デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正13年2月23日（1924年）

是日栄一、当協会幹事会ニ出席シ、中日両国民親交機関ノ設置ニ関シ協議ス。

日華実業協会　対支文化事業諮問委員会　　　（渋沢子爵家所蔵）
拝啓
来ル二月廿三日（土曜日）午前十一時半当事務所ニ於テ幹事会相開キ別紙添付致置ノ在支天津・上海・漢口三地本邦商業会議所並ニ本邦新聞社宛勧誘書草案ノ各項ニ付キ御協議願度、乍御多用中御繰合セ御臨席奉願候　敬具
　　大正十三年二月廿日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日華実業協会
　　　　渋沢会長殿
当日ハ最近支那ヨリ帰京ノ森幹事ニ揚子江各地ノ排日運動終熄セシ模様ニ付キ御話願置候
　追而御手数乍ラ別紙葉書ニテ御出席有無御返事願候
　　尚例ノ通リ午餐用意致置候
（別紙）
　　　　天津・上海・漢口三地ノ本邦商業会議所
　　　△
　　　　並ニ三地本邦新聞社宛勧誘書草案
拝啓、春寒料峭ノ候各位愈御清祥奉賀上候、陳者昨春以降支那各地ニ頻発セル排日行動ハ、其影響頗ル重大ニシテ、関係者ハ共ニ痛切ナル打撃ヲ被リ、彼我貿易ノ前途ハ勿論、両国国交上固ニ憂慮スヘキ事件ニ有之候処、其後各位ヲ始メ我朝野ノ努力ト時運ノ推移等ニ依リ、現今ニ至リ各地共此風潮ヲ終熄セル観アルハ誠ニ御同慶ノ至リニ存候、
 - 第55巻 p.268 -ページ画像 
而カモ是等風潮ハ今後機ニ応シ反覆激発セラルヘキハ必然ノ義ト信シ候得ハ、本協会ハ此小康ノ時機ニ於テ国民的親交ノ確立ヲ企図シ、之レカ施設ニ関シ夫々考案中ニ候処、由来自他親好ノ要諦ハ、平素不断ノ接触ヲ保チ、双方ノ意思ヲ疎通シ、其誤解ヲ去ルヲ以テ第一義トシ感情ノ疎隔ヲ以テセハ、百般ノ施設モ其成果ヲ収ムルニ由ナキ事ト思料仕候、依テ先ツ如上親交機関ノ新設ヲ痛感シ、当面ノ措置トシテ玆ニ天津・上海・漢口三地ノ本邦商業会議所並ニ新聞社ノ各位ニ対シ、左記希望事項ヲ呈出スルコトト相成、更ニ東京・大阪等ニ於テモ此種機関ノ設置ヲ希望致居候
　一、在留本邦商業会議所（其他有力ナル本邦商）ト支那総商会（其他有力ナル支那実業家）トノ間ニ会員組織等ノ適当ナル機関ヲ設ケ（当初ハ経費ノ関係上日本人倶楽部等ヲ充用シ）、絶ヘス双方ノ意思疎通ニ力メ、予メ排日ノ未然ニ備ヘ、尚進ンテハ適当ノ時機ニ及ンテ商品見本陳列所（農商務省等ノ補助ノ下ニ）ヲ之ニ配設シ、彼我取引ノ媒介、商品ニ関スル研究及商事紛争ノ仲裁等ヲナシ、以テ両国貿易ノ発展ニ資スルコト
　一、在留本邦新聞社ト支那新聞記者・学生団及朝野有識者トハ常ニ充分ノ接触ヲ保チテ、随時会商交歓シ、前項団体ト呼応シテ両国親善ノ気運ヲ作ルコト
就テハ貴商業会議所『貴新聞社』各位モ叙上微意ノ在ル所ヲ御洞察御賛同被下候上、早日貴地方ニ於ケル支那実業団体『記者団体』等ト御懇談相成、斯クテ両国民親交ノ機関ヲ御設立アランコトヲ切望ノ至ニ堪ヘス候、固ヨリ両者ノ常時親密ナル交通ヲ持続スルハ、地方一般ノ情勢、彼我ノ用語其他在留年歴等ノ関係ヨリ其遂行至難ノ事ト察上候得共、顧ミテ来ルヘキ排日ノ結果ニ想到スレハ、平素相当ノ努力ト犠牲トヲ供スルコト亦万已ムヲ得サル義ト存候
尚本協会ハ如上機関ノ設立ニ関シ、貴地本邦官憲並ニ関係本邦実業家各位宛充分ノ援助ヲ与ヘラレンコトヲ勧説中ニ候得共、当面御従事ノ各位ニ対シ特別ノ御尽力願上度、乍突然此段得貴意候　敬具

日華実業協会往復（一）　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
謹啓
去ル二十三日幹事会ノ御打合セニ依リ、来ル三月一日（土曜日）正午ヨリ当事務所ニ於テ幹事会相開キ、前会ヨリ懸案ノ両国実業家提携機関設置ニ付キ引続キ御協議願フ事ニ相成候間、乍御多用中御繰合セ御臨席奉願候　敬具
　　大正十三年二月廿六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日華実業協会
　　　　渋沢会長殿
　追而乍御手数別紙葉書ニテ御都合御返事願候

日華実業協会第四回総会報告書　　第二七頁大正一三年一二月刊
　　　　大正十二年六月以降
　　　　　　役員会及諸会合報告
 - 第55巻 p.269 -ページ画像 
○上略
二月二十三日役員会　渋沢会長外各幹事出席、排日前後策ニ関シ協議ス
三月一日役員会　前役員会々議事項ヲ継続協議ス
○下略

集会日時通知表　　大正一三年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
二月廿三日　土　午前十一半時　日華実業協会幹事会（同会）
　　○中略。
三月一日　土　正午　　　　　日華実業協会幹事会（同会）