田貞之介君・鏑木誠君・田中常徳君
 以上紀念品贈呈、此の予算額合計金弐千七百拾円也
  執務員 本部幹事 押田幸次郎 同書記 宮内昌雄君 関西支部書記 吉田誠介君
 以上慰労手当金贈与、此の金額合計金壱千五百四拾円也
一寄附者及会員を招待し解散披露会を挙行すること
  但当日出席なき向へは相当の挨拶を為すこと
    喜賓会事業之梗概
○中略
    旅館に関すること
全国中外客の宿泊に適せる洋風ホテルの設備なき地方に於ける枢要の旅館に対し時々注意書を発し給仕の心得、寝具、食事、洗面所及便所の設備等外客接待に関し改良を要する事項を掲げ指導する所ありたり
    案内業者に関すること
横浜・神戸・長崎・東京及京都に於て通弁案内業を営める開誘社員、東洋通弁協会員及其他より本会の監督を希望する者百名以上ありたるを以て、本会は本人の出頭を求め学力其他に就き相当の調査をなし、最も適当なる資格を具備すると認めたる者に監督証及徽章を交附せり明治四十年七月内務省令第二十一号を以て案内業者取締規則の発布ありしが、其条項中には嘗て本会より其筋へ建議したる事項の多きを見たり
    観覧視察上の便を謀ること
来遊者は勝地風景観光の外、我邦に於ける学事商工業の実際を視察せんとする者多ければ、本会は東京及全国各地に亘りて是等の紹介を為
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すことに努めたり、左記の公私建物、学校、庭園、会社、製造工場等の監理者若くは所有者は大に本会の主旨を賛助せられ、紹介せる外客に対し常に厚意を以て之れが観覧の便を与へられたり、本会は多年間に於ける是等各位の芳情に対し感謝措く能はざる所なり
  後楽園        大隈伯庭園     渋沢男庭園
  大倉氏博物館     益田氏応挙館    鹿島氏庭園
  帝国議会       貴族院       衆議院
  東京帝国大学     学習院       同女学部
  東京高等師範学校   女子高等師範学校  東京高等商業学校
  東京高等工業学校   第一高等学校    東京美術学校
  人類学参考品場    医科大学附属医院  日本赤十字社病院
  警視庁撃剣会場    警察署撃剣会    日本体育会
  大審院        東京控訴院     東京地方裁判所
  印刷局        同王子抄紙部    西ケ原農事試験場
  中央気象台      東京天文台     東京株式取引所
  東京米穀取引所    大日本麦酒株式会社 同吾妻橋工場庭園
  芝浦製作所      東京煙草製造所   山路壁紙製造所
  石川島造船所     淀橋浄水場     王子製紙株式会社
  東北薬科大学     盛岡高等農林学校  第二高等学校
  仙台医学専門学校   原富岡製糸所    八王子製糸所
  横浜船渠株式会社   横浜商業学校    富士製紙株式会社
  原名古屋製糸所    三重製糸所     三重紡績株式会社
  桑名紡績株式会社   第四高等学校    金沢医学専門学校
  京都帝国大学     第三高等学校    京都高等工芸学校
  京都市立陶磁器試験場 京都第一高等女学校 造幣局
  大阪城        生野礦山      第六高等学校
  岡山医学専門学校   広島高等師範学校  浅野侯泉邸
  別子銅山       田川炭坑      製鉄所
  福岡医科大学     三池炭坑      三菱造船所
    外賓の款待に関すること
本会が過去廿二年間に於て海外諸国より来遊せる各階級の人士を款待せしことは一々列記し難きも、玆に顕著なる人士の芳名を挙げ以て其一斑を示すべし
  嘉永六年来朝せる「ペルリ」水師提督随行員たりし米国ベアヅリー海軍少将及夫人
  北清事変外国聯合軍指揮官独国元帥フオン・ヴアルデルゼー伯
  前非律賓島総督米国アーサー・マツクアーサー陸軍少将
  伊国人日進・春日両軍艦廻航委員一行
  米国陸軍卿ウヰリアム・エツチ・タフト氏及大統領ルーズヴエルト嬢及一行八十五名
  英国支那艦隊司令長官サー・ゼラード・ノーエル海軍大将及其幕僚
  英国コンノート親王殿下並に随員リーヅデール卿
  シーモア海軍元帥、ケンニー陸軍大将
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  伊国ウジネ親王殿下
  暹邏国ナコンチヤイン親王殿下
  英国支那艦隊司令長官ムーア海軍中将及其幕僚
  米国イー・エツチ・ハリマン氏
  米国ウヰリアム・ジエー・ブライアン氏
  独国々会議員フホン・ヘーレンドルマルケビン氏
  遣英大使伏見宮殿下御乗艦モンマウス号船長ジヨン・エー・ヂユーク氏及其幕僚
  加奈陀農商務大臣レミユー氏
  露国前大蔵大臣シポフ氏
  独国ドクトル・アール・コツポ博士
  仏国ベアルーン伯爵夫人及其一行(快遊船ニルヴアナ号にて来朝せり)
  米国大西洋艦隊司令長官スペリー少将外エモリー、シユロダー及ウヰンライトの四司令官
  米国太平洋沿岸地方の商業会議所代表者実業家一行
  瑞西国探険家ドクトル・ヘギン博士
  日本大博覧会事務官ルーミス氏、スキフ氏及ミレツト氏
  清国皇族載洵貝勒殿下及其一行
  布哇振興会幹事エツチ・ピー・ウツド氏
  印度バラダ国王及同妃殿下御一行
前記来賓中には特に招待会を開催して款待し、或は他の協会と共同して歓迎せしことあり、何れの場合に於ても本会は発行の案内書及案内地図を贈呈し、其多くは名誉会員に推薦せしが、何れも之を快諾して鄭重なる感謝状を送られ、又太平洋沿岸商業会議所代表者の如きは各自署名をなしたる紀念巻物を贈り来れり
○中略
    喜賓会会長及役員
 会長  侯爵   蜂須賀茂韶君
 副会長 男爵   渋沢栄一君
 幹事長 海軍少将 鏑木誠君
 委員       伊藤欽亮君
 同        田中常徳君
 同        益田太郎君
 同        執行弘道君
 同   伯爵   広沢金次郎君
 同        土方久徴君
 幹事       押田幸次郎君
 評議員      早川千吉郎君 ○他十七名氏名略
    喜賓会会員(イロハ順)
      名誉会員之部
 侯爵   井上馨君                     井上保次郎君
      岩下清周君             伯爵     板垣退助君
    ア・イスウオルスキー君                ジエー・ロードン君
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 男爵   ローゼン君             陸軍少将   サー・ヘンリー・ロウリンソン君
      ニコラス・ロングワース夫人     男爵     波多野敬直君
      服部一三君                    原敬君
      ジヨージ・バクメーテツフ君     海軍少将   ガイルス・ビー・ハーバー君
 海軍少将 ヰー・ビー・バーレー君              エム・シー・ジー・ベレイラ君
      ロード・リーヅデール君              ピー・リツター君
      エム・ド・オーリマ君               ルイ・ド・ラ・バレライ・リエラ君
      ピヤ・ラジヤ・ヌブラバンド君           フランシス・ビー・ルーミス君
      尾崎行雄君             子爵     大浦兼武君
 伯爵   大隈重信君                    大森鐘一君
      トーマス・オブライエン君      伯爵     アルコー・ワルレー君
      ガスタフ・オスカル・ワレンベルグ君        ジヨーヴアニ・ガリナ君
 伯爵   田中光顕君                    ウヰリアム・エツチ・タフト君
 男爵   アルベルト・タヌタン君              高崎親章君
      シー・エー・レラ君                エル・イー・ライト君
 海軍中将 サー・ヘドウオースラムトン君    陸軍中佐   ダヴリユー・ラトン君
      ビヤ・ナリスラ・ラギツチ君     海軍中将   サー・エー・ダブリユー・ムーア君
      ドン・ラミロ・シルデウリバリ君          エツチ・ピー・ウツド君
 海軍少将 リチヤード・ウエインライト君    海軍大将   サー・ゼラード・ノーエル君
 男爵   久保田譲君                    グイチヨー君
      エル・シー・グリスカム君      公爵     山県有朋君
      町田忠治君                    エヌ・マレウヰツチマレウスキー君
      松岡康毅君             侯爵     松方正義君
      サー・シー・エム・マクドナルド君  男爵     牧野伸顕君
 陸軍大将 サー・テー・ケリーケンニー君    男爵     藤田平太郎君
 陸軍少佐 ロード・ブルーク君                ウヰリアム・ジエーブライアン君
 海軍少将 ウヰリアム・エツチエモリー君           ジユールアルマンド君
      ア・ダンブロ・ド・アダモツ君           荒川義太郎君
 侯爵   西園寺公望君            男爵     阪谷芳郎君
      ビー・ジー・サガスチユーム君    陸軍元帥子爵 カートウム・キチナー君
 男爵   菊池大麓君             子爵     清浦奎吾君
      ジー・メレガリ君                 フランシス・デー・ミレツト君
 海軍少将 シートン・シユロルダー君      男爵     エム・フホン・シユワルゼンスンタン君
 子爵   平田東助君             伯爵     土方久元君
 伯爵   ジー・シー・ビインシ君       男爵     千家尊福君
 海軍元帥 サー・イー・セイモア君              オーガスト・ゼラール君
 陸軍大尉 フヰツヅ・ゼラール君        海軍少将   ウリエル・セブリー君
 海軍少将 シー・エス・スペリー君              菅沼達郎君
 男爵   周布公平君                    フレデリツク・ジエー・ヴヰ・スキツフ君
      終身会員之部
     伊藤欽亮君         ○中略
 男爵 渋沢栄一君 ○他六十名氏名略
      会員之部
    飯田巽君  ○他百四十九名氏名略