デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
13節 土木・築港・土地会社
4款 東京運河土地株式会社
■綱文

第53巻 p.405-417(DK530067k) ページ画像

大正12年6月12日(1923年)

是日、当会社第一期線運河ニ架セラレタル三橋梁ノ命名及ビ渡橋式挙行セラル。栄一、出席シテ祝辞ヲ述ベ、且渡リ初メニモ参列ス。


■資料

集会日時通知表 大正一二年(DK530067k-0001)
第53巻 p.405 ページ画像

集会日時通知表 大正一二年       (渋沢子爵家所蔵)
六月十二日 火 午前十半時 東京運河土地会社ヨリ御案内、尾高橋渡橋祝賀式


(増田明六)日誌 大正一二年(DK530067k-0002)
第53巻 p.405-407 ページ画像

(増田明六)日誌 大正一二年      (増田正純氏所蔵)
六月十二日 火 半晴
午前十時砂町なる東京運河土地会社運河架橋式に臨む、運河ハ第一期線の内千五百間掘鑿を完了し、之ニ三橋を架す、第一橋ハ尾高橋(故尾高次郎氏の同会社創立の功労を記念の為め)、第二橋ハ松島橋(松島金太郎氏の同社に於け《(る脱)》土地買収ニ関し最も尽力したる人)、第三橋ハ秋山橋(砂町の草分とも可称秋山一家の同社創立の為め尽されたる尽力を記念の為め)と命名
渡り初め前開橋式を行ふ、福島社長の各橋命名の理由及来賓ニ対する挨拶、東京府知事の祝詞、渋沢子爵の祝辞演説、岡部子爵の祝文、大倉男爵の狂歌、北葛飾郡長及砂町々長の祝文ありて後
尾高橋の渡り始を執行す、故尾高氏未亡人・豊作氏・鮮之助氏を先頭として岡部長職子夫妻・渋沢子爵・重役其他来会者・小学校生徒一同の順序ニて渡橋、松島橋にて松島家、秋山橋にてハ秋山家各先頭ニ同
 - 第53巻 p.406 -ページ画像 
様の順序にて渡橋を了し、夫れより午餐、園遊会露店開設、続て余興開始、来会者総て五百余名頗る盛況なり、午後二時辞去の際尚余興盛にて殊ニ角力開始、来会者非常ニ喜悦の情ニ満ちたる《(を脱)》見受けたり○下略
   ○中略。
六月廿九日 金 晴
○上略
午後一時運河土地会社総会を生命保険協会に開催す、議事凡て原案可決
   ○中略。
七月十八日 水 曇
定刻出勤
午前十時東京運河土地会社重役会あり、一株に付金五円ツヽ払込を決す、但時期ハ凡九月頃とす
○下略
   ○中略。
十月六日 土 雨
○上略
正午生命保険協会にて東京土地運河会社重役会ニ出席す、震災害として同社の蒙りし損害は極めて微弱なり、僅ニ補助帳の焼失、橋板の焼焦、土畳壊崩《(塁)》の為め運河浸水の排除等なり、将来の経営に付てハ投資金ニ対し相当報酬の生する見込以外のものは可成繰延と為し、又職員も勉めて淘汰を行ひ、以て玆処少くとも一年間位は極めて消極の方針を取らん事を極言し置たり
   ○中略。
十一月三日 日 晴
○上略
青淵先生御訓話○於竜門社評議員会 終了後、明石・木村・永田の三氏と相会す東京運河土地会社ニ最大株主たる東洋生命保険会社代表者たる木村氏を取締役の壱人に加ふる事ニ関してなり、小生の見たる同会社の経済及事業の状況を報告し、此際木村氏を入社せしめて(将来は社長と為す考を以て)大ニ社業を改革して、将来ニ於ける経営の方針を確立セされハ、同社は遂ニ経済上行詰るニ至るべき旨力説し、三氏大体ニ於て同意見ニて、決局木村氏に於て佐々木第一銀行頭取(東洋生命保険の相談役)の意見を聴取したる上、可成ハ東洋生命より其大株主たる関係上重役割込の希望を申出で、之を永田・増田両人ニ於て福原氏其他の重役ニ内相談を遂げ、公然重役会ニ提出する事ニ打合ハセたり
○下略
   ○中略。
十二月五日 水 曇
出勤
朝福原有信氏を訪問し、東京運河土地会社重役の一人ニ東洋生命保険会社を代表して専務木村雄次氏を推薦すべき事を、運河重役会ニ提議せられん事を協議したるに快諾し、十一時開催の同会ニ提議したり
前十一時生命保険協会ニ於て東京運河土地会社重役会開催、来廿六日
 - 第53巻 p.407 -ページ画像 
の同社総会に提出する議案ニ就き協議の後、取締役壱名増員の義福島社長より提議あり、一同賛成、即東洋生命保険会社ハ同社の大株主にして、先年尾高次郎氏同社の代表を兼ね取締役に在任セられしが、逝去セられ、爾来補欠もせす経過したるが、其代表者を容るゝを穏当と認むるニ付、本会の決議を以て自分より同社ニ交渉すべしと発議し一同同意したり
○下略
   ○中略。
十二月廿五日 火 晴
○上略
午後五時日本興業銀行四階ニ於ける東京運河土地会社会計監査ニ赴き三野村・倉田両監査役と共に閲了す
○下略
十二月廿六日 水 晴
○上略
午後二時東京運河土地会社総会を生命保険協会に開会、本年下季決算の承認を了し、監査役三名改選は重役《(任カ)》、取締役選挙は木村雄次氏新任と決し、孰れも受任したり、是にて総会を了り
夫より重役会開催○下略


(増田明六)日誌 大正一三年(DK530067k-0003)
第53巻 p.407-409 ページ画像

(増田明六)日誌 大正一三年      (増田正純氏所蔵)
二月廿三日 土 曇
出勤
前十一時保険協会ニ於ける東京運河土地重役会に出席す、議事後午餐を会食す
○下略
   ○中略。
三月四日 火 晴
出勤
午後一時東京運河土地会社ニ於て木村雄次・永田甚之助両氏と会し、同社向後の事業並ニ之カ資金調達方ニ付き懇談す
○下略
   ○中略。
三月十五日 土 晴
○上略
正午運河土地会社重役会の生命保険協会ニ開会せらるゝのニ出席す、本日の協議ニ於て土地五千坪を最低坪五十円の価格にて売出す事を議決し、又払込金壱株ニ付五円宛五月中程ニ為す事を議決した
   ○中略。
四月廿三日 木 晴
○上略
前十一時生命保険協会ニ於て東京運河土地会社重役会ニ出席す、議事ハ運河水面五千坪を坪月四拾五銭の賃貸料にて貸与の件(但保証金五千坪四拾五銭参ケ月分徴収)、橋梁名称の件、土地分売の件、日本興
 - 第53巻 p.408 -ページ画像 
業銀行借入金返済延期ニ関する件、工事請負契約ニ関する件(当面の所要工事の取扱ハ常務会ニ於て決定するも、其他ハ次回重役会ニて決定する事)等なり、此席ニ於て福島取締役社長ハ、近来病気勝にて到底社長たるの職責を尽す事能ハさるに付き、之を辞任して平取締役として従事致度希望を陳べたり○下略
   ○中略。
四月廿六日 土 晴
○上略
東洋生命保険会社ニ木村専務を訪ひ、又武州銀行ニ永田常務を訪問し東京運河土地会社業務ニ関し協議す、同会社ニ於て日本興業銀行よりの借入金ハ現在百拾万円なるが、中拾万円ハ明日の期限ニ迫り、之が延期返納を右両氏より同銀行ニ懇談したるが応諾せす、止む無く之より先ニ社長及常務取締ニ於て、右返済資金を得るが為め三野村家ニ運河会社所有土地弐千五百坪を坪五拾円ニて売却するの予備約定を承認したり、併し三野村家ニ坪五拾円にて此最良の土地を売却するときハ残余の他の土地は一年内位ニ於てハ、到底夫以下の値段ニあらされハ売却する事能ハさるべし、止むを得さる事ながら遺憾千万の事なり
東京運河土地会社社長及常務ニ於て日本興業銀行より借入たる金弐拾万円の借替を監査役として承認す
○下略
   ○中略。
五月十五日 木 雨
○上略
午前十時半運河土地会社の第二期線ニ属する運河通水及架橋の式が行ハれたのであるが、無余義差支の為め不参した
○下略
   ○中略。
六月十六日 月
○上略
帝国生命保険会社々長井上公二氏を同社ニ訪問して、前社長故福原有信氏の後任として東京運河の取締役たらん事を頼んだけれど、遂ニ承諾を得る事が出来なかつた
○下略
   ○中略。
六月二十日 金 晴
午後一時生命保険協会ニて東京運河土地会社の総会が行ハれた、議案ハ上半季決算書類の承認、損益金の処分、以上ハ原案ニ可決、故取締役福原有信氏ニ慰労金賜与《(贈カ)》の件ハ取締役会一任と決定した、此席ニ於て社長福島宜三氏ハ社長の辞任を申出、平取締役となれり
○下略
   ○中略。
七月二十一日 月
○上略
後二時東京運河土地重役会ニ出席
 - 第53巻 p.409 -ページ画像 
   ○中略。
八月十二日 火
後二東洋生命保険会社ニ於て東京運河土地会社の重役会あり、出席す
○下略
   ○中略。
十月二十日 月
後二時東京運河土地会社重役会(東洋生命保険会社内)ニ出席す
   ○中略。
十一月二十日 木
子爵飛鳥山邸ニ引籠療養
午後二時東洋生命保険会社にて開催の東京運河土地会社重役会に出席す
   ○中略。
十二月六日 土
午前十時東洋生命保険会社ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席す夜飛鳥山邸ニ参候、子爵御病気御見舞を為し、事務上ニ関する御報告を為し、十一時帰宅す
   ○中略。
十二月九日 火 晴
前十時東洋生命保険会社ニ於て東京運河土地会社重役会あり、出席す
○下略
   ○中略。
十二月廿六日 金 雨
前十時日本工業倶楽部ニ於ける運河土地会社総会ニ出席、監査役として監査の結果を報告す
○下略


(増田明六)日誌 大正一四年(DK530067k-0004)
第53巻 p.409-411 ページ画像

(増田明六)日誌 大正一四年      (増田正純氏所蔵)
三月廿五日 水 雨
前十一時保険協会ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席
○下略
   ○中略。
四月四日 土
午前十一時生命保険協会ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席
○下略
   ○中略。
八日○五月 金
前十一時生命保険協会ニ於て東京運河土地会社の重役会あり、昨年五月三野村氏より同社ニ於て拾弐万五千円を借入れ、条件としてハ同社所有最良の土地弐千五百坪売渡の証書を作成し、別ニ期日元利金返済の場合ハ該土地を買戻す事を約し、又利息は年一割とし、買戻の場合ハ更ニ一割を支払ふ事としたる今回期日至り、元金返済の途無きを以て、条件通坪五拾円の割を以て三野村氏ニ売却する事を議決す
 因ニ本借入金を為す際、小生ハ寧ろ売却するを可とする意見なりし
 - 第53巻 p.410 -ページ画像 
が、当時の常務取締役たる田畑・玉越・関の三氏等将来高価ニ売却する事を得へきを主張し、遂ニ如此条件ニて借入金を為したるが、果して其後売却する事も不得、結局一割の利息壱万弐千五百円を損失するに至りしものなり
○下略
   ○中略。
十日○六月 水 晴
○上略
前十一時東洋生命保険会社ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席す
○下略
   ○中略。
十九日○六月 金
前十東京運河土地会社重役会ニ出席す
○下略
   ○中略。
二十六日○六月 金
正午生命保険協会ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ引続き、午後一時の総会ニ出席
○下略
   ○中略。
三日○十月 土 晴                出勤
○上略
此日の来訪者如左
○中略 住田浅吉(東京運河土地)
○下略
   ○中略。
二十日○十月 火 晴               出勤
○上略
十一時工業倶楽部ニ於ける東京運河土地重役会ニ列席○下略
   ○中略。
二十日○一一月 金 晴
○上略
十一時半工業倶楽部ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席、午餐の会食を為す
○下略
   ○中略。
四日○一二月 金 晴               出勤
前十一時日本工業倶楽部ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席
 議案ハ十一月卅日を決算期とする同社事業報告・財産目録・貸借対照表・損益計算書承認ノ件及定時株主総会ヲ来廿四日午後一時同部ニ於て開催ノ件
右議了の後午餐を共にし
○下略
   ○中略。
 - 第53巻 p.411 -ページ画像 
十六日○一二月 水 晴              出勤
前十兜町事務処ニ於て東京運河土地会社の監査を執行す、永田監査役も従事、同会社ハ砂町ニ在り、往返ニ多時間を要するニ就き特ニ帳簿書類の持参を請ふて執行したる次第なり、別ニ異状を認めす
○下略
   ○中略。
二十四日○一二月 木 晴            出勤
正午工業倶楽部ニ於て運河土地会社重役会ニ出席
後一時同所ニ於ける同社総会ニ出席
○下略


(増田明六)日誌 大正一五年(DK530067k-0005)
第53巻 p.411 ページ画像

(増田明六)日誌 大正一五年      (増田正純氏所蔵)
二十日○二月 土 晴
午前十一時東京運河土地の重役会工業倶楽部ニて開催されしも、多忙の為め不参
○下略
   ○中略。
十一月二十日 土 晴              出勤
○上略
午前十時半日本工業倶楽部に於ける東京運河土地会社重役会ニ出席し午餐を了り事務処に出勤
○下略
   ○中略。
十二月三日 金 晴               出勤
○上略
午前十一時東京運河土地会社重役会の工業倶楽部に開かれたる出席、本年下季決算書類を閲覧し、又将来の営業方針に付き協議した
○下略
   ○中略。
十二月二十日 月 晴
○上略
午後二時日本工業倶楽部に於ける東京運河土地会社定時総会に出席す監査役を代表して監査の結果を報告す、提案凡て可決す
○下略


(増田明六)日誌 昭和二年(DK530067k-0006)
第53巻 p.411-416 ページ画像

(増田明六)日誌 昭和二年       (増田正純氏所蔵)
一月廿五日 火 晴               出勤
東京運河土地の重役会ニ出席
午前十一時東京工業倶楽部《(日本カ)》にて開かれた、先きニ総会て取締役に長谷川鏡次君を選挙したので、之が就任の承諾を求むる為め熱海に転地療養中の同氏を訪問した玉越増吉・田畑大蔵両氏より、同氏が病気の為め目下現在関係事業を縮少する方針の矢先き、到底引受くる事能ハすと謝絶された旨報告があつた、無拠次回の総会で適当の人を推薦する事ニ一決した
 - 第53巻 p.412 -ページ画像 
○下略
   ○中略。
二月廿二日 火 降雪凡五寸           出勤
○上略
東京運河土地会社重役会に出席
午前十時同社ニ於て開催、主たる議案は同社売地売却値段の評価決定の件なり、田畑取締役評価を大体是認したるが、佐藤常務風邪欠席に付き、同氏出席の際を以て再議する事となれり
○下略
   ○中略。
三月廿三日 水 晴               出勤
前十東京運河土地会社の重役会が開かれた、議題とては格別の事は無く、多く報告事項であつた
此席上小生は現深川の木場を同会社運河の両岸に移転する様木材業者を勧誘する事は如何、之誠に抽象的の発案なれと
一現深川の木場なるものハ区画《(劃)》整理其他ニて益狭隘となれる事
一将来同地ニ於て発展せんとするも其土地無き事
一将来他ニ移転せんとする《(も脱)》廉価ニて換地を得る事益困難なるべく、仮りニ廉価の土地ありとするも遠隔地なるニ於てハ移転費用ニ多額を要し、結局高価の土地と為るべき事
一、運河会社の現在ハ買地人無き為め弱り居る際故、何れの場処も斯業者ニ於て選択し得べき事、併も廉価なる事
一将来木場移転の必要生するも、今回ニ非されハ再度廉価ニ買収能ハさるべき事
一木場移転するならハ、為之第三期運河を特ニ開鑿して運輸の便を計るべき事
一運河会社土地の如き水陸両便の地は再度得難かるべき事
  省線の通過 貨物集散場の設置
  城東電車の通過
  水《(小)》名木川及中川ニ通じ更ニ品川湾ニ開通する
  第三期運河あり
一寸考へても是非木場ニ取り必要の土地と思ふ旨を述へたるニ、来会者(佐藤・三野村・田畑・秋山の四氏)ハ孰れも賛同し、田畑氏より材木業組合の重なる人々に内談する事とし、小生ハ同組合長長谷川鏡次君ニ懇談する事を約した
○下略
   ○中略。
四月二十日 水 曇                出勤
前十東洋生命保険会社ニて東京土地運河の重役会が開かれた、種々の協議の後、小生より左の提議を為した
深川の木場は近来頗る発達して、地価も騰貴し、事業拡張の余地無き状態と為つた、処が其附近ニ東京土地運河会社の売却地がある、此地ハ鉄道と運河とがありて運輸の便を備ふ、此地同木場を此地処ニ移転する様運動する事如何、小生より深川木材組合長長谷川鏡次君ニ内談
 - 第53巻 p.413 -ページ画像 
を試みる事如何と、一同之を賛したので、玉越取締役を通して同氏と会見の日取と場所とを打合ハす事となつた
○下略
   ○中略。
五月十九日 木 晴                出勤
東京運河土地会社ニ関する件
午前十時深川吉永町四長谷川鏡次氏を玉越増吉氏と共ニ訪問す
一長谷川氏の同会社取締役補欠選挙候補者たるの承諾を請う
 同氏ハ健康の都合上玆一・二年ハ如何の交渉あるも応諾する事不能と言明した
二深川木場の移転先を東京運河土地会社の敷地と決定して、目下地価の高価ならさる際購入してハ如何、若し木場の各位にして移転の希望あらは、会社としてハ出来得る丈便宜を与ふる事を得べき事を述べ、木場の移転地として運河土地を推薦する理由ハ
 一移転地近き為め多額の移転費を要せさる事
 一運河鉄道の便ハ他地ニ於て望むべからさる事
 一現在ニ於てハ孰れの地にても選定ニ差支無き事
 一代金極めて廉なる事
 一木場は目下より以上拡張の余地無き事
 一更ニ区画《(劃)》整理実理《(現カ)》の上ハ狭少となるべき事
移転実行の方法としてハ
 一運河土地の買収代金ハ年賦とするも可なる事
 一土地交換の方法を取るも可なる事
 一木場ニ於て土地会社を設置するも可なる事
木場ニ於てハ現在材木置場として使用権料を坪参百円支払ふものありて、事実不便不利を感じ居るのミならす一・二年の後区画整理実現すれハ、愈々土地の狭隘を生し必す移転せさるを得さるニ至るハ明かなり、今ニ於て其準備を為さゝれハ臍を噛むニ至るべしと、種々縷述したるニ対し、長谷川氏より
一木場の移転ハ運河会社所有地を以て最良とする事
一移転ハ真ニ希望し居る事
一運輸交通の便も承認し居る事
なるが、要ハ移転費を得るの途無きを以て、暫く時期を待つ外無しとの意見なり
折柄材木業者長島吾助・加藤平次郎の両氏長谷川氏方ニ来るニ会す、再度玉越氏と共ニ前記の希望を談話したるが、将来の移転地としてハ絶好の候補地なるが、現今ニ於てハ移転資金を得るの途無く、乍遺憾如何共致方無しとの事ニて、御互ニ之を将来問題として実現方法を研究する事として辞去したり
○下略
五月二十日  金 晴               出勤
東京運河土地重役会
前十東洋生命保険会社ニて開催
議案前期迄損失金を繰越し来り、売却土地代金ハ仮受金として利益を
 - 第53巻 p.414 -ページ画像 
計算せざ《(り脱)》しも、此先損失金を毎期生するハ、外面より見たる会社の成績不良ニして、株価ニも影響を生するを以て、今期ニ於てハ売却土地を坪当り凡二十五円として売上利益金を計上して損失金を支弁し、少くとも損失を繰越さるゝ事とす(土地原価ハ坪当一九・一七なるが、此外ニ三割五・七五合計二四・九二としたるなり)
其他の議案記事ハ略す
報告及決議事項終了後、昨日長谷川鏡次氏と会見の状態を小生より報告して会社の方針を協議したるが
一、運河を政府ニ買上けらるゝ様十分努力する事
ニ一同の意見一致し、尚
一、第一期線より中川ニ通する閘門築造費を政府より下付を受くる様運動する事
も一同一致し、木村社長・佐藤専務ニ於て極力努むる事となつた
○下略
   ○中略。
六月七日 火 曇                 出勤
○上略
本日来訪者
1、関根喜三氏 東京運河土地会社決算書類の査閲ニ関する件
○下略
   ○中略。
六月十六日 木 雨                出勤
午前九時より東京運河土地会社決算の監査を為す事あつたが、同十時より磐城炭礦会社ニ於て重要なる重役会があるので、出席の上其理由を以て三野村・永田両監査役ニ依頼して 直ニ磐城ニ出席した
○下略
   ○中略。
六月廿三日 木 晴                出勤
○上略
午後一時半東京運河土地会社定時総会(東洋生命保険会社ニ於て)ニ出席した
○下略
   ○中略。
九月二十日 火 晴                出勤
東京運河土地重役会
午後一時東洋生命保険会社ニて開会、特ニ記すべき議決事項無きも、取締役宇田川氏より、砂町々民の意志として第一期線の末端中川へ貫通堀鑿《(掘)》の希望あり、理由としてハ境川ハ埋立の上道路敷と為る事ニ決定しあるを以て愈々斯く竣工の上は、従来同川ニ依り舟輯の便を得たるものゝ活路を失ふ事となるニ付き、第一期線を掘り抜き同運河を航通路となさんとするニ在り、右ニ対し会社としてハ元来開鑿の希望なれと、目下の財政状態ニ於てハ如何とも致方無く、当分其儘ニ存置する外途無しと木村社長ハ答へたり
○下略
 - 第53巻 p.415 -ページ画像 
   ○中略。
十月廿一日 金 晴                出勤
午後一時東京運河土地会社重役会ニ出席した
○下略
   ○中略。
十一月八日 火 曇                出勤
○上略
本日の来訪者
   ○中略
6住田浅吉氏 東京運河土地会社土地売却の件
○下略
   ○中略。
十一月十五日 火 雨               出勤
○上略
マグネシア・ブロツク会社工場敷地として東京運河土地の地面を紹介する為め、同社の関根喜三氏を呼んて其売値等を聴取した
   ○中略。
十二月三日 土 晴                長瀞
○上略
午後一時東京運河土地会社重役会ニ出席、本年下季決算書類並各種議案に就き協議した
○下略
   ○中略。
十二月九日 金 雨                出勤
午前九時東京運河土地会社東京分室ニ於て同社の監査を為した、資産負債・損益計算の各項を監査したるが、孰れも正確なりしが、中ニ就き年賦売渡土地代金ニして期日未払込分を手形を以て収入しあるも、之を帳簿ニ記載セす、空ニ所有せるを発見し、今期ニ於て之を受取手形又ハ未収入金として記帳する様佐藤専務ニ注意し置きたり
○下略
   ○中略。
十二月十五日 木 晴               出勤
○上略
本日の来訪者
○中略
3住田浅吉君 東京運河土地会社所有地と清水組所有地との交換ニ関する契約書立案及其条件ニ付き協議があつた
○下略
   ○中略。
十二月廿三日 金 降雨              出勤
午後一時東洋生命保険会社ニ於ける東京運河土地会社重役会ニ出席、同二時より同社ニ於ける其株主総会ニ出席した、出席株主としてハ都合二名で、他は重役と委任状を寄せられた株主であつた、所謂一瀉千里全議案を可決し、監査役重員《(全カ)》の任期満了改選の件は凡て重任と決し
 - 第53巻 p.416 -ページ画像 
た、其間総て五分であつた
総会終了後再度重役会を催うし、会社の将来ニ付き種々談話をしたが
一土地売却ニ関する智識と経験とを有する人を得る事ニ努むるハ目下の急務なるニ付き、為其佐藤得四郎常務ハ田園都市会社の渋沢秀雄氏を訪問して意見を尋ね、且同会社ハ明春目黒・蒲田電鉄ニ合併解散するニ付き、自然過員を生ずべきニ付き、前記目的ニ適する人あらは或は之を雇用するも一策なるべき事
二運河を公有とするハ当初の希望なるを以て、此際政府ニ対し有力なる人を訪問して会社の状況を談話し、其意見を尋ぬる事、為其地方的関係も有り、南葛より選出したる    《(原本欠字)》氏を訪問する事、之ニハ佐藤常務・田畑取締役当る事
○下略


(増田明六)日誌 昭和三年(DK530067k-0007)
第53巻 p.416-417 ページ画像

(増田明六)日誌 昭和三年      (増田正純氏所蔵)
二月廿七日 月 晴                出勤
午後一時東京運河土地会社重役会に出席した、議案中同社々債百五十万円、年八分五厘のものを、金利低落の今日借替ゆるの利益なるを以て、左記条件を以て三菱信託会社より資金を借入れ、出来得る丈社債を買入れる事とした
一利率は年七分以下の事
一借人資金の方法 株主総会の決議を以て重役の一人が社債の購入を為す事、其資金は会社が同人ニ供給する事、会社は之を三菱信託会社より借入れ、其担保品として同人が購入したる社債を同会社ニ提出する事
其他の議案に関する記事を略す
○下略
   ○中略。
五月十七日 木 晴                出勤
○上略
今日の来訪者は○中略
3、関根喜三氏 東京運河会社決算ニ関し協議の為め
   ○中略。
五月廿一日 月 晴                出勤
午後一時東京運河土地会社重役会に出席した、本年上半季決算方ニ付き監査役として希望を述へて置いた
   ○中略。
六月六日 水 晴                 出勤
午後一時東京運河土地会社の重役会に出席した
○下略
   ○中略。
六月十五日 金 降雨               出勤
午前九時東京運河土地会社監査を執行す、午前中終了
○下略
   ○中略。
 - 第53巻 p.417 -ページ画像 
八月十日 金 曇                 出勤
午後二時東洋生命保険会社ニ於ける東京運河土地会社重役会に出席した、議題は
 会社が土地を分譲したる小西化学工業会社ガ硫酸を製造するのが主たる目的であると云ふので、同地方の地主及蔬菜・金魚・海苔採取等の営業者が挙つて、会社が斯様のものニ土地を分譲して営業を為さしむるは我等の事業を奪ふものであるから解約すべしと、砂町々長で当会社取締役である宇田川啓輔氏及分譲斡旋ニ尽力したる玉越増吉氏に迫るので、両氏より之が対策を請ふとの事から臨時重役会を催ふしたのである
種々協議の上、小西氏は始めから決して硫酸は勿論同会社で製造するものが、何等他に損害を及ほす事は無いとの保証から分譲する事になつたのであるから、此際小西氏又ハ信用ある技師より右等抗議者に能く説明を請ふ事にして、其交渉は佐藤常務が当る事と決した、若し夫れても抗議者が承知しなかつた場合は、更に重役会を開き協議する事にした
○下略
   ○中略。
九月二十日 木 雨                出勤
午後一時東京土地運河会社重役会に出席した
○下略