デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.614-616(DK460149k) ページ画像

大正5年1月21日(1916年)

是月四日、栄一帰国ス。是日当協会、例会ヲ兼ネテ、中央亭ニ於テ、栄一ノ帰国歓迎会ヲ開催ス。栄一帰国演説ヲナス。例会席上、時局問題研究委員会ニ於テ審議セル宣言書案ヲ可決ス。


■資料

帰一協会録事 第二(DK460149k-0001)
第46巻 p.614-615 ページ画像

帰一協会録事 第二           (竹園賢了氏所蔵)
 一月○大正五年 例会兼歓迎会 廿一日(金)
 一月四日米国より帰朝せられたる会員渋沢・頭本・マコーレー及び客員鈴木文治氏の為めに歓迎会を開き、かねて、宣言案に付キ協議あり、当日出席者左の如し
   渋沢栄一氏     頭本元貞氏
   マコーレー氏  客員鈴木文治氏
   福岡秀猪氏     水野錬太郎氏
   安川敬一郎氏    高木壬太郎氏
   五代竜作氏     古谷久綱氏
   高木兼寛氏     麻生正蔵氏
   荘田平五郎氏    志村源太郎氏
   増田義一氏     ジー・ケールン氏
   沢柳政太郎氏    ガレン・フイツシャー氏
   ジー・ボールス氏  山内繁雄氏
   秋月左都夫氏    宮岡恒次郎氏
 早退添田寿一氏     阪谷芳郎氏
   斎藤七五郎氏    綱島佳吉氏
   森村開作氏     姉崎正治氏
   中島力造氏     成瀬仁蔵氏
   海老名弾正氏    内ケ崎作三郎氏
   エツチ・コーツ氏  加藤玄智氏
 客員コツク氏    早退江原素六氏
 歓迎会を開く前に宣言案討議に入る、即阪谷男を座長に推し、宣言案の第三読会に移る
姉崎氏=宣言案討議の経過の説明をなし、原案を朗読せらる
座長=本宣言を発表すべきや否や
添田氏=本案を尊重し之に修正を加へん事は之を欲せず、但し凡そ個人完成の事は最も必要なり、日本は国家としては世界の第一位に居ると雖も、個人としては之を外国の人に比して遜色なきを得るか、此点を憂ふるものなるが今本案には此点なきが如し、又経済上に於ては日本は国家国民共に他国に劣る、今後の競争に於ては此の経済上の活動最も必要なり、今にして之を一新せされは甚た憂慮に堪へず、此点ハ第何条に在りや
姉崎氏=第一の点ハ第一条自他の人格云々の中に此の意味を含ましめたる考なり、第二点ハ第五条に於て多少其点に触れたりと信ず、尚ほ之等の不審の点あるべければ、従来の諸氏の案は之を参考として
 - 第46巻 p.615 -ページ画像 
発表する積りなり
江原氏=人格の範囲如何
 婦人の人格を尊重せよ、人格の意には婦人も加へたし、例へは芸妓屋など多くの養子をなし、親権を以て醜業をいとなましむるは不可なり
姉崎氏=勿論婦人をも含む、前案には女子なる文字をも表はしたるありき、かくては更に小児老人等の文字も必要となるの感あり、為に女子の文字を省きたり
宮岡氏=江原氏の人格問題に付て、日本法律は女の人格を尊重せず醜業云々と云はるゝも、日本法律は醜業の目的にて養子縁組は之を認め居らず
荘田氏=大正革新の文字は文章上の修飾なるか
姉崎氏=文字の内容は兎に角、玆に奮発すべき時機に際会せりとの感を各自に有するか故なり、所謂「キツカケ」ともいふべきもの也
座長=数回に亘るも議論は尽きず仍て之にて確定せられたし……可決而して更に諸君の意見を蒐め、来る二月十一日此の問題に付き演説会を開き、速記にとりまとめて之を世に問んとす
右異議なしと認む(六時)
   ○右宣言発表演説会ハ二月十一日行ハレタリ。
之より歓迎会に移り、食卓を開く
秋月左都夫氏は会員を代表して歓迎の辞を述べらる
 本会々員中より諸氏の如き名士を出したる事は、本会の大に名誉とする所なり、由来人種を異にし、言語思想を異にする国民の融会は最も困難を感ずる点なりとす、然るに此度渋沢男が御老体に拘らず遥々洋を渡りて、日米親善の為に彼地の各方面の人に会して、大に尽力せられ、尠からさる効果を収めて帰朝せられたる事は、大に之を多とし、邦家の為に感謝すべき事なり、云々
次で別席に移り、渋沢・頭本・マツコーレー、及び鈴木氏の演説あり(玆に略す)
最後に阪谷男は諸氏に対し一場の挨拶をなし閉会す、時に午後十時十五分なりき。


帰一協会会報 第八号・第一六一―一六二頁大正五年七月 ○一月例会兼歓迎会(DK460149k-0002)
第46巻 p.615-616 ページ画像

帰一協会会報 第八号・第一六一―一六二頁大正五年七月
    ○一月例会兼歓迎会
 大正五年一月廿一日午後五時、麹町区八重洲町中央亭に於て、一月例会を兼ね、同月四日米国より帰朝せられたる会員、渋沢・頭本・マツコーレー三氏、及び客員鈴木文治氏の為めに歓迎会を開く。出席者三十六名。先づ前年来の問題たる宣言案に付きて討議をなし、玆に数箇月に亘りて審議したる本案も可決するに至れり。次で右四氏の歓迎会に移る。即ち食卓を開き、秋月左都夫氏は会員を代表して歓迎の辞を述べて曰く
 本会々員中より諸氏の如き名士を出したる事は、本会の大に名誉とする所なり。由来人種を異にし、言語思想の一ならざる国民の融会は、最も困難を感ずる点なりとす。然るに此度渋沢男爵が御老体に
 - 第46巻 p.616 -ページ画像 
拘らず、遥々洋を渡りて米国に到り、日米親善の為に、彼地の各方面に対し、相互の理解融会の為に尽力せられ、尠からざる効果を収めて、帰朝せられたる事は、邦家のために深甚の感謝を捧ぐべきなり、云々
次で別席に移り、渋沢・頭本・マツコーレー三氏及び鈴木氏の講演ありたり。尚ほ鈴木氏は日本労働者を代表して渡米し、米国労働者会議に列席して、日本の為めに大に気を吐き、邦家の面目を新にせられたりといふ。最後に阪谷男は四氏に対し感謝の辞を述べ、十時十五分散会す。
   ○宣言文ハ本款大正四年十月二十九日ノ条参照。



〔参考〕帰一協会会報 第七号・第三六頁大正五年三月 ○宣言決定に至る経過の大要(DK460149k-0003)
第46巻 p.616 ページ画像

帰一協会会報 第七号・第三六頁大正五年三月
 ○宣言決定に至る経過の大要
同年○大正五年 二月十一日 宣言発表講演会
 午後六時より、神田基督教青年会館に於て宣言発表講演会を開く。当日講演左の如し。
  宣言発表につきて開会之辞   姉崎正治君
  大国民の襟度と海外思想の扶殖 下村宏君
  研究的精神の養成       増田義一君
  国際道徳に就きて       阪谷芳郎君
  海事思想の養成        石橋甫君
右の中開会之辞は、之を本号に掲げ、他の講演並に宣言事項に関する会員の意見は逐次本会会報に掲載すべく、又右同様の講演会を今後時々開くべき予定なり。