デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

9章 其他ノ公共事業
1節 記念事業
11款 醍醐天皇一千年御忌奉賛会
■綱文

第49巻 p.116-120(DK490034k) ページ画像

昭和4年4月(1929年)

是月栄一、醍醐天皇一千年御忌奉賛会副会長ニ推サル。在任歿年ニ及ブ。


■資料

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二五頁 昭和六年一二月刊(DK490034k-0001)
第49巻 p.116 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿)昭和六年十二月調 竜門社編
             竜門雑誌第五一九号別刷・第二五頁 昭和六年一二月刊
    昭和年代
  年 月
 四 四 ―醍醐天皇千年忌奉賛会副会長―昭、六、一一。


醍醐天皇一千年御忌奉賛会趣意書並規定 第一―一三頁刊(DK490034k-0002)
第49巻 p.116-120 ページ画像

醍醐天皇一千年御忌奉賛会趣意書並規定  第一―一三頁刊
(表紙ノ二)
    昭和四年四月七日 醍醐天皇一千年御忌奉賛会発会式に於ける総裁宮殿下御令旨
醍醐天皇ハ聡明叡智、允ニ仁、允ニ慈、徳万民ニ霑シ、治千古ニ冠タリ
来ル昭和五年ハ、恰モ其一千年聖諱ニ相当スルヲ以テ、将ニ法筵ヲ厳修セントスルニ際シ、本会ハ 天皇ノ盛徳ヲ不朽ニ伝ヘンガ為メニ企画セラレタル記念事業ヲ翼賛シ、以テ国民ガ鴻恩ニ奉答スルノ誠悃ヲ表セントス、今ヤ会ノ成立ヲ告ゲ、本日ヲ卜シテ其発会ノ式ヲ挙グルニ当リ、各員ト此ニ相見ルノ機ヲ得タルハ、余ノ欣懐トスル所ナリ、各員能ク其意ヲ一ニシ、以テ所期ノ目的ヲ達成センコトヲ望ム
  昭和四年四月七日
             醍醐天皇一千年御忌奉賛会総裁
             大勲位元帥功二級 載仁親王
    醍醐天皇一千年御忌奉賛会趣意書
 醍醐天皇は英明の資におはしまし殊に仁慈に富ませたまひ、寒夜御衣を脱し国民の凍餒を憂ひたまひし叡慮のほどもかしこし。天皇御一代の徳化は洵に四海に溢れ、万民欽仰して已まず、世に延喜の聖帝と讃へ奉る。数ある御治績中、延喜格式の制定、古今和歌集勅撰の如きは、実に日本文化建設の上に絶大の御鴻業と申すべきなり。
 天皇また仏教に心を潜めたまひ、当時徳望博識の聞え天下に高かりし醍醐寺開創理源大師聖宝に厚く御帰依あり、大師も亦常に側近に伺候し、政務に信仰に恰も師表第一人者の位置を保つの観ありき。されば 天皇の叡信増々深く、延喜四年山下に釈迦堂を建て、次で同七年には之を勅願寺と為し山上の諸堂を増建したまへり。 天皇一日銀鐘を鋳て同寺に納めたまはんとするに方り、皇族中の十六皇子を十六大菩薩に擬し、自ら御衣を褰げて倶に鑪鞴を蹈ませたまふ。また 天皇は皇后に継体の御慶未だ之れ無きを憂ひ、特に大師によつて冥助を仏
 - 第49巻 p.117 -ページ画像 
天に祈りたまはんとす、大師叡旨を奉じ、特に準胝仏母の秘法を修し牛王を加持して讖書と共に之を皇后に奉りしが、果然 朱雀 村上両天皇の生誕を拝し奉れり。又 天皇崩御に当り諡号を上らず、直ちに醍醐寺の寺号を以て御称号とすべきことを遺詔せられし一事を以てするも、其御信仰の如何に深くましませしかを拝察す可きなり。斯の如きは実に我皇室に於かせられて最初の例とす。
 朱雀 村上の両天皇また 天皇の芳躅を蹈ませられ、或は堂塔伽藍の造営に、或は御領の賜下に叡慮を注がせたまひ、醍醐寺一山の輪奐まさに成り、小野法流の道場巍然として教界の重鎮たるに至る。爾来一千年、歴朝庇護の下に高徳名僧相次ぎ、開祖理源大師の規模を体し鎮護国家済世利民の法幢を翻し、法流新古に溢れて今に其盛を為す。
 来る昭和五年は恰も 醍醐天皇一千年御遠忌に相当するを以て、醍醐寺に於いては一宗を挙て盛大なる法要を奉修し、御鴻恩の万一に酬ゐ奉らんとし、併せて御聖徳を永く記念し奉らんがために幾多の記念事業を起さんとし、今や計画を進捗せしめつゝあり。其の主なるもののみにても 醍醐天皇御伝編纂、醍醐寺史料の出版、霊宝館並研究室の設立、醍醐天皇聖霊殿改築、伝法院大講堂並附属堂宇の設立、醒醐寺特別保護建造物の修理及防火設備、醍醐山内史蹟保存、醍醐寺境内整理並記念樹植林、報恩伝道並修験道の宣揚及び教徒の拡張等の諸事業を算ふべく、門末檀信徒が挙つて浄財を醵出し専心努力すと雖も経費巨額に上り、之を完成すること容易の業に非ざるなり。
 しかも其の事業たるや、広く宗教上、美術上、歴史上緊要欠くべからざるものにして、啻に同寺一山のためのみならず、日本文化の上に等閑に附すべからざるものとす。乃ち玆に 醍醐天皇一千年御忌奉賛会を組織し、聖徳を讃仰し奉ると共に 醍醐天皇御伝の編纂、醍醐寺史料の出版及び霊宝館設立の三大事業の完成に助力せんとす。大方の諸賢庶幾くは賛襄あらむことを。

    醍醐天皇一千年御忌奉賛会規定
第一条 本会ハ醍醐天皇一千年御忌奉賛会ト称ス
第二条 本会ハ来ル昭和五年四月京都醍醐寺ニ於イテ奉修セラルベキ醍醐天皇一千年御忌ノ大法会ヲ賛助シ、且ツ御忌ヲ記念シ奉ルベキ左ノ事業ヲ遂行スルヲ以テ目的トス
 一、醍醐天皇御伝ノ編纂
 一、醍醐寺史料ノ出版
 一、霊宝館ノ設立
第三条 本会事務所ハ本部ヲ醍醐寺内ニ置キ、必要ニ応ジ支部ヲ置クコトヲ得
第四条 本会ノ事業ニ要スル経費ハ会員ノ寄附金ニ依ル
第五条 本会ノ趣旨ヲ賛成シテ金員ヲ醵出シ、又ハ本会ノ為メ功労アルモノハ之ヲ会員トス
第六条 本会々員ヲ分チテ左ノ十一種トシ待遇特典等ハ別ニ之ヲ定ム
 一、特別名誉会員    金壱万円以上寄附者
 二、名誉会員      金五千円以上寄附者
 - 第49巻 p.118 -ページ画像 
 三、特別有功会員    金壱千円以上寄附者
 四、有功会員      金五百円以上寄附者
 五、特別正会員     金参百円以上寄附者
 六、特別会員      金壱百円以上寄附者
 七、正会員       金五拾円以上寄附者
 八、通常会員      金弐拾円以上寄附者
 九、賛助会員      金拾円以上寄附者
 一〇、准会員      金五円以上寄附者
 一一、奉賽会員     金五円以下寄附者
第七条 本会ハ皇族ヲ総裁ニ奉戴ス
第八条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク
 一会長    一名
  本会ヲ代表シ会務ヲ総理ス
 一副会長   二名
  会長ヲ補佐シ、会長事故アルトキハ之ヲ代理ス
 一理事   若干名
  諸般ノ会務ヲ処理ス
  理事中ヨリ理事長一名、並ニ常務理事若干名ヲ互選スルモノトス
一会計監督  二名
 会計事務ヲ監督ス
一評議員  若干名
 評議員ハ重要ノ会務ヲ議決ス
一主事    二名
 理事者ノ定ムル所ノ会務ヲ執行ス
一事務員   若干名
 上司ノ指揮ヲ受ケ会務ニ従事ス
第九条 本会ニ顧問ヲ置ク
 顧問ハ本会ノ諮詢ニ応ジ、且ツ随時理事会評議員会ニ出席シテ意見ヲ開陳スルコトヲ得
第十条 本会事業ノ遂行ニ関シ特別委員ヲ置クコトアルベシ
第十一条 会長・副会長ハ発起人会ニ於テ之ヲ推薦ス
第十二条 顧問ハ会長之ヲ推薦シ、会計監督・評議員・主事及特別委員ハ会長之ヲ嘱託ス
第十三条 本会々議ハ左ノ二種トス
 一理事会
  必要アル毎ニ会長之ヲ召集ス
一評議員会
  会長ニ於テ必要ト認ムルトキ、又ハ理事会ノ請求ニヨリ会長之ヲ召集ス
第十四条 会議ノ議長ハ会長之ニ任ズ
第十五条 本会ノ収入金ハ理事会ノ定ムル方法ニ従ヒ之ヲ保管スルモノトス
第十六条 本会事務ノ終了ヲ告グルトキハ、収支決算並ニ事務報告ヲナスト共ニ本会ヲ解散ス
 - 第49巻 p.119 -ページ画像 
 但シ剰余金アルトキハ醍醐寺保存ノ資ニ充ツルモノトス
第十七条 本会役員ハ常務ニ従事スルモノヲ除ク他ハ凡テ名誉職トス
 但シ必要ノ場合ニハ実費又ハ手当ヲ給スルヲ得
第十八条 本会ニ必要ナル細則ハ理事会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第十九条 本会々則ハ評議員会ニ於テ出席者三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルニ非ザレバ、之ヲ変更スルコトヲ得ズ

    本会記念事業概要
  一、醍醐天皇御伝の編纂
醍醐寺創立の御本願聖主 醍醐天皇の御治績を編纂し一千年御忌に際し御聖徳を広く世に宣揚せんとす
  二、醍醐寺史料の出版
醍醐寺が聖宝理源大師の開創以来法流を伝へて一千年、密教道場として日本宗教史上に光彩を放てるのみならず。また我が政治史の上に貢献せるところ顕著なるものあり。我が国の文化を研究せむとする者は必ずまた醍醐寺の文書記録及び図像抄類に拠らざるべからずとせらる而して現に同寺に収蔵せらるゝ文書記録及び図書の類は七百余函に納めて猶溢るゝの多きに達し、斯界の権威黒板文学博士の手によつて多年之が整理中に属せり。玆に其の主なるものを漸次出版し、学界並に教界に寄与するところあらんとす。
  三、霊宝館の設立
醍醐寺に蔵せる歴朝の宸翰を始め、過去一千年間に亘る絵画彫刻図像古文書什器の貴重なるものは其数実に数万点に達す。然るに現在の宝蔵は狭隘にして到底之を収蔵することを得ざるのみならず近時朽腐甚だしく、しかも防火の設備は殆ど顧慮せられ居らず、真に不安の状態にあり、乃ち玆に霊宝館を新に建設し此等の什宝を完全に保存するは勿論、陳列室を設けて拝観の便に供し、且つ学者美術家等のために調査研究の設備を整へ以て社会に貢献せんとす

    本会記念事業予算
一金四拾万円
  内訳
 金五万円    醍醐天皇御伝編纂及醍醐寺史料出版費
 金参拾六万円  霊宝館建設費
 金参万円    事務費
 金壱万円    予備費

(表紙ノ三)
    醍醐天皇一千年御忌奉賛会
総裁    閑院宮載仁親王殿下
        役員
    会長          公爵 近衛文麿
    副会長         子爵 渋沢栄一
                   荒木寅三郎
 - 第49巻 p.120 -ページ画像 
    理事 東京
                   井上準之助
                   大橋新太郎
                   内藤久寛
                   黒板勝美
                   清水揚之助
    会計監督           服部金太郎
      東京事務所  市外南品川 品川寺内
                   電話高輪 五〇六八番


醍醐天皇御忌奉賛会書類(DK490034k-0003)
第49巻 p.120 ページ画像

醍醐天皇御忌奉賛会書類          (渋沢子爵家所蔵)
粛啓
此頃中 醍醐天皇御忌記念名宝展覧会開催に付、不一方御配慮相煩し難有奉拝謝候、就ては此際本会事業之進捗に付種々御懇議願度候条、御繁用中恐縮に候得共来廿四日正午華族会館へ御光臨被成下度、此段御案内申上候 敬具
  六月廿二日○昭和四年
               醍醐天皇御忌奉賛会事務所
    子爵 渋沢栄一閣下
           執事御中