デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
7節 其他ノ資料
2款 日米関係諸資料
■綱文

第40巻 p.476-478(DK400141k) ページ画像

昭和5年9月6日(1930年)

是日栄一、先ニハワイ、ホノルルノ奥村多喜衛等ヨリ、日米関係委員会ニ依頼シ来レル、桜苗木調達ノ件ニ就キ、移植ハ不適当ナル旨ヲ書通ス。


■資料

(奥村多喜衛外二名) 書翰 渋沢栄一宛 昭和五年八月一〇日(DK400141k-0001)
第40巻 p.476-477 ページ画像

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渋沢栄一書翰控 毛利伊賀外二名宛 昭和五年九月六日(DK400141k-0002)
第40巻 p.477-478 ページ画像

渋沢栄一書翰控 毛利伊賀外二名宛 昭和五年九月六日 (渋沢子爵家所蔵)
          (別筆)
          本写の原文に御小印得御押捺、御下命ニヨリ毛利伊賀氏宛発送(書留便ニテ)
    案
 ハワイ領ホノルヽ市
  三十年会代表
    奥村多喜衛殿
    勝沼富蔵殿
    毛利伊賀殿
                   東京 渋沢栄一
拝復、益御清適奉賀候、然ば貴地に大和桜移植御希望の由にて御懇篤の来示拝誦致候、就て早速赤松総領事の意見を確め、更に斯学の権威たる林学博士本多静六氏に諮り候上種々考慮致候処、実行上に疑義有之候様被存候に付ては、一応貴方の御考究を得度要領を左に記し置候
 一、桜は四季の変化の明確なる土地に於てのみ開花する樹木にして其変化著しからざるときは予期の花を見ることを得ず、殊に落葉が必要に有之、自然降霜が必須条件なる次第に御座候、然るに御地は四時殆んど変化なく、最低温度も五十度位との事なるに付降霜を望むの見込なく、従て桜花本然の美を発揮すること不可能なるべきこと
 一、従来の経験によれば桜樹は熱帯又は亜熱帯に於ては移植後三年間は発育良好にして開花亦見るべきものあるも、其後漸次退化し
 - 第40巻 p.478 -ページ画像 
て葉間に小数の貧弱なる花を付くる様になり、十年以内には全然花咲くことなく文字通りの葉桜に堕すること
 一、米国本土にては日本苗木の輸入を厳禁し居るに付ハワイも同様なるべく、仮りに桜樹苗木を輸送するとするも、果して貴税関を通過し得ざるやう思惟せらるゝこと、又仮りに税関を通過したりとするも植栽地無之ては如何とも致し難き義に有之、其辺十分成算有之やを憂慮すること
 一、ホノルヽは四時百花妍を競ふを以て有名なる都なれば、上記の如く退化したる桜花を強て咲かしめ、却つて其歴史的声価を落すこと果して如何ならんと思はるゝこと
右等十分御考慮御調査の上何分の御回答を得たる後、日米関係委員会の協議に付することゝ致、其前老生個人の資格を以て、一応得貴意候次第に御座候、此辺の事情御諒納被下、可然御協議の上貴答御示し被下度候
右得貴意度如此御座候 敬具
  昭和五年九月六日