デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

3部 身辺

1章 家庭生活
2節 健康
■綱文

第57巻 p.122-123(DK570058k) ページ画像

大正5年8月(1916年)

是月、雑誌「実業之世界」ノ保健法等ニ関スル質問ニ対シ、栄一、詳細ナル回答ヲ寄ス。


■資料

実業之世界 第一三巻第一七号・第五六―五七頁 大正五年八月 現代名士の養生振り 其三(DK570058k-0001)
第57巻 p.122-123 ページ画像

実業之世界  第一三巻第一七号・第五六―五七頁 大正五年八月
    現代名士の養生振り
      其三
『言ふまいと思へど今日の暑さ哉』暑い夏の盛りには肩の凝ない軽い読物を載せたいものといろいろ考へ抜いた揚句、二百名士に宛てゝ左の手紙に対する回答をお願ひした。 ○中略
謹啓 毎度御引立に預り有難く存じ奉り候、陳者八月十五日号の本誌に掲載の栄を得度と存じ候に付、御手数ながら左記に対する御返事を
 - 第57巻 p.123 -ページ画像 
賜り度御願申上候 敬具
一、平生御実行なされつゝある保健法
二、食物の中で何が一番お嫌ひですか
三、朝餐にはどんなものを何の位お取りになりますか、御飯は何椀位めし上りますか
四、昼食及夕餐に就ては如何ですか
  お酒は召し上りますか、何酒を一番お好きですか、晩酌はどの位あがりますか(以上)
    △
                    男爵 渋沢栄一
一、別に特種の保健法を実行せざるも、事物に屈托せざるを予の保健法とす。時に、家内に意の如くならざることあり、或は事業の損失等あるも、斯くの如き不如意を人生なりと達観し、如何なる不幸に際会するも決して屈托せず。
二、甘味及び脂肪分多き食物を好み、時に菓子を摂り、晩餐等には天麩羅・鰻・ケンチン汁を好んで食するも、又芋・茄子等の野菜をも好む。殊に、昨今は肉類よりも野菜類を嗜好するに至れり。
三、朝餐はスープ皿の約三分之一に相当するオート・ミールにクリーム約一合をかけ、砂糖を充分に加へて甘くしたるものと、スープ約一合、玉子の半熟二個、約一寸四方の焼麺麭二片、紅茶・果物等とを摂取す。
四、正午頃は概ね兜町事務所に出務するを以て、昼食は第一銀行にて行員と共に食する場合多し。その際は洋食にして鳥或は獣の肉一皿・魚肉一皿・麺麭等を摂取するも、果物は命ぜず。
五、夕餐は和食なることあり、洋食なることあるも、洋食の場合多く自ら進んで遊食の為め赴くに非ざるも、殆ど毎夜何等かの会合ありて之に招かるゝため、日本食は常盤・新喜楽・瓢家等、洋食は帝国ホテル、築地及び上野の精養軒、中央亭等にて会食す。
六、日本食の際は米飯三碗を摂取するを例とし、外に汁を喫る、酒類は毫も飲用せず。
○下略