デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
4節 編纂事業
15款 其他 8. 後藤新平伯伝記編纂会
■綱文

第48巻 p.107-109(DK480033k) ページ画像

昭和6年4月(1931年)

是ヨリ先、後藤新平伯伝記編纂会設立セラル。是月、栄一ソノ発起人トナル。


■資料

諸会発起趣意書(四) 【拝啓 益々御清祥奉慶賀候、陳者後藤新平伯薨去後烏兎匆々早くも二周年…】(DK480033k-0001)
第48巻 p.107-109 ページ画像

諸会発起趣意書(四)          (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 益々御清祥奉慶賀候、陳者後藤新平伯薨去後烏兎匆々早くも二周年と相成申候、伯一昨年薨去に際しては畏くも優渥なる 御沙汰書を賜はり
 医国ノ上工済時ノ大器茂績ヲ南彊ニ垂レ、洪業ヲ朔方ニ刱メ、民心ノ啓発ヲ是レ務メ、国際ノ親善ヲ是レ図リ、屡内閣ノ崇班ニ列シ遂ニ首都ノ庶政ヲ刷ス、遽カニ溘亡ヲ聞ク、曷ソ軫悼ニ勝ヘム、宜シク賻ヲ賜ヒ以テ弔慰スヘシ
と仰せられ候ことは、当時既に御承知のことゝ存候、申す迄も無之明治・大正・昭和に亘りての数十年は世界的に将た国内的に前古未曾有の変転を極めたる時代に有之、日清・日露の両戦役は勿論、世界大戦を中心として新日本が旧殻を破り世界の国際社会に進出したる華々しき時代に有之、此の躍進的向上の時代に際し、伯は其の独特なる創造的頭脳を以て新日本建設の偉大なる刱業に蹇々匪躬の忱を捧げたる巨人と存候
伯は少壮刀圭界に身を立て愛知病院長に任じ、更に内務省に入り衛生局長として医事行政の創定施設に努め、後台湾及満洲に職を奉ずるや其の拓地殖民の政策は克く百年不易の根基を定め、又屡内閣の崇班に列して内治外交の枢機を爕理し、或は帝都の首長として庶政を刷新更張し、或は大正大震火災に際しては帝都復興の大業に寝食を忘れて力
 - 第48巻 p.108 -ページ画像 
を致し、或は生死を賭し毀誉を超越して日露国交の親善に尽瘁し、或は自ら青少年の先頭に立ちて第二国民の養成に努力せる等、挙げ来れば伯の為したる事業は皆国家興隆のために偉大なる貢献を為したるのみならず、永く後進をして奮起せしむるもの有之候
伯の薨去に依りて爾来社会に一大寂寞を加へたるが如く感ぜられ候折柄、同志相謀りて伯の伝記を編纂し普く之を天下共鳴の士に頒ち、以て伯を景仰記念すると共に後昆感化の資に供し度、冀くは此の微意を諒せられ何卒貴下の御賛同を得度此段得尊意候 敬具
  昭和六年四月
                    発起人一同
        殿
追て御手数誠に恐縮に存候へども左記要項御一覧の上何分の御回示賜はり度申添候
    要項
一、会ノ名称
   本会ハ後藤新平伯伝記編纂会ト称ス
二、目的
   後藤新平伯ノ伝記編纂事業ヲ達成スルヲ以テ目的トス
三、事業
   後藤新平伯ノ公私全生涯ヲ通ジテ出来得ル限リ各方面ノ事項ヲ網羅シ、完全ナル正伝ヲ編ム
   尚時宜ニ依リ右ノ外、一般ノ普及ニ適スル形式ト内容トニ於テ小冊ノ伝記体ノモノヲ編ムコトアルベシ
四、伝記ノ分量
   正伝ハ菊判凡八百頁程ノモノ三冊ノ見込
   小冊子ハ四六判凡五百頁程ノモノ一冊ノ見込
五、完成期間
   凡二箇年ノ予定
六、事務所
   東京市日比谷公園市政会館内(五階)ニ置ク
七、費用
   本会ノ費用ハ寄附金ニ依ル
   寄附金ハ一口金拾円以上トス
   寄附金ハ昭和六年七月末日迄ニ御払込ミノコト
八、寄附金醵出者ニ対シテハ伝記正伝ヲ頒呈ス
                         以上

    後藤新平伯伝記編纂会(いろは順)
                顧問 伯爵 伊東巳代治
                   子爵 石黒忠悳
                      犬養毅
                      若槻礼次郎
                   男爵 阪谷芳郎
                会長 子爵 斎藤実
 - 第48巻 p.109 -ページ画像 
    発起人 (○印ハ理事)○理事ノ外氏名略ス
○池田宏  ○服部金太郎  ○新渡戸稲造
○堀啓次郎 ○賀来佐賀太郎 ○田中清次郎
○長与又郎 ○長尾半平   ○永田秀次郎
○上田恭輔 子爵渋沢栄一
   ○栄一外発起人数二百名。
      本会後援故伯爵関係団体
 日露協会       日独文化協会
 日独協会       日本性病予防協会
 都市研究会      東洋協会
 東京中央放送局    東京市聯合青年団
 東京市聯合少年団   東京市政調査会
 東亜経済調査局    家庭電気普及会
 台湾倶楽部      台湾婦人慈善会
 拓殖大学       帝国鉄道協会
 逓信協会       南満洲鉄道株式会社
 少年団日本聯盟
   ○当伝記ハ全四冊総頁数約四千頁ニシテ、昭和十三年七月刊行ヲ完了ス。