デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正4年5月19日（1915年）

是日栄一、内閣ヨリ明治神宮造営局評議委員ヲ委嘱セラル。同十三年十二月二十日造営局官制改正ニヨリ、評議委員廃止セラル。

官報　第八二二号大正四年五月一日
　　　　○勅令
朕明治神宮造営局官制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
　御名　御璽
　　大正四年四月三十日
　　　　　　　　　　　　　内閣総理大臣　伯爵　大隈重信
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　子爵　大浦兼武
勅令第五十七号
　　　　明治神宮造営局官制
第一条　明治神宮造営局ハ内務大臣ノ管理ニ属シ、明治神宮造営ニ関スル事務ヲ掌ル
第二条　明治神宮造営局ニ総裁一人ヲ置ク
　総裁ハ皇族ノ中ヨリ之ヲ勅命ス
第三条　明治神宮造営局ニ左ノ職員ヲ置ク
　　副総裁　一人
　　局長　一人　勅任
　　書記官　専任一人　奏任
　　　○主事・参与・参事・技師・属・技手略ス。
第四条　副総裁ハ内務大臣ヲ以テ之ニ充ツ、所部ノ職員ヲ統督シ局務ヲ総判シ、判任官以下ノ進退ヲ専行ス
○中略
　　　○第五条略ス。
第六条　参与及参事ハ学識又ハ経験アル者ノ中ヨリ、内務大臣ノ奏請ニ依リ内閣ニ於テ之ヲ命ス
　　　○第七条・第八条略ス。
第九条　明治神宮造営局ニ評議委員会ヲ置ク
　評議委員会ハ明治神宮造営ニ関スル重要ノ事項ヲ調査審議ス
　評議委員会ハ会長及評議委員ヲ以テ之ヲ組織ス
　会長ハ副総裁ヲ以テ之ニ充ツ
　評議委員ハ内務大臣ノ奏請ニ依リ、内閣ニ於テ之ヲ命ス
第十条　会長ハ会務ヲ統理シ、会議ノ議長ト為ル
　会長事故アルトキハ、内務大臣ノ指名シタル評議委員其ノ事務ヲ代理ス
第十一条　評議委員会ニ幹事二人及書記ヲ置ク
　幹事ハ内務部内高等官ノ中ヨリ内務大臣ノ奏請ニ依リ、内閣ニ於テ
 - 第41巻 p.589 -ページ画像 
之ヲ命ス、会長ノ命ヲ受ケ庶務ヲ掌理ス
　書記ハ内務部内判任官ノ中ヨリ内務大臣之ヲ命ス、上司ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第十二条　評議委員・幹事及書記ニハ手当ヲ給スルコトヲ得
　　　　　　附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

官報　第八三八号大正四年五月二〇日
　　　　○叙任及辞令
　　　　　　　　　　　　　従三位勲一等男爵　渋沢栄一
明治神宮造営局評議委員被仰付（五月十九日内閣）
　　　○栄一ト共ニ同日付ヲ以テ評議委員ニ命セラレシハ左ノ十九名ナリ。
　　　　沖野忠雄・阪谷芳郎・馬場三郎・河村金五郎・南部光臣・三上参次・市来乙彦・小橋一太・岡本英太郎・安河内麻吉・萩野由之・高橋作衛・久保田政周・下岡忠治・渡辺勝三郎・伊沢多喜男・中川望・関野貞・中野武営
　　　　（「明治神宮造営誌」ニ拠ル）。

渋沢栄一　日記　大正四年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
六月十一日　雨
○上略　午前九時代々木神宮奉祀ノ地ニ抵リ、各評議員ト共ニ実地ヲ巡検ス、十一時伏見宮御邸ニ抵リ令旨ヲ拝承ス、十二時半内務大臣官舎ニ抵リ、評議員一同職員ト共ニ午飧会ニ列ス、畢テ神宮御造営局評議員会ヲ開キ要件ヲ議決ス、奉賛会ヲ創設セシ顛末ヲ会員ニ説明ス、午後五時散会後○下略
　　　○明治神宮御造営ハ、予算三、四五七、三七九円ヲ以テ大正四年度ヨリ十年度ニ亘ル六ケ年継続事業トシテ、大正四年十月七日地鎮祭ノ営ミヨリ初マリ、八年七月上棟式、九年十一月鎮座祭、十年十一月宝物殿落成、十年十二月二十二日造営完成奉告祭ニ終ル。総経費ハ五、二一九、五六三円ニ達セリ。
　　　○上棟式・鎮座祭・同奉祝会・同奉祝晩餐会等ニハ栄一病気ノタメ欠席ス。（「集会日時表」ニ拠ル）
　　　○大正六年八月二十四日、勅令第一一六号及ビ第一一七号ヲ以テ、明治神宮造営局ヲシテ、明治神宮奉賛会ノ委嘱ニ依リ神宮外苑造設ニ関スル事項ヲ施行セシムル件裁可公布セラル。（「官報」第一五二一号大正六年八月二十五日）

官報　号外大正一三年一二月二〇日
　　　　勅令
朕明治神宮造営局官制中改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
　御名　御璽
　　　　摂政名
　　大正十三年十二月二十日
　　　　　　　　　　　　　内閣総理大臣　子爵加藤高明
　　　　　　　　　　　　　内務大臣　　　若槻礼次郎
勅令第三百二十一号
明治神宮造営局官制中左ノ通改正ス
 - 第41巻 p.590 -ページ画像 
第三条中「書記官　専任一人　奏任」ヲ「事務官　専任一人　奏任」ニ、「技師　専任四人」ヲ「技師　専任三人」ニ、「属技手｝専任二十六人」ヲ「属技手｝専任二十一人」ニ改メ「主事　専任一人　奏任」及「参事」ヲ削ル
第四条中「書記官及主事」ヲ「事務官」ニ、「分掌ス」ヲ「掌ル」ニ改メ「及参事」ヲ削ル
第五条中「参事ハ奏任官ノ待遇」ヲ削ル
第六条及第八条中「及参事」ヲ削ル
第九条乃至第十二条ヲ削ル
　　　　　　附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
　　　○改正ニヨル第九条乃至第十二条ノ削除ハ、評議委員会ノ廃止ヲ意味シ、委員解任トナル。
　　　　造営局ソノモノモ内苑及外苑ノ完成ト共ニ昭和二年三月三十一日廃止セラル。（「官報」第七四号昭和二年四月一日）

明治神宮造営局書類　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
拝啓、弥々御清勝奉賀候、陳ハ今回行政整理ニ伴ヒ本月二十日勅令第三百二十一号ヲ以テ、明治神宮造営局官制改正ニ依リ参事及評議委員会廃止セラレ候処、明治神宮造営ニ関シテハ終始多大ノ御尽力相成感謝ノ至ニ不堪候、玆ニ右官制改正ニ際シ御挨拶申上度如斯ニ御座候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　拝具
　　大正十三年十二月二十日
　　　　　　　　　　　　　　　　明治神宮造営局副総裁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　若槻礼次郎
　　　　評議委員　子爵渋沢栄一殿