デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
19款 汎太平洋協会
■綱文

第37巻 p.433-434(DK370104k) ページ画像

大正13年4月17日(1924年)

是日栄一、帝国ホテルニ於ケル、当協会ノ午餐会ニ出席シテ、演説ヲナス。


■資料

竜門雑誌 第四二九号・第二一―二四頁大正一三年六月 ○汎太平洋協会午餐会に於て 青淵先生(DK370104k-0001)
第37巻 p.433-434 ページ画像

竜門雑誌 第四二九号・第二一―二四頁大正一三年六月
    ○汎太平洋協会午餐会に於て
                      青淵先生
 本篇は、四月十七日帝国ホテルに於ける、汎太平洋協会午餐会に於ける講演なり(編者識)
○上略
 そこで私は、之は一時的の観光団位では効果は見えぬ、日米両国の間に国民同志で仲間を作つて、互に声息を通じ、或は論じ或は援け合つて行く様にしたいと考へた。千九百十五年に桑港に、巴奈馬開通の記念博覧会のあつた時、恰度欧洲諸国は戦争の為めに出品者が無かつたが、日本は之に賛同して多数の出品をしたので、加州人も大に喜んだのであります。其時私は再び亜米利加に参りました。当時西部の方は移民問題に就て、又東部に於ては、其の前年から支那との経緯で、米国人は日本に疑を抱いて居たから、私は紐育にも桑港にも行つて、同志と相談した結果、日米両方に日米関係委員会と云ふ常置的の団体を作りました。而して桑港の方は二十二名の会員があり、東京は私を初め、金子子爵・阪谷男爵・添田博士・藤山商業会議所会頭、又実業家では三井・岩崎等も入つて三十二名で、それは大正四年に成立したのであります。其時に桑港の商業会議所会頭のアレキサンダー君から移民問題に就て日本の輿論が聞き度いから、伏蔵なく陳述してくれる様にと云ふ希望がありました。そこで私は、輿論を開陳するの準備は出来て居ないから、之が日本の輿論とは申せないが、自分の考を遠慮なく披瀝すると云つて、第一に紳士協約が成立した以上、日本国民は之を厳守し、向後移民は其制限以上に行く事はない、仮令入国を望むものがあつても、必ず日本人相互の力で防止する事が出来る。第二には現在の移民に、習慣の相違から同化せざる事があつたならば、常に忠告して矯正しようから、亜米利加の方でも、日本人だからと云つて移民に差別待遇をしないといふことを実行して貰ひたい。斯うしたならば、両国間に紛議の起る筈はないと述べましたら、アレキサンダー氏始め満場の人人其通りであると云ひました。斯うして亜米利加側に関係委員会が出来るし、私も日本に関係委員会を作りました。
○中略
 私は此頃米国議会に於て、ジヨンソン案・シヨートリツジ案が上下両院を通過したと云ふ事を聞きまして、永い間亜米利加との関係を継続して骨を折つて居た甲斐もないと、余りに馬鹿らしく思はれ、社会が嫌になる位になつて、神も仏も無いのかと云ふ様な愚痴さへ出した
 - 第37巻 p.434 -ページ画像 
くなるのであります。現外務大臣の松井男爵が前日任命になつたと云ふ本年一月早々に、金子子爵と二人で外務省に往訪して、爾来の事共を詳細に話した事もあり、尋で総理大臣又は外務大臣を、金子・阪谷・添田・団氏等と共に訪問して、此際誰か一人米国に行つて実状を視察して、臨機の措置を要する事を進言したが、夫れが却つて邪魔になるといかぬと言つて居る中に、事態は悪い方に許り進んだのでありました。私は下院は通過するとも上院は通るまいと思つて居た。然るに上院迄も大多数で通過したと云ふ事を聞いた時には、七十年前に亜米利加排斥をしたが、当時の考を思ひ続けて居た方が良かつたと云ふ様な考を起さゞるを得ないのであります。
 併し真理は必ず最後の勝利者であらうと思ふ。私は今無遠慮に自己の希望を申し上げると、願はくは亜米利加の大統領が否認権を行使してもらひたのいであります。そして其後に於て高等委員会を組織して夫れによつて完全なる根本解決をしてほしいのであります。之は只日本の為めによいのみでなくして、日米両国の為めに適当なる処置であると確く信じて疑ないのであります。



〔参考〕集会日時通知表 大正一〇年(DK370104k-0002)
第37巻 p.434 ページ画像

集会日時通知表 大正一〇年        (渋沢子爵家所蔵)
九月十七日 土 午後七時 汎太平洋協会晩餐会(日本工業クラブ)



〔参考〕集会日時通知表 大正一一年(DK370104k-0003)
第37巻 p.434 ページ画像

集会日時通知表 大正一一年        (渋沢子爵家所蔵)
九月十八日 月 午後七時 汎太平洋協会晩餐会(日本工業クラブ)
             燕尾服



〔参考〕集会日時通知表 大正一三年(DK370104k-0004)
第37巻 p.434 ページ画像

集会日時通知表 大正一三年        (渋沢子爵家所蔵)
二月廿八日 木 午後一時 汎太平洋協会催
              バンカー氏招待午餐会(貴族院議長官舎)