デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第36巻 p.420-426(DK360167k) ページ画像

大正10年4月18日(1921年)

是日、当協会第十回理事会、当協会事務所ニ開カル。栄一出席シテ、当協会ヲ社団法人トナスノ議ヲ可決シ、尚、定款ノ改正及ビ大日本平和協会援助ノ件等ヲ議ス。


■資料

国際聯盟 第一巻第四号・第二〇九―二一二頁大正一〇年七月 国際聯盟協会会報(四)第十回理事会(DK360167k-0001)
第36巻 p.420-423 ページ画像

国際聯盟 第一巻第四号・第二〇九―二一二頁大正一〇年七月
 ○国際聯盟協会会報
    (四)第十回理事会
 時日  大正十年四月十八日午後四時
 場所  聯盟協会事務所
 出席者 渋沢会長 添田副会長 井上 姉崎 林 山川 田川 吉井 宮岡 穂積各幹事《(理)》 藤沢博士 伊達 杉村各幹事
      報告
会長遅参につき添田副会長座長に推さる
      協議
一、本会を法人組織となす件
穂積理事より「去る四月二日本会評議員《(会脱)》に於て決定したる所に基き、御手許に差上置きたる通りの社団法人国際聯盟協会定款を宮岡理事と共に作成せり、然るに藤沢博士より本会を法人となすことは、時機尚早ならずやとの御注意あり、此の点に付きては幸に藤沢博士御出席ありたるにつき、直接博士より御説明を請ふ方便宜なるべし」と陳べ、藤沢博士より大要左の通り説明あり。
 「国際聯盟協会が将来大いに発展する場合を想像するに、会員は極
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めて選択せる者に限るべきか、又は広く全国に会員を有するに至らしむべきか、執れかの方法を採るの要あり、協会の性質としては寧ろ後者を択ぶべきものと思考す、然る時は多くの会員を擁して而かも本会を法人組織となしたるため、決議等に於て法律上の規定を存する為め種々不便を生ずる虞なきか、次に国際聯盟其のものの将来も如何発展し行くか、今日より見極め得る者は無かるべく、従つて本会としては会の目的、事業、資金醵集の方法等の上に於て、成るべく動きの取れる様仕組み置くこと必要にして、定款を以て法律上之を確定してしまひては、将来動きの取れぬこととなる惧なきや。余は本会を法人となすことに反対するにはあらず、早晩は法人とせざるべからざるも、今姑く形勢の推移を見るの要なきやと思考するものなり、以上は只ふと思ひ浮べたる感情に過ぎず、採否は全然余の介する所に非ず」と陳べ穂積理事より「本会を法人とするは絶対に必要なるには非ず。唯少しにても会に資金を生じたる以上、其の金の所有者を決定するの必要に迫られ、最初は財団法人となさんとの意向もありしも、会員の処置に窮し、又親金なるものの無きこと等の為め、更めて社団法人になさんとの議を生じたり。藤沢博士は本会を法人となしては種々束縛を増し会の発展上不便を生ずる惧なきかと御心配ありしやに承はるも、法人となさずとも、道徳上の種々の束縛は固より存ずる筈にて、特に法人となしたるため、面倒を増すといふ理は無かるべしと思はる。但し表決等に関しては充分注意して、成る可く簡単の方法を採り得る様注意し置けり、又「国際聯盟の精神達成」といふ本会の目的が、達成不能となりたる場合には、本会を法人となし置けば、其の為め本会は当然解散すべきこととなるべきも、其の財産は総会の決議により、主務官庁の許可を得て、其の法人の目的に類似せる目的の為めに、其の財産を処分することを得ることとなり居れる故、国際聯盟より一層よき国際平和機関の促進の為め、新たに法人を組織する余地を存せり」と陳べ之に対し岩岡理事《(宮岡)》は「本会は『ヴエルサイユ』条約に規定する所の国際聯盟の精神達成をのみ目的とするものとは、余は最初より思ひ居らず。凡そ国際の平和を確保促進し得べきものならば、其の何れたるを問はず之を後援するに躊躇せざるものなりと考へ居れり。故に国際聯盟が消滅すればとて当然、本会は解散すべきものとは考へられず」と陳べ、井上理事より「本会は各国に国際聯盟協会なるものが起り、『ヴエルサイユ』平和条約にて成立せる国際聯盟を後援するため、此等各国の協会が提携することとなれるにつき、日本に於て之を設立する要ありとて設立したるものなりと記憶す」と陳べ、添田副会長・藤沢博士・田川理事・杉村幹事各々「国際聯盟の精神達成」とある国際聯盟は、一般的抽象的のものにあらず、現在「ジユーネーヴ」に本部を置ける所のものを指すものなることを陳ぶ。穂積理事「国際聯盟の精神達成」とあるが故に、其処に多少の余裕ありと陳べ、渋沢会長は「然らば本会は現在の国際聯盟が駄目となり、例へば国際聯合とか、或は其の他のよりよきものが作られる場合に立ち到れば、其の時は後者を支援する会とも為し得る余地を存ずるものなりや」と問ひ「然り」と答ふるもの多し。依つて本会を社団法人となすことは多数により可
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決す
二、定款案逐条討議
穂積理事より左の二点につき説明あり。
(イ)評議員会に於て提出したる定款案には、第十四条として「本会は理事会の決議により、在外代表者を置くことあるへし」との規定ありしも、本定款案に於ては之を除けり。蓋し社団法人の理事は、特定の行為の代理を他人に委任することを得、といふ民法の規定あるに依り、特に定款に之を明記するの要なく、旦つ海外に永住するものを理事に加ふることにしては、理事の任務を為すこと実際上殆んど不可能なるが故なり。
(ロ)現在の聯盟協会が、社団法人となる経過規定として「附則」項を添へたり。
 依て定款案逐条討議の結果、左の諸項を改正す
(イ)第二条第三項を第四項とし、第四項を「国際聯盟協会聯合会に参加」と訂正して、更に之を第三項に移すこと
(ロ)第十八条第二項中「目的変更又は」を削除す
三、役員改選に関する件
来るべき総会に於ては、多数の役員を即座改選するは事実困難なるを以て、予め其の人選腹案の作成方を添田副会長、林・田川・姉崎各理事に委ね置きたる所、田川理事より本会監事には大倉・江口・団の諸氏を推したしと述べ一同異議なく、理事の案は追て報告することゝせり
      動議
一、阪谷副会長より、左の提議あり。
 大日本平和協会の創立は明治四十一・二年《(明治三十九年)》にして、余の深き関係を有するに至りたるは明治四十四年以後なりとす、同協会の主たる活動は左の如し
 一 国際的平和維持に付ての観念を国内一般に普及すること
 一 国際仲裁裁判若しくは国際聯盟の如き方法の発達を支持鼓吹すること
 一 日米間の親交を維持し、誤解を氷解するの手段方法を尽力すること
 一 常に日本在留の米国人中の有力者と交際を厚うし、完全なる意思の疏通を計ること
 一 在日本支那留学生との意思疏通を計ること
 一 朝鮮人及台湾人学生との意思疏通を計ること
 一 在朝鮮米国人宣教師との意思疏通を計ること
 一 東洋に於ける阿片及び醜業婦禁止問題に付て尽力すること
 一 濠洲人との意思疏通を計ること
右は既往に於ける同協会活動の主なるものを掲記せるなり、而して活動の手段は出版物・講演会・集会・書状往復・訪問・印刷物交換等なりとす
昨年国際聯盟協会の起るに至るまでは、大日本平和協会は此種問題に就て常に牛耳を取り、我邦に於ての目標として、微力ながら注目せられたるものなり、而して聯盟協会創立の議起るや事の重複を避け、勢
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力集中の必要を認め、平和協会は聯盟協会成立を援助し、其成立を見たる上は平和協会は事業を全部之に譲りて解散するも可なり、との内議を決したり
然るに爾来今日までの状況を見るに、聯盟協会と平和協会とは性質自ら異なるものあり、事業も全然一致するに至らず、且多年日米人間に養成し来りたる人物的関係の価値は、平和協会の解散と共に之を喪失するの虞なきにあらず、今や日米関係は漸次険悪に傾き之が融和の手段には、両国の有志は総ての尽力を惜むへからざるの秋に当り、一層其解散を不可とするものあり、然しながら平和協会は前陳せるが如く其の事業を聯盟協会に譲るの考を以て内々処理し来り、資金の募集等は之を見合はせ居りたるを以て、従来の如く事業を継続せんとするには会計上困難あるを免れず、依て聯盟協会諸君に於て、前陳事情御考慮の上にて、聯盟協会の事業の一部分は、平和協会に依りて遂行せしむるを便宜なりと思考せらるゝに於ては、相当の補助を平和協会に与へられ度、敢て御一考を乞ふ
二、田川理事より「今日迄聯盟協会は、種々の事情の為め余り盛大ならざりしを遺憾とす、殊に内外諸団体との協力は、殆んど無かりし模様なり。又本会に現はるゝ報道其の他の材料も、主として官辺より来るものにして、個人又は私の協会より得られたるものは、極めて尠かりしやに思はるゝ、此の方面に事業を発展せしむることは、予てより、余の希望する所なりき。然るに「パブリシテイビューロー」なるもの平和協会の建物の中にあり。其の費用の一部には少額ながら、外人の寄附金も加はれり。之を本協会に迎へて、事務の一分部を之に分担させては如何なるものなりや、右提議するの次第なり」と陳べ
 田川理事の提議により以上二件は、新役員決定後、之に委任することと決す。
三、添田副会長「ヤツプ」島問題に関する米国の態度は、如何にも不条理に思はるゝか、之に対し協会として、何等意見を述ふる要なきや、と問ひ、本件も委員に附託し調査に任することゝす。但し委員の任命は総会後の理事会を待つてすることゝ決す。
   ○本資料第三十五巻所収「大日本平和協会」大正十年四月十八日ノ条参照。


国際聯盟協会書類 【宮岡恒次郎氏所蔵】(DK360167k-0002)
第36巻 p.423-424 ページ画像

国際聯盟協会書類 (宮岡恒次郎氏所蔵)
    社団法人設立許可願
                    国際聯盟協会
今般私共儀、別紙記載ノ如キ定款ヲ以テ、社団法人ヲ設立致度候間御許可相成度、民法第三十四条ニ依リ此段申請候也
  大正十年六月 日
           東京府麻布区三河台町三拾壱番地
                      井上準之助
           東京府豊多摩郡下渋谷千八百四拾三番地
                      林毅陸
           東京市牛込区南町弐番地
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                      穂積重遠
           東京府豊多摩郡千駄ケ谷町三百三拾番地
                   公爵 徳川家達
           東京市赤坂区葵町三番地
                   男爵 大倉喜八郎
           東京市四谷区内藤町壱番地
                   伯爵 吉井幸蔵
           東京市小石川区小日向台町弐丁目弐拾五番地
                      田川大吉郎
           東京府豊多摩郡千駄ケ谷原宿三百四拾四番地
                      団琢磨
           東京市麹町区富士見町壱丁目壱番地
                      添田寿一
           東京市赤坂区青山南町六丁目拾六番地
                      山川端夫
           東京市牛込区弁天町百七拾弐番地
                      山田三良
           東京府豊多摩郡下落合朱番四百三拾七番地
                   公爵 近衛文麿
           東京市牛込区赤城下町五拾三番地
                      江口定条
           東京府豊多摩郡中野町千六百七拾七番地
                      秋月左都夫
           東京市小石川区白山御殿町百拾七番地
                      姉崎正治
           東京市小石川区原町百弐拾六番地
                   男爵 阪谷芳郎
           東京市赤坂区青山南町四丁目弐拾弐番地
                      宮岡恒次郎
           東京市日本橋区兜町弐番地
                   子爵 渋沢栄一
           東京市麻布区本村町百拾八番地
                      頭本元貞
    外務大臣 伯爵 内田康哉殿
    内務大臣    床次竹二郎殿
    文部大臣    中橋徳五郎殿


登記(聯盟協会)(DK360167k-0003)
第36巻 p.424-426 ページ画像

登記(聯盟協会)           (社団法人日本国際協会所蔵)
    社団法人国際聯盟協会定款
      第一章 目的及事業
第一条 本会は国際聯盟の精神達成を以て其の目的とす
第二条 本会は其の目的を達成する為、左の事業を行ふ
 一、国際聯盟に関する研究及調査
 二、講演会の開催及印刷物の刊行
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 三、国際聯盟協会聯合会に参加
 四、本会と目的を同じくする内外諸団体との連絡
 五、其の他理事会に於て適当と認むる事業
      第二章 名称及事務所
第三条 本会は国際聯盟協会と称す
第四条 本会は事務所を東京市     に置く
      第三章 会員・客員及賛助員
第五条 本会の趣旨に賛同する日本人にして、会員二名以上の紹介ありたる者を会員とす
 会員を分ちて通常会員及び特別会員とす
 通常会員には本会機関雑誌を配付し、特別会員には機関雑誌の外、本会発行の小冊子類を配布す
 会員の退会を承認し又は之を除名するは、理事会の権限とす
第六条 外国人は理事会の決議に依り、之を客員となすことを得
第七条 会員又は客員にして、本会の事業に特別の援助を与ふるものは、理事会の決議に依り之を賛助員とす
      第四章 役員
第八条 本会に理事十五名、監事三名、評議員若干名、及主事一名を置く
 理事中一名を会長、他の二名を副会長とす
第九条 会長・副会長、其の以外の理事、監事及評議員は、総会に於て会員中より之を互選す
 前項の役員の任期は、其の選任せられたる翌々年の通常総会を終る迄とす、但し再選することを得
 補欠選挙に依る役員の任期は前任期の残部とす
第十条 会長は総会・理事会及評議員会を招集し、之が議長となる
 副会長は会長事故あるとき之を代理す
第十一条 理事は理事会を組織し会務を処理す、但し重要会務に付ては評議員会の議決を経ることを要す
 理事会の議事は出席者の過半数を以て之を決す
第十二条 評議員は評議員会を組織す
 理事会に於て必要と認むるとき、又は評議員五分の一以上の請求あるときは評議員会を開く、評議員会の議事は出席者の過半数を以て之を決す
第十三条 主事は理事会に於て之を選任し、場合に依り之を有給となすことを得
      第五章 総裁及名誉総裁
第十四条 本会は総会の決議に依り、総裁及名誉総裁を置くことあるべし
      第六章 総会
第十五条 本会は毎年一回通常総会を開く
 通常総会に於ては、会務に関する理事の報告、予算の決定、役員の選挙其の他必要の事項を決議す
第十六条 理事会に於て必要と認むるとき、又は会員十分の一以上の
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請求あるときは、臨時総会を開く
第十七条 総会の招集は、新聞又は本会機関雑誌に広告して之を為すことを得
第十八条 総会の議事は出席会員の過半数を以て之を決す、但し定款の変更には出席会員三分の二以上の同意を要す
 解散の決議は民法の規定に依る
 総会に出席せざる会員は代理人を出だすことを得ず
 但し書面を以て表決を為すことを得
      第七章 資産
第十九条 本会の資産は会費、寄附金其の他の収入より成る
第二十条 本会の会費は通常会員年額金四円、特別会員年額金拾弐円とす、但し一時金百円以上を納付するものは之を特別会員とし、以後会費を徴収せず
      第八章 支部
第廿一条 本会は理事会の決議を経て支部を設置することを得、支部の規約は当該支部之を定め、理事会の承認を経ることを要す
   ○右ニ掲ゲタル定款ハ大正十一年四月十九日当協会第二回総会ニ於テ一部変更ヲ見タルモノカ。
   ○右ノ定款ハ大正十二年三月一日第三十四回理事会ニ於テ左ノ如ク改正ノ決議ヲ経、後総会ニ於テ改正ヲ見ル。
    第八条中理事「十五名」ヲ「二十名以内」ニ
    第九条中「互選す」ヲ「之を互選す」ニ
   ○大正十三年四月二十三日第四回総会ニ於テ、定款ノ一部改正セラル。本款同年四月十一日ノ条参照。大正十五年五月八日第六回総会ニ於テ、定款ノ一部改正セラル、本資料第三十七巻所収「国際聯盟協会」同日ノ条参照。昭和三年五月二十六日更ニ改正ヲ見ル。本資料第三十七巻所収「国際聯盟協会」同日ノ条参照。