デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
4節 編纂事業
2款 楽翁公伝編纂 付 楽翁公関係資料刊行
■綱文

第48巻 p.6-8(DK480002k) ページ画像

大正14年6月11日(1925年)

是ヨリ先栄一、松平定信(楽翁)ノ伝記編纂ノ志アリ。是日、穂積陳重、栄一ニ三上参次ヲ推ス。後、三上参次ニ監修ヲ、平泉澄ニ編纂ヲ依嘱ス。


■資料

(増田明六) 日誌 大正一四年(DK480002k-0001)
第48巻 p.6 ページ画像

(増田明六) 日誌 大正一四年     (増田正純氏所蔵)
六月十一日 木 晴
○上略
穂積男爵より子爵ニ左の提案ありて、子爵も略同意せられたり
○中略
渋沢子爵より楽翁公伝出版ニ関する意見ありしも、之れハ三上参次博士の著述を援助する事にしてハ如何との男爵の意見なりし
○下略
   ○中略。
十月二十九日 木 晴              出勤
○上略
本日の来訪者及要件
4平泉澄 松平楽翁公伝記の件
○下略


(増田明六) 日誌 昭和二年(DK480002k-0002)
第48巻 p.6-7 ページ画像

(増田明六) 日誌 昭和二年      (増田正純氏所蔵)
 - 第48巻 p.7 -ページ画像 
二月二十三日 水 晴              出勤
○上略
午後三時より予て編纂を嘱託せる文学博士平泉澄氏より、松平定信公伝記編纂の状況を子爵と共ニ聴取す
○下略
   ○中略。
三月六日 日 晴
午前十時より飛鳥山邸ニて、子爵を始め三上参次博士・平泉澄博士・井野辺茂雄・高田利吉の諸子及小生も会列、三上博士ニ於て監修の下に、平泉博士編纂中の白河楽翁公伝ニ関し種々談話を交換したり、正午より尾高豊作氏も来会した、午後三時終了、子爵及三上博士退出後平泉・井野辺・尾高及小生残留、同伝並徳川慶喜公伝(之ハ井野辺氏編纂担当)の出来期日等ニ付き談合、午後五時半帰宅ス
本日の三上博士の話ニ、今後の出版物は口話体ニあらされば一般ニ読むもの甚々少き状態なるを以て、前記二種の著書も口語体に依り度しとの意見あり、子爵も之ニ参同《(賛)》さ《(せ)》られたり、又楽翁公伝著者の名前を子爵ハ三上博士ニすべしと云ひ、博士は子爵の名ニて発行せられたしと云て後日の宿題となれり、三上博士ハ自分は目下明治帝御伝記編纂に従事するを以て、同書の公表せらるゝ前ニ他の書物を出版するは心ニ済まさる処なりと云へり
 平泉博士の話に三上博士最初の著書ハ楽翁公伝なるが、博士は常に該著書を今日より見れハ誠に残愧《(慚)》ニ堪へすと云へり、爾来其資料を集め今日完成ニ赴きたるニ付てハ、可成ハ博士の名義ニて出版したきものなりと後ニ小生ニ語れり
○下略
   ○中略。
三月廿五日 金 晴               出勤
○上略
本日の来訪
1、平泉澄博士 松平楽翁公伝記編纂の件ニ関し種々打合ハす処あり
○下略
   ○中略。
八月六日 土 曇                出勤
○上略
午後二時平泉澄博士来訪、日光東照宮ニ赴き楽翁公より同宮ニ納付したる秘密文書調査の状況を子爵ニ報告し度しとの事ニて、小生子爵と共ニ詳敷聴取した、要之右秘密文書を東照宮の日記ニ依りて調査したるニ、後幕府ニ取り寄せ焼棄した事が分つたのである


(増田明六) 日誌 昭和三年(DK480002k-0003)
第48巻 p.7-8 ページ画像

(増田明六) 日誌 昭和三年      (増田正純氏所蔵)
一月十一日 水 晴               出勤
○上略
本日の来訪者と其要件
1、尾高豊作君○尾高次郎ノ長男刀江書院主 刀江書院本年出版の楽翁公伝と徳川慶
 - 第48巻 p.8 -ページ画像 
喜公伝の原稿完了ニ関する件○下略
   ○中略。
七月八日 日 晴               飛鳥山邸
○上略
午後三時より飛鳥山邸に於て、白河楽翁公伝編纂の事に付き協議会が開かれた
出席者は渋沢子爵、三上参次・平泉澄両博士と小生及高田利吉君の五人で、平泉・高田両氏は各稿本一冊宛朗読して子爵の聴問に達した後種々協議し、大体左の通打合ハされた
一本年十月一日を期し発行する事
一発行所は刀江書院とすること
一既稿本中ニ公の文芸ニ関するもの無きを以て新ニ此一篇を追加する事、其編纂は三上博士指導の下に平泉氏担当の事
一稿本の作成は大体七月中に全篇を了し、八月子爵の転地先に送附し校閲を受け、九月一日原稿を刀江書院ニ回附し、其月中に製本迄遂げる事
○下略
   ○中略。
八月十二日 日 晴
○上略
午後三時子爵より呼ばれて飛鳥山邸に行つた処が、均しく呼出された岡田・高田両君が先着して居た、先つ子爵に拝眉して左の二件を御願した
一松平楽翁公伝原稿三上博士の手ニ在りて未廻送なるに付き、子爵の伊香保御滞在中御手許へ提出する事不能の旨申述へたるニ、子爵は延引しても仕方が無いではないかと格別意にも止められなかつた
  三上博士は同原稿を七月中に出来して、八月始め子爵に提出し、子爵ハ八月中之を閲了し、九月始め刀江書院に之を廻はして印刷せしむる事ニすべしと云ハれたのである
○下略