デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

7章 行政
2節 内務行政
2款 社団法人道路改良会
■綱文

第48巻 p.409-414(DK480130k) ページ画像

大正8年3月1日(1919年)

是日、東京銀行倶楽部ニ発起人会開カレ、当会成立ス。栄一顧問トナリ、在任歿年ニ及ブ。


■資料

竜門雑誌 第三六九号・第六五頁大正八年二月 道路改良会計画(DK480130k-0001)
第48巻 p.410 ページ画像

竜門雑誌 第三六九号・第六五頁大正八年二月
 道路改良会計画 予て我国悪路の改善を研究唱道し居りし識者間に今回道路改良会なるものを組織せられ、一月廿四日午後青淵先生の兜町事務所に於て会合あり、更に一月廿九日午後再び同所に於て、青淵先生水野錬太郎氏及び石黒・牧両工学博士、堀田土木局長・山田日清生命取締役・松木山下汽船会社副社長・佐藤陸軍中将の諸氏参会して改良案実行法等に就き協議を重ねたるが、追て会の成立を公表すべしと。


竜門雑誌 第三七〇号・第七二頁大正八年三月 道路改良会に就て(DK480130k-0002)
第48巻 p.410 ページ画像

竜門雑誌 第三七〇号・第七二頁大正八年三月
 道路改良会に就て 前号既載の道路改良会組織に就き、青淵先生は左の如く語られたる趣「泥田の都が救はれる」と題して、二月二十七日の東京日日新聞は左の如く報ぜり。
 △雪の旦 雨の日、東京の道路は宛然泥田のやうだ、大阪・京都、其他の大都市も五十歩百歩である、政府も改良方法に就ていろいろ心配して居り、民間に於ても是を叫んでゐるが、単に声ばかりで如何に改良すべきかと云ふ
 △実行の 方法を講ぜぬ、私は常に是を思つてゐた折から、滞京中の米国鉄道王ヒル氏の持つて来てゐる活動写真に依り、欧米都市の道路の完全なるを見、翻つて我が都市の有様を思うて深く感ずる処あり、一緒に此の活動写真を見物した知名の人々と話し合ひ、一ツ
 △民間で 調査研究の機関を設け「斯ういふ風に改良したなれば」との建議案を提出しやうぢやないかと云ふ相談を纏めた、是れ今回の道路改良会の起つた初まりである、其の発起人会は三月一日丸ノ内銀行倶楽部で催す事に定つたが、当日は床次内相・小橋次官・堀田土木局長・井上府知事・田尻市長外府市名誉職・岡警視総監等
 △此の道 に関係ある人々も来られる筈である、私個人の意見としては、先づ市と府と聯絡する道路、京浜間の如き他の方面に関係ある道路並に市内に於る国道・県道・市道の区別に依つて充分なる調査研究を為し、然る後改良に着手したら何うかと思ふ云々。
因に同会は三月一日午後東京銀行集会所に発起人会を開き、青淵先生を会長に水野前内相を副会長に推し、評議員其他役員の選定を終へ、其規則を発表したる由なるが、追て実行方法其他を審議する由なり。


渋沢栄一 日記 大正八年(DK480130k-0003)
第48巻 p.410 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正八年        (渋沢子爵家所蔵)
三月一日
此日ヨリ流行感冒ニ罹リテ気分悪カリシモ、過般来同志ト協議経営セル道路改良会設立ノ事ニ関シ、夕方ヨリ銀行倶楽部ニ於テ百余名ノ市内有力ナル実業家・学者・技術家等会合シ、主トシテ余ハ道路改善ノ必要ヲ演説シ、本会設立ノ企望ヲ述ヘテ来会者ノ賛成ヲ需メ、一同賛襄ノ答詞アリテ後、会長ニ水野錬太郎氏ヲ推シテ尚理事・評議員等ノ推薦ヲ為シ、更ニ会衆ト夜飧ヲ共ニシ、畢リテ米人ヒル氏寄贈ノ道路改良ノ幻灯ヲ会衆ニ一覧セシメ、夜十時散会帰宅セリ、爾後感冒頓ニ重ヲ加ヘ、夜中ヨリ発熱シテ終夜苦悶セリ

 - 第48巻 p.411 -ページ画像 

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二〇頁 昭和六年一二月刊(DK480130k-0004)
第48巻 p.411 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編
              竜門雑誌第五一九号別刷・第二〇頁
              昭和六年一二月刊
    大正年代
 年 月
八 一 ―道路改良会発起人―大八、三、―〃顧問・評議員―大一〇、一二、―社団法人〃〃〃―昭和六、一一。
   ○評議員就任及ビ法人設立ニ関スル資料他ニ見当ラズ。


竜門雑誌 第三七一号・第四九頁大正八年四月 ○道路改良会成立(DK480130k-0005)
第48巻 p.411 ページ画像

竜門雑誌 第三七一号・第四九頁大正八年四月
○道路改良会成立 同会成立の記事は前号に於て報道せしも、役名等に相違あり改めて左に之を誌す。即ち三月一日夕丸の内銀行倶楽部内に発起人会を開き、青淵先生首唱者側を代表して本会設立計画の経過を報告し、更に先生の発議に依り水野錬太郎氏を座長に推し、同氏より本会設立の件並に趣旨書案及び規則書案を附議し、満場一致これを承認し、尚ほ附則一項を附記し、更に青淵先生及水野氏指名の下に左の役員及幹事を選定して散会したる由。
 顧問    床次内相    青淵先生
 会長    水野錬太郎氏
 副会長   石黒五十二氏  内田嘉吉氏
 理事    堀田貢氏    星野庄三郎氏
       中川正左氏   永井環氏
    男爵 中島久万吉氏  山田英太郎氏
       松木幹一郎氏  近藤虎五郎氏
       佐藤鋼次郎氏  桐島像一氏
 監事    大橋新太郎氏  内藤久寛氏
 幹事    岡野碩氏    牧彦七氏
       佐上信一氏
尚ほ同会は三月六日夕永楽倶楽部に於て役員会を催し、之が実行方法として道路改良に関する必要事項の調査研究、講演会・講習会・展覧会等の開催、図書の刊行発布、及び当局の諮問に応じ又は関係当局に建議する事、並に事務会計其他に関する件等を協議して散会せる由なるが、青淵先生は病気引籠の為め出席せられざりき。


道路の改良 第一輯大正九年一一月刊 道路改良会設立趣意書(DK480130k-0006)
第48巻 p.411-412 ページ画像

道路の改良 第一輯大正九年一一月刊
    道路改良会設立趣意書
邦家の隆運を昌にし、公衆の福祉を進むるの途固より一ならすと雖も交通機関を完備する如き蓋し其の最も緊要なるものたるへし、交通機関能く整備して各地の聯絡疎通為に全きを得むか、農村の開発振興始めて著しきを加へ、都市の殷賑繁栄愈大なるを致し、物価の如きも各地を通して能く平準を保つことを得るに至るへく、独り平時に於て国運の進展に資する所極めて多きのみならす、一旦有事の秋に際会せは国防上に至大の利便を供与す可きや固より疑を容れす。
顧ふに明治の維新に方り開国進取の国是一たひ定まりたる以来、海に
 - 第48巻 p.412 -ページ画像 
陸に鋭意して交通機関の設備に勉め成績の見るへきもの尠からす、然るに其の最も普遍的の交通機関たる道路の施設に至りては、他の交通機関何れも著しく発達したるに比して今尚遜色あるを免れす、之を東京・横浜・大阪・神戸等の大都市の現状に徴するも、単に道路網の統一整備を欠くのみならす、路幅亦狭隘にして其の欠点殆と挙けて数ふ可からす、加ふるに雪雨一たひ到れは忽にして泥濘の巷と化し、歩行車行其の他交通上の困難名状すへからさるものあり、大都市の道路にして既に然り、地方の道路に至りては其の不備更に甚しきものあり、全国交通の幹線なる国道にして尚且渡船・賃銭橋に依り辛うして其の聯絡を取れるもの六十余箇所の多きを算するのみならす、路幅僅かに六・七尺に過きさるの隘路あり、勾配五分の一を超ゆるの急坂あり、為に人馬・諸車の往来に支障を来すこと少からす、此の如くむは産業の開発得て望むへからさるは勿論、世界に卓越すと称せらるる我邦天然の美景を内外に紹介すること亦至難なるへく、曩に制定せられたる軍用自動車保護法に依る交通要具の普及奨励策の如き、固より其の効果を収むるに由なかるへし。
我邦道路の不備今猶昨の如し、是れ或は国土の地形自ら道路の開設に困難ならしめたるか為なると、封建諸侯か故らに交通の便を避け割拠の風を成したる余弊を承けたるものあるとに因るへしと雖も、鉄道の開通を見るに及ひて、一時道路の必要閑却せられたるもの亦確に其の一因たらすんはあらす、然れとも鉄道と道路とは各其の職能を異にするのみならす、鉄道の普及には自ら其の限度あり、両者相倚り相俟ちて相互に交通機関の効用を完うせしめさるへからす、殊に近時道路を利用する快速力運輸機関の発達普及せむとするに当り、交通上に於ける道路の価値愈顕著なるを致せり、之か改善の一日を曠うすへからさるや復言を俟たさるへし。
近くは政府に於ても第四十一期帝国議会に際し多年の懸案たりし道路法案を提出し、又国道の改修計画を定め、更に府県道以下の道路改良を遂行して時運の要求に副はしめむことを期せるか如し、然れとも世界の大戦新に戢まり列国平和の競争愈激烈を加へむとするの今日、此の交通の主要機関たる道路の改良に関して、単に政府の為す所にのみ依頼して已むへけむや、是れ予等同志胥謀り、玆に全国の有志を糾合して道路改良会を設け、汎く道路改良に関する方策を講究して速に其の実を挙け、以て時勢の進運に資せむとする所以なり、冀くは有志諸家の奮つて本会の趣旨を翼賛せられ、其の目的を達成するか為に一臂の力を致されむことを。


道路改良会書類(一)(DK480130k-0007)
第48巻 p.412-413 ページ画像

道路改良会書類(一)          (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    定款
      第一章 総則
第一条 本会ハ汎ク道路改良ニ関スル方策ヲ講究シ道路ノ完備ヲ促進スルヲ以テ目的トスル社団法人トス
第二条 本会ハ社団法人道路改良会ト称ス
 - 第48巻 p.413 -ページ画像 
第三条 本会ハ事務所ヲ東京市ニ置ク、必要アルトキハ地方ニ支部ヲ設クルコトヲ得
  事務所 東京市麹町区大手町一丁目内務省内
第四条 本会ハ第一条ノ目的ヲ達スル為メ左ノ事業ヲ行フ
  一、道路改良ニ関シ必要ナル事項ヲ調査研究スルコト
  二、道路改良ニ関シ講演会・講習会・展覧会等ヲ開催スルコト
  三、道路改良ニ関シ図書ヲ刊行頒布スルコト
  四、道路改良ニ関シ当局ノ諮問ニ応シ又ハ関係当局ニ建議スルコト
  五、前各号ノ外本会ノ目的ヲ達スル為メ必要ナル事業
      第二章 会員及賛助員
第五条 本会ノ会員ハ左ノ三種トス
  一、通常会員
  二、特別会員
  三、名誉会員
第六条 通常会員ハ金弐百円以上醵出スルモノトス
第七条 特別会員ハ本会ニ功労アル者又ハ特殊ノ関係アル者ニシテ評議員会ニ於テ推薦スルモノトス
第八条 名誉会員ハ特ニ本会ニ功労アル者ニシテ評議員会ニ於テ推薦スルモノトス
第九条 本会会員タラムトスル者ハ会員ノ紹介ニ依リ第六条ノ醵出金申込書ヲ添ヘ書面ヲ以テ入会ノ申込ヲ為シ承認ヲ受クルコトヲ要ス
第十条 本会ヲ退会セムトスル者ハ之ヲ届出ツヘシ
第十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ評議員会ノ決議ヲ以テ之ヲ除名スルコトヲ得
  一、本会ノ名誉ヲ毀損スル行為アリタルトキ
  二、本会ノ定款又ハ会則ニ違背シタルトキ
第十二条 毎年金六円ヲ納ムル者ヲ本会ノ賛助員トス
      第三章 役員及顧問
第十三条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク
  一、会長         一名
  一、副会長        四名以内
  一、理事         若干名
  一、監事         若干名
  一、評議員        若干名
第十四条 本会ハ評議員会ノ決議ヲ経テ顧問ヲ推戴スルコトヲ得
第十五条 評議員ハ会員総会ニ於テ之ヲ互選シ理事及監事ハ評議員会ニ於テ之ヲ互選ス
 会長・副会長ハ理事中ヨリ之ヲ互選ス
○下略


竜門雑誌 第三七三号・第五七頁大正八年六月 道路改良会理事会(DK480130k-0008)
第48巻 p.413-414 ページ画像

竜門雑誌 第三七三号・第五七頁大正八年六月
○道路改良会理事会 道路改良会にては、其根本の財源調査を確定すべく、六月十日午後永楽倶楽部に於て理事会を開き、顧問青淵先生を
 - 第48巻 p.414 -ページ画像 
初め、水野会長・石黒副会長・近藤内務省技術課長・佐上同道路課長永井市助役其他の理事出席の上種々協議する所ありたる由。


道路改良会書類(DK480130k-0009)
第48巻 p.414 ページ画像

道路改良会書類             (渋沢子爵家所蔵)
拝復 愈御清勝之段奉賀候、陳者道路改良会に関する御問合事項左に申上候間御諒承被下度候
  昭和五年八月十三日
                内務省構内
                      道路改良会
    渋沢事務所 中野時之殿
      記
一、寄附行為書無之に付別紙定款○前掲同封致候
 追て寄附金申込書は大正十二年震火災にて滅失致候
一、子爵は大正八年三月一日本会創立当初より本会顧問に推戴今日に及べるものと被存候(水野会長朝鮮在任中は会長の職務を御取扱相成候)
 評議員にも引続御就任相成居候