デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
24款 財団法人日独文化協会
■綱文

第38巻 p.206-212(DK380018k) ページ画像

昭和2年6月18日(1927年)

是日当協会発会式、日本工業倶楽部ニ於テ挙行セラル。栄一臨席シテ祝辞ヲ述ブ。


■資料

竜門雑誌 第四六六号・第一〇一頁昭和二年七月 青淵先生動静大要(DK380018k-0001)
第38巻 p.206 ページ画像

竜門雑誌 第四六六号・第一〇一頁昭和二年七月
   青淵先生動静大要
      六月中
十八日 日独文化協会発会式(日本工業倶楽部)○下略


諸会報告書(三) 【財団法人日独文化協会発会式次第】(DK380018k-0002)
第38巻 p.206 ページ画像

諸会報告書(三)          (渋沢子爵家所蔵)
   財団法人日独文化協会発会式次第
一、開会
一、報告             理事長 文学博士 高楠順次郎
一、挨拶              会長 子爵   後藤新平
一、祝辞     内閣総理大臣兼外務大臣 男爵   田中義一閣下
一、同             文部大臣 法学博士 水野錬太郎閣下
一、同                  独逸大使 ゾルフ閣下
一、同           帝国学士院長 理学博士 桜井錠二閣下
一、同                  子爵   渋沢栄一閣下
一、講演 ドクトル・デル・フイロソフイー 主事   ウイルヘルム・グンデルト
  右終つて茶菓を供す


中外商業新報 第一四八四五号 昭和二年六月一九日 日独文化協会(DK380018k-0003)
第38巻 p.206 ページ画像

中外商業新報 第一四八四五号 昭和二年六月一九日
    日独文化協会
後藤新平子を会長とする日独文化協会は、六月十八日午後三時丸の内工業倶楽部に発会式挙行、理事長高楠博士の報告、後藤会長の挨拶についで田中首相・水野内相・ゾルフ大使・桜井学士院長・渋沢子の祝辞に次いで、主事グンデルト博士の講演があつて、午後五時来会者日独両国人三百余名盛会《(散会脱カ)》であつた


財団法人日独文化協会寄附行為並発会式報告 同協会編 第一―三七頁 昭和二年六月刊(DK380018k-0004)
第38巻 p.206-211 ページ画像

財団法人日独文化協会寄附行為並発会式報告 同協会編
                      第一―三七頁 昭和二年六月刊
    財団法人 日独文化協会設立経過報告
 明治維新以後我国が開国進取の国是に従ひ、広く知識を世界に求め泰西の文明を移植するに当り、或は欧米諸国より学者技術者を招聘し或は我国より研究調査員を各国に派遣して、各般の制度施設の樹立を図り、学術の進歩、産業の発達に資せしこと大なるものありき。而して我国が特に独逸に負ふところ頗る大にして、日独両国の関係は甚だ密なるものあり。然るに欧洲戦争勃発するや、不幸にして我国と独逸との交渉は、一時中絶するの已むなきに至りたるが、一度平和克復す
 - 第38巻 p.207 -ページ画像 
ると共に、両国の交際も亦旧に復して次第に親密を加へ、学術の研究又は文物制度視察の為、我国より独逸に渡航するもの毎年数百を下らず、経済的関係も日に月に改善せられつゝあるは、吾人の深く喜ぶところなり。
 然るに従来我国内に於ては、独逸の状況を詳知すべき機関、並に方法なかりしを以て、此等の渡航者は独逸に入国したる後、その指導を受くべき研究所又は視察すべき場所を求めて転々するが故に、所期の目的を達するまでに時間と経費とを徒費すること少なからず。随つて与へられたる期間内に十分の研究調査を遂ぐる能はざる嫌ありしことは、何人も遺憾とせしところにして、これが改善の道を講ずることの必要なるは、予て識者の間に唱道せられしところなり。
 加之更に他方より考ふるに、我国も亦古来独特の文化の世界に誇るべきものあれば、これを闡明して外国人に伝達し理解するところあらしむるは、独り国際親善の相互的義務なるのみならず、又我国が人類文化の発達に対する大なる使命なりと信ず。固より今日迄に於て我国の文化が、多少欧米人に由りて紹介研究せられたることありとするも尚極めて微々たるものに過ぎず、これ我国民の常に遺憾とせしところなり。
 然るに偶々独逸に於ては、日独親善の一方法として日独文化連絡機関を伯林に設け、一面に於ては独逸国内の各官庁及び各研究所と連絡を図り、各種の制度並に施設等を知り得る材料を蒐集し置きて、日本よりの来訪者に便じ、更に各人の希望に応じ関係方面に紹介の労を取ると共に、我国より有力なる学者を右機関の指導者として招聘し、日本の文化を独逸に紹介せしめ、尚我国より渡航する研究調査員の指導者と為し、又他面に於ては右機関に日本の学術制度及び施設に関する材料を蒐集し置きて、独逸の日本文化研究者に便ぜんとの議起り、独逸政府は之が為に既に大正十四年度の予算に於て、六万克の経費補助を計上したり。爾来本計画は着々進行し、玆に事業遂行の為に一の社団法人を特設したり。政府は右の経費を該社団法人に補助することとなり、昨年四月一日より事業を開始せり。名づけて『独逸及び日本に於ける精神的生活及び公的施設の相互的理解促進協会』(略称『日本協会』)と称す。
 独逸政府は右の計画を進むると共に、駐箚東京独逸大使を通じて、日本に於ても同様の機関を設け、独逸の右機関と連絡を保ち、我国の独逸研究者の為調査研究の便宜を図ると共に、独逸よりの旅行者に対し、日本文化の調査研究に関して便益を与へ、以て日独文化の連絡協同に尽力せられたき旨を非公式に申込み来れり。これ我等が既に久しく懐きし希望に合致するところあるを以て、有志相計り一の財団法人を設立して、独逸の文化を我国に紹介するの方途を講じ、又独逸よりの来訪者に対し、我国文化の研究に就いて便益を与ふると共に、進んで我国の文化を独逸に紹介し、又独逸に於ける右協会と連絡を図り、独逸の学術並に各種の制度施設等を知り得る材料を出来得る限り蒐集して、研究調査の為独逸に渡航せんとする者に対し、予め内地に於て相当の計画を樹て得るの便宜を図ることは、一は以て独逸政府の誠意
 - 第38巻 p.208 -ページ画像 
に酬ひ、一は以て我国文化の発展に資する所以なることを信ずるに至れり。
 この計画の進捗すると共に、我が政府は深く此の挙を賛し、本協会の事業に対する昭和二年度経費補助として、金三万円をその予算に計上せり。これと同時に本協会は基本金募集に着手せり。然るに本年三月末日に至り政府の予算確定したれば、不取敢既に寄附ありたる金三万円を基本金として、財団法人日独文化協会設立願を文部大臣に提出し、四月八日許可の指令ありたり。玆に於て理事・監事及び評議員を選嘱し、更に主事を委嘱するところあり、これを以て本協会成立の形式全く備れり。
 本協会はこれより進んで設立の趣旨に従ひ、在伯林の右機関と提携協同して、その事業を遂行せんことを欲す。今や会務漸く緒につき、玆に発会式を挙ぐるに至りたるは、予の最も欣幸とするところなり。
  昭和二年六月十八日
              財団法人日独文化協会
                 会長 子爵 後藤新平

    財団法人日独文化協会寄附行為
      第一章 名称及ビ事務所
第一条 本会ハ財団法人日独文化協会((Institut zur Förderung der wechselseitigen Kenntnis des geistigen Lebens und der öffentlichen Einrichtungen in Japan und Deutschland)ト称ス
第二条 本会ハ之ヲ東京市麹町区平河町五丁目十八番地ニ置キ、必要ニ応ジ支部ヲ置クコトヲ得
      第二章 目的及ビ事業
第三条 本会ハ日独文化ノ協同、及ビ相互普及ヲ図ルヲ以テ目的トス
第四条 本会ハ前条ノ目的ヲ達成スル為、主トシテ左ノ事業ヲ行フ
    一、日独文化研究者ニ対スル諸般ノ仲介
    二、独逸ニ於ケル諸施設ノ調査ニ対スル仲介
    三、日独両国ニ於ケル特殊科学ノ研究及ビ紹介
    四、日独文化ニ関スル研究資料ノ蒐集展覧及ビ出版
    五、独逸文化ノ研究ニ関スル会合及ビ講演
    六、其ノ他理事会ニ於テ適当ト認ムル事業
      第三章 会長及ビ評議員長
第五条 本会ニ会長及ビ評議員長ヲ置ク
    会長及ビ評議員長ハ評議員会ニ於テ之ヲ推薦ス
      第四章 名誉顧問
第六条 本会ニ名誉顧問ヲ置ク
    名誉顧問ハ評議員会ニ於テ之ヲ推薦ス
    本邦駐箚独逸大使ハ名誉顧問トス
      第五章 賛助員
第七条 本会ノ目的ニ賛シ、金百円以上ヲ寄附シタル者ヲ賛助員トス
      第六章 役員
 - 第38巻 p.209 -ページ画像 
第八条 本会ニ理事二十名以内、監事二名、評議員若干名ヲ置ク
    理事中一名ヲ理事長トス、理事会ニ於テ之ヲ互選ス
第九条 評議員ハ会長ヨリ之ヲ選嘱ス
    理事及監事ハ評議員会ニ於テ之ヲ互選ス
    役員ノ任期ハ総テ二年トス、但シ重任ヲ妨ゲズ
    理事ハ任期満了後ト雖モ、後任者ノ就任マデハ仍其ノ職務ヲ行フモノトス
    補欠ニヨリ選任セラレタル役員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
第十条 理事長ハ本会ヲ代表シ、理事会ノ決議ヲ経テ会務ヲ統理ス
    理事長ハ理事会ヲ招集シ之ガ議長ト為ル
    理事長事故アルトキハ、理事ノ互選ニ依リ其ノ代表者ヲ定ム
第十一条 理事ハ理事会ヲ組織シ会務ヲ処理ス
    理事会ハ必要アル毎ニ理事長之ヲ招集ス
    理事ハ会務ヲ管掌若クハ分掌ス
第十二条 監事ハ会務ヲ監査ス
第十三条 評議員ハ評議員会ヲ組織ス
    評議員会ハ評議員長之ヲ招集シ之ガ議長トナル
    評議員会ハ重要ナル会務ヲ議ス
    評議員会ハ毎年一回之ヲ開ク、但シ理事会ニ於テ必要ト認メ請求アルトキ、又ハ評議員五分ノ一以上ノ請求若クハ監事ヨリノ請求アルトキハ、臨時之ヲ開ク
第十四条 理事会及ビ評議員会ノ議事ハ出席者ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第十五条 本会ニ主事二名ヲ置クコトヲ得、二名ノ内一名ハ独逸人トシ一名ハ日本人トス
    主事ハ理事長ノ指揮ヲ受ケ専ラ会務ヲ輔ク
    主事ニハ手当ヲ給スルコトヲ得
第十六条 本会ニ有給事務員ヲ置クコトヲ得
      第七章 資産
第十七条 本会ノ資産ハ寄附金帝国政府ノ補助金其ノ他ノ収入ヨリ成ル
第十八条 本会ニ基本財産ヲ置ク
    本会ノ寄附金ハ之ヲ基本財産ニ編入ス、但シ用途ヲ指定シタル寄附金ハ此ノ限リニ非ズ
    基本財産ハ之ヲ消費スルコトヲ得ズ
    基本財産ノ管理方法ハ評議員会ノ議決ヲ経テ之ヲ定ム
第十九条 本会ノ経費ハ左ニ掲グルモノヲ以テ之ヲ支弁ス 
    一、帝国政府ノ補助金
    二、基本財産ヨリ生ズル利子
    三、用途ヲ指定シタル寄附金
    四、其ノ他ノ収入
第二十条 本会ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
 - 第38巻 p.210 -ページ画像 
      第八章 附則
第二十一条 本寄附行為ノ施行ニ関スル細則ハ、理事会及ビ評議員会ノ議決ヲ経テ之ヲ定ム
第二十二条 本寄附行為ノ条項ハ理事会及ビ評議員会ニ於テ、各々其ノ総員ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得、主務官庁ノ認可ヲ経テ之ヲ変更スルコトヲ得
第二十三条 本財団法人設立ノ当時ニ於ケル評議員・理事及ビ監事ハ設立者ニ於テ之ヲ選定ス

  会長          貴族院議員子爵 後藤新平
  名誉顧問 独逸大使 ドクトル・デル・フイロソフイー ウイルヘルム・ゾルフ
  評議員長        貴族院議員公爵 伊藤博邦
    役員
  理事
   理事長  東京帝国大学名誉教授文学博士 高楠順次郎
                  文部次官 粟屋謙
                  外務次官 出淵勝次
   医薬部長   東京帝国大学教授医学博士 林春雄
          九州帝国大学教授文学博士 鹿子木員信
   理化部長   東京帝国大学教授理学博士 松原行一
   経済部長    貴族院議員法学博士男爵 松岡均平
              京城帝国大学総長 松浦鎮次郎
   法律部長   東京帝国大学教授法学博士 三瀦信三
   総務部長        貴族院議員男爵 中島久万吉
   農林部長   東京帝国大学教授農学博士 那須皓
          京都帝国大学教授文学博士 坂口昂
                  医学博士 佐多愛彦
   美術部長   東京帝国大学教授工学博士 関野貞
   工芸部長           理学博士 田丸節郎
   文学部長   東京帝国大学教授文学博士 宇野哲人
  監事
                 文部書記官 菊沢季麿
                       坂井徳太郎
  主事
       ドクトル・デル・フイロソフイー ウイルヘルム・グンデルト
      東京高等師範学校教授兼東京帝国大学助教授 友枝高彦
     (評議員及び賛助員氏名は他日に譲る)

   発会式挨拶・祝辞並に講演
               昭和二年六月十八日午後三時日本工業倶楽部に於て
○中略
      渋沢子爵閣下祝辞
 本日日独文化協会の発会式に当りまして、祝辞として老後の一言を申上ぐるを得ますのを最も光栄と致します。私より前に出られた方々
 - 第38巻 p.211 -ページ画像 
の御演説並に御祝辞に於て充分に日独文化協会の必要を説き尽して居りますから、この上私が兎や角申上げる必要はありません。唯本協会の設立は日独親善の為に誠に御芽出度いことであると申上げれば充分であります。
 私はゾルフ大使の御演説を承りましてまことに感激に堪へません。日独両国が具合よく接触したならば、両者の文化を進歩せしむることと信じます。私は学問・宗教並に政治に付ては一向知りません。私の関係のあるのは実業でありますが、その実業界からすら、十年前に隠退致しまして、今は全く過去の人間であります。然し実業家の立場として申せば、本協会の成立はまことに喜ばしいことであります。一体物事は一人の力だけでは成就するものではありません。例へば発明にしましても、之を発明する人許りでは駄目であります。その発明を良く理解し応用し得る人があつて、始めて効果が挙るのであります。如何に学問が発達して居つても、之を応用する途が欠けて居つたなら、結局何の役にも立ちません。然るに独逸は、この点に於てはまことに好く行届いて居りまして、学問と応用とが良く聯絡・協調を保つて一国の発達に貢献して居りまして、誠に羨望に堪へませぬ。この学問と実際との良く調和して居る独逸国と提携して行くことは、我が日本にとつて必ず利益あることと存じます。
 唯今ゾルフ大使の言はれた如く、日独文化協会がこの日独文化の提携に尽力したならば、将来益々日独の親善が増進して両国互に利益することと存じます。ゾルフ大使の意味深長なる御演説を難有く拝聴致しました。又桜井君の言はれた如く、今日の時代に於ては各国間の理解・提携が必要であります。而してその理解・提携の為には、日独文化協会に類する機関があつて尽すのが一番有効であると信じます。即ち斯る機関に依つて国家間相互の理解を来し、延いて世界の平和を将来することとなるのであります。
 私は前にも申上げた通り、学問・宗教並に政治のことは一向に存じませんが、唯だ一個の実業家として申しますと、この日独文化協会の御事業に対しては大賛成であります。独り私許りでなく、此処に御列席の実業家諸君は必ず私と御同感であらうと信じて居ります。
 私は此の老後の一言を以て、本日の日独文化協会発会式の祝辞に代へます。
○下略



〔参考〕中外商業新報 第一四六〇四号 大正一五年一〇月二〇日 渋沢子の大蔵次官訪問(DK380018k-0005)
第38巻 p.211 ページ画像

中外商業新報 第一四六〇四号 大正一五年一〇月二〇日
    渋沢子の大蔵次官訪問
渋沢子は十九日午後零時半大蔵省に田次官を訪ひ、外務者の新規要求として提出されてゐる国際聯盟総会、及び日独会館に対する国庫の補助の件、その他中日実業会社の対支借款の事務上の点について意見を述べ、零時五十分退出した。



〔参考〕諸会報告書(三) 【(印刷物) 日独文化協会第一回公開講演】(DK380018k-0006)
第38巻 p.211-212 ページ画像

諸会報告書(三)         (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)

 - 第38巻 p.212 -ページ画像 

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