デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
6節 国際災害援助
3款 北支旱魃飢饉罹災民救済
■綱文

第40巻 p.27-33(DK400004k) ページ画像

大正9年9月22日(1920年)

是日栄一、総理大臣原敬ヲ官邸ニ訪ヒ、中華民国北部ニ発生シタル旱魃飢饉罹災民救援ニツキ進言シ、次イデ二十八日、日華実業協会ニ開カレタル幹事会ニ同協会会長トシテ出席、右ニ関シテ協議ス。


■資料

集会日時通知表 大正九年(DK400004k-0001)
第40巻 p.27 ページ画像

集会日時通知表 大正九年         (渋沢子爵家所蔵)
九月廿二日 水 午後三時  和田氏○豊治同道ノ上田中○義一陸相ヲ御訪問ノ約(同官邸)
        午後三半時 和田氏同道ノ上、原首相ヲ御訪問ノ約(同官邸)
        午後五時  和田氏同道ノ上、内田○康哉外相ヲ御訪問ノ約(外務省)
   ○中略。
九月廿八日 火 正午    日華実業協会幹事会(同会)麹、有楽一ノ一


竜門雑誌 第三八九号・第六四―六六頁 大正九年一〇月 ○日華実業協会と対支問題(DK400004k-0002)
第40巻 p.27-28 ページ画像

竜門雑誌 第三八九号・第六四―六六頁 大正九年一〇月
○日華実業協会と対支問題 日華実業協会にては九月二十一日正午、東京商業会議所に於いて幹事会を開き、対支問題に就き協議するところあり、翌二十二日会長青淵先生は副会長和田豊治氏同伴の上、田中陸相・原首相、並に内田外相を訪問して同会の決議に依る
 一、対支外交政策の統一
 二、山東半島の撤兵促進
 三、青島問題の至急解決
其他最近の北支那(直隷・山東・山西・河南)に於ける旱魃飢饉の為め、罹災民実に二千万と称せられ、其惨状真に同情に堪えざる次第なるを以て、右救済策に付種々意見を陳述し、超えて二十八日正午より同会に於て幹事会を開き、以て其経過を報告する所ありたる由なるが当日の出席者諸氏は
 青淵先生   和田豊治氏  白岩竜平氏
 藤瀬政治郎氏 杉原栄三郎氏 小池国三氏
 土佐幸太郎氏 鈴木島吉氏  中川小一郎氏
 伊東米治郎氏
にして、尚飢饉救済策としては、現在政府の所有に係る外国米の一部を支出せんことを希望し、追て政府に交渉する事として散会せる由なるが、九月二十七日の読売新聞は右救済策に関する青淵先生の談を掲載せり、曰く
 - 第40巻 p.28 -ページ画像 
 何しろ支那といふ国は
 △非常に 複雑な国情であるからオイといふてすぐ軽卒に救済するなんぞといふ様な事は出来ぬ事情がある、折角我々微力ながら実業団体が、誠心誠意赤心から出た事でも、政治的に考へられたりする事は大変心苦しい事でもあり馬鹿々々しい事でもあると
 △一部の 人々の中には斯んな説の人もあるので種々考慮し躊躇してゐるのであるが、我々中華協会の幹部が来る二十八日には寄合をして尚具体的の協議をする事になつてゐる、今何を贈るかなどは判然決まつてゐる訳ではないが、成程農商務省に四十万石の
 △外米が 貯へられてある、夫れを利用したらといふ事は仲間で考へてゐない事ではない、若しその幾分でも利用出来る運びになれば私の考へとしては、政府に関係のない一つの慈善団体でも作つて寄附金を募り、政府から特別に払下げを受けてとは思つてゐる
 △米でも 贈る事になれば、それが動機となつて米価の調節にも貢献し、支那と米価の共通相場が開ける様な機運を作らないものでもない、又防穀令の様な事もなくなる事になれば結構な事であるが、二十二日は和田豊治氏と原首相を訪問し、種々救援問題に就き意見を交換したが、首相も尤もな事だから考慮して置くとのお話であつた何うなるか不明だが是非何とかせねばならぬと考へてゐる、云々
尚十月四日の東京毎夕新聞は、青淵先生談として左の如く報ぜり
 目下支那の飢饉の程度を調査中であるが、排日運動の盛な支那に対し宋襄の仁に等しいやうな事をして、国内の反感を買ふやうなことがあつてもならぬから只管輿論に俟つことにしたい、尚一・二外国の意嚮も参酌する必要があるのでなかなか困難な事業である、併しながら政府としては賛成の意を洩らしてゐるから、イザ実行となれば此方面は存外容易く運ぶ見込である、云々


中外商業新報 第一二三九一号 大正九年九月一八日 支那饑饉救済 内閣協議未決定(DK400004k-0003)
第40巻 p.28 ページ画像

中外商業新報 第一二三九一号 大正九年九月一八日
    支那饑饉救済
      内閣協議未決定
十七日の定例閣議に於て内田外相は、支那五省の大饑饉に対し詳細なる報告をなし、之が救済に関し諮る所ありたるも、何等の決定を見ざりしと確聞す


東京日日新聞 第一五七九四号 大正九年九月二六日 饑饉救済善後 渋沢子爵の奔走(DK400004k-0004)
第40巻 p.28-29 ページ画像

東京日日新聞 第一五七九四号 大正九年九月二六日
    饑饉救済善後
      渋沢子爵の奔走
支那の直隷・山東・河南三省の大饑饉に対し、支那政府は勿論天津の各国在留民代表者及各国使臣等の間に於ても、之が救済方法に関し最善の努力をなしつゝある所なるが、我国に於ても隣邦の誼として此の惨状を黙視するに忍びざれば、何等かの方法を以て之が救済事業に助力を与ふる事は刻下の急務なりとし、渋沢子爵は熱心なる同情を抱き数日前原首相を訪問し、右救済に関し種々政府に建言する所あり、自らも関係諸団体に対して鋭意奔走し居る由にて、政府としては廿四日
 - 第40巻 p.29 -ページ画像 
の閣議に於て右に就き一応協議を為したるも、同日は単に意見の交換に止め別に具体案の決定を見るに至らざりしも、之が救済助力は急を要するものあれば、近く官民協力して義金の募集、其他適当なる方法を講ずるに至るべしと


中外商業新報 第一二四〇〇号 大正九年九月二七日 支那饑饉救済 帝国態度慎重(DK400004k-0005)
第40巻 p.29 ページ画像

中外商業新報 第一二四〇〇号 大正九年九月二七日
    支那饑饉救済
      帝国態度慎重
帝国政府に於ても曩に北京日英米仏四国公使会商の結果決定せし北支那飢饉共同救済の主旨は異論なきも、唯其具体的方法に就ては尚考慮中に属するものゝ如く、未だ何等決定せざるが我政府は各国が一律に寄附金募集し、之を以て救済の資に充当せんとするも开は恐らく
△数百万円に過ぎざるべければ、現在救済を要すと称せらるる窮民二千万に対しては到底満足なる救済を為し能はざるべく、又北京政府の意嚮に基き既に非公式に交渉しつゝある外債に拠るとしても、往来の飢饉救済に於けるが如く、徒に二・三当局者の私腹を肥し失態を再び繰返すの虞れなしとせざれば、此等を考慮せずして慢然救済の挙に出づるが如きは有害無益なるのみならず、或は延いて支那の政局を益々紛辞助長せしむるに至るべければ、叙上二点に関し充分の保護と確信を有するに至る迄は、寧ろ救済に手を染ざるは支那の利益たるのみならず
△極東平和の根本義たりとの見解の下に慎重の態度を持し居れば、帝国政府として愈々最後の決定を見るに至る迄は相当の時日あるべく観ぜらるるが、畢竟今日の場合は支那政府の救済策は外債以外適当の方法なきを以て、同政府は関係列国の要求する条件の下に起債し列国の徹底的監視の下に救済に着手するか、又は外債によりて物資を購入し窮民の必需品を供給する事によりて救済するか、の二者其一に決すべきものゝ如しと


中外商業新報 第一二四〇一号 大正九年九月二八日 政府所有外米で隣邦の餓を救へ 之が世に云ふ一挙両得 本日渋沢氏を会長とする日華実業協会幹部会で相談す(DK400004k-0006)
第40巻 p.29-30 ページ画像

中外商業新報 第一二四〇一号 大正九年九月二八日
  政府所有外米で隣邦の餓を救へ
    之が世に云ふ一挙両得
      本日渋沢氏を会長とする日華
      実業協会幹部会で相談す
北支那一帯が大飢饉に陥り、住民は草根木皮を喰ひ或は子女を売り飛ばして僅かに飢を凌ぎ、甚だしきに至りては道路に
△餓死する者頻々たりとは一ケ月前よりも同方面よりの帰客に依て齎された所であるが、同文同種の中華国民が道路に餓死するが如きは、仮令之を異族なりとするも座視するに忍びずとなし、渋沢子を会長とする日華実業協会では過般来幹事会を開き何等かの方法を以て救済することに協議した結果、渋沢会長は去る廿四日首相官邸に於て閣議散会後、原首相以下関係各大臣と
△会見し、政府に対し応分の援助せしめたき旨を陳情した、当局大臣も其必要を痛感し居る際とて其意を諒としたので、渋沢会長は之を日
 - 第40巻 p.30 -ページ画像 
華実業協会幹事に報告し、廿八日正午同会に幹部会を開き、救済の方法並に政府との交渉等に付種々協議する筈である、右に付同幹事は語る「日本の支那に対する関係は他の世界の何れの国を観るよりもより以上の深き関係と
△交渉を持つて居る、近年支那に於て日貨排斥其他種々の事件もあるが、皆一時的の現象で日本の真意を諒解せば立所に氷解するのである斯る折柄北支一帯が飢饉に遭ひ其惨状極度に在りと云ふを聞いて、之を放任するは人道上から見ても大義に悖り、又日本の同情を知らしむる必要もあれば、本協会は会長以下卒先して救済策を講じつゝある次第だ、其の方法は恰も本年は日本は大豊作で、政府も其所有外米の処分に苦む場合であるから、之を以て支那
△窮民を救ふは蓋し一挙両得と思ふ、幸に農商務大臣の諒解も得たれば近く何等か具体的方法が一決するであらう、而して愈々救済と決せば夫々の機関を通じて窮状の程度も調査し、時機に依つては視察員を派遣せねばなるまい」云々


東京日日新聞 第一五七九七号 大正九年九月二九日 饑饉救済 外米五十万石供給の内相談(DK400004k-0007)
第40巻 p.30 ページ画像

東京日日新聞 第一五七九七号 大正九年九月二九日
    饑饉救済
      外米五十万石供給の内相談
支那の直隷・山東・河南・江西の各省に亘れる饑饉は惨状益甚だしきより、我国に於ても隣邦の窮況を坐視するに忍びずと為し、渋沢子等の主宰せる日華協会中心となりて之が救済を図るべく、政府とも打合せの上資金募集に着手したるが、我国に於ても財界変動後の事とて資金の募集兎角意の如くならざる為め、政府側に於ては広漠たる饑饉地に対し此際少額の資金を供給するも何等の効果なかるべきより、寧ろ現物供給を為すべしとの意嚮を有し、目下農商務省に貯蔵しある約五十万石の外国米を日華協会を中心とせる救済団に払下げ、同団より之を支那に供給せしむべく、斯くして両国の間に有無相通じ相互救助の実を挙ぐるに至らば、将来にも頗る好都合なるべしとなし、渋沢子等と商議中なれば近く其実現を看るに至るべし、而して該計画の裏面に於ては本年に於ける我国の作柄は予想以上の豊作にして、日々米価下落し、農商務省の予想に依れば年末頃には暴落の程も一層甚だしかるべく、然らば政友会の主張しつゝある米価五十円標準も遂に破らるゝの虞あるより、一種の米価調節の意味をも含み居るにあらずやとの疑ひあり、民間にては支那の飢民救済は結構なれども裏面に斯くの如き魂胆を蔵するは面白からずとなす者少からず


東京日日新聞 第一五七九七号 大正九年九月二九日 纏りの付かぬ北支那の救済 日華協会の相談会も――何等具体的の決定を見ぬ 痛し痒しで悩む渋沢子(DK400004k-0008)
第40巻 p.30-31 ページ画像

東京日日新聞 第一五七九七号 大正九年九月二九日
  纏りの付かぬ北支那の救済
    日華協会の相談会も――
    何等具体的の決定を見ぬ
      痛し痒しで悩む渋沢子
渋沢子爵及び日華実業協会の幹部は昨日丸の内の同協会に会合して、北支那饑饉救済問題につき協議を凝したが、何等具体的に決する処な
 - 第40巻 p.31 -ページ画像 
くして散会した、渋沢子は曰く
「北支那の饑饉は隣国人として実に見るに忍びざる惨状である、本日他の事で協会で会合があつたのでこの事をも相談したが
△具体的の 救済方法を決するに至らなかつた、政府の貯蔵米を払下げて送つたらどうかと云ふ話も出たが、払下げるにしても金をどうするか、我々で救済団体を組織して一般から寄附金を募るとしても、それが予想通り成功するかどうかを考へて見ねばならぬ、即ち一般の人がこの募集に応じて呉れるかどうか内内で
△実業家に も当つて見たが、承知して呉れる者計りはなく、中には日貨排斥で苦しめられてゐる我々が救済でもあるまいと、振向いても見ない者もあると言ふ次第で迂濶に手を出せぬ、万一予定の如く集まらなかつた場合は我々の不面目計りではない、隣国に対しても申訳ない事になる、それに政府の考へも判然まだ判らぬ
△過般首相 に会つた時、矢張りこの話が出た『どうする御考へですか』と言つた処よく考へて置くと云ふ事で別れたから、勿論この話が打切りになつた訳ではない、私としても是非どうにかせねばならぬとは思つてゐるが、斯様な始末で甚だ残念ながら話が連ばないでゐる」



〔参考〕北支那旱災救済事業報告 日華実業協会編 第七―二五頁 大正一〇年一二月刊(DK400004k-0009)
第40巻 p.31-33 ページ画像

北支那旱災救済事業報告 日華実業協会編 第七―二五頁 大正一〇年一二月刊
    北支那饑饉概況
支那ハ元来、其版図遼濶年々地方ニヨリテ水災・旱災ノ事例ニ乏シカラザルモ、昨秋○大正九年ノ如ク北支那五省ニ亘ル大旱災ハ、蓋シ四十年来未曾有ノ事ニ属ストイフ
旱災ノ区域ハ支那北部一帯、即チ直隷・河南・山東・山西及陝西ノ五省ニ亘リ、南北六百余哩、東西三百哩約三万方里ノ耕地ハ荒土ト化シ其災民ノ総数三千万ト称セラル
○中略

    支那官民並ニ外人ノ救済施設
一、中央並ニ各省官憲ノ救済施設
 以上ノ如キ北支那ノ大饑饉ニ際シ、支那有識者ハ夙ニ憂慮スル所アリシガ、政争兵争ノ禍中ニ没頭セル政府及ビ各省軍民長官ハ財政ノ不如意ナル為メ、徹底的救済策ヲ施スノ術ナク、恰モ安福及ビ直隷両派内乱勃発シ北支一帯兵燹ノ禍中ニ陥リ、各被害地ノ惨事ハ通信員ノ手ニ依リテ内外ニ伝ヘラルヽニ至リ、大総統ノ救恤令発布ヲ見シハ漸ク九月上旬ニシテ、応急救助費トシテ山東ニ三万元・陝西・河南・直隷ノ各省ニ二万元ヲ支出シタルモ国家財政困難ノ為メ、各省長官ニ対シ救済資金調達ヲ命ジタリ
      大総統被災民救恤令
  今歳直隷・山東・河南等ノ各省雨沢稀少亢旱災ヲ成シ、其被災較重ノ地方ハ竟ニ赤地千里餓莩途ニ載スルニ至ル、前ニ帑項ヲ特発シ各該省々長ニ交シ核貫散放セシメシガ、現在時寒ニ向ヒ秋穫望ミナク衆民歳ヲ卒フル能ハザルベシ、迅カニ振恤ノ計ヲ為シ救済ニ資セザル可ラズ、玆ニ内務財政両部ヲシテ各該省長官ト協議シ金融ヲ籌集シ専員ヲ分派シ趕解急振シ、一面地方官紳ニ督飭シ平
 - 第40巻 p.32 -ページ画像 
糶ヲ弁理シ、所需ノ米石雑糧ノ経過スル各地方ノ関卡等ハ一切税釐ヲ免ジ、並ニ各該省長ヨリ罹災地方ノ情状ヲ調査セシメ、徴収スベキ銭糧等ハ夫々除媛ヲ呈請シ、以テ民難ヲ恤ミ以テ地方ノ元気ヲ保全シ被災ノ民生ヲシテ失所ヲ致サザラシメンコトヲ期シ、本大総統保恵ノ至意ニ副フベシ、此ニ令ス
○中略
内務部ニ於テハ救済弁法大綱ヲ定メ、救済機関ノ設立、被外調査、基金調達、糧食無賃輸送及糧食ノ廉売、施与・土工・飢民ノ移送等ノ法ヲ講ジ、交通部ニ於テハ国有鉄道ノ旅客及荷物運賃ノ増徴、電報料ノ増徴ヲ計リテ救済資金ニ当テ、又滙煙鉄道・京綏鉄道ノ工事ヲ起シテ代賑ノ法ヲ弁ジ、各般ニ亘リ救済ニ努メシモ財政不如意ノ為メ充分ノ施設ヲ為ス能ハズ、政府ハ更ニ各国借款団ニ対シ輸入税一割附加増収ヲ担保トシテ、四百万元ノ饑饉借款ヲ成立セシメタリ
      饑饉借款
政府ハ救済資金トシテ昨年十月、旧四国団ニ対シ一千二百万元ノ借款ヲ申込ミシガ、更ニ十二月ニ至リ四百万元ニ減額ノ上、正金(日)滙豊(英)花旗(米)滙理(仏)四銀行ニ対シ借款ヲ申込ミ、四国側ニ於テハ緊急必要ノモノト認メ関税附加増徴ニ依ル収入ヲ担保トシテ内諾ヲ与ヘ、本年一月ニ至リテ調印ヲ見ルニ至レリ
○中略
地方各省長官モ中央ニ做ヒテ救済資金ノ調達、糧食及衣類ノ籌備ヲ計リ賑務方法トシテ平糶(中貧ノ戸口ニハ官ヨリ糧食ヲ備ヘ或ハ貯穀ヲ廉売シ、或ハ長期間貸与ス)施与(極貧ノ戸口ニハ官ヨリ施与ス)工賑(壮年ノ工作ニ堪ユル貧民ハ公共工事又ハ貧民工廠ヲ起シテ之ヲ使用ス)遣送(他処ヨリ旱災ノ為メ流亡シ来レル農民ヲ賑撫シ、同時ニ旅費ヲ給シテ本籍ニ送還ス)移民(職業ナク而モ本地ニテ使用スベキ途ナキ者ハ、各省長官ヨリ主管部ニ商リ、生計ヲ謀リ得ベキ地方ニ移ス)等ノ弁法ヲ採レリ
      民間ノ救済施設
華洋義賑会 本部ヲ上海ニ設ケ唐紹儀・朱葆三等有力者ノ発起ニ係ル
北五省災区救済会 本部ヲ北京ニ設ケ会長趙爾巽、副会長熊希齢・汪大燮ニシテ、蔡延幹主トシテ衝ニ当レリ
華北華洋義賑会 本部ヲ天津ニ設ケ辺守靖ノ主宰スル所ニシテ会長梁浩、副会長米国総領事、倫敦教会牧師、直隷省議長、商務総会総理等ニシテ各国人ヲ網羅スル団体ナリ
華北救済会 会長梁土詒ニシテ北京ニ本部ヲ置ク
国際実行救済委員会 日・英・米・仏公使ヲ後援トスル各国人協同ノ団体ニシテ、本部ヲ北京ニ置キ英国人ドクトル・クレー氏ヲ会長トシテ、四国協調的ニ救済ヲ実行セントスルニアリ、寄附金ノ募集、救済分配等ノ特別委員ヲ設ケ、財政顧問会ヲ組織シ各国並ニ殖民地ニ対シテ食物・金品ノ寄附ヲ勧誘シ、最モ顕著ナル救済実施ニ当レリ
国際統一救済総会 支那各地ノ救済団体ノ統一ヲ期シ、救済ノ大綱ヲ定ムルヲ目的トシ、各支那人有力団体ノ代表者二名宛及各国団
 - 第40巻 p.33 -ページ画像 
体ノ委員二名宛ヲ網羅シテ会員トナセリ
其他被害各省ニハ河南旱災救済会、山東旱災救済会、山西募捐救荒会陝西義賑会等、各種ノ救恤団体組織サレタリ
    外人ノ救済施設
在支外人ハ英米日等夫々各地ニ救恤団体ヲ組織シ、救済義金募集ニ努メシモ、就中米人側ノ救済ハ最モ顕著ニ伝ヘラレ、米国赤十字社ハ五十万元ヲ醵出シテ山東省ニ於テ徳州ヨリ臨済ヲ経テ東昌府ニ至ル一百哩ノ道路工事ヲ起シタリシガ、其竣工ヲ竢チテ更ニ道路建設工事ヲ起シタリ
○中略
我赤十字社ニヨリテ完成セラレタル建設事業ノ総量ニ関シテハ、次ノ如キ概略ノ数字ヲ挙グルヲ得ベシ
 山東省     四八五哩(植付樹木五万本)
 山西省平定州   七八哩(亜米利加赤十字社ノ資金ニテ完成セラルヽ筈)
 黄河道路及支道 一二三哩(七五%完成)
 直隷省邯鄲    四六哩
 保定―天津    七五哩
 北京―天津    一二哩(連絡ナキ方面ニ)
 河南省      三七哩(四哩ヲ除キ其他ハ全部小砂利ヲ撒ク)
   合計    八五六哩
 鄭州ノ井戸開鑿 完成三五七二個所
大約一万五千噸ノ穀物ガ購買セラレ、此等ノ計画ノ下ニ配与セラレタルナリ
○中略
英・米・日ノ諸国ハ其本国ニ於テモ救恤資金ノ募集開始サレ、米国ニ於テハ義捐金額数百万弗ニ達セリト、日本ニ於テモ官民共ニ深甚ナル同情ヲ表シ、本協会ヲ中心トシテ全国ニ亘リ官民一致国民的義捐金ノ募集ニ当ル外、帝国教育会ハ全国ノ小中学職員生徒ヨリ一銭以上ノ義捐金ヲ募集シ、十数万円ノ金額ヲ以テ慰問使ヲ派遣シ救恤ニ当リ、尚台北ニ於ケル救済団ハ台湾米五千石ヲ北京政府ニ寄贈セリト
東京外各地ニ於テモ各種ノ団体ニヨリテ饑饉救済資金募集ノ為メ種々ノ計画催サレ、何レモ好感ヲ以テ迎ヘラレタリ