デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

1編 在郷及ビ仕官時代

2部 亡命及ビ仕官時代

4章 民部大蔵両省仕官時代
■綱文

第3巻 p.170-173(DK030053k) ページ画像

明治四年辛未五月二十八日(1871年)

造幣寮事務取扱規則・事務施為方法概略・毎年製貨試験分析定則制定セラル。栄一ノ関与スル所ナリ。


■資料

青淵先生伝初稿 第七章二・第一四頁 〔大正八―一二年〕(DK030053k-0001)
第3巻 p.170 ページ画像

青淵先生伝初稿 第七章二・第一四頁 〔大正八―一二年〕
○上略 尋で同月○五月二十八日制定せられたる造幣寮事務取扱規則・事務施為方法概略・成貨試験分析定則《(マヽ)》の如きも、皆先生の手を経たるものなりき。
其頃造幣頭には井上馨・伊藤博文、同権頭には馬渡俊邁・益田孝等歴任して之に当り、又別に英人キンドルを造幣寮首長となし、鋳造に関する技術の方面を担当せしめたれば、先生は又是等の人々と謀りて造幣事務を取扱ひ、之が為に明治四年五月及び九月の両回、命を奉じて大阪に出張せり。○下略


法規分類大全 官職門 官制 大蔵省二 第四五四―四五八頁(DK030053k-0002)
第3巻 p.170-173 ページ画像

法規分類大全 官職門 官制 大蔵省二 第四五四―四五八頁
   造幣寮事務取扱規則 四年五月二十八日
日本政府ニテ現今欧羅巴各国及ヒ米利堅等ニ行ハルヽ普通ノ条規ニ倣テ造幣寮ヲ建置シ、新貨幣ヲ鋳造スルタメ貨幣鋳造ノ制規方法及ヒ器械運用等ノ事ニ熟達セシ外国士官ヲ約条書ヲ以テ雇入レ、寮中諸簿冊ノ制及其計算法ヲ設為スル等ノ権ヲ付与シ、而シテ其約条ニ基キ政府又ハ内外人民ノ差出ス地金ヲ寮中ニ受取、其品位量目員数等政府ノ制定ニ従テ之ヲ外国士官ニ通達シ、其地金ヲ引渡シ、製貨ヲ受取ル等ノ事ヲ総管スルタメ、日本政府ヨリ日本士官ヲ寮中ノ職員ニ任シタリ
外国士官ト日本士官ト互ニ其職掌ヲ奉行スルニ於テ、相聯合シテ相悖ラサルコトヲ要スルカタメ、各其職務上ニ就テ関係スル要件ヲ次ノ条款中ニ掲載シテ以テ其要旨ヲ著明ス、凡ソ此職ニ在ル者ハ能ク之ヲ確守ス可シ
外国士官等ノ司掌スル事務ヲ総称シテ工業局トシ、日本士官等ノ司掌スル事務ヲ総称シテ計算局トス
 但工業局トハ学術サイエンチツク施行エキザクチーブ工業オペレチーブノ諸局ヲ指命スルナリ
第一則 日本政府又ハ内外一般ノ人民ヨリ差出ス所ノ金銀地金ヲ受取リテ之ヲ監守シ、之レヲ貨幣ト為シテ払ヒ渡スカ、又ハ地金ノ儘ニテ返却スル等ノコトヲ取扱フハ、日本士官ノ職掌タルヘシ
第二則 外国士官ノ居住スル家屋ヲ除クノ外、造幣寮及ヒ附属ノ諸屋宅ハ都テ日本士官ノ管轄タリ、故ニ総体ノ貨幣及ヒ鋳造中ノ金銀地金ハ皆其管轄スル庫中ニ収メテ其出納ヲ詳記スル等ハ日本士官ノ職掌タル可シ、依テ地金又ハ貨幣鋳造ヲ取扱フ局々ニ於テ其計算ヲ掌ルタメ、日本士官ヲ以テ計算記載役ニ任ス可シ
 - 第3巻 p.171 -ページ画像 
第三則 要用ナル日本職工ヲ使役シテ地金ヲ品定整頓シ、以テ貨幣ヲ鋳造スルハ外国士官ノ職掌タリ、最モ此士官等ハ外国士官首長ノ指令ニ従フモノナリ、且其首長ハ日本人外国人ヲ不論同人ノ管下ニ属スル分ハ其事業ニ就テ要用ナルカ又ハ己レ之ヲ良トスルニ於テハ便宜諸規則ヲ設立スルノ権アルヘシ
第四則 各局ニ在テ計算ノ事務ヲ取扱フ日本士官ニ就テ詳整ナル諸規則ハ造幣頭之ヲ設立スヘシ、最モ兼テ約条書ニ従テ時々外国士官首長ノ設クル規則ト抵触セサル様注意スヘシ
第五則 造幣規則ニ従テ貨幣鋳造ノ為メ造幣頭ヨリ外国士官首長ヘ各種ノ地金ヲ交附シ、其鋳造スヘキ貨幣ノ分量品類ヲ其時々詳明ニ告知ス可シ
第六則 右地金ヲ交附スルニハ、造幣頭ヨリ地金局長ニ命シ其手ヲ経テ取扱ハシメ、其量目ヲ掛改メノ上規則ニ従テ之ヲ簿冊ニ登記シ置シムヘシ、且又外国士官首長ノ設タル規則ニ従テ各局ニ在テ地金出入ノ計算ヲ明ニシ、之ヲ簿冊ニ詳記シ、及ヒ地金交収ノ諸証拠書等ヲ取扱フ所ノ日本士官ハ都テ造幣頭ノ管下タルヘシ
第七則 各局ニ在ル計算記載役ヨリ差出シタル諸証拠書ニヨリ、計算ノ事ヲ便利ナラシメンタメニ英文ヲ以テ完備ノ簿冊ヲ編成スルコトヲ掌ル一人ノ士官ヲ任シ、其事ヲ取扱ハシム可シ、此簿冊ハ毎日出納ノ査合決算ヲ要スヘシ、此簿冊ハ何時ニテモ外国士官首長ノ検査ヲ受ケ、若シ整理セサルコトアレハ右首長此簿冊ハ何様ノ事故アルトモ其局外ヘ携出スルヲ許サス
第八則 英文ニテ記載スル計算簿冊ノ照憑ヲ為ンタメ、其事ニ堪ユル日本士官ヲシテ其証拠書ノ原文ヲ根楨トシテ日本文ニテ計算簿冊ヲ記載シ置ク可シ、但此事ヲ為スニ便ナルカタメニハ右ノ証拠書ハ双方ノ国文ヲ以テ之ヲ聯記セシメタリ
第九則 総テ簿冊中ノ文字ヲ刷消シ、又ハ補綴シアル紙片ヲ切取ル等ハ厳禁トス、之ヲ犯ス者ハ其職ヲ免スヘシ、且又諸簿冊検査既済ノ後ハ決テ之ヲ塗抹改竄ス可ラス、及ヒ諸証拠書記載済調印ノ後ニテ之ヲ書改ムルコトヲ得ヘカラス
第十則 総テ計算局ト工業局ト公事ノ往復ハ、造幣頭ト外国士官首長ト之ヲ取扱ヒ、書面ヲ以テセシ時ハ互ニ其回答ヲ稽延スル事ナカル可シ
第十一則 火曜日ヲ除クノ外、外来人ハ一切造幣寮中ニ入ル事ヲ許ササル可シ、最モ允許ノ日ニ当リテ一覧ヲ得セシムル者ト云トモ造幣頭又ハ外国士官首長若シクハ大蔵卿輔ノ免許状ヲ持参シ、且其為メニ設ケタル簿冊ニ其姓名ヲ記載セシムヘシ
 皇国政府ノ命ヲ以テ右規則ヲ承認シ確定スル者也
  明治四年辛未五月二十八日西洋千八百七十一年第七月十五日
              参議従四位   大隈重信
              大蔵少輔従四位 伊藤博文
   但洋文モ相添ヘ有之尤キントルヘハ洋文ノミ相渡ス

   事務施為方法概略
 - 第3巻 p.172 -ページ画像 
一明治四年辛未五月十日、即チ西洋千八百七十一年第六月二十七日附政府布告書ノ趣ニ従ヒ、地金受取方ヲ為ス可シ
一何人ヲ不論、造幣寮ヘ差出サント欲スル地金ノ巨細ヲ書入ヘキ引渡目録ノ雛形ハ、申立次第相渡ス可シ
一地金ヲ受取リシ節ハ仮ノ請取書ヲ渡スヘシ
  但第一号ノ雛形ヲ見ル可シ
一若試験熔解ヲ要スル地金ナル時ハ、外国長官ノ申立ニ依リ熔解所ヘ渡スヘシ、而シテ第二号熔解証書ヲ以テ巨細ノ事ヲ計算方ニテ書留メ置クヘシ
一試験熔解ノ後試験方ヨリ第三号ノ雛形通リ外国長官ヘ試験表ヲ差出スヘシ、右請取ノ上外国長官ハ地金ヲ請クヘキ旨ノ書翰ヲ認メ地金ノ価ヲ取調ヘ之ヲ定ム可シ、此書翰ハ外国長官記名シテ試験表ノ写但二通ヲ添ヘ造幣頭ヘ送ルヘシ
一試験熔解セシ地金塊ヘハ極印並ニ番号ヲ打チ、目方並ニ品位ヲ刻シ置ク可シ、而シテ後之ヲ地金局ヘ返達スヘシ、是ニ於テ試験熔解ノ証書ヲ決算ス可シ
一量目並価ノ知レタル地金ト雖トモ其地金ヲ試験ノ上証明シ、地金ノ価取調方ニ便宜ヲ外国長官ニ与フルタメ試験方ノ表並其他ノ書留メヲ同人ヘ送ルヘシ、其後最前ノ如ク地金ヲ受取ルヘキ旨ノ書翰ヲ認メ、試験表等ト共ニ造幣頭ヘ送ルヘシ
一地金局ニアル金銀塊ヨリ試験ノ為メ切取リタル小片ヲ試験方ニテ試シ上ハ価不分明ナル地金モ右同様ノ手続ヲ以テ請取ヘシ、而シテ試験方ハ外国長官ヘ其試験表ヲ差出スヘシ、外国長官ハ最前ノ如ク造幣頭調印ノ為メ地金ヲ請クヘキ旨ノ書翰並試験表ヲ送ル可シ
一成ヘク丈ケ試験ノ為メ請取ルヘキ小片ノ地金請取書ヲ差出スヘシ、残リ地金ハ急速ニ地金局ヘ返達ス可シ
一分析法ウエツトエスセープロセスニ於テ面倒ヲ生スヘシト雖トモ、試験ノ為メ受取リシ金属ヲモ延引ナク試験方ヨリ返達ス可シ
一精製シタル地金ノ価、外国長官ニ依テ証認セシ後造幣頭ヨリ地金持参人ヘ自分記名セシ地金ヲ請クヘキ旨ノ書翰、並ニ其節ノ都合ニ寄リ日本語或ハ英語ニテ認メタル試験表写ヲ送ルヘシ、若其書類ヲ三日ノ余地金持参人ノ手ニ留メ置ク時ハ、其地金ノ価高ヲ承諾セシ者ト看做シ右地金ヲ貨幣鋳造ニ取掛ル事ヲ得ヘシ
一造幣寮精製所ニ要スヘキ地金ハ、外国長官ヨリ書面ヲ以テ造幣頭ニ掛合テ之ヲ受取ル可シ
一仕事場各局ニテ地金ヲ要スル時ハ、外国長官ヨリ造幣頭ヘ右渡方ノ掛合ヲ為ス可シ
一鋳造セシ貨幣ハ外国長官許諾ノ上地金局ヘ引渡ス可シ、其貨幣ヲ翌朝地金局ニ於テ計算シ、改メヲ為スヘシ、其節向来試験ノ為メニ右貨幣ノ内ヲ政府ノ命令ニ従テ取除ケ置クヘシ
皇国政府ノ命ヲ以テ右施為方法概略ヲ承認シテ確定スル者也
  明治四年辛未五月二十八日西洋千八百七十一年第七月十五日
              参議従四位   大隈重信
              大蔵少輔従四位 伊藤博文
 - 第3巻 p.173 -ページ画像 
右皇文ハ造幣頭、洋文ハキンドルヘ相渡候事

   毎年製貨幣試験分析定則
第一条 日本政府ノ造幣寮ヨリ発弘スル貨幣ノ品位、法則通リニ適正ナルヤ否ヲ検査スル為ニ、毎年一度造幣寮ニ於テ試験分析ヲ為スノ集会ヲ催ス可シ
第二条 此集会ノ全権ハ大蔵卿輔ノ一人ニシテ、其他ハ日本政府ニ勤仕スル日本士官並分析学術ヲ心得タル中外ノ者ヲ其時ニ当リテ政府ヨリ掄択シテ此会ニ臨マシム可シ
第三条 此集会ノタメニハ造幣頭兼テ其用意ヲ為シ、都テ鋳造ノ貨幣外国長官ニ依テ造幣頭ニ引渡ス度毎ニ造幣頭ハ各種ノ貨幣若干個ヲ自ラ取除キ、之ヲ外国長官ノ眼前ニテ封包シ、造幣頭ト外国長官ト共ニ其封印ヲ為ス可シ
   但造幣頭右貨幣ヲ取除クニ付テハ他人之ニ関係スルヲ得ス
第四条 右封印セシ貨幣ニハ日本語並英語ニテ其種類員数及請取リシ日限其外巨細ヲ認メタル書付ヲ添ヘ、地金局ニアル筐中ニ入レ置キ両方ノ長官立合ノ上ナラテハ決テ之ヲ開ク可ラス
第五条 毎歳試験分析ノ為メ備ヘ置ク各種ノ貨幣ハ地金局長ニテ之ヲ預リ、而シテ右貨幣ノ員数種類並封印ノ日限等其為メニ別段設ケタル帳面ニ書留置クヘシ
第六条 二十円金十円金五円金ハ千枚毎ニ一枚宛、二円金一円金ハ五千枚毎ニ一枚宛ヲ造幣頭取除ケ置ク可シ
第七条 一円銀ハ五千枚毎ニ一枚宛ヲ取除ケ置クヘシ
第八条 銀定位貨幣ハ其品類ニ不拘、貨幣員数二千枚毎ニ一枚苑取除ケ置クヘシ
第九条 毎歳試験分析ノ節列席ヲ命セラレシ諸士官ハ、其当日造幣寮ニ集合ス可シ
右士官等ノ目前ニ於テ造幣寮試験方其手続ヲ為スヘシ、其節政府ノ存意ニ依リ造幣寮試験方ト共ニ其事ヲ取扱フ為メ別ニ試験方ヲ任スル事アルヘシ
皇国政府ノ命ヲ以テ前条試験分析ノ規則ヲ設立スル者也
 明治四年辛未五月二十八日西洋千八百七十一年第七月十五日
              参議従四位   大隈重信
              大蔵少輔従四位 伊藤博文
  大蔵省上申四年六月十日
造幣寮事務取扱方ノ儀ニ付、此程大隈参議伊藤大蔵少輔其外トモ大阪表出張致シ、実地運為ノ方法巨細取調、差向別紙定則書三通取極メ、夫々施行相成候様取計候、依之此段申上候也
   ○大蔵省沿革志、造幣寮第一 第八六―九二丁 明治四年六月十日ノ条ニ『造幣事務処理規程、造幣事業施為概則及ヒ毎歳製貨試験定則ヲ設定ス』トシテ、規程、概則及ビ定則ヲ列挙ス。然レドモ造幣局編纂「造幣局六十年史」第一三一頁以下ニハ、明治四年五月二十八日ノ条ニ各全文ヲ掲ゲタリ。ココニハ姑ク四年五月二十八日ノ条ニ本資料ヲ掲グ。