デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
3節 其他ノ教育関係
18款 社団法人東北学院
■綱文

第46巻 p.22-26(DK460007k) ページ画像

大正8年3月1日(1919年)

是日栄一、当学院拡張費募集ニ尽力シテ得タル寄付金五千百円(内栄一分金千円)ヲ院長ディー・ビー・シュネーダーニ手交ス。二日、仙台市ニ大火アリテ、当学院類焼ス。


■資料

集会日時通知表 大正七年(DK460007k-0001)
第46巻 p.22 ページ画像

集会日時通知表 大正七年         (渋沢子爵家所蔵)
三月一日 金 午后三時半―四時 東北学院長ニード《(シユネーダー)》氏来約(兜町)


渋沢栄一 日記 大正七年(DK460007k-0002)
第46巻 p.22 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正七年         (渋沢子爵家所蔵)
三月一日 晴 雪後快晴 寒威太タ強カラス
○上略 東北学院長夫妻来話ス、同学院ノ資金寄附ノ企望アリシモ、即時ニ行ハレサルヲ以テ之ヲ謝絶ス○下略


集会日時通知表 大正七年(DK460007k-0003)
第46巻 p.22 ページ画像

集会日時通知表 大正七年         (渋沢子爵家所蔵)
十一月廿九日 金 午前八時半 スネーダー来約(飛鳥山邸)


東北学院書類(DK460007k-0004)
第46巻 p.22-24 ページ画像

東北学院書類               (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    謹告
 此処に謹で一の報告をなすは余の特権にして亦名誉なり、顧みれば大正五年と六年の交、余は妻の援助により東北学院専門部拡張の為、米国に於て約拾万円の寄附金を募集せり、然るに建築材料並労力の価格昂騰せると、中学部理化学教室増築の必要急迫せるとによりて、少くも更に壱万五千円の資金必要なるを発見したり、されど当時戦時中に属し、更に之を米国に求むることは到底不可能なるを以て、余等は二・三の友人に諮り、その勧言に従つて之を仙台市並に東京市に於ける学院の同情者各位に訴へんと決心せり、幸ひ当市に於ては浜田知事並に山田市長を初め、荒井・藤崎・岩崎及野副の諸氏あり、東京市には渋沢男爵ありて、氏等の懇切なる助言と熱誠なる斡旋とにより、募金運動予期以上の同情を得、今や之を完結するの幸を得たり、即ち募集したる寄附金総額壱万五千六百五拾五円に達し、内壱千円を除けば悉く現金領収済となれり、而して余が渋沢男爵より五千百円券を受領したるは、実に我学院の中学部校舎並にその寄宿舎の焼失したる前日即惨憺たる仙台市大火の前日三月一日なりき。
 寄附者の芳名を掲ぐれば即ち次の如し。
 金壱千五百円 荒井泰治殿    金壱千五百円 藤崎三郎助殿
 金参百円   岩崎総十郎殿   金五百円   伊沢平左衛門殿
 金五百円   八木久兵衛殿   金壱百円   清野喜平治殿
 金弐百五拾円 一力健治郎殿   金弐百円   松良善熙殿
 - 第46巻 p.23 -ページ画像 
 金五百円   無名氏      金壱百円   伯爵佐久間俊一殿
 金七拾円   尾形安平殿    金五拾円   山田久右衛門殿
 金参百円   土井林吉殿    金壱百円   谷井文蔵殿
 金弐百五拾円 佐々木重兵衛殿  金壱百円   大内源太右衛門殿
 金壱百円   早川万一殿    金壱百円   野副重一殿
 金壱百円   山形仲芸殿    金壱千円   石川綾治殿
 金壱百円   佐藤二郎殿    金壱百円   佐藤源助殿
 金壱百円   大塚民三郎殿   金壱百円   若生倉造殿
 金壱百円   浅見一平殿    金五拾円   加藤平蔵殿
 金壱百円   谷井せき殿    金弐拾円   岩井久兵衛殿
 金壱百円   今井信太郎殿   金五拾円   武田吉平殿
 金五拾円   桜井伊之助殿   金五拾円   伊藤清次郎殿
 金五拾円   鈴木愿太殿    金壱百円   山本有成殿
 金五拾円   青山秀次郎殿   金壱百円   伊勢久治郎殿
 金壱百円   柴山岩太郎殿   金五拾円   柴山雄三郎殿
 金五拾円   小林八郎右衛門殿 金五拾円   福田久一郎殿
 金五拾円   勝山愛之助殿   金壱百円   小西儀助殿
 金五拾円   細谷徳治殿    金参拾円   亀山熊治郎殿
 金弐拾円   佐藤寅夫殿    金壱百円   本間半兵衛殿
 金五拾円   平塚喜兵衛殿   金弐拾円   菅野音治殿
 金弐拾円   吉村忠兵衛殿   金壱百円   横山万平殿
 金五拾円   小関金之助殿   金壱百円   山田揆一殿
 金五拾円   矢本平之助殿   金壱百円   磯彝殿
 金五拾円   高山松之助殿   金五拾円   島香直治郎殿
 金壱千円 男爵渋沢栄一殿    金壱千円   浅野良三殿
 金五百円   白石元治郎殿   金五百円 男爵高橋是清殿
 金弐百円   尾沢琢郎殿    金壱百円   星野錫殿
 金壱千円 男爵岩崎久弥殿    金参百円 男爵大倉喜八郎殿
 金参百円   渡辺治右衛門殿  金参百円   藤原銀次郎殿
 金弐百円 男爵園田孝吉殿    金弐百円   早川千吉郎殿
 金拾円    菅野八重子殿   金拾円    雲野竜彦殿
 金五円    宝徳治殿
  合計金壱万五千六百五拾五円也
 学院は当初の計画を遂行せんとして既に南六軒丁に約六千四百坪の土地を購入し、又理化学教室の建築にも着手せり、たゞ専門部の新校舎建築は色々の事情によりて稍延期せらる。
 余は今東北学院の名を以て玆に寄附者各位の同情と深切とに対し衷心より謝意を表せんと欲す、各位の義心は我学院に対して大なる後援となり、従て又将来の青年の大なる便益たるは言を俟ざる処にして、余の深く感謝する所以なりと雖も、余は更に所要の寄附金其物よりも之によりて表白せられし寄附者各位の我学院に対する好意と深切とこそは、余の最も尊重する処なるを附言する者なり、這般の好意は実に余が卅年以上日本の青年教育に従事して、聊か之が為に致しゝ余の微力と、多年忠実に勤労せられし同僚諸君の事績とに対する過大の報酬
 - 第46巻 p.24 -ページ画像 
として余等に与へられたるものなり、是唯に現在余等の大なる満悦たるのみならず、又此青年教育によりて、愛する我日本帝国の最大幸福の為に極力奮闘努力せんとする将来に対する感激たらずんばあらず、加之、各位の好意は必ずや、又日米両国間の友情の連鎖を強固にする一手段たり。
 最後に余は去る三月二日我学院の上に蒙れる大なる災禍に就いて一言言及せざるを得ざるを悲む、当時当市に起れる恐るべき大火は我学院の中学部校舎・寄宿舎並にその附属建物全部を悉く灰燼に化せり、之等の建築に要せし資金は、多大の困苦と犠牲とによりて募集せられ且その建築は寧ろ美なりと雖も終始極めて熱心なる注意を払ひ、頗る経済的に建築せられしものなり、之等の焼失は実に過重の打撃たらずんばあらず、学校は今や多大の困難を以て経営せられつゝあり、今校舎を再築せんとせば工費新築当時のそれに幾倍かせん、学校はかくて再び資金の必要に迫まれり、されど余等は再び同情厚き内外の友人に信頼し、焼失したる校舎の必ずや復旧再建さるゝに至らんことを確信せんとす。
  大正八年五月
         私立東北学院長 デー・ビー・シユネーダー


東北学院書類(DK460007k-0005)
第46巻 p.24-25 ページ画像

東北学院書類              (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    普く江湖の同情に訴ふ
 本月二日早暁の大火は、実に仙台稀有の珍事にして、我儕の母校たる東北学院も亦其災を免るゝこと能はず、中学部校舎・第二寄宿舎、其他附属の建物数棟を挙げて悉く烏有に帰するに至れり。母校が近時声望漸く高く、校運年と共に倍々隆盛ならんとするに当り、此の不慮の災禍に遭ふ、痛恨何ぞ堪へん、殊に中学部校舎は院長シユネーダー博士の心血の結晶ともいふべき建築物にして、明治三十八年九月竣功後、年を閲すること纔かに十三、中等教育の機関として全国有数の評ありしに、今や一朝にして空し。老院長の心事実に察するに余あり、我儕は深厚なる同情を院長に捧げ、また同時に此の災禍を以て直接に自己の痛傷として感ぜざるを得ざるなり。
 明治十九年創立以来、我が東北学院の経営は北米合衆国レフオームド教会外国伝道局及び彼地同情者の援助に倚るところ多く、今後尚之に頼らざるべからざる関係にあり。然りと雖も今回の災厄に当りて再建復旧の資を彼地に仰がんことは、実情殆んど不可能なるが如きを以て、此際我儕卒業生の団体たる同窓会は、真に自己の責任の重且大なるを思はずんばあらず。唯憾むらくは会員中今なほ修学中の者尠からず、其の社会に出でし者と雖も、伝道若くは教育の方面に立てるもの多数にして、いかに熱誠を以て奉献につとむるとも、自己の所有よりするのみを以てしては、到底何事をもなす能はず。東北学院が再び宏壮なる建築物と之に称ふ内部の設備とを与へられて十分育英の道に尽さんことは、偏に広く同情者諸君の援助を仰がざるべからざるなり。これ我儕が敢て江湖に訴へんとして起てる所以、冀くは此の微衷を諒
 - 第46巻 p.25 -ページ画像 
とし、我儕をして再建復旧の目的を日本人の手によりて達するの満足を得しめ給はらんことを。
  大正八年三月
                   東北学院同窓会


東北学院書類(DK460007k-0006)
第46巻 p.25 ページ画像

東北学院書類              (渋沢子爵家所蔵)
    寄附金再募集ニ付謹告
過般、本院専門部拡張並ニ中学部理化室増築の資金に約壱万五千円の不足あるを発見し、之れを市内並に東京市に於ける特志家の義心に訴へ、其援助を仰きたりしに、諸君の深厚なる同情によりて、該不足額を補塡するに充分なる寄捨を忝ふせり、是れ実に我東北学院に対する諸君の高誼と、不肖の微衷を諒察せられたる諸君の義心の然らしむる所にして、感佩深謝措く能はさる処なり、我儕は諸君の同情と援助とに励まされ、将に予定の計画を実行せんとするの時に当り、端なくも玆に一大災厄に遭遇したり
去る三月二日早暁に於ける仙台市稀有の大火は、我学院中学部校舎及寄宿舎其他附属建物数棟を悉く灰燼に化せり
嗟々十年苦心の結果、多数同情者の貴き犠牲によりて建設せられし此等の屋舎は、一朝にして烏有に帰しぬ
是れ実に我等にとりては至大の打撃にして痛恨殆んと之れに過くるものなし、然りと雖も我儕は決して之れか為めに失望するものに非らす我学院には東北の青年子弟を教育すへき一大使命存し、而して我儕には飽まて之れを貫徹すへき一大義務の存することは我儕の信して疑はさる所なり、此故に我儕は勇往邁進以て一層大なる働きと其成果とを遠く将来に期する者なり、即ち玆に再ひ大方諸君の義気に訴へ、各位の援助によりて再建復旧の道を講せんと決心するに至れり
冀くは不肖等の苦衷を諒とし、更に一層の同情を加へられん事を
 尚本院同窓会も同一の目的を以て既に寄附金の募集に着手せり、併せて諒承あらんことを希ふ
  大正八年五月    東北学院理事局長
             勲四等 デー・ビー・シユネーダー


東北学院一覧 昭和十三年 第三頁昭和一三年九月刊(DK460007k-0007)
第46巻 p.25 ページ画像

東北学院一覧 昭和十三年 第三頁昭和一三年九月刊
    東北学院沿革略
○上略
一、同○大正七年四月九日 専門部ノ学則ヲ修正シ、修業年限三ケ年ノ神学科第一部ト、修業年限四ケ年ノ神学科第二部ト、予科一ケ年本科三ケ年ノ文科師範科及商科ノ五学科ヲ設置ス。
一、同八年三月二日 仙台市大火ノ為メ中学部校舎並ニ寄宿舎類焼。
○下略



〔参考〕文部大臣認定指定 東北学院中学部規則 大正一二年四月刊(DK460007k-0008)
第46巻 p.25-26 ページ画像

文部大臣認定指定 東北学院中学部規則 大正一二年四月刊
    東北学院概況
○沿革
 - 第46巻 p.26 -ページ画像 
 東北学院ハ明治十九年、基督教伝道者養成ノ目的ヲ以テ、押川方義並ニ米国宣教師ウイリアム・イー・ホーイ両氏ノ設立セル仙台神学校ヨリ発達シタルモノナリ、当初神学校ハ小ナル借家ヲ以テ校舎ニ当テ屡々移転シタリシガ、真摯ナル努力ノ結果、明治二十四年ニ至リ南町通ニ於テ漸ク恰好ナル校舎ノ新築ヲ見ルニ及ビ、校名ヲ改メテ東北学院ト称シ、且ツ学科課程ヲ拡張シテ、修業年限三ケ年ノ予科並ニ四ケ年ノ本科ヲ置キ、加フルニ神学科ヲ以テシ、単ニ基督教伝道者タラントスルモノヽミナラズ、汎ク基督教主義ノ教育ヲ受ケントスル小学卒業程度以上ノ青年子弟ヲ歓迎スルニ至レリ、明治二十八年予科並ニ本科ノ学科課程ノ配合ヲ一新シ、中学校程度ニ均シカラシメンガ為、予科全部並ニ本科一・二年ヲ併セテ普通科トナシ加フルニ修業年限各二ケ年ノ文科及理科専修部ヲ併置ス、明治卅一年理科専修部ヲ廃ス、同三十五年文部大臣ハ普通科ニ徴兵令第十三条ニ依リ認定ヲ与ヘ、翌年同科ニ専門学校入学者検定規程第八条ニ依リ指定ヲ与フ、明治卅七年文科並ニ神学料ヲ併合シテ専門部トナシ、専門学校令ニ依リ認可ヲ与ヘラレ、同時ニ徴兵令第十三条ニ依リ認定ヲ与ヘラル、明治卅八年普通科新校舎ヲ東二番丁ニ建築シ、同四十三年本院理事局ヲ以テ社団法人ヲ設置ス、明治四十四年本院創立満二十五年紀念式ヲ挙行シ、文部大臣ヲ始メ知事・市長及卒業生並ビニ同情者ヨリ多クノ祝詞ヲ寄セラレタリ、大正四年二月ニ至リ、文部省告示第廿五号ニ依リ専門部及普通科共文官任用令上ノ認定学校ニ加ヘラレ、同年五月廿日普通科ハ、文部省告示第百〇九号ヲ以テ中学部ト改称ノ件、文部大臣ヨリ許可セラレタリ
 本院ハ幾多ノ変遷ト発展トヲ経過セリト雖モ、其ノ精神ニ至リテハ創立以来毫モ異ナルナキヲ信ズ
 本院ハ献身ノ精神ニ依リ、多クノ高貴ナル国民ノ訓育ヲ以テ日本帝国ノ至高ナル幸福ヲ目的トシ、努力センコトヲ期ス
○学部
 本院ハ左ノ諸部ヨリ成ル
  東北学院中学郎    (修業年限五ケ年)
  東北学院専門部文科  (修業年限四ケ年)
  東北学院専門部師範科 (修業年限四ケ年)
  東北学院専門部商科  (修業年限四ケ年)
  東北学院神学科 第一部(修業年限三ケ年) 第二部(修業年限四ケ年)
○教育
 本院ノ教育ハ基督ノ教旨ニ基キ、霊性並徳性ヲ涵養シ、智能ヲ啓発シ、身体ヲ鍛錬シ以テ円満ナル人格ノ実現ニ資センコトヲ期ス
○下略