デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
8款 財団法人理化学研究所
■綱文

第47巻 p.118-122(DK470014k) ページ画像

大正6年4月26日(1917年)

是日栄一、宮内省ニ出頭シテ、当研究所ニ対スル
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帝室御下賜金百万円ノ御沙汰書ヲ拝受ス。是月二十三日ノ理事会ニ於テ、栄一、所長トシテ菊池大麓ヲ、次長トシテ桜井錠二ヲ推ス。五月二日ノ理事会ニ於テ、両者就任ヲ受諾ス。


■資料

集会日時通知表 大正六年(DK470014k-0001)
第47巻 p.119 ページ画像

集会日時通知表  大正六年       (渋沢子爵家所蔵)
四月廿三日 月 午前十時 理化学研究所ノ件(商業会議所)
  ○中略。
四月廿六日 木 午前十一時 石原宮内次官ト御会見ノ約(宮内省)


財団法人理化学研究所第一回(大正六年度)事業報告書 第一七―一八頁大正七年六月刊(DK470014k-0002)
第47巻 p.119 ページ画像

財団法人理化学研究所第一回(大正六年度)事業報告書  第一七―一八頁大正七年六月刊
 ○第三章 資金
    第一節 御下賜金並ニ政府補助金
一御下賜金 本所設立ノコト上聞ニ達スルヤ、帝室ニ於テハ大正六年四月二十六日、左記写ノ通御沙汰書ト共ニ、金百万円御下賜ノ恩命ヲ下シ給ハリタリ、大御心ノ学術及産業ノ御奨励ニ優渥ナル、恂ニ恐懼感激ニ堪ヘサル所トス、依テ第二回評議員会ハ聖旨ヲ奉戴シ、所期ノ目的ヲ貫徹セムカ為、右恩賜金ヲ基金ニ充テ、永遠ニ保管スルコトヲ議決セリ
    御沙汰書写
                  財団法人理化学研究所
一金百万円
 今般其ノ所設立ノ趣被聞食学術及産業御奨励ノ思召ヲ以テ御補助トシテ大正六年度以降十ケ年間年年金拾万円宛即前記ノ通下賜候条聖旨ヲ奉戴シ黽勉努力以テ其ノ目的ヲ遂成セムコトヲ期スヘシ
  大正六年四月二十六日
                      宮内省


国民新聞 第九〇五五号 大正六年四月二七日 御下賜金を拝戴して 渋沢栄一男 謹話(DK470014k-0003)
第47巻 p.119-120 ページ画像

国民新聞  第九〇五五号大正六年四月二七日
    ○御下賜金を拝戴して
                   渋沢栄一男 謹話
○上略
『今日午前十一時頃石原宮内次官から電話がありましたので、目下の処所長も確定して居りませんが、取敢ず私が所長代理として宮内省に出頭し、御沙汰書を拝戴致しました次第でございます、畏き極みであるが、この御下賜金の儀は予々御願ひ致しました通り
△全部御聴 に相成り、金百万を大正六年度以降向ふ十ケ年間年々金十万円宛御下賜遊ばされたる次第で、寔に聖恩の鴻大なるに感激措く能はざる処であります、此上は研究所員一同弥が上にも発奮努力、以て理化学の研究大成を期するは言ふ迄もない次第で、所長以下役員も近々に発表する段取となつてゐるし、本館竣成迄は東京帝国大学の
△研究室を充当 するか、又は工業試験所の一部を臨時代用して事業に著手する筈であります、研究所敷地の事も昨今政府に出願中で、遠からず決定する訳であるが、是が工事等も成る可く迅速に運びたいも
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のであります』


自第壱回至第三十八回理事会決議録(DK470014k-0004)
第47巻 p.120 ページ画像

自第壱回至第三十八回理事会決議録   (財団法人理化学研究所所蔵)
    第二回理事会
大正六年四月廿三日午前十時、当事務所ニ於テ第二回理事会ヲ開キ、第一回理事会ニ於テ決定セサリシ本所代表者選定ノ件ヲ附議セリ、渋沢男爵ハ各理事ノ意見ヲ徴シ凝議セラレタル結果、菊池男爵ヲ本所代表者ニ、又桜井博士ヲ専務ノ地位ニ推薦シ、而シテ其名義ハ所長及次長又ハ他ノ適当ナル職名ヲ附スルコトトセムコトヲ発議セラレタルニ全会一致之ヲ可決セリ、仍テ来会中ノ菊池男爵及桜井博士ニ其承諾ヲ求メタルニ、菊池男爵ハ枢密顧問官又桜井博士ハ理科大学長ノ現職ニ在ルヲ以テ所属官庁ノ承認ヲ受クルニアラサレハ確答シ難キモ、若シ許可アルニ於テハ両氏ハ所長又次長トシテ就任シ、本所ノ為努力スルコトヲ辞セサル旨申出ラレタルニ付、両氏ヨリ各所属官庁ニ交渉スルコトトシ、〇時半散会セリ
当日ノ出席者左ノ如シ
 菊池・渋沢両副総裁
 大橋・和田・団・高松・高峰代理塩原・田所・桜井各理事


中外商業新報 第一一一三一号大正六年四月三日 ○理研所長銓衡 人選頗る困難(DK470014k-0005)
第47巻 p.120 ページ画像

中外商業新報  第一一一三一号大正六年四月三日
    ○理研所長銓衡
      人選頗る困難
理化学研究所の理事・監事は既に人選を了りたるが、所長に何人を託す可き乎は未だ全く見当附かず、理学博士桜井錠二氏の如きは研究所の設立に当り熱心に尽力し現に
△評議員の一員たり、所長として多数の認識する所なれど、氏には其意思なきものゝ如く、適任者として高峰博士は一方米国に於て高峰研究所を有し居る関係上多分就任せざるべし、高松博士の呼声もあれど氏は現に農商務省工業試験所の所長たり、是亦動かし難かるべき乎、要するに所長としては一方学者たると同時に又他方多少の商売気なかるべからず、更に加ふるに活動力ある人を欲すべきが故に、頽齢の人にても不可なる事情ありて、人選上
△困難なる問題なるが、一部に於ては所長として必ずしも学者を適任とせざるべく、広く適材を一般に求むるに如かず、而して研究上の事に就ては、物理部と化学部の二部長並に其下に組織せらるべき夫々の主任に学者・研究家を網羅せば可也との議あり、其何れに決し又其何人を所長に選むべき乎は、部長其他の主任選定は素よりの事、建築上の決定を急ぐ関係上、成るべく急速に進行せしむべき必要あるを以て近く理事・監事会を開きたる上何分の銓衡を経べしと云へり


中外商業新報 第一一一五二号大正六年四月二四日 ○理研所長内定 菊池男を推薦(DK470014k-0006)
第47巻 p.120-121 ページ画像

中外商業新報  第一一一五二号大正六年四月二四日
    ○理研所長内定
      菊池男を推薦
理化学研究所にては、廿三日午前十時より正午に亘り、東京商業会議
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所に於て理事会を開き、所長として現在理研副総裁菊池大麓男を、又次長として現任理研理事理学博士桜井錠二氏を推す事を申合せたり、尤も菊池男の就任は現に枢密顧問官たる関係上一応議長又は副議長に相談し、桜井氏も亦帝大教授在職なるが故に大学総長並に文部大臣の許可を得るの要あり、愈々の決定を見るは其間尚多少の日子を要す可しと雖も、両博士は共に結局就任する事となり、両博士の手にて更に物理並に化学両部の部長を人選する事となるべしと云ふ


集会日時通知表 大正六年(DK470014k-0007)
第47巻 p.121 ページ画像

集会日時通知表  大正六年         (渋沢子爵家所蔵)
五月二日 水 午後二時 理化学研究所理事会(商業会議所)


自第壱回至第三十八回理事会決議録(DK470014k-0008)
第47巻 p.121 ページ画像

自第壱回至第三十八回理事会決議録   (財団法人理化学研究所所蔵)
    第三回理事会
大正六年五月二日午后二時、当事務所ニ於テ第三回理事会ヲ開キ、渋沢副総裁ハ帝室御下賜金百万円ノ御沙汰書ヲ拝受シタルコト、及前理事会ニ於テ内定シタル菊池所長及桜井次長就任ノ件ハ総裁官殿下ニハ良所長及次長ヲ得タルコトヲ御満足ニ思食サレタルコト、又寺内首相宮内省・農商務省ニ於テモ両氏ノ就任ヲ大ニ歓迎セラレタル旨報告シ又菊池男爵及桜井博士ハ何レモ所属官庁ニ於テ本所所長又次長トシテ就任ノ件ニ付承諾ヲ得タル旨報告シ、次テ評議会開催其ノ他ノ件ヲ附議シ、左ノ通リ決議シ、午後四時散会セリ
一、評議員会ハ、寄附行為・役員員数改正又菊池男爵ヲ理事ニ推薦スル為開催ノ必要アルモ暫ク之ヲ延期シ、事業計画其他規則類ノ成案ヲ待テ開催スルコト
二、敷地選定ノ件ハ、大蔵省・東京府及東京市ニ交渉シタルモ未タ適当ナル場所ナキヲ以テ、不取敢宮内省ニ属スル目黒火薬庫跡ニ就キ上山理事ヨリ宮内省ノ内意ヲ聞クコト、又大蔵省ヘ更ニ調査方ヲ依頼スルコト
三、京浜及地方ニ於ケル寄附金募集方ハ、近ク上京スル地方長官ノ意見ヲモ参酌シテ、相当ノ方法ヲ講スルコト
四、事業計画ニ関シ部長ヲ置クノ必要アルニ付、其人選方ヲ菊池男爵及桜井博士ニ一任シタルニ、両氏ハ物理部長ニ理学博士長岡半太郎氏ヲ、化学部長ニ池田菊苗氏ヲ推薦セラレタリ、仍テ同氏等ノ承諾ヲ俟テ直ニ設計及予算ノ作成ニ着手スルコト
五、本所規則及会計規則案ニ付更ニ講究スルコト
当日ノ出席者左ノ如シ
 菊池・渋沢両副総裁
 大橋・和田・上山・団・高峰代理塩原・桜井・荘各理事、原監事


竜門雑誌 第三四八号・第八五頁大正六年五月 ○理化学研究所其後の経過(DK470014k-0009)
第47巻 p.121-122 ページ画像

竜門雑誌  第三四八号・第八五頁大正六年五月
○理化学研究所其後の経過○中略
次で五月二日午後二時より東京商業会議所に於て理事会を開き、青淵先生を始め、菊池・桜井・田所・大橋・原・上山・和田・塩原の各理事出席の上、不日評議員会を開きて左の報告事項及び協議事項を諮る
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件に就き打合せを為し、尚ほ研究部たる物理学部・化学部の部長をも同時に決定する筈にて、四時半散会したる由。
      △第三回報告事項
 一、御下賜金に関する件
 二、所長又び次長就任に就き所属官庁承認の件
      △協議事項
 一、評議員会開催の件
 二、敷地選定に関する件
 三、京浜及び地方寄附金募集方の件
 四、本年度事業計画に関する件
 五、本所規則及び改正規則制定の件
 次で五月七日副総裁青淵先生は菊池副総裁と同伴の上、午前十時紀尾井町なる伏見総裁宮御邸に伺候し、殿下に拝謁して、青淵先生よりは同所設立以来の経過に就き、又菊池副総裁よりは同所将来の計画に就き、各詳細に御報告申上ぐる所あり、終つて同十一時退出せられたりとぞ。


中外商業新報 第一一一六六号大正六年五月八日 ○理研事業報告(DK470014k-0010)
第47巻 p.122 ページ画像

中外商業新報  第一一一六六号大正六年五月八日
    ○理研事業報告
理化学研究所の渋沢・菊池両副総裁は、七日午前十時より、伏見総裁宮御本邸に参邸し、渋沢男より同所設立経過を、菊池男よりは、今後に於ける同所設立計画、又研究事項等に付、委細言上し、同十一時退邸せり