デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第36巻 p.396-398(DK360157k) ページ画像

大正9年7月21日(1920年)

是日、当協会第四回理事会、華族会館ニ開カレ、栄一出席ス。


■資料

国際聯盟 第一巻第一号・国際聯盟協会々報第二〇―二四頁大正九年一一月 国際聯盟協会成立後の経過(六)第四回理事会(DK360157k-0001)
第36巻 p.396-398 ページ画像

国際聯盟 第一巻第一号・国際聯盟協会々報第二〇―二四頁大正九年一一月
 ○国際聯盟協会成立後の経過
    (六)第四回理事会
 時日 七月二十一日 場所 華族会館
 出席者 徳川総裁 渋沢会長 阪谷・添田両副会長 井上・吉井・田川・林・岡・宮岡・山川・松田・穂積・姉崎各理事 伊達・杉村・沢田各幹事
     来賓 石井大使
      添田副会長の開会辞
 添田副会長より『本理事会は徳川公爵本協会総裁就任御承諾ありたる処、総裁に於て役員一同と会合懇談したしとの御希望あり、一方渋沢会長に於ては、本会将来の計画に関し総裁に御協議申上度旨の御希望あり、且つ偶々石井大使には今回駐仏大使に任命せられ不日御出発の筈にて、御着任後は種々本会の為め御尽力を乞はざるべからざる次第につき、本会の実情御承知に入れ、併せて将来の御援助を御願致したいと存じ、御臨席を乞ひ、以て本日の理事会を開くに至りし』旨述べらる。
      事務報告
 沢田幹事より(一)聯合会総会に出席すべき本邦代表者選定方は、松井駐仏大使に、一任する趣旨を以て、既に同大使宛発電せること。(二)本協会会員勧誘法に関し、一方には個人別に勧誘状発送の方法を採り、既に大約二千名の人名簿を作成し置きたると共に、一方に於ては将来、講演会等開催の機会を利用し、広く会員を募集する方針にて準備し居ること。(三)首相官邸招待会の件は、会長より首相に懇談の結果、首相に於て承諾ありたること。(四)英国国際聯盟協会より、本協会成立を喜ぶ旨の来翰ありたることを報告す。
      徳川総裁就任披露
 渋沢会長より『第一回理事会決議の趣旨を体し、徳川公爵に総裁就任方懇請したる処、公爵も事の重要なるに鑑み即答を与へられず、其後公爵の御希望により、本協会成立に至る事情の明細書を送附し、是
 - 第36巻 p.397 -ページ画像 
非御承諾方嘆願し置きたる処、重て御考慮の末遂に御快諾を与へられ玆に本会総裁として公爵を迎ふるを得たるは、一同の頗る光栄とする所なり。抑々自分が会長たる事を受諾したるに就ても、何等深き確信あるに非ず、従つて公爵に総裁就任方懇請したるに、公爵より本会を幾噸の船となし、何れの港湾迄漕ぎ付けしむる決心なりやと反問せられ、実に回答に窮したる次第なり、只、日本は動もすれば武断主義の国なりとの批評を蒙り、遺憾の次第なれば、日本必ずしも侵略を事とする国にあらざる事を弘く中外に知らしめ、以て他の先進国と相伍して進歩の道程を辿らんとせば、是非共本会の如き団体の存在を必要とす、是れ自分の本会の為め微力ながら尽力せんと決心せる理由にして亦公爵の総裁就任方を慫慂せる所以なり』と述べらる。
      徳川総裁の挨拶
 徳川総裁より『渋沢子より本会総裁就任方の勧誘を受けたるも、浅学短才、到底其の器に非ずと考へ、即答致さヾりし次第なるが、外ならぬ同子の熱心なる勧告もあり、熟慮の末承諾する事に決定せり。然れども自分の如きものゝ本会総裁たる事は、何等本会の飾とならず、却て本会の名声を汚すものなりと確信するものなりと雖も、会長以下役員全部に於て有力なる援助を与へらるゝものと信じ、遂に承認したる次第なり。本会将来に関しては、気懸の点尠からざるも、何分にも諸君の充分援助あらん事を乞ふ』と述べらる。
      協議
 本会将来の方針に関し、沢田幹事より左記計画案を提出し審議を求む。
      国際聯盟協会将来の計画並其の実現方針
一、国際聯盟の主義精神の研究及普及を計り、併せて同主義を中心とせる国際政局に関する智識を伝播し、以て国民外交実行に資する処あらむとす。
一、右目的の実現を計らむが為め
 甲 権威ある調査部を設け、苟も国際聯盟に関係ある内治外交問題の研究を為す。
 乙 有力なる宣伝部を設け、上記研究の結果を発表し、併せて聯盟の主義精神の普及に当らしむ。之が為め
  (イ)定期会報を刊行し、必要に応じ随時各種の「パンフレツト」を刊行す。(ロ)随時講演会を催す。
一、弘く会員及び会友を募集し、出来得る限り多数の同志を糾合し、有力なる輿論を作らむことを期す。
一、既に各国聯盟協会聯合会に参加したる以上、将来之と協同し聯合会総会開会の場合には、進んで適当なる代表者を派遣することは勿論、将来本邦協会発展の程度如何に依りては、本邦に右総会開会の招請を為すの覚悟を要す。
一、前記の目的貫徹の為め差当り毎年左の費用を要す。
 (一)聯合会参加の為め要する費用 五万円
   (内)
  (イ)代表者派遣費 参万円
 - 第36巻 p.398 -ページ画像 
  (ロ)聯合会費用分負担額(本邦理事等に対する費用をも含む)
                        弐万円
   (調査員手当参千円、雑誌其他印刷費五千円、講演会費弐千円図書購入費参千円)
 此外臨時費として創業設備費壱万円を計上し置くを要す。
一、前記費用年額総計拾万円を、一定の基金の利息を以て支弁せんとせば、年利五分に見積り弐百万円の基金を募集するを要す。
  但し、差当り会員千名を得る見込にして、此会費収入参千円となる処、集金費用も相当必要なるべく、且会員には会報其他の刊行物を無代配付の積りなるに付き、会費収入より剰余を生ぜず。
 (ニ)事務費用 五万円
  (イ)事務所家賃 壱万弐千円
  (ロ)事務員俸給 壱万参千円
   (書記長六千円、書記三名五千四百円、タイピスト一名六百円給仕三百円、雑給与七百円)
  (ハ)事務所雑費(内外通信電信料文房具費等を含む)
                      壱万弐千円
  (ニ)調査宣伝費            壱万参千円
 協議の決果、詳細の点は此を別とし、大体之の方針を以て進むことに決定す。


竜門雑誌 第三八七号・第四〇頁大正九年八月 ○国際聯盟協会理事会(DK360157k-0002)
第36巻 p.398 ページ画像

竜門雑誌 第三八七号・第四〇頁大正九年八月
○国際聯盟協会理事会 青淵先生の会長たる国際聯盟協会にては、七月二十一日午後零時半より華族会館に於て理事会を開きたり、出席者は徳川家達公・青淵先生・吉井伯・秋月子・石井子・阪谷男・井上準之助・添田寿一諸氏にして、添田副会長の開会の辞に次いで、沢田幹事の事務報告あり、次に会長たる青淵先生起つて徳川公爵が本協会の懇請に依り、今回総裁を受諾せられたるを謝し、之に対し徳川公爵の挨拶あり、尚ほ同協会は近く渡仏する石井大使に、同会の事業に関する援助を依頼したる旨を報告し、次に羅馬に開催さるべき国際聯盟協会聯合会に、役員を参加せしむる事、国際聯盟に関する内治外交の調査及其主義主張を宣伝して輿論を喚起する事を決し、散会したる由