デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和3年2月18日（1928年）

是日栄一、財団法人浅草観音大慈会顧問ニ推薦セラレ、在任歿年ニ及ブ。

浅草寺関係書類（二）　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　嘱託書
財団法人浅草観音大慈会顧問推薦候条、御承諾被成下度候
　　昭和三年二月十八日
　　　　　　　　　財団法人浅草観音大慈会長
　　　　　　　　　　　　　　　　大僧正　救護栄海印
　　　　子爵　渋沢栄一殿

浅草寺関係書類（二）　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（謄写版）
　　　　財団法人設立許可申請
　　　　　　　　　　　浅草観音大慈会設立者
　　　　　　　　　　　東京府東京市浅草区浅草公園第三区
　　　　　　　　　　　　　　　天台宗浅草寺住職
　　　　　　　　　　　　　　　　申請人　救護栄海
右申請人ハ民法第三十四条ニ依リ、財団法人浅草観音大慈会設立致度候条、御許可相成度、別紙寄附行為ノ書面並所属宗派管長副申相添此段願上候也
　　年　月　日
　　　　　　　　　　　　　　　右浅草寺住職
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　救護栄海
　　　　　　　　　　　　　　　右寺信徒総代
　　　　　　　　　　東京市深川区福住町四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　子爵　渋沢栄一
 - 第42巻 p.49 -ページ画像 
　　　　　　　　　　同市麻布区北日ケ窪町四十六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　馬越恭平
　　　　　　　　　　東京府北豊島郡高田村雑司ケ谷旭出四十三番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　沢柳政太郎
　　　　　　　　　　東京市日本橋区本銀町四丁目九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高木益太郎
　　　　　　　　　　同市浅草区新旅籠町十六番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中川清太郎
　　　　　　　　　　同市同区千束町二丁目三百七十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松崎孫太郎
　　　　　　　　　　同市浅草区北仲町七番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青木新九郎
　　　　文部大臣　水野錬太郎殿
（別紙一、謄写版）
　　　　財団法人浅草観音大慈会寄附行為
　　　　　　第一章　目的
第一条　本会ハ浅草寺本尊観世音菩薩大慈ノ本誓ヲ顕彰センガ為、浅草寺ノ経営スル堂塔及境内ノ修理保存並教化、社会事業、僧侶教育ニ関スル費用ヲ供給スルヲ以テ目的トス
　　　　　　第二章　名称及事務所
第二条　本会ハ財団法人浅草観音大慈会ト称ス
第三条　本会ハ事務所ヲ東京市浅草区浅草公園第三区浅草寺内ニ設置ス
　　　　　　第三章　資産及会計
第四条　本会ノ資産ハ左ノ各号ヨリ成ル
　一、設立者ノ寄附スル金壱万円
　二、将来浅草寺ヨリ寄附セラルヘキ、明治四拾四年五月弐拾六日国ヨリ同寺ヘ下戻サレタル土地ヨリ生スル収益金ノ全部
　三、将来本会ノ目的ヲ賛成シ信徒及有志者ヨリ寄附スル資財
　四、所有財産ヨリ生スル果実雑収入
第五条　本会ノ資産ヲ左ノ二種ニ分ツ
　一、基本財産
　　　前条第一号及ノ資金及第三号中ノ土地並寄附金ノ二分ノ一
　二、常用財産
　　　前条第二号ノ寄附金及第三号中寄附金ノ二分ノ一並第四号ニ依ル収入金
第六条　基本財産ハ評議員会ノ決議シタル方法ニ従ヒ之ヲ保管シ、如何ナル事由アルモ消費スルコトヲ得ス
第七条　常用財産ハ評議員会ノ決議シタル予算ニ依リ、本会ノ目的ヲ達スル為必要ノ経費ニ使用ス
第八条　本会ノ会計年度ハ暦年ニ拠ル
第九条　理事ハ毎会計年度ノ終期ヨリ一月前迄ニ、次年度ノ経費予算ヲ編成シ、会長ノ同意ヲ経テ、評議員会ニ提出シ、其ノ決議ヲ求ムヘシ
 - 第42巻 p.50 -ページ画像 
第十条　理事ハ毎会計年度終了後一月以内ニ、前年度ノ収支決算書及前年度末現在財産目録ヲ作製シ、会長及監事ノ承認ヲ経テ、之ヲ評議員ニ報告スベシ
第十一条　毎年度ノ決算剰余金ハ之ヲ基本財産ニ繰入ルヘシ
　　　　　　第四章　役員
第十二条　本会ニ左ノ役員ヲ置ク
　　　会長　　　一名
　　　顧問　　　七名以内
　　　理事　　　五名
　　　監事　　　三名
　　　評議員　　三十名
第十三条　会長ハ浅草寺住職タル者ヲ以テ之ニ充テ、本寄附行為ニ規定セル権限ヲ行フ
第十四条　顧問ハ学識徳望アル信徒ノ中ニ就キ、会長之ヲ推薦ス
　　顧問ハ会務ニ関シ理事ノ諮問ニ応フルノ外、理事会・評議員会ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
　　但シ理事会・評議員会ノ決議ノ数ニ加ハラス
第十五条　理事ハ浅草寺信徒総代・浅草寺支院住職タル者ノ中ニ就キ会長之ヲ選任ス
　　理事ハ其ノ互選ニ依リ理事長一名ヲ定ム
第十六条　理事長ハ会務ヲ掌理シ本会ヲ代表ス
　　理事長以外ノ理事ハ理事長ヲ補佐シ、会務ヲ分掌ス
第十七条　監事ハ浅草寺信徒総代タル者ノ中ニ就キ、会長之ヲ選任ス
第十八条　評議員ハ浅草寺信徒総代タル者ヨリ五名、浅草寺支院住職タル者ヨリ二十名、及浅草寺信徒総代ノ推薦シタル者ヨリ五名トシ、会長之ヲ選任ス
第十九条　理事・監事及評議員ノ任期ハ三箇年トス
　　補闕ニ依リ選任セラレタル役員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
第二十条　理事・監事及評議員ニシテ、浅草寺信徒総代又ハ浅草寺支院住職タル者、各其ノ資格ヲ失ヒタルトキハ、当然失職スルモノトス
第二十一条　会長ハ理事ニシテ不正ノ行為ヲ為シ若ハ職務ニ堪ヘサルモノト認メタルトキハ、之ヲ解職スルコトヲ得
○下略

　　　　財団設立理由書
寺院財産ノ管理処分ニ関シテハ、現行法上相当ノ規定ヲ存スルモ、尚不備ノ点アルヲ免レス、為ニ或ハ管理ノ方法ヲ誤リ、不測ノ損害ヲ被フル場合モ尠カラス、殊ニ本寺ノ如キ多数ノ大建築物ヲ有シ、之カ維持保存ニ多額ノ費用ヲ要シ、又現ニ幾多ノ社会事業ヲ経営シ、将来毎年巨額ノ経費ヲ必要トスル寺院ニアリテハ、其等ノ経費カ円滑ニ支出セラルヘク、常ニ相当ノ資財ヲ安全確実ニ保管スルヲ必要トス、加之信徒カ目的ヲ指定シタル寄附金ヲ寄納スル場合ニ於テ、之ヲ寺院ノ一般収入ト区分シテ保管セラルルコトヲ明確ニシ、而モ其組織ヲ法律上
 - 第42巻 p.51 -ページ画像 
厳密ナル監督ト保護トヲ受クル財団法人トスルコトハ、寄附者ヲ満足セシムル最善ノ方法ナリト信ス、依テ浅草寺ガ多年ノ懸案タル旧境内ノ一部下戻ニ依リ、多額ノ収益ヲ新ニ生セントスル機会ニ於テ、先ツ其収益使用ノ途ヲ明カニシ、一面必要基金ノ積立及必要経費ノ支出ヲ安固ニスルト共ニ、他面一般信徒ヲシテ、本寺ノ財務方針ニ信頼シテ安ンシテ相当ノ寄附金ヲ醵出セシメン為、本寺ノ経営スル堂塔修理・社会事業等ニ対シテ費用供給ヲ目的トスル維持財団トシテ、特ニ本財団ヲ設立セムトスルモノナリ
　　○財団設立理由ノ一タル「旧境内ノ一部下戻ニヨリ多額ノ収益ヲ新ニ生セン云々」ハ、昭和二年八月六日内務省告示ニヨリ浅草公園ノ一部一万四千二百余坪（公園六区興行街ノ一部ヲ含ム）寺所有地ニ変更実現セラレ、其土地収益年八万余円ヲ得タルヲ云フ。本款第一項「金竜山浅草寺」参照。
（別紙二、謄写版）
東京市浅草区浅草公園本宗浅草寺ヨリ財団法人設立許可願之儀、別紙申出候条、本願宜布御採聴被成遣度此段致副申候也
　　年　月　日
　　　　　　　　　　　　　天台座主大僧正　中村勝契
　　　　文部大臣　水野錬太郎殿
　　○中村勝契ハ総本山延暦寺住職。

（写、謄写版）
東宗六一号
　　　　　　　　　　東京府東京市浅草区浅草公園第三区
　　　　　　　　　　　　　天台宗浅草寺住職　救護栄海
昭和二年十一月十八日付申請財団法人浅草観音大慈会設立ノ件許可ス
　　昭和三年一月三十日
　　　　　　　　　　　　　　　　文部大臣　水野錬太郎印