デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正7年8月6日（1918年）

是日栄一、伊香保木暮武太夫旅館ニ於テ、当大学理事平沼淑郎ト会見ス。次イデ十月二十六日、平沼ノ当大学学長就任式ニ参列ス。

渋沢栄一書翰　平沼淑郎宛（大正七年）八月二日　（平沼淑郎氏所蔵）
酷暑之候賢台益御清適之条奉賀候、然者早稲田大学之将来ニ付而ハ、疾くより緩々拝眉之上篤と賢慮相伺度存居候も、居常多忙之為乍思等閑ニ打過候、就而老生明三日出立ニテ伊香保ニ避暑いたし、十日頃まて滞在之筈ニ御坐候、賢台ニも目下北越地方御旅行之由、幸ニ其御帰途伊香保まて御過訪被下候ハヽ幸甚此事ニ御坐候、老生之旅宿ハ木暮武太夫方ニ付、もしも本月六・七日頃御一泊掛ニても御立寄相叶申間敷哉御伺申上候、実ハ今朝も早稲田校友中之有志諸君会見之上、前陳北越御旅行之事承及候ニ付、一書を以て御都合伺上候義ニ御坐候、右書中可得貴意如此御座候　敬具
　　八月二日　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　平沼賢台
　　　　　　　玉案下
　　　○右書翰ノ封筒表書ハ「新潟県北魚沼郡小出町、郡教育会夏期講習会々場気付、平沼淑郎様、要件親展」トアリ。

早稲田学報　第二八三号大正七年九月
　　　　○平沼理事新潟県及岡山県行日程
 - 第45巻 p.344 -ページ画像 
理事平沼博士は校外教育部夏季講習の為め、新潟県及岡山県に出張せられたるが、其の日程は左の如かりき
　　　　　　△新潟県行
七月廿八日午後九時　徳永理事と共に上野発
○中略
八月六日午前四時二分　高崎着、同所へ出張の宮田理事と会見
　　　　午後一時三十分　高崎発
　　　　　　三時卅分　伊香保着、同所滞在の男爵渋沢栄一氏に会見、同日伊香保一泊
　　七日午前九時五十分　伊香保発
　　　　午後十二時二十三分　高崎発
　　　　　　三時二十五分　上野着
○下略

竜門雑誌　第三六五号・第七七頁大正七年一〇月
○早大学長以下決定　早稲田大学に於ては、十月八日新維持員会を開催し、青淵先生・高田博士等悉く参集せられ、理事並に監事の互選を行ひたるに、理事には伯爵松平頼寿・法学博士平沼淑郎・法学博士塩沢昌貞・法学博士田中穂積・工学博士浅井応輔諸氏、監事には三枝守富・宮田脩両氏当選し、次で維持員会の決議に依り、平沼淑郎氏を学長に推選し、大隈侯爵を改めて総長に推選して散会せる由。

半世紀の早稲田　早稲田大学出版部編　第二九九頁昭和七年一〇月刊
　○第一篇　第四章　拡充期
　　　　第九節　創立三十五年祝典
○上略　八日○大正七年一〇月の維持員会に於いて、次ぎの如き決定を見た。
　総長　大隈重信
　理事　松平頼寿・平沼淑郎・浅野応輔・塩沢昌貞・田中穂積
　監事　三枝守富・宮田脩
　理事中、平沼が学長となつて、代表者届は翌九日文部大臣に提出せられた。
○中略二十六日には平沼学長就任式を行ひ、総長は学問の独立について長広舌を揮つた。
○下略

早稲田学報　第二八五号大正七年一一月
　　　　○学長就任式
十月廿六日午前十時学長就任式を行ふ。即ち本大学新校規に拠る十月八日開催の定期維持員会に於いて法学博士平沼淑郎氏学長に推挙せられたるに依り、祝典の第一日に於いて之れが就任式を挙げたるなり。場は前項記載の中央校庭に於ける大天幕内を以て之れに充て、定刻第一鐘にて学生入場、第二鐘の鳴り渡ると共に校旗を先頭に侯爵大隈総長・男爵渋沢維持員・平沼学長を始め、理事・教職員一同式服着用入場、場より起る急霰の如き拍手に迎へられて着席するや、前田幹事挙
 - 第45巻 p.345 -ページ画像 
式を宣したる後ち、早稲田音楽団の奏楽に伴れて一同起立、勇ましく校歌合唱。水を打つたるが如き厳粛に且つ緊張せる気分溢るゝ衆に対し○下略

集会日時通知表　大正七年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
九月廿一日　土　午后一時　早稲田大学ノ件（兜町）
　　　○中略。
九月廿三日　月　午前九時　早稲田大学維持委員会（恩賜館）
　　　　　　　　　　　　　右終ツテ大隈侯御訪問ノ約（同邸）
　　　○中略。
十月八日　　火　午前九時　早大維持員会（恩賜館）
　　　　　　　　正午　　　大隈侯ヨリ御招待（同邸）
　　　○中略。
十月廿六日　土　午前十時　早稲田大学学長就任式（同大学）