デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2023.3.3

1編 在郷及ビ仕官時代

2部 亡命及ビ仕官時代

4章 民部大蔵両省仕官時代
■綱文

第3巻 p.505-508(DK030125k) ページ画像

明治五年壬申七月二十五日(1872年)

租税寮中ニ地租改正局ヲ設ク。大蔵大輔井上馨及ビ栄一等相謀リテ立案スル所ナリ。改正局ハ全国租庸ニ属スル一切ノ旧規ヲ更新シ、新法ヲ創肇スル処ニシテ、改正スベキ諸件ハ寮頭及ビ改正局ヲシテ案ヲ具シ、卿輔ノ決判ヲ請ハシメタルヲ以テ、栄一井上大輔ト共ニ決判ノ任ニ当レリ。而シテ栄一等六年五月退官ニ至ルマデ決判セルモノ地券等ニ関スル事項甚ダ多シ。


■資料

青淵先生伝初稿 第七章三・第五八―六〇頁〔大正八―一二年〕(DK030125k-0001)
第3巻 p.505 ページ画像

青淵先生伝初稿  第七章三・第五八―六〇頁〔大正八―一二年〕
此時に当り先生等思へらく、租税の改正今や其緒に就き、事務日を追ひて煩多を加ふ、宜しく特種の調査機関を設け、租税寮の権限をも拡張すべしと、遂に正院の許可を得て、明治五年七月二十五日租税寮中に地租改正局を設け、「全国租庸に属する一切の旧規を更革し、新法を創肇する所」と規定せり。八月五日租税寮の事務章程を改正して、「凡そ各地方官より租税庸及び土地に関係の申牒は、直に租税頭へ可差出事。凡そ租税事務に於て、既定の成規慣行の例格判然たるは、頭より直に府県へ指令すべき事。但し頭不在の時は、代理の権頭より指令すべし。凡そ官員の進退土地の規則を設け、税法を更正する等、新に方法を設くる事件、其他成規無之分は、総べて其法案を審具して卿輔の決判を乞ひて之を処置す。右の外所掌の事務は総べて旧に仍るべし」といへり。爾来小事は寮頭判決指令し、改正すべき諸件は寮頭及び改正局をして案を具し、卿輔の決判を請はしめたれば、先生は井上と共に決判の任に当り、以て改革の実を挙げんとす。


大蔵省沿革略志 第七三―七四頁〔明治二二年六月〕(DK030125k-0002)
第3巻 p.505 ページ画像

大蔵省沿革略志  第七三―七四頁〔明治二二年六月〕
○二十五日 ○七月 地租改正局ヲ置キ職制及ヒ事務章程ヲ定ム
  ○地租改正局ハ八年三月二十四日内務大蔵両省中ニ地租改正事務局ヲ置クニ当リテ廃セラル。而シテ地租改正事務局ハ十四年六月三十日限リ廃セラレタリ。(「大蔵省沿革略志」、「法規分類大全」第一編官職門十官制大蔵省一、二ニヨル。)


世外井上公伝 第二巻・第一五九―一六〇頁 〔昭和八年一二月〕(DK030125k-0003)
第3巻 p.505-506 ページ画像

世外井上公伝  第二巻・第一五九―一六〇頁〔昭和八年一二月〕
 - 第3巻 p.506 -ページ画像 
  第一章 財政制度の改革
    第八節 税法の改正整理
○上略
 これより先大蔵省の事務は日に増し多端と為つたので、細務までを公が一々決裁してゐては頗る煩雑に陥り、簿書堆積して、これがため緊要の事件までをも凝滞せしめる恐があり、殊に租税寮関係のものは最も繁雑であつて、成規例格に準拠して践行するものであるから、五年七月十三日に公は租税寮事務章程の改正を正院に伺出た。即ち租税に関するものは、府県の申牒は直接同寮へ達せしめ、租税頭が決裁して直ちに指令を出すことにして、若干の煩雑を省きたいといふ趣旨であつた。 この月地租改正局を置く 正院は之を許したので、八月五日に章程が布達された。当時の租税頭は陸奥宗光、権頭は松方正義であつた。陸奥は嚮に田租改正の建議を為し、土地現在の実価に従つてその幾分を課して地租を定めようと論じた。その論旨は神田孝平の所論と大同小異であつた。後年公の談話の中にも、「其時分から、陸奥が斯う云ふ論を出して居つた。どうしても米やなどで収入を取つて、此方は金を出すと云ふことではいかぬから、地租改正をして金納にしてしまはうと云ふ。それを私がもう少し整理が付かぬ以上は、いかぬと云つて拒いで居つた。それから遂に七年だつたらう、陸奥の論が行はれて、地租改正になつた、云々。」 世外侯事歴維新財政談 とあつて、公が急進派を抑留し、その間次第に整理を遂行し、十分な準備が成つて後、始めて地租改正の断行に至る順序を立てた、縦令この大改正の布告が公の去つた後に至つたとはいへ、その準備に費した数年間、公を始め有司の苦辛は一通りではなかつたのである。 ○下略


地租関係書類彙纂(明治前期 財政経済史料集成 第七巻・第三一二―三一三頁〔昭和八年三月〕)(DK030125k-0004)
第3巻 p.506-508 ページ画像

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