デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

1編 在郷及ビ仕官時代

2部 亡命及ビ仕官時代

4章 民部大蔵両省仕官時代
■綱文

第3巻 p.284-290(DK030091k) ページ画像

明治四年辛未十二月十日(1871年)

古金銀預証券ノ発行ヲ布告ス。栄一ノ立案スル所ナリ。


■資料

造幣局六十年史 第九三頁 〔昭和六年一一月〕(DK030091k-0001)
第3巻 p.284 ページ画像

造幣局六十年史 第九三頁 〔昭和六年一一月〕
  古金銀預証券の発行
 造幣寮に於ける証券の発行は元造幣頭伊藤博文の建議にかゝり明治四年十一月渋沢大蔵大丞出阪諸規則を定む、即明治四年十二月十五日より古金銀貨若くは金銀塊を輸納するものに対しその価格相応の預証券を発行したり、之は期日に至り正貨と引替ふる仕組のものにして五十円、二十円、十円、五円の四種ありき。京都の村上勘兵衛に命して大阪出張出納寮中にて之を印刷製造せしむ、而して明治四年十一月二十三日証券の製造を始めしめ、同五年三月十五日一時之が製造を中止す、此の時迄の製造高は三十七万七千六百枚額面三百壱万八千五百円なり。


法令全書 明治四年・第四四二―四四四頁 太政官 第六百四十 十二月十日 十一月刻(DK030091k-0002)
第3巻 p.284-286 ページ画像

法令全書 明治四年・第四四二―四四四頁
太政官 第六百四十 十二月十日 十一月刻
今般造幣寮ニ於テ古金銀預リ証券ヲ発行シ流融便用セシメ追テ定期ヲ以テ新貨ニ交換セシムヘキニ付、来ル十二月十五日ヨリ古金銀所持ノ者ハ望ミ次第造幣寮ヘ申立、左ノ規則ニ準シ地金ヲ納メ、証券受取候様可致事
 - 第3巻 p.285 -ページ画像 
  古金銀納入証券渡方規則
    第一則
一古金銀又ハ混合ノ地金塊ヲ造幣寮ヘ納メ、造幣頭ノ預リ証券ヲ得ント欲スル者ハ、地金ヲ持参シテ其趣ヲ出納掛リ長官ヘ申立ツヘシ
一古金銀又ハ地金塊ノ高ハ、成貨ニシテ凡千円以上タラハ之ヲ受取ルヘシ
  但旧貨幣ノ類タラハ既ニ公布セル通貨ニ従ヒ、混合ノ地金塊タラハ其純分ノ凡積ヲ以テ仮ニ其高ヲ見積ルヘシ
一古金銀又ハ地金塊ノ受取方ハ、造幣規則第一条ノ日時通リタルベシ、尤モ其日ノ受取多寡ハ造幣寮ニ於テ工事ノ都合ニヨリテ之ヲ取極ムベシ
    第二則
一右古金銀又ハ地金塊ハ、納人立会ニテ其品類及ヒ量目ヲ改メ、出納掛リ長官之ヲ預リ、仮受取書ヲ納人ニ渡シ置、試験溶解所ニ於テ試験分析ヲ為シ、其純分ヲ詳明ニシテ後、預リ証券ヲ渡スヘキ手続ヲナスヘシ
一試験溶解並ニ分析ノ時間ハ、遅クトモ九日ヲ以テ限ルヘシ、尤モ造幣頭承諾ノ分析表ヲ添テ其納人ヘ渡スヘシ
一溶解ノ工事ニ於テ若シ量目溶減スレハ、其添分ハ納人ノ受持タルヘシ
    第三則
一試験溶解並ニ分析ノ上其地金ノ品量詳明ナレハ、出納掛長官ハ其品量ニ応シテ金量ノ中ヨリ定則ノ試験分析料精製料鋳造料及ヒ証券発行ノ費用ヲ引去リ、其残量ヲ以テ新貨ノ高ヲ算出シ、預リ証券渡方ノ令状ヲ認メ、之ヲ納人ニ渡シ、前ニ渡セシ仮受取書ヲ返収スヘシ
一若地金納人右ノ試験分析ヲ充分ナラストシテ預リ証券ヲ受取ルコトヲ望マサレハ、其地金ハ溶解ノ侭之ヲ返却シ試験分析料ノミヲ納メシムヘシ
一混合地金ノ銀分ハ拾六ヲ以テ金壱ニ替ユヘシ
一試験分析料ハ金銀共千ニ付壱、精製料ハ現今分析所ニ於テ定マリタル割合鋳造料ハ百ニ付壱、証券発行ノ費用ハ千ニ付五ナルヘシ
    第四則
一地金納人ハ出納掛長官ヨリ渡セシ令状ヲ以テ証券掛ヘ申出、令状ト引替ニ其高丈ケノ預リ証券ヲ受取ルヘシ
一此証券掛ハ大阪ニ在ル為替座三井組並同所ノ為替方ニ於テ取扱ハシムヘシ
    第五則
一此預リ証券ノ金高名称ハ、金五円・金拾円・金弐拾円・金五拾円ノ四種タルヘシ
    第六則
一此預リ証券ハ所持人ノ都合ニヨリ売買勝手タルニ付、引替期限前ニテモ無差支之ヲ通用スヘシ
  但シ取引ノ節ハ預リ証券ノ番号ト其取引先ノ姓名トヲ互ニ心覚ノ為ニ書留置ク可シ
 - 第3巻 p.286 -ページ画像 
    第七則
一此預リ証券ハ発行ノ日ヨリ二十四ケ月ヲ以テ通用ノ定限トシ、都テ新貨ヲ以テ之ヲ引替ユヘシ、尤モ発行ノ日ヨリ六ケ月以後タラハ持参次第第何時ニテモ左ノ場所ニ於テ之ヲ新貨ニ交換スヘシ
  東京大阪 為替座三井組
  東京大阪 為替方
  但シ其節ノ都合ニヨリ横浜神戸ニ在ル為替座、及ヒ西京為替方ニテモ之ヲ引替ユヘシ
    第八則
一此預リ証券ハ引替ノ期限即チ発行ノ日ヨリ六ケ月以後 後ハ大蔵省ヘ可差出、諸租税上納金等ニモ無差支之ヲ用ユルコトヲ得ヘシ 但シ海関ノ諸税ニハ之ヲ受取ラス
    第九則
一此預リ証券ヲ贋造スル者、贋造セント謀ル者、又ハ贋造ヲ助クル者又ハ贋造ナルヲ知リテ通用セシムル者ハ何等ノ人ヲ論セス国法ニ従フテ之ヲ厳科ニ処ス可シ
右ノ通規則相定候事
                      大蔵省


法規分類大全 第一編 政体門 制度 雑款五 第一五一―一五七頁(DK030091k-0003)
第3巻 p.286-290 ページ画像

法規分類大全 第一編 政体門 制度 雑款五 第一五一―一五七頁
 大蔵省所定 四年十一月日闕
 造幣寮ヨリ発行スル古金銀地金ノ預リ証券ヲ彫刻シ、之ヲ地金納人ニ交付シ、定期ヲ追テ之ヲ新貨幣ニ引換ル儀ニ付、造幣頭並出納掛長官証券掛等ニ交叉スル事務処分ノ手続
    第一章
古金銀又ハ地金塊ノ預リ証券ハ、表面ニ造幣寮真形ノ影相セシヲ其写真図ノ如ク精密ニ銅版ヲ以テ彫刻シ、上ニ預証券ノ文字ヲ置キ、其文字ノ両脇ニ各種トモ証券ノ金額ヲ表出シ金額ノ文字ハ五・拾・弐拾・五拾円等ノ文字ヲ用フヘシ発行ノ年月日引替期限通用定限ヲ記入シ、引換ノ約定ヲ掲ケ、地金納人ノ姓名ヲ書シ、造幣寮ノ官印ヲ鈐シ、造幣頭之ニ名印スヘシ造幣頭ノ名印ハ之ヲ印顆ニ刻シテ紙上ニ押シテ妨ナシトス
彩欄ハ表裏共菊唐草ニ細線ヲ加ヘテ更ニ之ヲ密ニシ、表裏四方ノ角ニハ各種証券ノ金額ヲ掲クヘシ
其裏面ハ金銀貨幣ノ表裏面ヲ簇堆シタル図ヲ載セ、両脇ニ此証券ニ附タル要旨ヲ略記シ、中央ニ小印紙ヲ糊付シ、番号其外ノ割印ヲ捺シ、別ニ証券掛ニテモ其社号割印其外ヲ印シテ之ヲ発行スヘシ
此預証券ノ原紙ハ雁皮ニテ別ニ精製セシ紙品ヲ用フ可シ
 但別ニ雛形ヲ添フ宜シク参覧ス可シ
    第二章
此預リ証券ノ名称ハ、金五円・金十円・金二十円・金五十円ノ四種ニ限ルヘシ
此預リ証券発行ノ金額ハ、概ネ五百万円ヲ以テ制限トスヘシ
 但シ此金額ヲ発行シ畢リテ後、猶古金銀ヲ納ムルヲ望ム者アル時ハ尚増額ヲ為スコトアルヘシ
四種ノ区分ハ左ノ割合ヲ以テ目途トス可シ
 - 第3巻 p.287 -ページ画像 
 金五円ハ   二百万円   証券紙数四十万枚
 金十円ハ   百万円    同 十万枚
金二十円ハ   百万円    同 五万枚
金五十円ハ   百万円    同 二万枚
  合高五百万円  紙数合五十七万枚
 但追々発行ノ都合ニヨリテハ此割合ヲ斟酌加減スルコトヲ得ヘシ
    第三章
此預リ証券ノ原紙漉立方、並銅版其他ノ印信彫刻方及証券摺立方ハ出納掛長官之ニ専任シ、厳粛ニ其工事ヲ監察シ、証券摺立次第其白券ハ月日番号官印其他ノ印信ヲ加ヘサル券ヲ云フ出納寮ノ金庫中ニ蔵メテ之ヲ管守ス可シ
 但諸印信類ハ出来次第造幣寮ノ官印、及寮頭ノ名印ハ造幣頭ノ受持トシ、其外ノ印信類ハ出納掛長官之ヲ管守ス可シ
    第四章
太政官ヨリ一般ノ布告アリシ後、古金銀又ハ地金塊ヲ造幣寮ニ持参シテ其持参ノ人ハ必ス為替座又ハ為替方ノ手ヲ経セシムヘシ、尤モ両組ノ受持ハ出納掛ノ簿冊ニ区分シテ記入スヘシ預リ証券ヲ得ント願フ者アレハ、出納掛長官ハ造幣頭ニ稟議シ、寮中工事ノ都合ヲ考ヘテ之ヲ受取リ、仮受取書ヲ渡シ、遅クトモ十日目ヲ限リ預リ証券ヲ渡スヘシト約スヘシ
出納掛長官ハ右ノ古金銀又ハ地金塊ノ品類量目等ヲ改メ、之ヲ局中ニ備ヘタル簿冊ニ詳記シ、持参人ノ姓名仮受取セシ月日並仮受取書ヲ渡セシ事等ヲ記入シ、造幣頭並外国長官ノ手ヲ経テ其地金ヲ試験分析方ヘ送リ簿冊ヘ記シ受取証書ヲ取リ置クヘシ試験分析ヲ為サシム可シ
    第五章
造幣頭並出納掛長官ハ右地金塊輸納ノ模様ニ従ヒ、証券ノ入用高ヲ見計ヒ、出納寮ノ庫中ニ納メアル白券ヲ何程ニテモ両人ノ受取書ヲ以テ引出シ其時々白券請払ノ簿冊ニ登記スヘシ番号ヲ書入レ、小印紙ヲ糊附シ、各種ノ割印ヲ押シ割印ハ元帳ヲ製シテ毎紙之ヲ押切ル之ヲ造幣頭ニ送ル、造幣頭之ニ官印ヲ鈐シ、名印ヲ捺シテ又出納掛ヘ受取リ、右輸納ノ地金試験分析ノ上、成貨ノ高詳明タラハ預リ証券ヲ証券掛ヘ渡シテ各地金納人ヘ交付セシムヘキ手続ヲ為ス可シ
    第六章
右ノ地金試験分析ノ上、其純分ヲ鮮明ニシ、試験分析方ヨリ分析表ト共ニ返達スレハ、出納掛長官ハ其金量ヲ算当シ、規則ニ従テ諸費用ヲ引去リ、其成貨何程ナルヲ正計シ勘定書ヲ作リ簿冊ヘモ之ヲ詳記スヘシ分析表ト共ニ之ヲ地金納人ニ示シ、当人承諾セハ其勘定書ニ調印セシメ調印ノ時間ハ一日ヲコユ可ラス其高ノ預リ証券ヲ渡スヘキ令状三枚ヲ造リ一枚ハ証券掛ニ渡シ、一枚ハ出納掛ニ留置ク一枚ハ当人ニ渡シ、前ニ渡セシ仮受取書ヲ返収スヘシ
 但証券渡方ハ令状渡ノ三日後タルヘシ、尤モ証券中ヘ記入スル時日ハ令状ヲ渡セシ日ヲ用フ可シ
    第七章
地金納人ハ右ノ令状ヲ証券掛ニ持参シ、三日ノ後預リ証券ノ受取方ヲ乞フヘキニ付、造幣頭並出納掛長官ハ官印其外ノ手続ヲ為シタル証券ヲ地金納人ニ渡セシ令状ノ高ニ見合セ、証券掛ヘ渡シ出納掛ハ可成丈此手続ヲナシテ令状ヲ渡セシ日ニ必ス其高丈ケノ証券ヲ証券掛ヘ渡シ書入諸般ノ事ヲ三日外ニ至ラサル様ニ注意スヘシ之ヲ簿冊ニ記シ且受取書ヲ
 - 第3巻 p.288 -ページ画像 
取リ置ク可シ
    第八章
証券掛ハ其受取リシ証券ニ渡方番号及割印発行其外ノ月日第六章但書ヲ見合スヘシ地金納人ノ姓名、各自ノ社号等ヲ捺印、又ハ記入シテ令状ヲ渡セシ日ヨリ四日目ニ各種ノ証券ヲ其令状ト引換ニ地金納人ニ渡シ、諸般ノ事ヲ各簿冊ニ記シ置ク可シ
 但渡方番号及ヒ割印ハ別段ノ元帳ヲ製シテ之ヲ用フヘシ
預リ証券ノ金高名称ハ造幣頭並出納掛長官ノ考案ニ従テ各種ヲ割合セテ証券掛ヘ渡シ、証券掛ハ其割合ニ従テ令状ト引替ニ之ヲ地金納人ニ渡スヘシ
    第九章
証券ノ金額並番号等ニ用フル数字ハ、壱弐三四五六七八九拾百千万ノ字ヲ以テシ決シテ略字ヲ用フ可ラス
    第十章
造幣寮出納掛長官並ニ証券掛ノ間ニハ互ニ計帳ヲ開キ、一週毎ニ白券並証券ノ請払方ヲ正計シ、出納掛ノ証券渡シ帳ト証券掛ノ請払帳トハ別ニ其計算ヲ照合シ、造幣頭並出納掛長官ノ検査印ヲ捺ス可シ
    第十一章
此証券発行ノ年月日、引替期限、通用制限、真貨交換ノ手続、及古金銀又ハ地金塊ヲ出納掛ヘ受取リ、之ヲ試験分析シ、之ヲ精製シ、及ヒ之ヲ新貨ニ鋳造スル等ノ手続ハ、今般確定スル諸規則及従前造幣寮ニ設立スル諸規則ニ従フ可シ
    第十二章
月々証券発行高引替期限ノ後ハ引替高ヲモ添フヘシハ其月末毎ニ之ヲ合計シ、明細ナル計算表並此証券通用ノ景況等ヲ詳記シ、功課状ノ例ニ準シテ大蔵卿輔ヘ進呈スヘシ
古金銀ノ試験分析料、精製料鋳造料等ハ造幣寮ノ規則ニ従ヒ、同寮ニ納メ、証券発行ノ費用ハ出納掛ニ受取リ、証券発行ニ属スル諸費用ト差引、明細ナル計表ヲ毎月末ニ大蔵卿輔ニ進呈スヘシ
    第十三章
出納掛長官ハ順次輸納セシ古金銀ノ試験分析ヲ経タル地金塊ヲ以テ造幣寮ノ都合ニ従ヒ之ヲ精製シ、之ヲ新貨ニ鋳造シテ期限後ニ至リ証券ト交換スヘキ新貨ヲ準備スルノ用意ヲナスヘシ
発行ヨリ六箇月以後ニ至リ、追々証券所持ノ者真貨引換ヲ望ムノ模様ヲ見計ヒ、右準備ノ新貨ヲ出納掛長官ヨリ証券掛ヘ渡シテ其引替ヲ為サシムヘシ
 但其渡方ハ其時ノ景況ニ従ヒ、順次ニ小高ヲ渡ス様ニ取扱フヘシ
出納掛長官ハ縦令何様ノ事故アルトモ右準備タルヘキ新貨ヲ以テ他ノ融通ニ供ス可ラス但大蔵卿輔ノ特命アレハ例外タルヘシ
又証券掛ニテモ右引換ノ為メ受取リシ新貨ヲ決シテ自己ノ融通ニ為ス可ラス
    第十四章
証券掛ニテ引替タル証券ハ、時々準備渡方ト其計算ヲ照合シ但毎週此計算ヲ為スヘシ造幣頭並出納掛長官立会封印ノ上勿論其真贋ヲ検閲調査シテ後引替ヲ為スヘシ之ヲ庫中ニ
 - 第3巻 p.289 -ページ画像 
納メ置、其時々之ヲ大蔵卿輔ニ報告シ、其指揮ヲ乞テ之ヲ焼捨ツヘシ
    第十五章
造幣頭、出納掛長官、出納掛、証券掛等ハ此事務ヲ取扱フニ付、能ク其担任ノ事ヲ区分シテ、等シク整理ニ帰スル様注意スヘシ
 但証券掛ハ別ニ其事務ヲ奉スルニ付、設立スル約定等ノ趣意ヲ恪守シテ決シテ悖戻ノ所為アル可ラス
右之通相定候事
  明治四辛未年十一月 日         渋沢大蔵大丞
                      馬渡造幣権頭
                      長谷川出納助
 大蔵省ヨリ大阪為替座三井組並大阪為替方ヘ達 四年十一月九日
今般古金銀預リ証券御発行ニ付右証券掛申付候事
    ○
 古金銀預リ証券発行ニ付右証券掛ヲ大阪ニ在ル為替座三井組並ニ為替方等ヘ申付、其奉事ノ際能ク諸般ノ成規ヲ遵守恪奉シ及其担任ノ事務ヲ整理シテ敢テ誤過失アルヘカラサルコトヲ保証スル為メ、玆ニ左ノ約定書ヲ以テ其事ヲ協議セリ
    第一条
此証券掛ハ為替座為替方ヲ概言ス以下倣之此預証券発行ニ付テ設立セル諸規則及手続書等ニ照準シテ其事務ヲ取扱フヘシ
    第二条
証券掛ヲ奉事スル給料トシテ、都テ古金銀ヲ納メ他人又ハ各自ヨリ納入スルヲ論セス此証券ヲ渡スヘキ金高ノ千ニ付二ヲ各掛ノ受持ニ従テ之ヲ計算シ、毎六月十二月両度ニ出納掛長官ヨリ真貨ヲ以テ支給ス可シ
    第三条
此証券掛ハ預リ証券ヲ出納掛長官ヨリ受取リシ後ハ、手続書ニ従テ諸割印書込ヲナシ、日限通リ之ヲ地金納人ニ渡スコトヲ取扱ヒ、其簿記計算ヲ明瞭ニスルハ勿論、其証券預リ中ハ各自ノ引受ケタルヘシ
    第四条
発行ヨリ六箇月後真貨引換ノ期ニ至レハ、予メ其高ヲ勘量シテ出納掛長官ヨリ真貨ヲ受取リ、之ヲ証券所持人ノ望ニ従テ引替ヲ為スニ付、其準備ノ真貨及引替ヘシ、証券トモ預リ中モ亦証券掛ノ受持タルヘシ
 但引替ノ為メ渡スヘキ真貨ノ高、及其手続ハ其時ノ模様ニ従テ之ヲ定ムヘシ
    第五条
出納掛長官ハ此証券掛ノ諸簿冊ノ記載方規則通リ整理スルヤ否ヤヲ検閲シ、且其処務ノ景状ヲ監視スル為メ其都合ニ従ヒ自身又ハ其代人ヲ以テ何時ナリトモ各証券掛ノ局中ニ抵リ諸般ノコトヲ検査推問ス可シ
 但諸簿冊ノ記載方法ハ時々出納掛長官ノ指揮ニ従テ之ヲ取扱ヒ、其要処ニハ長官ノ検印ヲ乞ヒ置ク可シ
    第六条
証券掛ノ受持中真貨、又ハ証券ヲ失ヒ、或ハ之ヲ盗取ラル、等ノコトアルトモ、証券掛ノ損失トシテ速ニ之ヲ償フヘシ
 但非常ノ兵乱等ハ例外タルヘシ
 - 第3巻 p.290 -ページ画像 
    第七条
此証券掛ハ時々預リ証券ノ流通スル景況ヲ視察シ、之ヲ大蔵卿輔及造幣頭出納掛長官ヘ申立ヘシ、万一此証券ニ贋模等ノ疑シキコトアラハ密ニ之ヲ捜索推窮シ、速ニ其由ヲ報告シ、且其予防ニ注意ス可シ
    第八条
若シ此証券掛ニテ此約定書ニ悖リ、自己ノ利ヲ謀ルノ所為アレハ其金高相当ノ罰金ヲ申付ヘシ
 但尋常ノ過失タリトモ、其次第ニヨリテ償金ヲ以テ之ヲ贖ハシムヘシ
右之通約定取結候事
  明治四年辛未十一月 日         渋沢大蔵大丞
                      馬渡造幣権頭
                      長谷川出納助


大蔵省沿革志 紙幣寮第一・第一五丁(明治前期 財政経済史料集成 第三巻・第六一頁〔昭和九年五月〕)(DK030091k-0004)
第3巻 p.290 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

青淵先生伝初稿 第七章二・第一五―一七頁〔大正八―一二年〕(DK030091k-0005)
第3巻 p.290 ページ画像

青淵先生伝初稿 第七章二・第一五―一七頁〔大正八―一二年〕
○上略 前回○五月 出張の際の行動は詳ならされども、再度の下阪○九月 は滞在数箇月に渉り、其間或は造幣に関する諸機械の買入、寮内諸局へ外国人の雇入、熔解所の建築、古金銀預り証券発行手続の調査、さては新貨幣の為替座を三井組に命ずる事、地金及び製貨を横浜に廻漕するにつき、米国太平洋汽船会社と交渉を重ねし事など、重大なる諸件は概ね先生の手に処弁せられたり。此に古金銀預り証券といへるは、大蔵少輔たりし伊藤博文の建議に基くものにして、蓋し新貨幣の通用と共に、旧金銀を交換して之を新貨に改鋳し、以て全国の通貨を画一ならしめんとするなり、かくて政府は旧金銀貨を東京及び大阪に輻湊せしむるの策を建て、古金銀預り証券の方法を定めたるが、其手続を規定せる古金銀納入証券渡方規則は、先生が在阪中調査研究せる所にして、証券の製造も亦先生の努力によりて其緒に就けり、然れども其官裁を経て世上に公布せられしは、十二月十日の事なりき。