デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.485-488(DK460124k) ページ画像

大正2年9月17日(1913年)

是ヨリ先、当協会会員ディー・シー・グリーン逝去ス。是日栄一、麹町番町教会ニ於ケル葬儀ニ当協会ヲ代表シテ参列シ、弔辞ヲ述ブ。後、上野精養軒ニ於ケル当協会例会ニ出席ス。


■資料

帰一協会会報 第三・第六―八頁大正二年一二月 デー・シー・グリーン氏の長逝(DK460124k-0001)
第46巻 p.485-486 ページ画像

帰一協会会報 第三・第六―八頁大正二年一二月
    デー・シー・グリーン氏の長逝
 本会会員勲三等デー・シー・グリーン氏は、去る五月以来相州葉山にて療養中なりしが、九月十五日終に長逝せらる。
 氏は、本会創立以来熱心に助力せられ、殊に米国帰一協会の設立に就いては、令息ジエローム・グリーン氏と協力して斡旋頗る力められたり。今や海外に於ける最初の姉妹協会たる米国帰一協会已に組織せられたる時に方り、この訃音に接す。本会の為めに誠に哀悼の至りに勝へず。
 氏の葬儀は、同月十七日午後二時、麹町番町教会にて二宮邦次郎氏司会の下に厳かに行はれたり。幹事渋沢男爵並に成瀬氏、本会を代表して参列し、霊前に花環を供へ、且つ渋沢男爵は左の弔詞を朗読せり
 - 第46巻 p.486 -ページ画像 
    弔詞
維時大正二年九月十七日、日本帰一協会代表渋沢栄一、謹みて日本帰一協会会員米国神学博士勲三等デー・シー・グリーン君の霊に告ぐ
顧れば、君が故国の学窓を出でて我邦に来游されしは今を距る四十有余年前にして、時恰も明治維新の大業方めて成り、人心の動揺未だ全く鎮まらず、本邦文教の根柢動もすれば危からむとするの時代なりき君は此間に立ち常に我国の徳教に対する公正なる見解と我国民に対する甚深なる同情とを懐き毅然として時流の外に立ち、内は人材の教育社会の改良に勉め、外は国際友誼の増進に尽し、専心一意我が国家国民の為に至誠を輸して怠らず、長逝に至るまで終始一日の如くなりき明治の聖代を彩るべき宗教史は君に依りてその一半を編まれたりと言ふも敢て過言に非ざるを信ず、君の功や亦洵に偉なりと謂つべし
昨夏同志相謀つて帰一協会を創立せむとするや、君は満腔の賛意を表して之を扶け、殊に米国に於ける姉妹協会の組織の如き、全く君の熱誠なる尽瘁によりて其成立を見るを得たりき、帰一協会が他日世界的運動を起すの機到らば、その第一の感謝は君に捧げざるを得ず
君夙に国際関係の単に政治経済にのみ止まらずして、彼我思潮の交流亦与つて大なりと為し、遠大なる目的を以て国際研究協会の組織を企てたりき、然るに其業未だ緒に就くに至らずして、志を齎して天国に帰へらる、悲恨何ぞ堪へむ
聞くならく、君は加州問題に痛心し、病為に篤きを加へたりと、嗚呼君の至情厚誼は吾人辞の以て之を謝するもの無きなり、今や我が帰一協会は其基礎漸く固く、米国帰一協会は既に其設立を了し、更に進むで英仏の諸国にも其組織を見むとするの機に際し、玆に一大良友を喪ふ、吾人の不幸何物か之に加へむ、然りと雖も、君の遺志は吾人会員亦之を体して永く渝ることなかるべし、在天の英霊希くは其れ之を鑑せよ
  大正二年九月十七日
            帰一協会代表者
             従三位勲一等男爵渋沢栄一


帰一協会記事 一(DK460124k-0002)
第46巻 p.486-487 ページ画像

帰一協会記事 一            (竹園賢了氏所蔵)
    九月例会
九月十七日○大正二年 午後五時 上野精養軒
      評議員会出席者
 井上哲次郎氏・中島力造氏・渋沢男爵・成瀬仁蔵氏・筧克彦氏・服部宇之吉氏
本会議ニ於テ左記ノ諸氏ヲ本会々員トス
 蘆部敬三郎氏
 一戸兵衛氏
 団琢磨氏
 五代竜作氏
 松浦政泰氏
 山内繁雄氏
 - 第46巻 p.487 -ページ画像 
 山川端夫氏
 安川敬一郎氏
      以上
而シテ新ニ左ノ諸氏ヲ本会々員ニ推薦ス
 麻生正蔵氏 (成瀬・服部両氏推薦)
 中島久万吉氏(渋沢・成瀬両氏推薦)
 古川虎之助氏( )
        成瀬・中島両氏推薦
 福岡秀猪氏 ( )
 村井貞之助氏(中島・成瀬両氏推薦)
        以上
例会開会 当日ノ出席者左ノ如シ
 朝吹英二氏   井上哲次郎氏
 ウエンライト氏 内ケ崎作三郎氏
 石橋甫氏    成瀬仁蔵氏
 渋沢栄一氏   服部宇之吉氏
 荘田平五郎氏  八代六郎氏
 中島力造氏   本郷房太郎氏
 本多日生氏   添田寿一氏
 筧克彦氏    塩沢昌貞氏
 五代竜作氏   山田英太郎氏
 山内繁雄氏   宮岡恒次郎氏
 松本亦太郎氏  マツコーレー氏
 馬場恒吾氏   加藤玄智氏
 原田助氏
賓客米国サンダーランド博士   以上
当日ノ研究題目並ニ主題者ハ左ノ如シ
 原始儒教ノ倫理           井上哲次郎氏
晩餐後サンダーランド博士ニ一場ノ講話ヲ乞フ
博士ハ日本ニ帰一協会ノ如キ会ノ存在スル事ヲ大慶トスト述ベ、又世界ノ各地ニ万国宗教家大会ヲ催シ、日本ニ於テモ近ク之ヲ開催スルノ計画ナル事ヲ述ベラル(内ケ崎作三郎氏通訳)
右ニ対シ井上博士ノ挨拶アリ、サ博士ノ答辞アリテ会ヲ閉ヅ
尚ホ右サ博士ノ講話ハ英文ヲマツコーレー氏ニ、邦文ヲ内ケ崎氏ニ起草ヲ依頼ス
 次回講演ハ本野男爵ニ、又米国ニ関スル談話ヲ江原・添田両氏ニ請フ事トシテ散会
 井上博士ノ講演ハ十一月例会ニ続講ヲ請フ


帰一協会会報 第三・第九頁大正二年一二月 九月例会記事(DK460124k-0003)
第46巻 p.487-488 ページ画像

帰一協会会報 第三・第九頁大正二年一二月
    九月例会記事
○九月十七日 当月例会を上野精養軒に開く。出席者廿五名。外に賓客サンダーランド博士。当日の研究題目並に主題者は左の如し。
 原始儒教の倫理(其一) 文学博士 井上哲次郎氏
 右畢つて、世界宗教大会開会の用務を帯びて、米国ユニテリアン協
 - 第46巻 p.488 -ページ画像 
会より派遣せられたるサンダーランド博士に一場の講話を請ふ。博士は、明年秋米国に開き、英国を経て土耳古・埃及・印度・支那及び我邦にて到る処に開催すべき、世界宗教大会の計画の大要を説き、日本に於て開くべき会合は、帰一協会に於て主として計画準備を請ひたしとの旨を演述せられたり。之に対して、井上博士は本会を代表して、追つて協議すべき旨を答へられたり。
   ○栄一、更ニ九月二十七日サンダーランドヲ飛鳥山邸ニ招キテ午餐会ヲ催セリ。本資料第三十九巻所収「其他ノ外国人接待」大正二年九月二十七日ノ条参照。