デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
4節 編纂事業
14款 世外井上公伝
■綱文

第48巻 p.76-79(DK480023k) ページ画像

昭和3年1月11日(1928年)

是日、益田孝・有賀長文等飛鳥山邸ニ来訪シ、栄一ト井上馨伝記編纂ニ関スル協議ヲナス。同十八日、東京銀行集会所ニ於テ当伝記編纂ニ関スル協議会開カレ、栄一編纂ノ趣旨ヲ述ブ。席上栄一、顧問ニ選バル。同三十日、栄一、日本工業倶楽部ニ於ケル第一回委員会ニ出席ス。


■資料

渋沢栄一 日記 昭和三年(DK480023k-0001)
第48巻 p.76 ページ画像

渋沢栄一 日記 昭和三年         (渋沢子爵家所蔵)
一月十一日 快晴 気候温暖
○上略 午後三時益田孝氏・有賀長文氏来訪、故井上侯爵伝記編纂ノコトニ関シテ種々協議シ、金子子爵トモ謀リ其協力ヲ得テ、侯ノ政界ニ尽力セラレシ次第ヲ充分調査編成スヘキコトヲ決議ス、有賀氏ハ本件ノ実施ヲ来ル十八日頃一会開催ノコトニ予期スル旨申聞ケラル
○下略
   ○中略。
一月十八日 雨 寒気強カラス
○上略 正午銀行倶楽部ニ抵リ金子堅太郎・益田孝・有賀長文氏等ト共ニ故井上侯伝記編纂ノ件ニ付テ関係諸氏ノ来会ヲ催シテ其趣旨ヲ演説ス参会ノ諸氏ハ総テ同意ヲ表シテ、詳細ノ方法ハ主唱者ノ立案ニ委スル旨ヲ議決ス、依テ金子・益田ノ諸氏ト協議シテ委員ヲ撰定シ、着手ノ順序ヲ議定ス○下略


井上馨侯伝記編纂ニ関スル書類(DK480023k-0002)
第48巻 p.76 ページ画像

井上馨侯伝記編纂ニ関スル書類       (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
拝啓 時下益御清康奉賀候、陳者故井上馨侯の功業を不朽に伝ふべき伝記に就き、維新前の事歴に関しては既に井上伯伝の編成有之候得共維新後の事歴に関しては、従来尚ほ完全に記述せるもの無之候事生等の平素頗る遺憾に存じ居り候所に御座候、就て右編纂の計画相企て度候に付き御協議申上度候間、御多用中恐入り候得共、来る十八日(水曜)正午銀行集会所へ御光来奉願上候、此段得貴意候 敬具
  昭和三年一月十二日
                    子爵 金子堅太郎
                    子爵 渋沢栄一
                    男爵 益田孝
    (宛名手書)
    子爵 渋沢栄一殿
            追而当日は粗末なる午餐用意致置候
    (朱書)
    為念
            尚御来否同封葉書にて御一報奉煩候

 - 第48巻 p.77 -ページ画像 

井上馨侯伝記編纂ニ関スル書類(DK480023k-0003)
第48巻 p.77 ページ画像

井上馨侯伝記編纂ニ関スル書類       (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
拝啓 時下益御清康奉賀候、陳者過日御案内申上置候通リ、故井上侯伝記編纂計画ノ儀ニ付、去ル十八日協議会相催シ候処、出席者二十八名、故侯ノ功業ヲ不朽ニ伝フル為メ遺憾ナク史料ヲ蒐集シ、以テ完全ニ伝記ヲ編纂スル事ニ申合ハセ、其実行方法ニ関シ大体左記ノ通リ満場一致議決致候間、何卒御承認被下度候
 一、編纂事業ヲ実行スル為メ左ノ七名ヲ委員トスル事
                  浅田徳則君
                  木村清四郎君
               男爵 阪谷芳郎君
                  中田敬義君
                  高橋義雄君
                  野崎広太君
                  有賀長文君
 一、編纂ノ方針並ニ期限、編纂担任者ノ選定、会計事項其他一切委員ニ委任シ講究実行スル事
 一、左記五名ヲ顧問トスル事
               子爵 金子堅太郎君
               子爵 渋沢栄一君
               男爵 益田孝君
                  高橋是清君
                  団琢磨君
 一、事務所ハ決定次第追テ御通知申上候
右ノ通決議致候ニ付委員ニ委任、事業ノ実行ニ着手可致候間左様御承知被下度候、尚此上共史料ノ蒐集其他ニ就キ何分御助力被下度、御気附ノ点モ候ハヾ無御腹蔵御示シ相煩シ度候
先ハ右御報告申上度如斯ニ候 敬具
  昭和三年一月 日
               子爵 金子堅太郎
               子爵 渋沢栄一
               男爵 益田孝


世外井上公伝 井上馨侯伝記編纂会編 第五巻巻末付録・第一―五頁 昭和九年九月刊(DK480023k-0004)
第48巻 p.77-79 ページ画像

世外井上公伝 井上馨侯伝記編纂会編
                 第五巻巻末付録・第一―五頁 昭和九年九月刊
    世外井上公伝編纂経過
 世外井上公の伝記は、明治四十年に中原邦平氏の手に成つた『井上伯伝』七冊『附録』二冊があるが、その記述が慶応三年に筆を擱き、且これは少数関係者に頒布したのに過ぎなかつた。その他に於ては二三の者によつて小伝は刊行されたが、孰も公の生涯の半ばに筆を止めたものである。
 明治四十一年の末に、益田孝男爵等の発意に基づいて公の明治初年に於ける財政事歴編纂の挙が起り、史料蒐集の傍ら、渋沢子爵・芳川子爵・松尾男爵・大谷靖・佐伯維馨その他の諸氏等数々会合を催うし
 - 第48巻 p.78 -ページ画像 
公の経歴談を聴取して談話速記録を作製した。而して沢田章氏に託して公の財政事歴に関する第一稿本を編纂し、その一部を仮印刷に付したが、大正四年九月、公の薨去と共にこの事業は中絶となつた。その後公の七周忌日に当つて、曩に作製した談話速記録を整理編成し、公の縁故者に頒布したのが『世外侯事歴維新財政談』である。
 かくの如くにして公の伝記の完備したものが無かつたことは、世の斉しく遺憾とする所であり、況して公に親炙した人々の恨事としたことはいふまでもないが、殊に勝之助侯爵がその編纂達成を懇望されてゐたことは実に切なるものがあつた。それで有志の間に潜かにこれが編纂計画を議し、昭和二年冬に至り機漸く熟するに至つた。
 かくて昭和三年一月十一日、渋沢子爵・益田男爵・有賀長文氏の三人が渋沢子爵邸に参集し、公の伝記編纂を実現すべきことを申合せ、曾て公に近眤した関係者に通知を発して参会を請い、その方法を協議することに定めた。即ち翌十二日を以て各方面に左の案内状を発送した。○案内状ハ前掲ニツキ省略ス。
○中略
 かくて一月十八日正午に銀行集会所に来会された者総計二十五名。
左記の会員氏名に△印を附す。(原註)渋沢子爵より編纂計画の趣旨を演べ、金子子爵・阪谷男爵・浅田徳則氏等交々立つて意見を述べられた。その協議の結果七名の委員と五名の顧問を選び、委員・顧問の監督の下に編纂事業を進行することとし、左の如く協議決定して、午後三時解散した。
 一、委員
  浅田徳則 有賀長文 木村清四郎 男爵 阪谷芳郎
  中田敬義 高橋義雄 野崎広太
 一、顧問
  子爵 金子堅太郎 子爵 渋沢栄一 高橋是清 男爵 団琢磨
  男爵 益田孝
 一、編纂の方針並に期限、編纂担任者の選定、庶務並に会計事項、編纂事業一切は委員に於て之を講究する事。
 一、事務所を設置する事。
 一、会員は左の通り

図表を画像で表示--

  △   浅田徳則     男爵 大倉喜七郎  △   有賀長文    △子爵 金子堅太郎  △   鮎川義介        貝島太郎      麻生太吉    △   木村清四郎   子爵 秋元春朝        木村久寿弥太   公爵 伊藤博邦        久原房之助   男爵 岩崎小弥太    子爵 栗野慎一郎  △   岩原謙三     子爵 後藤新平   子爵 石黒忠悳     男爵 鴻池善右衛門      一木喜徳郎    男爵 小早川四郎      今村繁三     伯爵 児玉秀雄  △   江木千之        西園寺八郎      江木翼     △   佐々木勇之助  以下p.79 ページ画像   △男爵 阪谷芳郎    △   根津嘉一郎  △子爵 渋沢栄一    △   野崎広太  △   末延道成     男爵 古河虎之助      仙石貢      男爵 藤田平太郎  △   添田寿一        藤田政輔  △   高橋義雄    △   藤田四郎   伯爵 田中光顕    △   藤原銀次郎      田中銀之助    伯爵 牧野伸顕   男爵 田中義一    △男爵 益田孝  △   田中平八        馬越恭平  △男爵 団琢磨      男爵 三井八郎右衛門  △   武智直道     伯爵 陸奥広吉  △   高橋是清        室田義文      徳富猪一郎    公爵 毛利元昭      中村芳治     男爵 山本達雄   男爵 中島久万吉       山本条太郎  △   中田敬義        山本悌二郎   男爵 中村雄次郎   △   渡辺世祐 



 かくて伝記編纂に関する協議が纏まり、委員によつて具体的に着手せられることになつた。
委員会のこと
 一月三十日正午第一回委員会を開催し、渋沢顧問、浅田・野崎・高橋・阪谷・木村・中田・有賀の七委員、外に渡辺世祐博士及び岡百世の諸氏列席、左の数項を議決した。
  一、幹事は浅田・有賀の両人之に当る事。
  二、事務所は有賀幹事顧問と相談決定の事。
  三、編纂主任は右同様相談決定の事。
  四、記録は有賀幹事に於て書記長を選び之に作製せしむる事。
  五、編纂費は差向き五万円を以て之に充て、其予算書を作製の事
右は直ちに会員に報告を了した。
○下略


竜門雑誌 第四七三号・第七九頁 昭和三年二月 青淵先生動静大要(DK480023k-0005)
第48巻 p.79 ページ画像

竜門雑誌 第四七三号・第七九頁 昭和三年二月
    青淵先生動静大要
      一月中
十八日 放井上侯爵伝記編纂に関する打合会(東京銀行倶楽部)
○中略
三十日 故井上侯爵伝記編纂会(日本工業倶楽部)