デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

4章 道徳・宗教
1節 儒教
8款 陽明学会
■綱文

第41巻 p.194-195(DK410060k) ページ画像

大正11年5月14日(1922年)

是日、当会陽明全書講読会発会式ヲ飛鳥山邸ニ於テ挙行ス。栄一発会ノ辞ヲ述ブ。


■資料

集会日時通知表 大正一一年(DK410060k-0001)
第41巻 p.194 ページ画像

集会日時通知表 大正一一年        (渋沢子爵家所蔵)
五月十四日 日 午後二時 陽明全書講演会発会式《(読)》(飛鳥山邸)


陽明学 第一五六号・第七―八頁 大正一一年七月 陽明全書講読会発会の辞 五月十四日発会式に於る渋沢子口演の要旨(文責記者)(DK410060k-0002)
第41巻 p.194-195 ページ画像

陽明学 第一五六号・第七―八頁 大正一一年七月
    陽明全書講読会発会の辞
      五月十四日発会式に於る渋沢子口演の要旨(文責記者)
 私が此正堂先生の首唱された陽明学会の一役員として昨年春季大会の会場に当邸を御用立ましたる時に、陽明全書の講読会を開く事に御約束せしに、爾来俗事多忙に追はれ随て米国行の事などありて、只様《(マヽ)》と荏苒延引して一箇年後の今日に至りて、漸くこゝに其の発会式を挙ぐる事となり、諸君の御来会を煩したる次第であります。式終れば庭園に設けてある席に就き、御酒などあがりながら、御話など承りたいと思ひます。全書の研究も今日に於てはそれそれ業務の都合のある御方のみかと思ひますれば、日中をば避て夜分でも致す事とし、此の所は余りに遠き様に思れますれば、兜町の宅にて開く事と致したいと思ひます。
 今日は発会の事でありますれば、唯々其の式を挙ぐる事と致し、纔に其端緒を始めるまでゞあります。其講読の方法は正堂先生に一任してあります故どうか御考があらうとおもひます。何分全書は唐本で四帙二十四冊もあるものなれば、之を僅々月に一回か二回かの講読会で研究しようと云ふは、大海を茶柄杓で酙み尽さんとする様なものにひとしき事ながら、多忙の我等では已むを得ない、而も根気よくつゞけて行く事なればいつかは完了する時があると思ふ。私は漢籍の素養は少なきが上に陽明の学等は殆んど脩めたる事なく、甚だ恥しき事であるが、然し兼々陽明先生の学問は、大に世の学者の徒に無益の空想に耽り、新奇を衒ひて人を惑はし、随て思想の錯乱となり、倫理の根本にも疑を挟む様の学を嫌はれ、専ら実行を先にしたるものにて、其の致良知は即ち日用実践の学で日々に実行するにありと承りたる事にて其学説が実行に離れざるものと深く信じますので、私は其学を研究せば之を我等如き不学多忙のものにても、少しく知ればそれだけすぐに我々の業務上に役立つ事を信じたるものであります。最も実行の学と申しても、余り表面形式上より講究したる人は変屈に陥るの嫌もあり日本で言へば物徂徠の学の如きやうのものもありますが、陽明学はこれ等の嫌なく、日用の学に適当でありますので、私如き不学のものが
 - 第41巻 p.195 -ページ画像 
諸君方の多くの学者先生などの席間へ御仲間入りして不格好とも見えまいかと思ひますけれども、何分とも業務多忙のため文学の隙を得ず陽明学会に年来関係も致し研究も仕度いと思ひながら経過しておる中幸にも此節支那人より此全書を貰ふた、因て之を機会に先きに正堂先生につきてそれに点を附けて貰ひましたなれども、実はまだ一遍も其の書物は読みた事はなく、一遍でも之を読みたならば、嘸々興味湧生すとも申すべく存じ、老後の思出に此の講読会を始めた事でありますが、どうかこれが皆様と共に趣味を新にして読む事にしたいと思ひます。
 私は先づこれで御挨拶を終りますが、其の方法は更に正堂先生より御話もあるかと思はれます。


陽明学 第一五五号 大正一一年六月 雑報 陽明全書講読会発会式の件(DK410060k-0003)
第41巻 p.195 ページ画像

陽明学 第一五五号 大正一一年六月
  雑報
○陽明全書講読会発会式の件 此会は元来昨年春季大会を飛鳥山渋沢邸に挙行せしときより、渋沢子爵の発議せしの意に基きたる事にて、それがやうやく此五月十四日午後二時を以て飛鳥山渋沢邸に於て、其発会式を挙ぐることゝなるに至るものなり、此事たるは固り本会事業の一には相違なきも、主に渋沢子爵と本会主幹との連名せる案内書を発送せり、当日会者凡そ六十余人、中には横須賀地方より来会せるものあり、開会の辞は渋沢子爵の挨拶にして、講者正堂任之、これにて式畢りて後は昨年春季大会の時の如く、皆式場を出でゝ庭園に下り略ぼ園遊会の形をなし数処団欒をなし、又子爵より近日新聞紙上に声価嘖々たる駒込理化学研究所にての新発明に係る名醸を供せらる、此物酒精の原料を米穀に取らざる所に其妙ありて、而も其芳烈最も甚し、同人皆大に酔ふて帰途に就くことゝなれり


陽明学 第一五五号 大正一一年六月 社告 陽明全書講読会興る(DK410060k-0004)
第41巻 p.195 ページ画像

陽明学 第一五五号 大正一一年六月
    社告
  陽明全書講読会興る
右本雑誌雑報中に記する如く、発会の式だけは渋沢邸に挙行致し候も以後は会場を日本橋兜町渋沢事務所となし、毎月々の中旬中に(日曜の外)一日を定めて出席の御方へは先以て通告する次第に候間、自然御都合により出席も相成べき御思召も有之方は、兼て御申込置可被下候、大抵は其時刻を夕五・六時よりと内定の事に御座候
                      陽明学会