デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
2節 女子教育
1款 日本女子大学校
■綱文

第44巻 p.684-686(DK440189k) ページ画像

昭和2年5月21日(1927年)

是ヨリ先、前年度ヨリ国際聯盟協会日本女子大学校学生支部設立計画セラレ、是日、当校講堂ニ於テ其発会式ヲ挙グ。栄一、出席シテ挨拶ヲ述ブ。


■資料

集会日時通知表 昭和二年(DK440189k-0001)
第44巻 p.684 ページ画像

集会日時通知表 昭和二年         (渋沢子爵家所蔵)
五月二十一日 土 午後二時 女子大学へ御出向


家庭週報 第八八九号昭和二年五月二〇日 国際聯盟協会日本女子大学 学生支部設立趣旨書(DK440189k-0002)
第44巻 p.684-685 ページ画像

家庭週報 第八八九号昭和二年五月二〇日
    国際聯盟協会日本女子大学 学生支部設立趣旨書
 世界人類の衷心の願ひは此の地上に永久の平和が来ることで有ります。併しその願ひにもかゝはらず、人類相互の野心の絶えない為に、国と国とは尚反目を続け争闘を続けて今日に到りました。
 私共女性は此の点に使命を感じ母性愛の拡充を以て世界人類の平和と幸福とに聊なりとも貢献し度いと願ひ国際聯盟の精神に賛同して此
 - 第44巻 p.685 -ページ画像 
処に全学生挙つて国際聯盟協会学生支部を設立する事に致しました。
 ともすれば内に潜み勝ちな吾等女性の心を鼓舞し国家的事象を研究し国際平和実現の理想に向つて健実な歩みを続ける決心で有ります。
     規約
一、名称 国際聯盟協会日本女子大学学生支部と称す
一、目的 国際的知識の養成及び国際的良心の涵養に努む
一、事業
   イ、研究会
   ロ、講話会
   ハ、其他必要と認むる事項
一、組織 日本女子大学生全部を以て会員とす
   会員中より委員若干名を選任し更に四年委員を以て幹事とす
一、事務所 日本女子大学校内


家庭週報 第八九〇号昭和二年五月二七日 国際聯盟協会学生支部発会式(DK440189k-0003)
第44巻 p.685-686 ページ画像

家庭週報 第八九〇号昭和二年五月二七日
    国際聯盟協会学生支部発会式
時日 昭和二年五月二十一日午後二時より午後四時半まで
場所 講堂に於いて
      順序
一、奏楽
一、開会の辞
一、国際聯盟協会学生支部設置に対する決心(一・二・三・四年)
一、麻生校長のお話
一、新渡戸博士のお話
一、副会長阪谷男爵のお話
一、会長渋沢子爵のお話
一、閉会の辞
一、発会式の歌 以上
 プログラムの順に従つて奏楽終り開会の辞が述べられ、次いで学生の決心が一・二・三・四年の順で発表された。いづれも婦人の立場より母性愛の自覚をもつて、広く人類の為に尽してゆきたいといふ願ひと熱烈な決心で充されてゐた。
 次いで麻生校長は、この聯盟学生支部の企ては昨年度の四年生が計画して、更にこれを今年度の四年生が引継いで協会の許可を得ていよいよ玆に国際聯盟日本女子大学学生支部を設立する運びとなつたことさうして今日全校生がこゝに集つて、同会長の渋沢子爵、同副会長阪谷男爵並に新渡戸博士の御来校を請うてこの発会式を挙げ得ることの感謝を述べられ、更にこの学生支部を設立した私達の責任の重い事を述べて、この目的に向つて倦まず国際魂の発揚に終始一貫するやうにと激励された。
 次に渋沢子爵は『今日は私が此の学校に微力をつくして居る立場から又日本国際聯盟協会長として喜びをのべたい』と冒頭されて、国際聯盟機関の必要な事及び真の平和は経済問題と道徳問題とが一致してはじめて生れるものであることを信ずると結ばれた。
 - 第44巻 p.686 -ページ画像 
 次に麻生校長は再び立つて聯盟協会の父として渋沢子爵を迎へた喜びと、又新渡戸博士がわざわざこの会合に来会されたことの感謝と並に紹介の辞があつて後同博士の御講演がありました(別項記載○略ス)
 私達は博士の熱あるそして愛ある御話をうかゞつて自然に心が引きしまるやうに感じた。講堂内はせき一つの音もなく、みな心を一つにして耳をかたむけたのであつた。閉会の辞もおわり、席を立ち上つた時には、私共は校長先生・渋沢子爵・新渡戸博士御一人御一人の御心を分ち与へられた様な心持で一ぱいであつた。
 私共は今日国際聯盟学生支部を女子大学にもうけ、その発会式をあげ得たのを心から感謝した。私達の母校は今年から女子綜合大学の予科が開かれて大に喜こんで居ると共に、大きい責任を感じて居る。さうしてけふこの尊い御話を聞いてますます決心がかためられた。私達はかたいかたい信念をもつて、永久の平和をもたらすことは各個人にある事を知り、武器によらずにやさしい心をもつて、平和を実現したいと念じて居る。
   ○本資料第三十七巻「社団法人国際聯盟協会」同日ノ条参照。
   ○栄一演説筆記ハ右ニ収ム。