デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

4章 道徳・宗教
5節 修養団体
4款 財団法人修養団
■綱文

第43巻 p.601-607(DK430131k) ページ画像

大正12年2月11日(1923年)


 - 第43巻 p.602 -ページ画像 

是日、当団申請中ノ財団法人設立ノ件認可セラル。栄一引続キ顧問トナル。同日、当団本部ニ於テ、創立第十八周年記念式行ハレ、栄一、出席シテ講話ヲナス。


■資料

渋沢栄一 日記 大正一二年(DK430131k-0001)
第43巻 p.602 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正一二年            (渋沢子爵家所蔵)
一月十二日 曇 寒
○上略 朝飧ス、後○中略 蓮沼・瓜生二氏来リ修養団ノ経営及朝鮮支部ノ事ヲ協議ス○下略


渋沢栄一書翰 瓜生喜三郎宛(大正一二年)一月二五日(DK430131k-0002)
第43巻 p.602 ページ画像

渋沢栄一書翰 瓜生喜三郎宛(大正一二年)一月二五日 (瓜生喜三郎氏所蔵)
拝啓財団法人修養団役員詮衡案御廻付被下一覧仕候、兼而御打合も有之候義ニ付全然御同意いたし候へとも、別紙ニ附記せし分一応御取調可被成候
住友家之分ハ三井・岩崎両家との権衡上寧ろ中田氏ニ依頼候方歟と存候、但し是ハ強而主張する程ニも無之候、右不取敢御答如此御坐候
                          拝具
  一月念五
                        渋沢栄一
    瓜生賢契
        拝答
   ○別紙ヲ欠ク。右ハ滞在中ノ湯河原ヨリノ書翰ナリ。


集会日時通知表 大正一二年(DK430131k-0003)
第43巻 p.602 ページ画像

集会日時通知表 大正一二年            (渋沢子爵家所蔵)
二月十日 土 午後四時 修養団ノ件(兜町)
 十一日 日 午後三時 修養団創立十八回紀念日(同団)


修養団三十年史 同団編輯部編 第九五―九七頁昭和一一年一一月刊(DK430131k-0004)
第43巻 p.602-603 ページ画像

修養団三十年史 同団編輯部編 第九五―九七頁昭和一一年一一月刊
 ○本篇 三十年史 六、陣容全く成る
    財団法人の成立
 修養団永遠の基礎を確立する為め、予て財団法人とする手続中の所大正十二年二月十一日附を以て認可指令が出ることを確め得て、その前日に渋沢事務所で第一回役員会が開かれた。
 集つた人々は渋沢子爵・八代大将・平沼博士・二木博士・宮田氏・蓮沼主幹・北爪氏等の十三名であつた。
 この夜、頻りに停電あり、瓦斯と蝋燭の光で食事を摂つたが、最後に渋沢顧問の発声で、法人成立を祝賀する万歳が唱へらるゝや、満堂の電灯が一時にぱつと輝き出した光景は、実に本団の前途に光明の輝くべきを暗示するものとして、一同云ひ知れぬ感激に打たれた。
 明くれば十一日、本団創立第十八年の記念日である。
 前夜、東京には珍しいほど降り積つた雪に、本部の広庭はさながらの銀世界を現出したが、事務所総動員の除雪作業で朝方には跡方もなく清められてゐた。
 開会まで待ちきれないで続々とつめかけて来た団員は、定刻には満
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場立錐の余地なく埋め尽された。
 主幹は、今日の佳き日の抑へきれぬ喜びを満面に湛へつゝ語つた。
『わが「向上」も、何時かは数万部を印刷する時が来るであらうと予期してゐたが、今やその望みも実現した。
 だが、今、心の紐をゆるめてはならぬ。世界の趨勢を見るに、今こそ東洋人が総親和・総努力すべき秋である。而してその盟主たるべきものは、祖国日本ではないか。
 この日本の使命を遂行する為に、吾等同志は更に新なる決意を以て総蹶起しなければならない』
 更に、
『今日は、啻に本団創立の記念日たるに止まらず、予て計画してゐた法人組織が認可になつた日でもある。
 今日、只今から修養団もいよいよ天下公然の一大精神団体として、思ふさま活躍が出来るのである。』
 言々、光と熱の交錯するを見た。二木博士・渋沢顧問の講話も終り一同は団歌を合唱する。はちきれる喜びと、感激にふるへる声が堂を圧して響く。
○下略


向上 第一七巻第四号・第一四―一五頁大正一二年四月 本部だより(DK430131k-0005)
第43巻 p.603-604 ページ画像

向上 第一七巻第四号・第一四―一五頁大正一二年四月
    本部だより
△前号で報告致しました如く修養団も創立十八年の記念日を迎へた二月十一日、財団法人として内務・文部両大臣より認可せられ、左の諸氏が役員として就任されました。
                   (いろは順)
    顧問           子爵 渋沢栄一氏
    同            男爵 森村開作氏
    団長(理事)  法学博士 子爵 田尻稲次郎氏
    主幹(常務理事)        蓮沼門三氏
    理事              林平馬氏
    同               小尾晴敏氏
    同               瓜生喜三郎氏
    同               松元稲穂氏
    同          医学博士 二木謙三氏
    同               小林錡氏
    同               後藤静香氏
    同               坂本剽氏
    同               北爪子誠氏
    同               宮田修氏
    同               島芳太郎氏
    同               妹尾幸三氏
    監事           男爵 中島久万吉氏
    同       海軍大将 男爵 八代六郎氏
               法学博士 平沼騏一郎氏
 - 第43巻 p.604 -ページ画像 
此のほか田沢義鋪氏が理事に就任されることになつて居りますが、渡欧不在中に付調印不可能の為め、帰朝を待つて当局に申請する事になつて居ります。一世の高士名士達が、道の為めには名もなき青年と伍して尽される其至情を思ふ時、感激の涙なきを得ぬのであります。飯田町の下宿屋の二階六畳一間を本部として、主幹を中心に同志のものが僅かづつの月給も割いては、洋紙を購ひインクを求め焼芋を噛りながら夜を徹して謄写版を刷つた当時を追想すれば感慨無量です。


青淵先生公私履歴台帳(DK430131k-0006)
第43巻 p.604 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳              (渋沢子爵家所蔵)
一、財団法人修養団顧問 大正十二年二月


向上 第一七巻第三号・第六四―六五頁大正一二年三月 栄ありし記念日 一記者(DK430131k-0007)
第43巻 p.604-605 ページ画像

向上 第一七巻第三号・第六四―六五頁大正一二年三月
    栄ありし記念日――一記者
 東京には珍らしい程降り積つた雪に、本部の広庭は小さな銀の野のやうであつたが、二月十日、本部事務総動員で除雪作業をやつたので記念日の朝にはすつかり其跡形もなくなつてゐた。
○中略
 主幹の後に二木博士登壇、修養団が現在の如く外に外にと広がり行くも結構ではあるが、同時に団員各自は内に向つて修養をせねばならぬ、自己を完成せねばならぬと云ふ意味で、中江藤樹・吉田松陰の言を引いて、今日の覚悟を述べて降壇する頃、渋沢顧問がお見えになつた。
 顧問は今年八十四の老齢であるにも不拘、意気尚壮なるものがある今日も已に二・三の会合を済ませ、これから(時に午後五時)もまた或講演会に臨むのだと、其絶倫の精力と至誠奉公の熱情には何時もながら敬服の外はない、壇上に立たれた顧問は慈眼愛語、淳々として処世の大道、修養団員の行く可き道を説かれた。
 顧問の講話が終ると、一同簡単な体操の後、三角章歌及団歌を合唱する。
 この睦しいそして力ある光景に顧問は『非常に嬉しい一日でした』とニコニコされて退場と共に此会を閉づる事となつた、時に午後六時炊事部が心づくしの海苔巻・握飯と云ふ修養団式夕食に吉例による渋沢家より大福餅、森村家よりの蜜柑と、会員一同は和気靄々の中に夕食を済ませ、夫れより直に例月の向上会に入る。
○中略
      財団法人成立第一回役員会
 予てから本団永遠の基礎確立のため財団法人となすの手続中の処、東京府、内務・文部両省の特別の助力によりて大正十二年二月十一日附で認可旨令のあるべきを確かめられたので、其前日二月十日に渋沢事務所にて第一回の役員会が開催された、当日出席の方々は渋沢子爵(財団法人設立者顧問)・八代六郎大将(監事)・平沼騏一郎博士(監事)・二木謙三博士(理事)・宮田修氏(理事)・北爪子誠氏(理事)・蓮沼主幹(設立者常任理事)・後藤幹事長・瓜生・林・小林・島各幹事外に小尾晴敏氏の十三名で森村顧問・田尻団長は御病気の為、妹尾
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坂本・松元各幹事は朝鮮・九州方面へ出張中の為参会し得られなかつたのは遺憾であつた。
 会は渋沢顧問の法人成立の経過報告に始まり主幹・幹部の挨拶、八代・平沼・二木・宮田各先輩諸氏の本団将来に関する垂訓に終つたが先輩の一言一句は真に本団を思はるゝ至情の発露で、誠に尊いものであつた。
 渋沢子爵は道徳経済の一致を目標とすべく力説せられ、八代大将は団員各自が武道を尚び、気剣体一如の精神を体認すべく今一段突込んだ修養をする必要ありと喝破され、平沼博士は義に這ひて始めて仁愛の道を全からしむべしと説かれ、二木博士は本団の発展を更に高く深く進ませたしと熱望せられ、宮田先生は本団が今日の発展をなした理由を省み、層一層の自重と辛惨を積まざるべからずと力説せられた。
 斯くの如く一から十まで全く自己の事として御心配下さる先輩諸氏の熱心を目の前にして主幹始め評議員幹事の一同の面は、今更の如く感激の色に輝いた。
 北爪評議員・蓮沼主幹・瓜生幹事は交々立つて謝辞と所懐とを述べられ、目出度散会したのは午後十一時過であつた。
 此夜頻々として停電あり、食卓につける間も電灯なく、瓦斯と蝋燭とで食事は進行したが、最後に渋沢顧問の発声で法人成立を祝すべく万歳を唱へらるゝや、一時に満堂の電灯燦として輝き出したのは、実に本団の前途が希望と光明に満たされたるの感あり慶ばしい極みであつた。


財団法人修養団事業報告 (自大正十五年四月至昭和二年二月) 同団編 第一〇一―一〇八頁昭和二年三月刊(DK430131k-0008)
第43巻 p.605-607 ページ画像

財団法人修養団事業報告 (自大正十五年四月至昭和二年二月) 同団編
                       第一〇一―一〇八頁昭和二年三月刊
    財団法人修養団寄附行為
      第一章 名称
第一条 本団ハ財団法人修養団ト称ス
      第二章 目的及事業
第二条 本団ノ目的ハ流汗鍛錬、同胞相愛ノ二大主義ニ基キ同志相提携シテ各自修養ヲ図リ、社会ノ風教ヲ矯正シ以テ皇国ニ貢献スルニアリ
第三条 本団ハ其目的ヲ達スル為メ左ノ事業ヲ行フ
  一、修養会・講演会・講習会ノ開催
  二、雑誌及図書ノ刊行
  三、寄宿舎・修養会館・図書館等ノ経費、俊才ノ養成
  四、其他本団ノ目的ヲ達スルニ必要ナル事業
      第三章 事務所
第四条 本団ハ事務所ヲ東京府下千駄ケ谷町新屋敷ニ置ク
      第四章 団員・賛助員
第五条 本団ノ目的ヲ賛シ、所定ノ手続ヲ経テ本団ニ加入シタル者ヲ以テ団員トス
第六条 団員ハ別ニ定ムル規定ニ従ヒ団費ヲ納付スルコトヲ要ス
第七条 団員ハ本団発行ノ雑誌「向上」若クハ「愛ト汗」ノ配布ヲ受
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ケ且ツ本団経営ノ施設ニ関シ便宜ヲ受クルコトヲ得
第八条 団員退団セントスルトキハ其旨ヲ届出ツヘシ
第九条 団員本団ノ体面ヲ汚損スル行為ヲ為シ、又ハ第六条ニ違反シタルトキハ、理事会ノ同意ヲ経テ団長之ヲ除名スルコトヲ得
第十条 賛助員ハ本団ノ目的ヲ翼賛スルモノニ対シ、理事会ノ同意ヲ経テ団長之ヲ推薦ス
      第五章 役員
第十一条 本団ニ左ノ役員ヲ置ク
     顧問  若干名
     団長  壱名
     主幹  壱名
     理事  若干名
     監事  若干名
     評議員 若干名
第十二条 顧問ハ評議員会ノ決議ヲ経テ之ヲ推戴ス
第十三条 団長ハ評議員会ノ決議ニヨリ之ヲ推薦ス
第十四条 主幹ハ従来ノ修養団創立者蓮沼門三之ニ任ス
 蓮沼門三其職ヲ去リタルトキハ以後主幹ヲ置カス
第十五条 団長及主幹ハ理事タルモノトス
第十六条 理事ハ評議員会ノ決議ニヨリ団員中ヨリ選任ス
 理事中ヨリ常務理事若干名ヲ互選ス
第十七条 監事ハ評議員会ノ決議ヲ経テ、賛助員又ハ団員中ヨリ団長之ヲ嘱託ス
第十八条 評議員ハ理事会ノ決議ヲ経テ、団員中ヨリ団長之ヲ推薦ス但シ理事ハ当然評議員タルモノトス
第十九条 団長ノ任期ヲ四年トシ、理事・監事及評議員ノ任期ヲ二年トス、但シ再任ヲ妨ケス
 補欠ニヨリ就任シタル前項役員ノ任期ハ前任者ノ残存期間トス
第二十条 顧問ハ団務ニ関シ相談ニ応シ、且ツ援助ヲ与フルモノトス
第二十一条 団長ハ本団ヲ代表シ、団務ヲ統轄ス
第二十二条 主幹ハ団長ヲ輔佐シ、団長事故アルトキハ其職ヲ代理ス
第二十三条 常務理事ハ理事会ノ決議ニ基キ日常ノ事務ヲ掌理シ、団長・主幹共ニ事故アルトキハ其職務ヲ代理ス
第二十四条 理事及監事ノ任期満了ノ場合ニ於テハ、其後任者ノ就職スル迄仍前任者ニ於テ其職務ヲ行フモノトス
      第六章 会議
第二十五条 評議員会ハ毎年一回団長之ヲ招集シ、左ノ事項ヲ審議ス但シ団長ニ於テ必要アリト認メタルトキハ、臨時之ヲ招集スルコトヲ得
  一、本寄附行為ニ規定セル事業
  二、理事ニ於テ重要ナリト認メタル事項
第二十六条 団員二百名以上、又ハ評議員四分ノ一以上、若クハ監事ヨリ会議ノ目的タル事項ヲ示シテ請求アリタルトキハ、団長ハ臨時評議員会ヲ開クコトヲ要ス
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第二十七条 評議員会ノ議長ハ団長之ニ当リ、団長事故アルトキハ出席者互選ニ依リ之ヲ定ム
第二十八条 理事会ハ毎月一回以上団長之ヲ招集シ、団務ニツキ審議ス
第二十九条 評議員会並ニ理事会ハ各全員ノ二分ノ一以上出席スルニアラサレハ会議ヲ開クコトヲ得ス、但シ招集再会ノ場合ニハ此ノ限ニアラス
第三十条 評議員会並ニ理事会ノ議事ハ各出席者ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第三十一条 評議員並ニ理事ハ代理人ニヨリ決議ニ加ハルコトヲ得ス但シ各当該会員ヲ以テスル代理人ハ此ノ限リニ非ス
      第七章 資産
第三十二条 本団設立ノ日ニ於ケル資産ハ別紙○略ス 財産目録記載ノ通リトス、資産管理並ニ処分ノ方法ハ評議員会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三条 本団ノ経費ハ左ニ掲クルモノヲ以テ支弁ス
  一、団費
  二、資産ヨリ生スル収入
  三、寄附金
  四、其他ノ雑収入
第三十四条 本団ニ基金ヲ設ク
 基金ノ積立及管理ノ方法ハ評議員会ノ決議ヲ経テ之ヲ定ム、基金ハ之ヲ処分スルコトヲ得ス、但シ万止ムヲ得サル場合ハ評議員四分ノ三以上ノ同意ヲ経ルヲ要ス
第三十五条 本団ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
第三十六条 本団ノ予算ハ評議員会ノ決議ヲ経テ之ヲ定メ、決算終了後評議員会ノ承認ヲ経ルヲ要ス
      第八章 支部
第三十七条 本団ハ各地ニ支部ヲ置ク
第三十八条 支部ノ規定ハ本寄附行為ノ範囲内ニ於テ団長ノ承認ヲ経テ、当該支部之ヲ定ムルコトヲ得
第三十九条 団長ハ事業ノ執行上必要ナルトキハ、支部幹部会議ヲ開キ団務ニツキ諮問スルコトヲ得
      第九章 補則
第四十条 本寄附行為ノ執行ニ関シ必要ナル細則ハ別ニ之ヲ定ム
第四十一条 本寄附行為ハ評議員総数四分ノ三以上ノ同意ヲ得、且ツ主務官庁ノ認可ヲ経テ之ヲ変更スルコトヲ得、但シ第四条ノ変更ニ就テハ評議員会ノ同意ヲ経ルコトヲ要セス
      第十章 附則
第四十二条 本団設立当初ノ顧問・団長・理事・監事・設立者之ヲ委嘱ス
第四十三条 本団設立ノ際ニ於ケル従来ノ修養団員ハ当然本団ノ団員タルモノトス