デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正9年11月27日（1920年）

当協会ハソノ趣旨・目的ヲ一般ニ普及セシメンガ為メニ十一月九日華族会館ニ都下各新聞社・通信社ノ代表者ヲ招待シテソノ尽力ヲ請ヒ、更ニ十二日神田基督教青年会館ニ発会式兼講演会ヲ開ク。両日共栄一病ノタメ欠席セリ。次イデ是日東京帝国大学法学部教室ニ講演会ヲ開ク。栄一臨席ス。

集会日時通知表　大正九年　（渋沢子爵家所蔵）
十一月廿七日　土　午後一時半　国際聯盟ニ関スル講演会（帝大法学部卅五番教室）

竜門雑誌　第三九一号・第六五―六六頁大正九年一二月
○国際聯盟協会の普及宣伝　青淵先生を会長とせる国際聯盟協会にては、十一月九日午後六時半より華族会館に於て、都下各新聞通信社の代表者を招待し、徳川総裁、阪谷・添田両副会長及各理事、幹事出席の上、徳川総裁より一場の挨拶を述べ、阪谷・添田副会長より聯盟協会の趣旨目的を一般国民に普及せんが為め大に尽力せられ度旨希望する所あり、之に対し松山忠二郎氏は、新聞通信社側を代表して答辞を述べ、尚ほ種々意見を交換して九時散会せる由なるが、当夜は青淵先生病気の為め、出席せられざりき
　因に同会にては協会の趣旨目的を一般国民に宣伝せんが為め、同月十二日午後六時半より青年会館に於て発会式を兼ね、大講演会を催し山田三良・林毅陸・阪谷男爵・尾崎行雄諸氏の講演あり、同日先生には同会に出席の筈なりしも、病気の為め欠席せられたり、尚ほ廿七日午後一時半より、東京帝国大学法学部卅五番教室に於て開会せる講演会には、姉崎正治・立作太郎・大河内正敏諸氏の講演あり、青淵先生にも臨席せられたりと云ふ。

中外商業新報　第一二四四七号大正九年一一月一三日
　　　　○世界平和の基礎たる国際聯盟の宣伝
　　　　　　山田博士・阪谷男・林勅参
　　　　　　　　尾崎行雄の諸氏盛に説く
世界平和の永遠を期するは、国際聯盟を各国国民が聯合して高唱するにあるとて、組織された日本国際聯盟協会
▽主催で　十二日午後六時半より神田青年会館に国際聯盟宣伝の大演説会が開催された、秋雨も恐れず聴衆約二千名、会長渋沢子爵病気不参の為め、田川大吉郎氏開会の辞に代へて、協会成立の経過と国際聯盟聯合会の大略を述べ、山田三良博士は「国際聯盟に就て」の題下に於て、中世紀から世界人類が戦争の惨禍に恐れ、国際紛議の仲裁々判を希望し、それが千八百九十九年の
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▽海牙の　万国平和会議となり、倫敦条約の締結、千九百七年の平和会議を経て、今回欧洲大戦の惨状に因つて、人道を唱へるウヰルソン大統領によつて、媾和会議の劈頭に協議されたのであると、その起原から論述し
　米国が聯盟に加入せざる唯一の原因は、聯盟総会に於て英国が六票の投票権を有するに、米国は一票なるが為である。現在の国際聯盟は世界人類の中、三億の不加入者を有する不備のものであるが、之を補ふものは、世界人類が共同して所謂世界的議会を開き、人類幸福の為め共力して戦争の防止を行ふにある、即ち各国の国際聯盟協会は此目的の下に生れたるものである、我国は各国より好戦国と視せられ、孤立の地位に陥らんとしてゐるから、此際戦争の防止と軍備の縮少を率先して唱導する事は、万国の誤解を一掃するの好機である
と約一時間に亘つて
▽熱弁を　揮ひ、次で副会長阪谷男爵は「国際聯盟と聯盟協会」と掲げて
　此聯盟は大戦のため欧洲各国が甚だしく疲弊した結果成つたものである、従つて聯盟協会は此機運に促されて生れたもので未熟である然し人類福祉のために尽すこの協会は、飽迄盛り立てゝ行かねばならない、即ち世界人類が相扶けて進むべきものである、彼の人種差別撤廃の如きも媾和会議で破れたが、我国からは既に国際聯盟協会聯合会に提出してある、今後幾年か之を唱へてゐる間には、必ず正義を貫徹し得るのである
と述べ、外務勅参の林毅陸氏「国際聯盟と帝国の地位」に就て
▽説いた　後尾崎行雄氏は破るゝ許りの拍手に迎へられて登壇し「国家の存亡と国際聯盟」に就て一時間に亘つて氏一流の快弁を弄し、満堂を感動せしめ、十時半盛会裡に散会した。