デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

4章 道徳・宗教
1節 儒教
8款 陽明学会
■綱文

第41巻 p.183-185(DK410057k) ページ画像

大正6年4月(1917年)

是月当会、中旬ヲ期シ、雑誌「陽明学」満百号祝賀兼春季懇親会ヲ、日比谷大神宮境内大松閣ニ開催スル予定ナリシガ、栄一ノ都合ソノ他ニヨリ流会トス。


■資料

陽明学 第一〇〇号・第二四頁 大正六年三月 特別予告(DK410057k-0001)
第41巻 p.183 ページ画像

陽明学 第一〇〇号・第二四頁 大正六年三月
    特別予告
拝啓、已に前号に於て予告申候通り、本会創立以来大方諸子の同情協力によりて以て今日に至り、毎月刊行の雑誌陽明学も、恰も本三月号にて已に満百号の期に達し申す事に相成候段は、諸子の御同慶を願ひ度き事に御座候、因て本会は更に来る四月桜花爛熳(愈々時日確定の上は其際も可申上と存候へとも多分は中旬中に可相成かと存居候)の候を期し、同志の春季懇親会を兼て満百号祝賀紀念会を開催致度候間御承知置を願度事前号申上候通りに御座候、猶其際席上の余興にも可相成様、抽籤用に供すべきもの御揮毫又はなに品にても御寄付被下候へは仕合に御座候、同じくは本月内に先以て当事務所まで御届可被下奉願上候
                      陽明学会


陽明学 第一〇一号・第二六頁 大正六年四月 特別社告(DK410057k-0002)
第41巻 p.183 ページ画像

陽明学 第一〇一号・第二六頁 大正六年四月
    特別社告
拝啓、前号にも申置候通り本誌満百号祝賀兼春季懇親会は、弥々今月の真中に相当する来る十五日(第三日曜)の午後一時より開会の事に決し会場日比谷神宮境内大松閣に致し申候、就ては当日渋沢男爵も何か御所感談有之筈、其他諸氏も御同情を以て御演説を被成下御方は演題御通知被下度、又前申候通り余興品御揮毫などの御寄附奉願候、孰れ其一週前迄に更に御案内書も可差出の処、御差繰りも可有之、日限会場先以て申上置き度如此に御座候、遠国諸氏迄には一々御案内も申遣し兼候得共、何卒御上京御列席被下度奉願候、猶其思召も有之候はゞ乍憚先以て本会へ御一報煩度候
  大正六年四月              陽明学会


陽明学 第一〇二号・第二一―二二頁 大正六年五月 雑誌満百祝賀兼春季懇親大会の件(DK410057k-0003)
第41巻 p.183-184 ページ画像

陽明学 第一〇二号・第二一―二二頁 大正六年五月
○雑誌満百祝賀兼春季懇親大会の件 大会は雑誌にも予告せし通り四月十五日を以て日比谷大松閣に於て開会すべきの所、全会員の不参者多く、期日前十三日の夜に至り大会の見込無之事となり、遺憾ながら
 - 第41巻 p.184 -ページ画像 
遂に此回の大会を全く取消し流会せしむるの已むなき事となれり、其れには各人種々の事情より生ずる結果なるも、其事情の一として、元来当日には陽明先生像に祭告式を行ひ、続いて渋沢男爵・井上博士の講演ありて、寄贈品揮毫などの抽籤を行ふ手筈にて、それぞれ案内書を発したるに、意外にも渋沢男爵・井上博士共に出席不可能となるのみならず、其他も故障を生じて集会者を失ふたること従来未曾有の次第にて、大会の不成立となりたるは是迄の予告に対し不面目の至り、泰山鳴動して鼠一疋を出す能はざるの感あり、此れ全く吾等周旋不行届より生ぜることいふ迄もなきことなるが、渋沢翁の如きも非常に気の毒がられて、十四日を以て主幹当にて左の如き来状あり。
 拝啓○中略明十五日には陽明学会御開催に付、小生にも出席致候様客月初賢台弊屋へ尊来之際懇々御垂示被下候に付、拝趨之旨御受申上置候、然るに小生客月中旬京阪地方旅行いたし、帰京早々に風邪之為平臥罷在折柄、拙宅に一会相催可申都合と相成、賢台と兼約之時日を失念せしより、同じく十五日を以て当日と相定め、終に貴会に出席仕兼候様相成候は、実に不都合之次第陳謝此事に御座候、右は小生之不注意より相生候儀にて候まゝ、種々之御手違相生候事と深く恐悚仕候、何卒来会之諸彦にも右之事情御弁明被下御諒恕之程相願候、右一書可得貴意如此御座候 敬具
斯様にして全く事実上詮方なく流会と相成、徒に諸会員を驚かしたることは本会の深く謝辞し申上ぐる所なるも、別に何等の内情などありて此結果を生じたる訳にては寸毫も無之事は、吾全会員諸氏の已に洞察せられ居ことなれば、今に於て吾等の改めて弁明するにも及ばざるべし、顧ふに元来吾が雑誌がやつと百号に達したればとて、祝祭を開くなどは寧ろ笑止千万のことにて、此回の結果は蓋しまた天意の深く我等を警しめしものなるやも知るべからざれば、此後祝祭は雑誌満二百号を待つて一考することゝなし、而して猶懇親会としては更に好時機を見てまたまた開会することあるべし、此度に抽籤用として揮毫又は物品などの寄附ありたるは、懸成領収し置きて他日の用に供すべければ、此には其の芳名を左に記して厚意を謝し且つ以て記念となす。
(但し芳名は到着順)
 新居湘香氏(東京住但し同氏は揮毫を本会に投与せし揚句数日にて病死) 高瀬惺軒氏(本会評議員西京住文学博士) 春日精之助氏(西京住)勝部喬洲氏(北海道住)藤田苔巌氏(大和住画家) 高浦凌霜氏(広島県住八十五歳儒者) 小林貫斎氏(東京住) 本田思斎氏(東京住) 小川清処氏(広島県厳島住画家) 村田看雨氏(東京住) 鈴木全軒氏 棚橋絢子女史 渋沢男爵(以上三氏共東京住)
猶当日の流会を知られずして会場に到られたるは、細沼矯郷氏・加藤梅泉氏(同氏は近県旅行先よりそのため前夜の終列車にて帰京せるが如し) 曾田文甫氏(京都より来京)、此等の諸氏にはまた別て気の毒なりしが玆に録し諒恕を乞ふ。



〔参考〕渋沢栄一書翰 石井健吾宛(大正七年)七月二六日(DK410057k-0004)
第41巻 p.184-185 ページ画像

渋沢栄一書翰 石井健吾宛(大正七年)七月二六日 (石井健吾氏所蔵)
拝啓、益御清適御坐可被成奉賀候、然者此一書持参御面会相願候人ハ東敬治と申王陽明派之学者ニ御坐候、此度横浜ニ於て同学之会員募集
 - 第41巻 p.185 -ページ画像 
之為罷出候ニ付而ハ、従来老生も其会員ニ列し居候旁貴台ニ添書いたし、幸ひ第二銀行員山形氏《(山県)》ハ右東氏とハ同郷人之関係も有之候ニ付、相共ニ御尽力被下度と申事ニ御坐候、陽明学と申ハ儒教中尤以必要之学説ニて、可成世間ニ普及候様致度と相考候、依而本人ニ添書差出候間可然御心配可被下候、右拝願如此御坐候 匆々敬具
  七月廿六日                 渋沢栄一
    石井健吾様
          梧下
   ○右書翰封筒裏面ニ「東敬治氏持参」ト記ス。