デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第36巻 p.408-415(DK360162k) ページ画像

大正9年10月7日(1920年)

是日、当協会第六回理事会、副会長添田寿一邸ニ開カレ、栄一出席ス。是ヨリ先十月一日、当協会相談会華族会館ニ開カル。栄一出席ス。


■資料

集会日時通知表 大正九年(DK360162k-0001)
第36巻 p.408 ページ画像

集会日時通知表 大正九年 (渋沢子爵家所蔵)
十月一日 金 正午 国際聯盟協会ノ件(華族会館)


竜門雑誌 第三八九号・第七〇頁大正九年一〇月 ○国際聯盟協会(DK360162k-0002)
第36巻 p.408-409 ページ画像

竜門雑誌 第三八九号・第七〇頁大正九年一〇月
○国際聯盟協会 ○上略同会理事会《(相談会)》は○中略十月一日正午華族会館に於て○中略開会せられたるが、青淵先生には○中略御臨席の上、協議せらるゝ
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所ありたる由。


国際聯盟 第一巻第一号・国際聯盟協会々報第三九―四七頁大正九年一一月 国際聯盟協会成立後の経過(十二)第六回理事会(DK360162k-0003)
第36巻 p.409-413 ページ画像

国際聯盟 第一巻第一号・国際聯盟協会々報第三九―四七頁大正九年一一月
 ○国際聯盟協会成立後の経過
    (十二)第六回理事会
 時日  大正九年十月七日午後三時 場所 添田副会長邸
 出席者 徳川総裁、渋沢会長、阪谷・添田両副会長、吉井・田川・岡・山川・姉崎各理事、伊達・杉村・沢田各幹事
 来賓  山田三良・小野塚喜平次両博士
      報告
 (一)第四回国際聯盟協会聯合総会に関する件
第四回国際聯盟協会聯合総会は「ミラン」に於て開催の筈なりし処伊国内騒擾の形勢に鑑み、果して騒擾の中心たる「ミラン」に於て開催し得べきや疑問なりき。然るに伊国委員会より在「ブリュッセル」聯盟協会聯合会本部に対し、右聯合総会は予定の通り、愈来る十月十二日より「ミラン」に於て開催し得べき旨の確報到達したる趣にて、九月二十四日、右次第協会本部より通報し来ると同時に、右総会に出席すべき日本側委員氏名通告方要求し来れり。
      聯盟協会聯合総会招待回章及日程
 九月二十一日伊国聯盟協会より、聯盟協会聯合総会に関する招待回章及同総会「プログラム」送付し来れり、其の要領左の如し。
  △回章
 巴里に於ける五月二十五日の予備会議決議に依れば、「ミラン」に於ける第四回聯合会に参加の招請は、単に「ブリュッセル」に於ける第三回聯合会に参加したる各協会に限られ、従て最近に至り、其の組織を見、今日に於ては各国国民間に、吾人の理想の宣伝に大なる貢献を為しつゝある、幾多国際聯盟協会は除外さるべきものあり。以上の事実並に該協会が、十一月十五日を以て召集されたる国際聯盟総会々議の一ケ月以前に会合の事実に鑑み、各方面より伊国協会は招請の範囲を拡大し、且つ旧敵国以外の各国協会の代表者が、凡て「ミラン」に於て会合し得る為め、関係各協会をして更に巴里に於ける決議を審査せしむべしとの提議に接せり。余は多数聯合協会の同意を得て「ミラン」に於ける聯合会に(十月十二日乃至十六日)貴協会を代表する委員を任命せられんことを希望す。該委員は単に六月二十日の回章に定められたる条件の下に、吾人の事業に参与すべきものとす。第六委員会として時事問題委員会(Commission des questions d'actualité)組織に関する仏国協会の提案に付ては、本聯合会の組織を遅延せしめざるが為め、吾人は何等具体的決定を為したる所なし。蓋し該委員会は今日に至る迄に、国際聯盟理事会及び事務局の為したる所に対する輿論の感情、並に十一月十五日の「ゼネバ」総会の任務に対する、各協会の希望を表明すべきものなりとす、伊国協会は本発議に対し、其極めて有益なるを認め全然賛成なり。然れども之を各協会に諮るの暇なきを以て、本提議を報告すると共に、右は「ミラン」に於ける第一回会議に於て、理事総会に附議せらるべきものなることを通告せざる可
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らず。故に貴邦委員は理事総会が、右第六委員会の組織を決定する場合に於ては、時宜に依り其の事業に参加するを期せらるるを可とす。
  △日程
 十月十二日午前十時、聯合会理事会の組織及び会合 午後三時発会式(一)伊国聯盟協会々長演説(二)各国代表者に対する国際聯盟理事会よりの挨拶(上院議長「チトニー」)(三)「スフオルザ」伯演説(四)総会出席者代表者答辞(五)委員及び事務局員任命(六)部会組織
 十月十三日午前十時及午後三時、議事日程に依る五部会議事(部会の会長は理事会之を任命す)
 十月十四日午前十時及び午後三時、部会の提唱せる各種案件解決案に対する総会議事
 十月十五日午前十時総会議事終結、午後三時 閉会式
 尚ほ右総会に関し(一)伊国協会及外務省よりの招待及び遠足の催あり(二)自働車は伊国協会より委員の為め提供し(三)演説の仏訳は伊国協会之に当るも自国語の翻訳は各委員に於て之に任ずべく(四)出席者の割当方は伊国協会役員之を取計らふべきことを附記しあり。
      本邦側列席者
 廿九日在仏国本邦大使館より、予て当方よりの依頼に基づき本邦側列席員は、嘉納治五郎・田中館○愛橘博士・堀田○正恒貴族院議員・三宅○正太郎司法省参事官等の十名に決定せる旨、並に之が総会出席費用として金三万円電送あり度旨、電報ありたり。
      「ミラン」総会決議案
 十月二日「ミラン」総会決議案要領を受領す。之に依れば総会議題は、(一)聯合会定款修正及理事会の構成並に各種事務の組織。(二)国際聯盟事業の民間宣伝方法。(三)国際司法裁判所問題。(四)国際制裁問題。(五)(電文脱し居れり)の五問題にして、其の決議案には同問題に関する英・仏・白・支・波蘭及露国協会よりの意見希望等を記載ある外、支那協会より提出せし山東問題及び一九一六年乃至一八年日支条約に依り発生せる極東の状態なる二問題、及び露国協会より提出せし北樺太占領問題を添付しあり、即ち左の如し。
  △支那聯盟協会提案(日支問題に関する)
 (イ)支那の正当なる要求を満足せしむる様速に「ヴェルサイユ」条約の山東問題に関する規定修正に着手する事。
 (ロ)一千九百十五年乃至同十八年間に、日本の強制に依り締結したる条約に基き、極東に惹起せられたる新事態を一括して審議に附する事。
  △露国協会提案
国際聯盟協会聯合会第四回総会は、一地域に対する主権に関し、主権国に非ざる或一国の一方的宣言にして、而も主権国の不利を招くが如きものは、国際道義の見地に基き、何等法律上の効力を有せざるものと認む。
 如斯宣言は、斯くの如くにして惹起せられたる国際関係の改善に貢献あり、且つ当該地域住民の自由権及生命権を保障する場合にのみ限り、一時的に其の実施を許す可きものとす。
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 (二)会員募集の結果報告 勧誘状発送数一七五〇通に対し、十月五日迄に回答ありたるもの三〇三通、内承諾者二一五名ありたり。最初よりの会員と合せて五七三名に達す。
 (三)山田・小野塚両博士来会の件 両博士は「ブリュッセル」に於ける第三回聯合会議の際、本邦側代表者として列席せられたる方々なる処、幸に最近御帰朝相成たるを以て特に本日御列席を御願せり。
 (四)寄附金募集に関する件 先月十三日、首相官邸に京浜財界の有力者を招待せしことは御承知の通なるが、其後江口定条氏より三菱家に於ては、此際一時基金として多額のものを寄附する代りに、毎年所用の額の幾分を出すことにしたしとの希望あり、又三井家に於ても同様の御考なるやに拝承したるにつき、去る十月一日華族会館に於て前記財界有力者中、更に四十名ほどに招待状を発し協議会を開きし所二十六名の出席者あり、種々協議の結果、差当り五ケ年間位の見当にて毎年所要の予定額十万円の中、六・七分の処を京浜の有力者より醵出することとし、其の割当額に関しては会長、井上会計監督、団・江口・大倉の諸氏に於て協議決定することゝなりたるに付き、目下会長に於て割当額の原案作成中なり。
      協議
 前掲報告第四項総会議事の件に関しては、本邦協会に於ても此際拱手傍観すべきに非ず、何等か意見の表示を必要と認めたるに付き、本件に関し理事会の審議を要求す。討議の結果、聯盟協会の聯合会の組織未だ完全に成立し居らざる現状なるにつき、此際山東問題及び樺太占領問題の如き、特殊政治問題を取り上げ総会の議題とすることは、聯合会の将来に対し、面白からざる事態発生の原因たるべきことを恐る。従つて「ミラン」総会に於ては、此等問題を上程せられざらん事を希望す。依て総会前、各国委員長を以て組織せる準備会に於て、此の趣旨を以て可然行動すべく、又聯合会規約の件に関しては、本年六月十一日聯合会書記局宛電報(第三回理事会記事協議事項に関する部分参照)所載、当方希望貫徹方努力すべき旨、本邦委員に電報する事に決す。
      動議
 田川理事より「本会事務に関し至急処決を要する場合も追々増加することなるべきが、其の度毎に理事会を催すは不便なるのみならず、不可能のこともあらんかと存ずるにより、急を要する事件は会長・両副会長、山川・林の五氏に於て決定せらるゝことを希望す」と述べ一同賛成。次いで田川理事は「本協会の精神を民間に宣伝するためには来る十一月に雑誌を発行することゝなれる由なるが、尚総会・講演会其他の方法を講ぜられたし」渋沢会長、添田・阪谷両副会長賛成を表す。依つて来る十一月十一日頃の宣伝に関しては、田川・姉崎両理事・杉村・伊達・沢田各幹事に取り決めることゝなれり。
      講演
 山田・小野塚両博士より聯盟問題に関し、大要左の趣旨談話ありたり。
 (一)山田博士談 昨年白国旅行の際、安達公使より「ブリュッセ
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ル」の聯盟協会聯合会議に出席方勧誘せられたるが、一日自国委員の許に至り、支那側より同会議に山東問題を上程せんとする目論見なることを承知し、捨て置き難しと考へ他の諸君と共に出席することと決せり。山東問題に付ては予め白国のデカン男に対し、同会議にかかる問題を提起することの非なる所以を説明し、同男も之を諒とし居り、会議前各国委員長会議に於て、支那側より同問題上程方力説したるに対し、秋月氏之を反駁せり。同会議長デカン男は支那側の如く、自己の不平を総会に提出することを許すとせば、白国の如き幾多の問題をも提出し得る次第にて、斯くては聯合会議は纏りを見ること能はざるべきに付き、支那側提案は採用せざることゝなすべしと言ひ切りて、別に表決にも問はず決定せり。之れが為め、支那委員は大いに失望し病気となりし由なり。
 国際聯盟の真相に関しては、意見容易に一致せざる処なるも、北米合衆国之に加盟せざるが為め、聯盟に対する疑問を懐くものあり。之れが為め英国は躍起となりて聯盟の思想宣伝に努力する事となり、一千万円の資金を集め、朝野の名士を網羅し、尨大なる組織を完成して頗る有力なる聯盟協会を設立し、爾来目ざましき活動を為し居れり。如斯英国に於て聯盟の達成に熱心なる為め、他の国に於ては英国が聯盟を以て、強国の体よき武器となすには非ざるかの懸念を抱くものもなきに非ずと云へとも、他方小弱国に於ては兎に角、聯盟式のものに依るに非ざれば、到底自国の安固を計ること不可能なる実情を知るが故に、聯盟の達成に関しては非常に熱心なり。かくて聯盟が強国の武器なるか、弱国の自衛策なるかは、聯盟に対する目下の大問題なるが如し。然しかゝる利害の点を離れて、更に大なる立場より、国民と国民との平和的交際を希望する意志を、更に鮮明に国民に自覚せしめ、且つ海外に表示することは、日本目下の急務なりと思考せらる。
 (二)小野塚博士談 本年の三月廿六日、安達公使が「デカン」男より密かに聞きたる所として余に漏らされたる談によれば、伊太利に於ける聯合会に関し、仏(レオン・ブルジヨア)英・伊及び白の各主脳者下相談会を開きたるが、聯合会議に時事問題を議することゝなれば、徒らに紛議を重ぬるのみなれば、協議事項は一般問題に限ることとし、例へば、(一)聯盟規約の講究(二)国民に聯盟思想を普及する方法、(三)軍備縮少、(四)仲裁々判の四問題に限ることゝ、幹部の間に於て議纏れりとの事なり。尚ほ国際聯盟が成立するに際しては、「ウィルソン」氏が非常に熱心なりしも、実は欧洲各国の政治家は、戦争の未だ熄まぬ以前より盛に聯盟を主張し居りしなり。是れ一に欧洲各国民が衷心戦争の禍害を悟り、平和を渇望するの念に充ち居たる為め、民意を代表することを忘れざる欧洲諸国の為政者は、盛に聯盟の必要を説きたるものなり。
 東欧に於ける小競合の如きも、彼等とて全く苦々しく思ひ居れるも之が鎮定の為め再び干戈を採るが如きは、全く欲せざるなり。斯くの如く、聯盟は欧洲大戦の結果、特に国民自身の間に湧き出たる翹望にして従つて聯盟総会の代表者派遣の際も、成るべくこの民意を貫徹する為特に下院より代表者を選出する様にとの希望もある位なり。今迄
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の如く、英国の交戦講和、一に政府者の手に委ねて置けば、何時又戦争になるやも知れず、これでは国民が堪らぬといふ思想、汎く行はれ居るが如し。
   ○当時添田邸ハ麹町区富士見町ニ在リ。
   ○国際聯盟協会聯合会ニ就イテハ左ノ記事ヲ参照。



〔参考〕国際聯盟概説 杉村陽太郎著 第五三―五七頁大正九年一一月刊(DK360162k-0004)
第36巻 p.413-414 ページ画像

国際聯盟概説 杉村陽太郎著 第五三―五七頁大正九年一一月刊
    国際聯盟協会
 国際聯盟と言はんよりも、国民又は人民の聯盟と称すべきものである。各国政府間に於ける外交的交渉の機関と見るよりも、寧ろ国際平和と国際正義とを愛好する各国人民の要望に因り、生れ出でたものと観察するを当れりとする。従て国際聯盟の基本は、二十六箇条より成る聯盟規約に存すべきも、其の原動力は国際輿論に在りと言はねばならぬ。大正八年三月十二日、倫敦に於て開催せられたる、国際聯盟協会聯合会議の席上「レオン・ブルジォア」氏が『国際聯盟の基礎を鞏固ならしめ、其の目的の達成を期するが為には、二つの条件を要す。其の一は聯盟に対する世界の輿論を指導することであつて、其二は聯盟の支持に関する各国識者の努力が組織的に行はるゝことである』と述べたのは、克く這般の理を説明し得たものと想ふ。而して仏国に於ては大正七年十一月十日、国際聯盟協会は(「アソシアシオン・フランセーズ・プール・ラ・ソシエテー・デ・ナシオン」)設立せられ、英国に於ては大正七年の始「リーグ・オヴ・ネーシオンス・ソサイエテー」及「リーグ・オヴ・フリー・ネーシォンス・アソシエーシォン」が合併して「リーグ・オヴ・ネーシォンス・ユニオン」を組織し、更に「バーンス」氏を頭首に仰ぎ、労働党の勢力を代表する「リーグ・トウー・アボリッシュ・ウォアー」をも合併し、米国に於ては末だ統一的の団体なきも、大正四年六月十七日「フィラデルフィア」に設立せられ、前大統領「タフト」氏を会長とする「リーグ・トゥー・エンフオース・ピース」及千八百十五年に設立せられ、千八百三十六年以来「アドヴォケート・オヴ・ピース」なる機関紙を発行する「アメリカン・ピース・ソサイエテイー」あり、伊国には「レガ・ユニヴエルサレ・ペル・ラ・ソシエタ・フラ・レ・リベレ・ナッィオネ」又白国には「アソシアシオン・ベルジ・プール・ラ・ソシエテー・デ・ナシオン」あり、此等の各協会は千九百十九年一月以来、已に前後三回聯合会議を開催して(註一)遂に一の聯合、即ち「ユニオン」を組織することゝなり、我国に於ても同一の趣旨を以て大正九年四月二十三日国際聯盟協会設立せられ、前記の聯合に加盟すると共に、今後各国の協会と提携して世界永遠の平和確保の為、鋭意尽瘁することゝなつたのである。
 (註一)千九百二十年十月中旬「ミラン」に開催せらるゝものを合すれば四回となる。
 各国々際聯盟協会の聯合「ユニオン・デ・アソシアシオン・プールラ・ソシエテー・デ・ナシオン」)は、各国に於ける既設の諸協会を聯合して、国際聯盟規約の規定する諸原則の改善を図り、且其の適用
 - 第36巻 p.414 -ページ画像 
を監視するを以て目的とし、各国は其の国内に在る諸団体を糾合せる一協会に依り代表せられ、聯合の本部は之を白耳義の首府「ブリュッセル」に置き、其の機関として総会及理事会を設け、総会は理事会の招集に依り開会し、各国は十名を超えざる代表者を出し得べく、又理事会は各国より二名宛出す代表者を以て之を組織し、総会の議題を準備し、其の決議を実行し、予算を決定し、其他一般の会務を行ひ、総会及理事会に於ける表決権は各国一票とせられ、本部の一般的費用は各協会に於て之を分担するのである。
 聯合会議の事業は総会の外、各種の委員会に分たれ、第一委員会は聯盟総会並聯盟理事会の組織及職分に関する事項を、第二委員会は軍備の撤廃及国際軍の編成並軍備の縮少に関する事項を、第三委員会は仲裁々判・和解・司法裁判、国際法々典の編纂、条約の登録及委任統治に関する事項を、第四委員会は文化的事業、殊に労働及教育等に関する事項を、第五委員会は各国に於ける国際聯盟協会及各国協会の聯合に関する事項を担当し、第四回聯合会議に於ては更に第六委員会を新設して、時事問題に関する事項を担当せしむる筈である。
 各国国際聯盟協会の聯合は、固と純然たる民間の事業に属し、各国政府は直接之に対し何等援助を与ふるものでないけれども、之に参加せる各国協会の多数は、其の主張の健実にして基礎の鞏固なる、克く其の理想として標榜する人類恒久の平和確保及国際協力の美風促成の目的に適するものあり、況んや、之を組織する会員中には有力なる政治家及学者等頗る多きを以て、其の各国輿論に対する勢力は、真に偉大なるものあるに加へ、聯合は進むで各国政府当局を鞭撻して、聯盟の目的達成を期するものであるから、各国政府に於て、之を無視し得ざるは勿論、国際政局上将来非常なる威力を振ふに至るべく、従て我に於ても、常に之と密接なる接触を保ち各国協会との間に絶えず連絡を取り、世界の趨勢と国際輿論の帰向とに着目し、聯盟至高の目的の為努力すると共に、機に臨むでは我が公正なる立場を宣明して、各国識者の了解を求め、近来動もすれば帝国を以て、万国協和問題に冷淡なる武断的侵略主義を奉ずるものなりとなす世界一般の誤解を解き、我れに対する各国民の好感を失はざらんと努むること、現下に於ける急務中の急務と称すべく、殊に支那側が我れに先んじて、第一回聯合会議以来引続き代表者を出し、弁舌の雄、顧維釣等をして巧に我を誹議せしめ、以て列強の同情に訴へ、以て山東問題の不当なる解決を企つるが如き、固より未だ其の目的を達するに至らずと雖も、既に『国際聯盟加入国の国民が、他国内に於て財政上の特権を得ることあるも該国政府は之に対し、外交上の支持を与へざるべし』との決議を通過せしめたるあり、玆に於てか我が国際聯盟協会の責務は、一面に於ては世界に対し、公正なる我が態度と立場とを理解せしむる国民外交の組織ある宣伝機関たるを期するに存し、聯盟至高の目的の為其の負へる重大なる職責に付ては勿論、単に右の一点のみに付ても協会の為、敢て我国有識者の援助と支持とを切望して已まざる次第である○下略



〔参考〕集会日時通知表 大正九年(DK360162k-0005)
第36巻 p.414-415 ページ画像

集会日時通知表 大正九年 (渋沢子爵家所蔵)
 - 第36巻 p.415 -ページ画像 
十月廿一日 木 午後三時 国際聯盟協会書記大熊真氏来約(兜町)