デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和3年4月22日（1928年）

是日、斯文会ハ、湯島仮聖堂ニ於テ孔子祭典ヲ執行後、東京女子高等師範学校ニ展覧会ヲ催シ、国訳論語ノ作成ニ参考トセル訓点資料ノ展観ヲナス。栄一所蔵ノ論語ヲ出陳ス。

斯文　　第一〇編第六号・第七六頁　昭和三年六月
　　　　○論語展覧会
　四月二十二日午前十時三十分より、東京女子高等師範学校に於て祭典記念展覧会を開く。参拝者の観覧に便せんが為め、祭典終了後聖橋畔なる本会通用門と、之と斜めに相対せる女高師の裏門とを開放して通行せしめたり。
　此の展覧会は祭典附帯の年中行事なれば、祭器神器を陳設せしことは例年の通りなるも、昨年来本会にて編纂せる国訳論語の参考書として集めたる各種の訓点本六十三種、又委員会の討議に附せる原稿第一稿より第三稿までの謄写版摺、印刷の見本、製本の体裁等を陳列して閲覧に供したり。
　陳列書籍の目録は、前号会報欄の末に記載したれば既に一読せられたることゝ思ふ。其の中にて東京高等師学校所蔵の元亀四年春永筆訓点附論語集註巻一零本一冊、渋沢子爵所蔵の同書巻二巻十零本二冊、は之を併合するも尚完璧と称すべからざれども、希世の珍本なり。

斯文　　第一〇編第五号・第五六―五七頁　昭和三年五月
　　　　○論語展覧会目録
　四月二十二日孔子祭典後、東京女子高等師範学校に於て開かるべき論語展覧会の目録は左の如し。
　　　　　　第一部国訳論語訓点資料
　　一、国訳論語稿本　　　　　　　　初稿再稿三稿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三冊
　　二、論語訓点変遷資料稿本　　　　左記十六部ノ訓点ヲ章別ニ集綴セシモノ　　　　　　　　　　　　　　五〇〇綴
　　三、論語鈔（成簣堂叢書）　　　　大正六年覆刻　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　六冊
　　四、魯論　　　　　　　　　　　　正平単跋本　足利中期写　訓点附　　　　　　　　　　　　　　　　　　五冊写
　　五、論語集註（巻一零本）　　　　元亀四年春永筆　訓点附桂　庵点ト推定スベキ理由アリ　　　　　　　　一冊写
　　六、論語鈔（巻十欠）　　　　　　十八行古活字本　訓点附　舟橋家旧蔵　　　　　　　　　　　　　　　　　九冊
　　七、羅山　訓点　四書集註　　　　元禄五年刊横小本　梅花堂版　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五冊
　　八、四書集註　　　　　　　　　　山崎嘉点　　薩摩府学版　弘化二年開版嘉永再刊　　　　　　　　　　　一〇冊
　　九、論語古義　　　　　　　　　　伊藤維楨著正徳二年刊　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　四冊
 - 第41巻 p.341 -ページ画像 
　　一〇、論語古訓正文　　　　　　　太宰純著　宝暦四年開　天明七年再刊　　　　　　　　　　　　　　　　　一冊
　　一一、新刻　改正　四書集註　　　後藤芝山点　明治三年刊　佐土原版　　　　　　　　　　　　　　　　　一〇冊
　　一二、論語繹解　　　　　　　　　皆川愿著安永六年刊　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一〇冊
　　一三、論語語由　　　　　　　　　亀井南冥著文化三年刊　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一〇冊
　　一四、校定　音訓　四書正文　　　佐藤垣訓式　安政六年刊　山田寛校　　　　　　　　　　　　　　　　　　五冊
　　一五、慶応　新刻　四書　　　　　日尾瑜点　慶応三年刊　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一〇冊
番外一、大魁四書集註（論語孟子）　文之点寛永三丙寅年初刊本重刊本ノ訓点ト多少ノ異同アリ　松井簡治博士蔵　合五冊
番外二、大魁四書集註（中庸孟子）慶安二年重刊本　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五冊
番外三、論語示蒙句解　　　　　　　　中村惕斎著　元禄一六年刊　内野台嶺氏蔵　　　　　　　　　　　　　　　　五冊
番外四、論語義疏　　　　　　　　　　根本遜志著　寛延三年開版　元治元年補刻　内野台嶺氏蔵　　　　　　　　　五冊
番外五、論語集註　　　　　　　　　　（巻二巻十零本）元亀四年春永　筆（本目録五参照）渋沢子爵蔵　　　　　　二冊
○下略
　　○右祭典ニ栄一ハ参列セズ、「集会日時通知表」ニハ書込アルモ、栄一ハ四月二十日ヨリ同三十日マデ風邪ニテ臥床中ナリ。（「竜門雑誌」ニ拠ル）