デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第36巻 p.624-627(DK360222k) ページ画像

大正13年11月11日(1924年)

是日、当協会主催平和記念大講演会、東京商工奨励館ニ開カル。栄一出席シテ講演ヲナス。是ヨリ先八日、当協会学生支部関東聯合会主催平和記念学生講演会及ビ懇親会、上野公園内東京自治会館ニ開カル。栄一出席シテ挨拶ヲ述ブ。


■資料

集会日時通知表 大正一三年(DK360222k-0001)
第36巻 p.624 ページ画像

集会日時通知表  大正一三年       (渋沢子爵家所蔵)
十一月八日 土 午後五時 平和記念講演会(上野自治会館)


国際聯盟協会書類(一) 【大正十三年十一月十日】(DK360222k-0002)
第36巻 p.624 ページ画像

国際聯盟協会書類(一)          (渋沢子爵家所蔵)
  大正十三年十一月十日
                国際聯盟協会事務所国際聯盟協会之印
    渋沢事務所御中
拝啓、明十一月十一日午後五時より、丸ノ内商工奨励館に於て平和紀念大講会を開催可致候件につき、子爵御出演の御承諾を得申候処、右開演順序、演題左記の通り決定仕候ニ付、乍恐縮同刻御来臨の御手配を御願申上度、先は御依頼迄如斯御座候 敬具
左記
日時 大正十三年十一月十一日午後五時 於奨励館講堂
順序及演題
                    (四字別筆)
 御挨拶              子爵 渋沢会長
 (五字別筆)
 民族的自尊心         慶大教授 板倉卓造氏
 日本はどうなるか       法学博士 下村宏氏
 列国軍備と国際聯盟           添田寿一氏
    以上

 - 第36巻 p.625 -ページ画像 

(国際聯盟協会) 会務報告 第二六輯 自大正一三年一〇月二九日至同年一一月一七日(DK360222k-0003)
第36巻 p.625 ページ画像

(国際聯盟協会) 会務報告  第二六輯 自大正一三年一〇月二九日至同年一一月一七日
                     (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    三、平和紀念会
(イ)平和紀念学生講演会及懇親会
    主催 学生支部関東聯合会 後援 東京市
    日時 大正十三年十一月八日、場所 上野自治会館
    午後一時より学生講演会を開催、学生支部の教授・学生交々立つて国際問題を論じ、平和の宣伝に努め、本部よりは渋沢会長、添田副会長、田川理事出席一場の講演をなした。聴衆千名、午後五時半より懇親会を開く、渋沢会長、添田副会長、田川・宮岡各理事出席、来賓としてチエッコ国公使其他知名の士あり、学生約百名、慶大マンドリン倶楽部の奏楽の下に互に意見の交換をなし、平和満堂の裡に九時散会
(ロ)平和紀念大講演会
    主催 協会、東京市
    日時 大正十三年十一月十一日午後五時
    場所 丸ノ内商工奨励館
渋沢会長、添田副会長、下村理事、慶大教授板倉卓造氏の講演あり、人数比較的少なかりしも真面目なる聴衆を得たるは幸なりき。


国際知識 第四巻第一二号・第九八―一〇〇頁大正一三年一二月 一九二四年第三回平和記念大会(DK360222k-0004)
第36巻 p.625-627 ページ画像

国際知識  第四巻第一二号・第九八―一〇〇頁大正一三年一二月
    一九二四年第三回平和記念大会
 十一月十一日!我等は玆に地軸の回転と共に、第六回の平和記念日を迎へ、我国際聯盟協会は第三回の平和記念大会を挙行したのである。
 言ふまでもなく、此十一月十一日は、丁度六年前の一九一八年の此日の午前五時に、聯合軍の対独休戦の条約の調印成り、午前十一時より両軍は戦闘を休止して、惨風悲雨の空に初めて世界平和の暁鐘を打ち鳴らしたといふ記念の日である。そして此記念日は今や国際的に認められて来てゐるが、我国際聯盟協会も既に二回の記念日を挙行してゐる。
 今年は十一月八日に、国際聯盟協会学生支部関東聯合会主催の下で上野自治会館で学生大講演会、同夜同所で学生懇親会、又十一日に国際聯盟協会主催・東京市後援で商工奨励館で講演会を開いて、此有意義なる日を迎へたのである。
      学生大講演会
 午後一時開館といふに、既に定刻前から聴衆場に満つる。開会は少し遅れて一時半、慶大の藤原守胤氏立つて開会の辞を述ぶ。次いで左記の講演に移る。
一、講演       帝大教授 神川彦松氏
二、同        明大教授 赤神良譲氏
三、同        中大教授 広井辰太郎氏
 - 第36巻 p.626 -ページ画像 
四、講演       早大教授 内ケ崎作三郎氏
五、同      本協会副会長 添田寿一氏
六、同       本協会理事 田川大吉郎氏
 其間に各大学の学生は交々立つて、大に平和の為に気を吐いて、満場の空気はげに平和にひたつた。そして共同宣言は日・英・仏・エスペラントの各語で朗読された。
        宣言
 史は悠々上下三千載、現実は常に理想を裏切り、人類の祈願は常に斥けらる。
 恒久平和は竟にあだなる祈願にして、国際正義は一片空想の所産たる可き乎。国際聯盟は実に吾人が多難なる、人類の目的への歴程に見出したる一の伴侶なり。
 仮令、其組織尚ほ不備にして、その力未だ足らざるものあると雖も又以て吾人の依信を維ぐに足る。
 吾人曩に、各自の学園に於て国際聯盟協会学生支部を設立し、以て恒久平和の理想を追求し、国際聯盟精神の普及に努め来りしが、玆に理想を同じうし、使命を一にする吾人各学生支部相結んで聯合会を組織す。
 冀くは広く同志の協助を得、吾人の所期の貫徹に向つて邁進せむ。
  大正十三年十一月八日
              国際聯盟協会学生支部全国聯合会
 午后五時半盛大裡に閉会を告げ、聴衆漸く屋外に出でんとした時、突如渋沢会長は自働車を急がせてかけつけられた。聴衆は会長の挨拶を聴く為に、再び座に引返して、会長の熱烈なる挨拶を受けたが、実に此間の光景は涙ぐましい程愉快のものであつた。かくて此大講演会は終つたのである。
      記念学生懇親会
 記念学生講演会終了後、直ちに自治会館楼上で、本協会関東学生支部聯合会の懇親会を催した。支部員以外一般学生の参会も歓迎したので、集るもの彼是三百名、平和を愛する若人の顔には、一種緊張の色さへ漲つてゐた。本会からは渋沢会長、添田副会長、田川・宮岡両理事出席し、来賓としてはチエツコスロヴアキア国公使始め外人部員、高木中央大学教授・友枝高師教授其他が見えた。
 慶応マンドリン倶楽部の演奏によつて、意義ある集ひの幕は切つて落された。
 続いて国際聯盟協会学生支部関東聯合会創立の宣言文の郎読あり、(日・仏両文にて)、チ国公使並に外人部員アームストロング氏の祝辞演説、高木中央大学教授の祝辞等あり、斯くして、溌溂たる学生諸君のテーブルスピーチは、此会に花を咲かせ、午後八時半盛会裡に閉会を告げた。
      米国へ打電
 前記懇親会席上、一早大学生支部員の提案により、今日聯盟外に孤立せる北米合衆国に対して、日本聯盟協会学生聯合会の名に依つて、米国の聯盟加入勧告の決議文を送致する事に決定、後日学生支部委員
 - 第36巻 p.627 -ページ画像 
協議の上草案を起草するに決定した。
 此事は昨年の協会総会にも提案あつたが、機にあらずとして其まゝになつた事であるが、今此決定を見たのは意味深い。
      記念大講演会
 八日には、学生支部聯合会主催の講演会であつたが、十一日には恒例に依つて、本協会主催・東京市後援の下に、午後五時から、東京府商工奨励館に大講演会を挙行した。当日の講師左の如くである。
一、挨拶          東京市長代理 奈須千万彦氏
二、同            本協会々長 渋沢栄一氏
三、民族的自尊心        慶大教授 板倉卓造氏
四、日本はどうなるか      本会理事 下村宏氏
五、列国軍備と国際聯盟    本会副会長 添田寿一氏
 聴衆は四百名位であつたけれども、何れも熱心にして真面目に、最後まで極めて静粛であつた。
  ○学生支部関東聯合会ハ十一月三日組織セラレ、東京横浜ノ各学生支部ノ提携聯絡ヲ計ルコトトナレリ。(「社団法人国際聯盟協会会務報告」〈大正一三年四月―大正一四年三月〉第一八頁)