デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
4節 編纂事業
8款 明治商工史
■綱文

第48巻 p.41-43(DK480016k) ページ画像

明治43年12月(1910年)

是ヨリ先、報知新聞社、同紙一万二千号発刊記念トシテ、栄一ヲ撰者ニ依嘱シ、名士ノ論説・講話ヲ集メ、「明治商工史」ト題シテ刊行ス。是月栄一、同書再版ノ題言ヲ撰ス。大正七年、同紙一万五千号発刊ニ際シ、「最近商工史」ト改題シテ発行ス。


■資料

明治商工史 渋沢栄一撰 題言・第一―四頁 明治四四年三月刊(DK480016k-0001)
第48巻 p.41-42 ページ画像

明治商工史 渋沢栄一撰 題言・第一―四頁 明治四四年三月刊
  題言
 報知社は、同社の発行に係る報知新聞壱万弐千号を記念せんが為に「明治商工史」を刊行して先づ之を 皇室に奉呈し、次で之れを維新商工業の発達に直接間接の功労ある朝野の諸名流に寄贈せり、然るに悉くも 両陛下の天覧を賜はり、皇太子皇太子妃両殿下の台覧を蒙るを得たるは、其撰者たる不肖栄一の報知社と与に洵に光栄とする処なり、加之其発行偶々以て時宜に適し、官民識者の推奨の下に之を再版に附し、前の非売品たるものを改めて広く江湖の需要に応ずるの機会に接するを得たるは、報知社及び予の寔に本懐とする処也。
 予は本書の撰者たる責任を辞する者に非ずと雖、実は講述者中の一人たるに過ぎず、故に本書の内容の、有力なる材料の出処と、知識経験に富みたる多数の講述者とを有する点よりして予は寧ろ「明治商工史」を社会に紹介する責任ありと思惟す。
 維新後四十余年間に於ける我が国運の発展に関しては語る可き多くの事実を有するならんも、中に就きて、領土の拡大、商工業の発達、及び之に伴へる経済機関の進歩の如き、通信交通の設備の如き、最も著大なる事件として屈指せざるべからず、然れば今後の国運をして、世界的発展の実を挙げしめんと欲せば、先づ如上諸事業の沿革と、並に其の現在将来に関して的確なる研究を遂げ、以て国民をして其の拠る処を知らしめざるべからず、而して「明治商工史」は之を以て編纂の本領となせる者なり。
 本書の編纂に際し、予は大隈伯爵と共に講述者の人撰に参れり、幸に諸名流其人を得たるを以て、各項目の沿革を叙し、現況を述ぶる、何れも実際に通ぜざるは無く、所謂咳唾皆珠たるの観なくんばあらず若し夫れ仮すに諸家の蘊蓄を尽くすの時日を以てするあらば、錦上更に華を副ふるの美を成し得たるや知る可し、要するに各篇多少の精疎長短の差違ある、備はるを求むる点に於て遺憾なきにあらずと雖も維新後に於ける銀行・会社、其の他の経済機関の発達状況、商業・工業・鉱山業・通信業・陸上交通・海上交通業の発達の状況を沿革的に記述せる外、更に此等の現在将来に対する批評経綸を併はせ有し、且何れ
 - 第48巻 p.42 -ページ画像 
も日々鞅掌する実務の上より実際的に立論判定せられたるを以て片言隻語皆な味ふに足らざるは無し、若し夫れ専門学者の史志史論を編むの眼を以て本書を睹る時は或は到らざる処なきを保せずと雖、然れ共維新以後に於ける已上諸事業の沿革、現況将来に関し、歴史として、統計として、経綸として、且つ実際に活用に記述せる点に於ては、予の寡聞なる恐らくは未だ本書の右に出づる者あるを知らず、仮りに多少の不備を免かれずとするも、尠く共後の商業・工業・通信・交通等の発達史を編纂する者の為めに貢献する処あるや疑ふべからず。
 明治商工史は吾人四十余年来経営努力したる業務の記録にして百年の後全史を大成すべき一部の資料たるものなり、然れども此四十余年間は我邦商工隆運の初期時代なるが為に、四方の有志風雲に乗じて斯界に翺翔し、国利民福の計に拮据したるものあり、縦横漁利の策を擅にしたるものなり、冀くば現在商工業に従事するもの此書に就て過去の成敗利鈍を鑑み、更に奮励して将来の発達を計り、後の今を視るものをして今の昔を視るに超越するの事蹟を徴し、以て第二次の史を編せしめ、其事蹟の国運と共に史上に躍如たらむことを、是れ吾人が大に後生に期待する所なり。
  明治四十三年嘉平月
                   青淵 渋沢栄一識
   ○嘉平月トハ十二月ノ異名。


明治商工史 渋沢栄一撰 凡例・第一―三頁 明治四四年三月刊(DK480016k-0002)
第48巻 p.42 ページ画像

明治商工史 渋沢栄一撰 凡例・第一―三頁 明治四四年三月刊
  凡例
一本書は大政維新後に於る通信・交通・商工業の発達を叙するを主とし、傍ら批評・経綸に及ぶもの多し。
一各科の調査起草は、朝野を通じて最も適当と思惟する名士を択びて之を委嘱したり。
一書中署名なき項は社中の編纂に属するも、材料の出処は最も確実なるものなることを明記す。
一本書は多数者の手に成るを以て、多少の重複、又は文格、用字の不統一を免かれず、読者の諒恕を乞ふ。
一大隈伯爵及渋沢男爵は、本書の趣旨に多大の同情を表し、一大論述を試みられたる外、編纂の一切に関して、懇篤の指導を与へられたるを感謝す、又本書蒐集する処の材料の所謂実業に関係する多きを以て、特に渋沢男爵に請ふて其の撰と為せり。
一書中収むる処の材料撰択の方針、並に説述者の人撰に関しては、主として大隈伯爵と渋沢男爵との指導に負へるも其の編纂に係はる一切の責任は挙げて社中に存す。
○中略
  明治四十三年八月十九日       報知社編輯局誌


明治商工史 渋沢栄一撰 目次・第一―五頁 明治四四年三月刊(DK480016k-0003)
第48巻 p.42-43 ページ画像

明治商工史 渋沢栄一撰 目次・第一―五頁 明治四四年三月刊
    明治商工史目次

(頁)
第一章 商工業発達概論            男爵 渋沢栄一 一《(頁)》
 - 第48巻 p.43 -ページ画像 
第二章 四十三年間財政概論 前大蔵大臣法学博士男爵 阪谷芳郎 三六
第三章 銀行業の沿革             男爵 渋沢栄一 四九
第四章 会社事業の沿革            男爵 渋沢栄一 八〇
第五章 経済機関の起源            男爵 渋沢栄一 一〇四
○下略
   ○右細目ハ省略ス。



明治商工史 渋沢栄一撰 奥付明治四四年三月刊(DK480016k-0004)
第48巻 p.43 ページ画像

明治商工史 渋沢栄一撰 奥付明治四四年三月刊
    明治四十四年三月五日印刷     明治商工史奥付
    明治四十四年三月八日発行     定価金六円
            撰者               渋沢栄一
            編輯者              横前正輔
                  東京市麹町区有楽町二丁目一番地
   不許       発行者             宮城伊兵衛
           東京市本郷区弓町一丁目四番地
   複製       印刷者              中村政雄
                  東京市麹町区有楽町二丁目一番地
            印刷所               報文堂
                  東京市麹町区有楽町二丁目一番地
          東京市本郷区弓町一丁目四番地
   発行所    電話下谷三四四一番      昭文堂
          振替口座七六七四番

   ○右奥付ニ再版ノ記載ナキモ、栄一題言ニハ「官民識者の推奨の下に之を再版に附し、前の非売品たるものを改めて広く江湖の需要に応ず――」ト記セリ。即チ栄一記文ハ非売品ヲ以テ初版トナセシナリ。
   ○尚、本書巻頭ニハ栄一ノ肖像写真一葉アリ。


報知七十年 報知新聞社編 第五九頁 昭和一六年六月刊(DK480016k-0005)
第48巻 p.43 ページ画像

報知七十年 報知新聞社編 第五九頁 昭和一六年六月刊
    欧洲大戦とその後(自大正四年至大正八年)
○上略
大正七年=○中略
十一月には、紙齢一万五千号に達し、その記念として、曩に一万二千号記念に出した『明治商工史』に増補改訂を加へて『最近商工史』を刊行した。渋沢男爵が顧問、添田社長監修、谷摂山編纂であつた。なほ渋沢栄一男は大隈侯、添田社長と特に親交あり、本社に対して常に厚意を表され、直接来社して若き記者を指導したり、しばしば講演会等に出演された。
○下略