デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.552-553(DK460134k) ページ画像

大正3年9月16日(1914年)

是日栄一、上野精養軒ニ於ケル、アメリカ合衆国シカゴ大学総長ジャドソン一行ノ歓迎ヲ兼ネタル当協会例会ニ出席シ、歓迎ノ辞ヲ述ブ。


■資料

帰一協会会報 第五号・第五一―五三頁大正三年一二月 九月例会(DK460134k-0001)
第46巻 p.553 ページ画像

帰一協会会報 第五号・第五一―五三頁大正三年一二月
    九月例会
 大正三年九月十六日午後五時上野精養軒に於て開会、左の講演ありたり。
 基督教思想の動揺           姉崎正治氏
右講演後、当日の来賓たる北米合衆国シカゴ大学総長ジャドソン博士一行の歓迎会に移り、渋沢男先づ本会を代表して歓迎の辞を呈せらる之に対してジャドソン博士は大要左の如き意味の答辞を述べられたり
  余は先づ諸君の懇篤なる歓迎に対して深厚なる謝意を表せざる可らず。余は日本に来りて毫も他国に在るの感なし。五年前余が渋沢男等の一行をシカゴに迎へて得たる感想は、互に他を知る事の利益なりき。若し諸君が此儘シカゴに来りて、該市の人士と相交通理会せられなば、幾多の国際的誤解を除く事を得べし。但し国際上の事件は最も予測し難き者なるが故に余は斯種の問題に関して殆んど何等の語る可き点を有せざれども、国と国とは各自の最善に依りて理会し提携すべき者なる事を信ず。米国現時の問題は、近世に於ける物質的進歩と倫理的思想との関係の問題也。而してこは必しも米国のみの問題にあらじ。独逸も嘗ては哲学・文学の国なりしが、近来は著しく実利主義に傾けるが如し。実利と倫理との関係問題は実に世界的問題也。
  一国民の存在は何物かを世界に貢献する事に依つて始めて意義あり。日本及び米国を始め各国民総て此の覚悟を以て人道と文明との為に尽す所あらば、能く一時の風雲を制して永遠の平和を期する事を得べし。
  余はロックフェラー財団の使命を帯びて、支那に於ける衛生状態及び医学教育の実情を視察せり。支那より日本に来りて全然別世界に入れるの感を起せる程に、彼国の衛生及び医学状態は憫然幼稚なる者也。欠乏に対しては各自之れが援助に力めざる可らず。云々。
 次に阪谷男亦所感を述べられ、特にジャドソン博士の随行者にして故本会々員デー・シー・グリーン氏の令息たるジェローム・グリーン氏に対して歓迎の誠意を表さる。グリーン氏は溢るゝ許りの親愛の情を以て、厳君の友人等の間に招かれたる事を感謝せられたり。
 次いで阪谷男は再び起つて、不日ハーヷード大学に再度赴任せらるべき姉崎博士に対して送別の辞を述べ、併せて同博士の講演に対する批評を試みられたる結果、談論大に花咲き、十時半に至りて漸く閉会を告げたり。当日の来会者四十二名。
   ○是月十八日、栄一、ジャドソン夫妻ヲ飛鳥山邸ニ招キ、午餐会ヲ開ク。本資料第三十九巻所収「其他ノ外国人接待」大正三年九月十八日ノ条参照。