デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2023.3.3

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
2節 其他ノ経済団体及ビ民間諸会
3款 東北振興会
■綱文

第56巻 p.246-249(DK560063k) ページ画像

大正12年5月25日(1923年)

是日当会、東北六県知事ヲ東京銀行倶楽部ニ招キテ、協議会ヲ開ク。栄一出席シ、当会ノ存続及ビ機構改革ニ関シ協議ス。


■資料

集会日時通知表 大正一二年(DK560063k-0001)
第56巻 p.246 ページ画像

集会日時通知表  大正一二年      (渋沢子爵家所蔵)
五月廿五日 金 午後三半時 東北振興会ノ件(銀行クラブ)


青淵先生関係事業調 雨夜譚会編 昭和三年五月十五日(DK560063k-0002)
第56巻 p.246-247 ページ画像

青淵先生関係事業調 雨夜譚会編 昭和三年五月十五日
                    (渋沢子爵家所蔵)
    東北振興会(一)
○上略
一、沿革 ○中略
       ヲ同 ○大正十二年五月廿五日東北振興会進展の状漸く衰へんとするを見て、東京丸の内銀行集会所に於て、東北六県知事の上京を利用して協議会を行ふ。
        渋沢子爵・大倉男爵・大橋新太郎・志村源太郎・根津嘉一郎・吉池慶正の諸氏出席して開議し、今後尚ほ此会を存続すべきや否やに就き腹蔵なき六県知事の意見を敲きたるに、之れに対し、力石宮城県知事より東北地方としては、今後と雖も同会の如き有益なる会の存続は地方民多数の希望する所なるを以て会の継続は勿論、今後の発展を懇請する次第なりと述べ、更に他五県知事、岩田衛・牛塚虎太郎・尾崎勇次郎・岸本正雄・県忍の諸氏よりも、夫夫地方としては会存続の有益なる所以を挙げて会の継続発展を懇請する所あり、大倉男爵は会存続の必要なかるべきを説いたるも、多数委員は知事の希望を容る。渋沢子爵も地方長官の意のある処を諒とし、更に進んで会の組織改善に就き地方長官に対して具体的の提案を希望し、地方長官は意見を交換し熟議の上、先づ其起案を振興会の吉池幹事に依嘱したるを以て吉池幹事は之を急速に起案して東京の委員に諮り、一応審議したるものを更に地方長官と協議成案となるべき順序なり。而して其大要は次の如し
          一、東京・地方に於ける会員の増加を図る事
          一、地方に於ては現在の会員外の当業者を多数に加入せしむる事
          一、地方の金融・製糸・開墾事業・森林原野の
 - 第56巻 p.247 -ページ画像 
処分
          一、地方当業者に対し巡回指導、巡回批評
          一、東京に於て銘産品陳列会の施行、東京に於ける六県共同販売所の設置
         之に対して六県知事は更に左の希望あり
          一、金融機関の改善即ち地方銀行の合同問題、東北地方の金融を総括すべき大銀行の設立の事
          一、開墾補助金の増額の事(「東北日本」第七巻第八号四二頁)
○下略


東北振興史 浅野源吾編 上巻・第三一〇―三一五頁 昭和一三年八月刊(DK560063k-0003)
第56巻 p.247-249 ページ画像

東北振興史 浅野源吾編  上巻・第三一〇―三一五頁 昭和一三年八月刊
 ○第三章 東北振興の基礎調査
    東北振興会の機構改革協議
 渋沢子爵を会頭に戴く東北振興会は昨今稍振はざるものあるを以てそれを如何に存続し発展すべきかに付東京の委員と、地方当局との間に於て協議すべき必要を認め、今回地方長官会議にて東北六県知事の上京したるを機会に、大正十二年五月二十五日丸ノ内銀行集会所に参集し、協議会を開きたり。出席者は東京渋沢子爵・大倉男爵・大橋新太郎・志村源太郎・根津嘉一郎・吉池慶正の諸氏(益田男爵・加藤正義・村井吉兵衛の三氏欠席)、地方長官は力石雄一郎・岩田衛・牛塚虎太郎・尾崎勇次郎・岸本正雄・県忍の諸氏、先づ渋沢子爵より更めて大正二年原敬氏よりの懇講に依り組織したる会の来歴経過を述べたる後、今後尚ほ此会を存続すべきや否やに就き腹蔵なき六県知事の意見を尋ねたるに、之れに対し力石宮城県知事より東北地方としては、今後と雖も東北振興会の如き有益なる会の存続は地方民多数の希望する所なるを以て、会の継続は勿論今後の発展を懇請する次第なりと述べ、更に他の五県知事よりも夫々地方としては、会存続の有益なる所以を挙げて、会の継続発展を懇請する所あり、之れに対し東京側の委員中大倉男は、最早東北地方は会存続の必要なかるべきを以て会を解散しては如何と述べたるも、其他の委員は地方長官の希望を諒とし、会の存続発展する事を必要なりと認め之れを承認したるを以て、大倉男も多数の意見に従つて会の存続発展を承認したり。次で吉池幹事より振興会の事業経過と今後の発展、即ち主として会の組織改革に就て意見を開述し、夫れに対し地方長官よりも各自夫々意見を開述する所あり、会頭渋沢子爵も地方長官の意のある所を諒とし、更に進んで会の組織改革に就き地方長官に対して具体的の提案を希望し、地方長官一同は意見を交換し熟議の結果、先づ其起案を振興会の吉池幹事に依嘱したるを以て、吉池幹事は之れを急速に起案して東京の委員に諮り一応審議したるものを、更に地方長官と協議し成案となすべき順序とし、而かも其大体要旨は、一東京並に地方に於ける会員の増加を図る事、一地方に於ては現在の会員の外当業者を多数に加入せしむる事、一地方の金融、製糸、開墾事業、森林原野の処分、一地方当業者に対
 - 第56巻 p.248 -ページ画像 
し巡回指導、巡回批評、一東京に於て銘産品陳列会の施行、東京に於ける六県共同販売所の設置等、以上の意味を含有したるものなり。尚ほ其席上に於て、今後東北振興会の後援に依らざるべからざる問題として六県知事より述べられたる問題は
一、金融機関ノ改善即チ地方銀行ノ合同問題、東北地方ノ金融ヲ総括スベキ大銀行ノ設立問題
一、製糸事業改良発展問題
一、東北地方ニ於ケル国有森林原野ノ処分問題(現在東北地方ニ於ケル国有森林ノ保有ハ地方ノ過重ナル負担ニシテ、東北地方ノ今尚ホ発展セザル不振ノ原因ハ玆ニ有リト為シ、国家ガ或ル程度ノ国有森林ノ処分ヲ為シ、之レヲ県ニ払下ルニアラザレバ、東北今後ノ発展ハ不可能ナリトノ意見)
一、開墾補助金の増額問題
 尚ほ今回吉池幹事の手に於て起草され、渋沢会頭並に東北六県知事に交付されたる会規則の改正案を提議し、其結果改正された東北振興会規則は左の如し。
    東北振興会規則
第一条 本会ハ実業家中ノ有志ヲ以テ組織シ、東北振興会ト称ス
第二条 本会ハ東北地方即チ福島・宮城・岩手・青森・秋田・山形六県管内ノ産業ヲ振興スルヲ以テ目的ト為ス
    東京ニ本部ヲ置キ、各県ニ支部ヲ置クコトアルベシ
第三条 前条ノ目的ヲ達スル為メ左ノ事業ヲ行フ
  一、物産ノ調査、販路ノ紹介及商況ノ通信
  二、金融ノ調査並ニ紹介
  三、産業ノ指導
  四、関係方面ニ対シ東北振興ニ関スル意見ノ具陳
  五、産業ニ関スル陳列会・共進会・講話会及其他ノ集会ヲ行フコト
  六、機関雑誌ヲ発行シ会員ニ頒布スルコト
    但シ当分ノ内『東北日本』ヲ以テ之ニ充ツ
  七、時勢ノ趨向ト本会経済上ノ都合ニ依リ東京ニ物産陳列館ヲ設置スルコト
  八、前各号ノ外産業上必要ト認ムル事項
○中略
第四条 本会ニ会頭一名、副会頭一名、理事一名、監事一名、委員若干名ヲ置ク、以上ノ役員及委員ハ名誉職ニシテ其任期ヲ三年トシ、総会ニ於テ之ヲ選挙ス
    但シ役員及委員ニシテ常務ニ従事スル場合ニハ報酬ヲ贈与スルコトアルベシ
○中略
第十条 本会ハ福島・宮城・岩手・青森・山形・秋田ノ六県知事ヲ顧問ニ推薦ス
第十一条 総会ハ毎年一回、委員会ハ必要ニ応ジ会頭之ヲ召集ス
          東北振興会役員
                 会頭 子爵 渋沢栄一
 - 第56巻 p.249 -ページ画像 
                 理事    吉池慶正
                 監事    志村源太郎
          東北振興会委員
 在東京之部
 男爵 益田孝   男爵 大倉喜八郎   大橋新太郎
    根津嘉一郎    村井吉兵衛   志村源太郎
    梶原仲治     倉知誠夫    藤田謙一
 地方之部
福島県 小林富吉     高瀬八郎    鈴木重郎治
宮城県 伊沢平左衛門   佐藤亀八郎   平塚喜市郎
岩手県 人見鉄太郎    葛西重雄    国分謙吉
青森県 原田藤次郎    泉山吉兵衛   高谷豊之助
山形県 渡辺正三郎    登坂又蔵    荒木彦助
秋田県 田中隆三     斎藤宇一郎   菊地季吉
○下略