デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

2章 交通・通信
3節 航空
2款 日本航空輸送株式会社
■綱文

第51巻 p.621-624(DK510134k) ページ画像

昭和3年6月29日(1928年)

是ヨリ先、第五十五帝国議会ニ於テ、航空輸送会社補助金交付ノ件成立ス。是日、航空輸送会社設立準備調査委員会廃止セラル。尚、是月二十三日同委員会第三回総会開カレ、同委員会ノ実業家委員ハ、当会社発起人トナリ、設立準備ヲ進ムルコトニ決ス。栄一病気ノタメ出席セズ。


■資料

逓信事業史 逓信省編 第七巻・第四六三頁昭和一五年九月刊(DK510134k-0001)
第51巻 p.621-622 ページ画像

逓信事業史 逓信省編 第七巻・第四六三頁昭和一五年九月刊
 ○第十三篇 第三章 第十一節 関東大震災後事業整備時代に於ける予算決算
    第四款 航空事業助長費の成立
○上略
 次に航空輸送事業は其の充分なる発達を見るまでは、収支相償ひ得ないことは、欧米各国の実験に徴するも明瞭であつた。殊に我国の如き斯業未だ幼稚の域を脱せざるものにありては、政府に於いて本事業を充分助長しなければ、到底其の発達を期する能はざるを以て、之が助成発達を計るため資本金一千万円の航空輸送株式会社を設立せしめ東京大連間及び大阪上海間に於ける郵便物・旅客及び貨物の定期航空輸送を開始させることとし、該会社に対しては、昭和三年度以降十一箇年度間、総額千九百九十七万円を補助することに、昭和三年五月第五十五議会の協賛を得た。補助金年度別支出額は次の如くである。
      航空輸送補助金支出額

  年度別      支出額       年度別      支出額
               円                  円
昭和 三年度   五八〇、〇〇〇     四年度  二、七三七、六八〇
 - 第51巻 p.622 -ページ画像 
昭和 五年度 三、一二〇、五〇六     十年度    八四〇、二八三
   六年度 二、七七七、〇六八     十一年度   九五八、九五九
   七年度 二、三七四、九五〇     十二年度 三、二四五、八五二
   八年度 一、三六八、八八七     十三年度 五、〇九六、〇八一
   九年度   九五四、〇四二

○下略


航空輸送会社書類(DK510134k-0002)
第51巻 p.622 ページ画像

航空輸送会社書類             (渋沢子爵家所蔵)
  昭和三年六月八日
            航空輸送会社設立準備調査委員会幹事
    会長 子爵 渋沢栄一殿
拝啓陳者第三回航空輸送会社設立準備調査委員会開催ニ関シ、別紙ノ通各委員宛通知致候条御了承被成下度、此段為念及御通知候
(別紙、印刷物)
拝啓
時下愈々御清穆之段奉賀上候、陳者来る六月廿三日(土曜)午前十一時卅分より東京会館に於て第三回航空輸送会社設立準備調査委員会を開催致候間、当日御繰合せ御出席被成下度此段及御通知候 敬具
  昭和三年六月七日
            航空輸送会社設立準備調査委員会
                 会長 子爵 渋沢栄一


航空輸送会社設立準備調査委員会報告書 追加・第一―六頁刊(DK510134k-0003)
第51巻 p.622-623 ページ画像

航空輸送会社設立準備調査委員会報告書 追加・第一―六頁刊
    航空輸送会社設立準備調査委員会報告書追加
○上略
二、昭和三年六月廿三日午前十一時三十分第三回委員会総会ヲ東京会館ニ於テ開催ス
 (一)出席者
          副会長         井上準之助
          委員          伊藤次郎左衛門
                      ○外三三名氏名略ス。
          幹事          安達堅造
                       ○外五名氏名略ス。
 (二)議事
○副会長(井上準之助) 本日ハ会長病気ノ為、私カ代理シテ申上ケマス。先般航空輸送補助費予算案ガ議会ノ通過ヲ見マシタノデ、愈愈会社設立ニ着手スルコトトナリマシタ。従テ本調査委員会ハ今回ノ会合ヲ以テ最後トスルノデアリマス。之ヨリ逓信大臣カラ、御挨拶ガアリマス。
○逓信大臣(久原房之助) 昨年七月皆様ニ航空輸送会社設立準備調査委員会委員ヲ御委嘱申上ゲマシタ以来、御多用中ニモ拘リマセズ屡々御会合ヲ催サレ、政府ノ諮問事項ニ対シ、慎重御審議下サイマシタコトハ、洵ニ感謝ノ至リニ堪ヘマセヌ。政府ニ於キマシテハ、御答申ニ基キマシテ、曩ニ第五十四回通常議会ニ、航空輸送補助費
 - 第51巻 p.623 -ページ画像 
予算ヲ提出致シマシタ所、議会解散ノ結果、不成立ニ終ツタノデアリマス。然シナカラ国家内外ノ情勢ニ鑑ミマシテ、航空輸送会社ノ設立ハ、一日モ忽セニスルコトガ出来マセヌノデ更ニ先般ノ特別議会ニ、本年度追加予算トシテ、右補助費ヲ計上要求致シ、幸ニ其ノ成立ヲ見マシテ、今後十一ケ年間ニ、本会社ニ対シ合計一千九百九十七万円ノ補助金ヲ支給シ得ルコトトナリマシタコトハ、洵ニ御同慶ニ堪ヘヌ次第デアリマス。
 従ヒマシテ本委員会ノ任務ハ、玆ニ終了致シタ訳デアリマスガ、尚皆様ノ中実業界ノ方々ニ於カレマシテハ、今後引続キ発起人トシテ本会社設立ニ関スル諸般ノ準備ヲ取進メラレマシテ、一日モ速ニ会社カ成立致シ其ノ事業ヲ開始スルノ運ビト相成リマスル様、何分御配慮ノ程ヲ偏ニ御願致シマス。
○副会長(井上準之助) 色々皆様ノ御尽力ニ依リマシテ会社ノ出来ルコトトナリマシタノヲ感謝致シマス。今後会社ヲ作ルコトニ付官吏及議員ノ方々ヲ除キ実業家ノ方々ガ、会社ノ創立委員ニナルコトハ如何デセウカ。此ノ上御尽力ヲ願ハルレハ誠ニ結構デス。(異議ナシ異議ナシノ声起ル)ソレデハ御引受ヲ願ヒマス、之デ会ヲ閉ヂマス
   ○栄一、四月二十一日以来、自邸ニ於テ病気静養ス。


東京朝日新聞 第一五一二九号昭和三年六月二四日 航空会社設立協議 けふ第三回委員会(DK510134k-0004)
第51巻 p.623 ページ画像

東京朝日新聞 第一五一二九号昭和三年六月二四日
    航空会社設立協議
      けふ第三回委員会
航空輸送会社設立第三回準備委員会は廿三日午前十一時半東京会館で開かれたが、出席者は久原逓相・井上準之助氏外委員四十二名、まづ久原逓相より
 航空輸送会社の補助金予算は特別議会に提出して成立した、ここに会議を終へ、諸氏の労を謝し、尚この機会に引つゞき諸般の準備を進められ、一日も早く会社の成立されむことを望む
といふあいさつがあり、これに対し井上準之助氏より委員等を代表してあいさつがあり、更に一同協議の上、実業家たる委員一同は発起人となり、会社設立のため尽力することを申合せ、一同逓相の午餐会に臨んだ


都新聞 昭和三年六月二四日 航空輸送会社設立 民間の手に移る 昨日準備調査委員会で発起人全部決定(DK510134k-0005)
第51巻 p.623-624 ページ画像

都新聞 昭和三年六月二四日
  航空輸送会社設立
    民間の手に移る
      昨日準備調査委員会で
        発起人全部決定
日本航空輸送会社第三回設立準備調査委員会は廿三日午前十一時半より東京会館に於いて開催、久原逓相・副会長井上準之助氏外委員四十二名列席、井上副会長の挨拶に次いで逓相より航空輸送会社補助費予算は過般の特別議会に於いて成立せる旨を報告した後、列席実業家委員に対し引続き発起人として諸般の準備を進められ、一日も速かに会社を設立せられ度き旨を述べたが、一同協議の上実業家たる委員は全
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部発起人となることに決定した。斯くて日本航空輸送会社設立に関する一切の事は今後全く逓信当局から発起人の手に移つた訳であるが、社長候補としては西野恵之助氏の呼声が最も高い
尚右発起人は左の諸氏である
 渋沢栄一・井上準之助・伊藤次郎左衛門・稲畑勝太郎・稲垣恒吉・井坂孝・橋本圭三郎・原富太郎・服部金太郎・大橋新太郎・大川平三郎・若宮貞夫・川西清兵衛・門野重九郎・鹿島房次郎・団琢磨・頼母木桂吉・高山長幸・津村重舎・根津嘉一郎・長岡外史・中村啓次郎・野村徳七・馬越恭平・藤田平太郎・古河虎之助・藤山雷太・藤田謙一・郷誠之助・浅野総一郎・阪谷芳郎・喜多又蔵・木村久寿弥太・湯川寛吉・結城豊太郎・弘世助太郎・森村開作


航空輸送会社書類(DK510134k-0006)
第51巻 p.624 ページ画像

航空輸送会社書類            (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
拝啓 陳者航空輸送会社設立準備調査委員会ハ、今般諮問事項ニ対スル調査審議ヲ終了セルニ付、本月廿九日付ヲ以テ之ヲ廃止セラレ、従テ貴下ノ委員嘱託ハ自然消滅致候条御了知相成度、此段依命及御通知候 敬具
  昭和三年六月三十日
                  逓信次官 桑山鉄男
    (宛名手書)
    子爵 渋沢栄一殿
 追テ右調査委員会報告書御参考ノ為別途御送付申上候