デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

1編 在郷及ビ仕官時代

2部 亡命及ビ仕官時代

4章 民部大蔵両省仕官時代
■綱文

第3巻 p.662-670(DK030147k) ページ画像

明治六年癸酉三月三日(1873年)

藩債処分法公布セラル。尋イデ本月二十五日新旧公債証書発行条例発布セラル。共ニ栄一ノ関与スル所ナリ。


■資料

雨夜譚 (渋沢栄一述)巻之五・第一二―一三丁〔明治二〇年〕(DK030147k-0001)
第3巻 p.662 ページ画像

雨夜譚 (渋沢栄一述)巻之五・第一二―一三丁〔明治二〇年〕
○上略 又公債証書発行の事も、此廃藩の処分に際し、諸藩に於て地方から借入れてある負債を、年度によつて区分を付け、其程遠き分は全くこれを棄捐させ、維新前後の区分によつて、新旧二種に分けて公債証書を附与するものとして、玆で始めて公債証書の発行を見ることが出来ました ○下略


法令全書 明治六年・第七〇―七二頁 太政官 第八十二号 三月三日(布告)(DK030147k-0002)
第3巻 p.662-663 ページ画像

法令全書 明治六年・第七〇―七二頁
太政官 第八十二号 三月三日 (布告)
旧藩々負債償還ノ御処分別紙ノ通被相定候条此旨可相心得事
一天保十四癸卯年以前旧藩ニ於テ借入候金穀ノ類ハ公債ニ不相立候事
一弘化元甲辰年ヨリ慶応三丁卯年迄ノ間、藩用ニ借入候金穀ノ類ハ公債ニ相立、昨壬申年ヨリ無利息五十ケ年賦償還ノ事
一明治元戊辰年ヨリ同五壬申年迄ノ間、右同断ノ類ハ公債ニ相立、昨壬申年ヨリ二十五ケ年賦、元金三年据置、年四朱ノ利息ヲ附償還ノ事
  但利息ノ儀ハ戊辰年以来滞候月ヨリ辛未年中迄四朱利元金へ組込相渡無利息約定ノ分ニテモ辛未七月ヨリ以後ハ四朱利相渡候事
一公債金二十五円以上ハ証券ヲ以テ相渡、二十五円未満ノ分ハ明治六年ヨリ年限ニ応シ一割利引ヲ以現金一時償還ノ事
一切替証文ハ凡テ貸出初年ヲ以テ処分ノ事
  但初年不分明ノ類明治以後ハ慶応以前ノ借トナシ、慶応以前ハ天保度ノ借トナシ処分ノ事
一土地邸宅並ニ船ノ類官用相成候外品物質入借ノ類ハ公債ニ不相立候事
一滞利証文並ニ結込利金ハ公債ニ不相立候事
一献金、身元金、鋪金、冥加金、永納金ト唱ヘ差出置候類ハ公債ニ相不立候事
一旧藩中調達金ノ縁故ヲ以テ差遣シ置候扶持方ノ類、渡方滞候時ヨリ廃止ノ事
一衣食住薪炭油其他一切ノ雑品代金払滞ノ類、更ニ借用証文ニ改メ有之分ハ公債ニ相立候事
 - 第3巻 p.663 -ページ画像 
一講金ト唱ヘ藩用ニ掛ケ込有之分証拠有之ニ於テハ公債ニ相立候事
一元入利払ノ区別判然致シ難キモノハ、元利金高ヘ割賦計算ノ事
一旧幕府及旧藩ヨリ社寺等ヘ寄附金及右ノ名目金ヲ借入候類ハ公債ニ不相立候事
一旧幕府日光上野ヲ除キ宮華族名目金ノ藩債ハ、戊辰三月禁令以前ノ分ノミ公債ニ相立候事
一典売証文ハ辛未十月以前ノ分ノミ公債ニ相立候事
一貸主亡後譲状無之証文ノ類ハ其家相続人所持ニ限リ公債ニ相立候事
一田安一橋ヲ始メ、元峯岡、元西端、元浅尾、元曾我野、元今尾、元松岡、元犬山、元新宮、元田辺、元岩国、元福本、元堀江、元矢島元田原本、元志築、元成羽、元村岡諸藩藩屏ニ列シ候月ヨリ廃県迄《(藩)》ノ間藩用ニ充候借金ハ公債ニ相立候事
一元静岡、元仙台、元盛岡、元大泉、元小田原、元桑名、元棚倉、元二本松、元高梁、元斗南、元宍戸ノ藩藩ハ家名再興以来廃県迄ノ間藩用ニ充候借金ハ公債ニ相立候事
  但本文元藩士ヨリ藩藩ヘ調達金ハ主家再興以来ノ分ノミ公債ニ相立候事
一明治二己巳年六月藩藩版籍奉還後知事ノ借入金ハ公債ニ不相立候事
一旧藩士ノ借財藩庁ヘ引受ノ証拠有之分ハ公債ニ相立候事
一米穀ハ各地方壬申三月平均相場ヲ以金直シノ事
一銀価ハ東京ハ金壱円ニ付六十目京都ハ一ケ年平均相場大阪ハ庚午五月銀目廃止ノ節布達ノ平均相場ノ事
一藩造ノ紙幣ハ新貨価格比較表ニ従ヒ計算ノ事
右之通相定証券下ケ渡候条各其管轄庁ニ於テ本証文ト引替受取可申候、尤日限ノ儀ハ追テ相達候事


法令全書 明治六年・第一四六―一五三頁 太政官 第百十五号 三月二十五日(布)(DK030147k-0003)
第3巻 p.663-667 ページ画像

法令全書 明治六年・第一四六―一五三頁
太政官 第百十五号 三月二十五日 (布)
新旧公債証書発行条例別冊ノ通制定候条此旨相達候事
 (別冊)
 新旧公債証書発行条例
明治四年辛未七月廃藩ノ前、従来旧藩々ニ於テ内国人民ヨリノ逋債ヲ改テ政府ノ公債トシ、之ヲ大蔵省ニ引受ケ、其債主ヘハ各此公債証書ヲ交付シ、定期ヲ逐テ之ヲ償却スルニ付、大日本政府ニ於テ制定シタル条々左ノ如シ
    第一条 新旧公債ノ区別及ヒ証書ノ種類記号ノ品別等ヲ明ニス
第一節 弘化元甲辰年ヨリ慶応三丁卯年迄旧諸藩ニ於テ借用シタルモノヲ旧公債ト称シ、明治元戊辰年太政更始以後明治四辛未年七月廃藩迄旧諸藩ニ於テ借用シタルモノヲ新公債ト称スヘシ
第二節 新旧公債トモ各其高ヲ五分シテ、第一、第二、第三、第四、第五トシ、証書面ノ金高ヲ五百円、三百円、一百円、五十円、二十五円ノ五種ニ区別スヘシ
第三節 新公債証書ハ向後抽籤ノ方法ヲ以テ其元金ヲ償却スヘキニ
 - 第3巻 p.664 -ページ画像 
付、便宜ノ為メ四十七部分ニ別チ(い、ろ、は)四十七字ノ記号ヲ証書面ニ命名スヘシ
    第二条 新旧公債償却ノ年度及ヒ利息ノ割合ヲ明ニス
第一節 旧公債ハ無利息ニシテ元金ハ明治五年壬申ヨリ明治五十四年迄五十ケ年賦トシ、毎年六月一日ヨリ十五日迄十二月一日ヨリ十五日迄両度ツヽ之ヲ払戻ス可シ、尤モ其払場所ハ証書面ニ掲載スル如ク一ケ月前ニ布告書又ハ新聞紙ニテ普ク所持人ニ通知セシム可シ
第二節 新公債ノ元金ハ明治八年ヨリ明治二十九年マテ二十二年ノ間ヲ限リ、大蔵省ノ都合ニヨリ毎年、或ハ隔年ニ抽籤ノ方法ヲ以テ其年ニ払戻スヘキ証書ノ記号ヲ公定シ、其割合ニ従テ之ヲ払戻ス可シ
第三節 其利息ハ年々元高ノ四分トシ 元高百分ノ四分 明治五年壬申ヨリ明治二十九年マテ毎年六月一日ヨリ十五日迄、十二月一日ヨリ十五日迄両度ニ証券ノ下ニ附添シタル小札ヲ以テ之ヲ払フ可シ、尤モ其払場所ハ証書面ニ掲載スル如ク一ケ月前ニ布告書又ハ新聞紙ニテ普ク所持人ニ通知セシム可シ
    第三条 公債証書ノ渡方及ヒ其簿記ノ手続ヲ明ニス
第一節 新旧公債証書共各債主ヘ交付スルニハ、大蔵省ニ於テ其金高及ヒ新旧ノ区分共調査シテ後之ヲ簿冊ニ登記シ、証書五種ノ区別 新公債ナラハ四十七種ノ記号 中ニ於テ其金高ニ応シ相当ノ割合ヲ定メ、其証書ハ簿冊ニ割印シテ各債主ノ管庁ニ送達ス可シ
  但此公債証書ヲ其管庁ニ送達スルニハ、勿論其債主ノ名面金高証書ノ種類等詳明ニ目録書ヲ添テ相渡スヘシ
第二節 各地方官庁ニ於テハ別ニ公債掛ノ局ヲ設ケ、各種ノ簿冊ヲ備ヘ大蔵省ヨリ渡サレタル証書ヲ点検シ、其債主ノ名面、及証書ノ金高種類ヲ分別シテ之ヲ簿冊ニ登記シ、且其証書裏面ヘ悉ク債主ノ名面ヲ記入シ、官庁ノ検印ヲ加ヘテ其渡方ヲ取計フヘシ
    第四条 旧公債証書元金年賦並ニ新公債証書ノ利息渡方手続等ヲ明ニス
第一節 毎年両度旧公債元金年賦並ニ新公債利息下渡シ方ハ、各地方官ニ於テ各管下ノ公債証書所持人ノ数ヲ取調、其季ノ渡シ方ニナルヘキ元金年賦ト利息トノ内訳合計表ヲ毎年五月廿日、十一月廿日迄ニ大蔵省ニ差出スヘシ
第二節 大蔵省ヨリ右合計表ニ従テ其下渡スヘキ金高ヲ払場所ヘ廻送ノ手続ヲナシ、臨時官員出張スルカ、又ハ其地方官ニ委任シ、都テ証書ノ下ニ附添スル其季ノ払方ニ属スル小札ヲ切取リ、引換ニ其払方ヲ為スヘシ
第三節 右切取リタル小札ハ其払方ヲ為シタル明細調書ト共ニ直ニ之ヲ大蔵省ニ送納ス可シ
    第五条 新公債証書払方諸般ノ手続ヲ明ニス
第一節 新公債証書ノ払方ヲ抽籤ニテ賦当スルニハ、毎年又ハ隔年、大蔵省ノ都合ニ従ヒ、東京・大阪・西京其他要用ナル場所ヘ大蔵省官員出張シテ其地方官ノ公債掛ト立会ノ上、管下ノ証書所持人十人以上ヲ集メ、其年払戻スヘキ高ニ従ヒ右証書所持人等ノ眼前ニ於テ記号籤ヲ抽キ、其籤ニ当リシ記号ヲ其年ノ払戻スヘキモノト定ム可
 - 第3巻 p.665 -ページ画像 
シ 第一法トス 若シ大蔵省ニテ払戻スヘシト見込タル金高右一記号ノ金高ヨリ少キ時ハ、其籤ニ当リシ記号ノ金高ヲ分割シ、再ヒ籤ヲ抽テ其払フヘキ部分ヲ定ム可シ 第二法トス 若又其高一記号ヨリ多キコト一倍、又ハ幾倍ト幾部分ナルトキハ第一法ヲ以テ一倍又ハ幾倍ノ記号ヲ定メ、第二法ヲ以テ幾部分ノ払方ヲ定ム可シ
第二節 抽籤ノ処置相済ミ、賦当ノ記号公定スレハ、立会タル証書所持人等ヨリ其抽籤ノ方法公正ナル事ヲ保証スルタメ書面ヲ出サシメ、然ル後何記号ノ証書ハ何月何日何処ニ於テ払戻スヘシト云フコトヲ布告書又ハ新聞紙ニテ普ク世上ニ公告スヘシ
第三節 右払渡場所ヘハ大蔵省ヨリ払戻スヘキ金高ノ回送ヲ為シ、公債払方ノ官員出張シテ 時宜ニヨリテ地方官ニ委任スルコトアルヘシ 其籤ニ当リタル証書引換ニ其払方ヲナシ、其証書ハ払済ノ証ヲ印シ明細書 第一雛形 ト共ニ直ニ大蔵省ニ送納ス可シ
第四節 右払方ノ取扱ハ 年賦又ハ利息払方トモ 大蔵省ノ都合ニヨリテ、追テ各地ニ創立スヘキ国立銀行ニ命シ、名代人トシテ其処置ヲ為サシムルコト有ヘシ
    第六条 新旧公債証書授受売買等ノ手続ヲ明ニス
第一節 新旧公債証書共全ク所持人ノ所有物タレハ相続人ヘノ遺物ハ勿論、何人ニ不拘、他人ヘ譲渡シ、質入売買借金ノ抵当等都テ勝手タルヘシ、尤其譲渡売買等ハ次条ノ手続ニ従フ可シ
第二節 証書ヲ授受及売買スルニハ、双方ノ示談整ヒシ上ニテ甲ノ方 譲主売主ヲ云フ ハ証書裏面ヘ形ノ通 第二雛形 記名調印シテ別ニ其証書ノ種類記号金高月日及ヒ乙 受ル者買人ヲ云フ ノ姓名等ヲ認メ其証書ト共ニ甲ヨリ之ヲ其管庁ニ差出ス可シ
第三節 官庁ノ公債掛ハ右証書ト届書トヲ受取リ、其次第ヲ承リ正シ証書裏面ヘ形ノ如ク 第二雛形 年号月日ヲ記シ、撿印シテ之ヲ其差出セシ者ヘ下渡シ其趣ヲ簿冊ニ詳記ス可シ
第四節 右ノ手続ニテ撿印済ノ証書ヲ甲ヨリ乙ニ受取レハ、乙ハ其証書ノ金高・種類・記号及ヒ甲ノ名面、取引ノ年号月日等ヲ詳記シテ之ヲ其管庁ヘ届出可シ
  但甲乙共同管下ノ者タレハ乙ハ別ニ届書ヲ出スニ及ハス
第五節 乙ノ管庁ニテハ右ノ届出アレハ前以テ備ヘ置タル簿冊ヘ其証書ノ種類・記号・金高及ヒ其名面取引ノ年号月日ヲ登記シ置ク可シ
第六節 右ノ手続ヲ以テ引取タル証書ヲ更ニ他人ニ譲リ渡ス時モ都テ前条ノ手続ニ従テ之ヲ処置ス可シ
第七節 右証書ノ譲渡売買等ノ事アレハ、双方ノ管庁ヨリ其名面・証書ノ種類・記号・金高及取引ノ月日等ヲ詳記シ、毎年少クトモ三度宛大蔵省ヘ届出可シ
第八節 都テ譲渡シ又ハ売買等此手続ヲ厭ヒ、密ニ相対ノミノ取引ヲ為シタル証書ハ他日其間ニ紛議ヲ生スル共之ヲ取上ケス、且其証書ハ廃物トナス可シ
第九節 毎年五月十五日ヨリ六月十五日、十一月十五日ヨリ十二月十五日迄ハ元金償却並ニ利息渡方ニ於テ各地方証書所持人ノ混淆セサルタメ、右証書ノ譲渡売買ハ之ヲ見合ス可シ
 - 第3巻 p.666 -ページ画像 
    第七条 新旧公債証書引当物等ニナシタル処置ノ手続ヲ明ニス
第一節 此証書借金ノ引当又ハ質物ノ証拠金トシ所持人ヨリ他ニ預ケ置クコト有リトモ其払戻スヘキ元金利息ハ其所持人ヘ下渡スヘシ、尤モ本人調印ノ委任状ヲ持参セル時ニハ何人ヘナリ共相渡ス可シ
第二節 若シ又質入流込トナリタル類ハ、第六条譲渡売買ノ手続ヲナシテ其所持人ノ名面ヲ改ム可シ
    第八条 新旧公債証書共裏書並ニ引換等ノ手続ヲ明ニス
第一節 公債証書譲渡売買頻繁ニシテ裏面場所ナキニ至ル時ハ、其所持人ハ書面ヲ以テ其管庁ニ申立新証書ニ書替ヲ願ヒ其証書ヲ差出スヘシ
第二節 管庁ノ公債掛ハ其証書ノ仮受取ヲ所持人ニ渡シ置キ、証書ハ直ニ大蔵省ヘ差出シ、新証書ニ引換ヘ其次第年号月日等ヲ簿冊ニ記入シ、仮受取ト引換ニ之ヲ其所持人ニ渡ス可シ
    第九条 新旧公債証書共紛失等ノ処置ヲ明ニス
第一節 此証書ノ所持人若シ証書ヲ取失フカ又ハ盗難ニ逢テ証書ヲ盗取ラレシ時ハ直ニ何号何番何高ノ証書幾許ヲ紛失、又ハ盗取ラレタル由ヲ其管庁ニ届出管庁ヨリ之ヲ大蔵省ヘ届出可シ
  但管庁ニテハ大蔵省ヘ届出ル時其管内ヘ其趣ヲ布告ス可シ
第二節 大蔵省ニテ右ノ届書ヲ受取レハ速ニ其趣並ニ証書ノ種類金高等迄各地方庁ヘ公告シ、何月何日後ハ右種類番号ノ証書ハ持参シテ譲渡売買等ノ検印ヲ乞ハヽ之ヲ取押ヘ、推糺ノ後其次第ヲ届出ツヘキ旨ヲ通達シ、且新聞紙其他ノ手続 新聞紙ナキ地ハ村町高札場ニ掲示セシム ヲ以テ右証書ノ取引ヲ為ス可カラサル旨ヲ紛失又ハ盗取ラレシ月ノ翌月ヨリ六ケ月間公布スヘシ
第三節 右公布ノ間ハ其証書ノ元金又ハ利息共之ヲ払ヒ渡サヽル可シ
第四節 六ケ月ヲ過テ其証書発見セサレハ大蔵省ニテ其証書ニ換ヘ可キ新証書ヲ作リ、其管庁ヲ通シテ之ヲ所持人ヘ交付ス可シ、尤モ公告時間中ニ積リタル元利ノ高ハ其新証書ヲ渡シタル次ノ払期月ニ一同之ヲ払渡スヘシ
  但此新証書ヲ渡ス時元証書ノ記号其外紛失又ハ盗難ニ付此条々ノ手続ヲナセシ後更ニ交付スルノ趣旨ヲ大蔵省及ヒ其管庁ノ簿冊ニ記入スヘシ
    第十条 新旧公債証書共焼失等ノ処置手続ヲ明ニス
第一節 水火災ニテ証書流失焼失ノ事アレハ所持人ハ前条ノ手続ニ従テ書面ニテ其由ヲ管庁ニ申立新証書下渡方ヲ乞フ可シ
第二節 管庁ノ公債掛ハ其流失焼失ノ次第ヲ推糺シ、判然タレハ直ニ其次第及推糺ノ手続ヲ大蔵省ヘ申立ヘシ
  但其流焼若シ判然ナラサレハ第九条紛失ノ手続ニ従テ之ヲ処置ス可シ
第三節 大蔵省ニテハ其申立ニ従テ代リ証書ヲ作リ、之ヲ其管庁ニ送達シテ所持人ニ交付ス可シ
  但証書流失ニ付新証書交付ノ趣旨ハ大蔵省地方官ノ簿冊ニ詳記ス可シ
 - 第3巻 p.667 -ページ画像 
第四節 若シ又水火災ニテ其証書ノ部分焼切レ又ハ消滅シテ通用シ難キ程ナレハ所持人ハ残余ノ証書片ヲ添ヘ書面ニテ其由ヲ其管庁ニ申立証書ノ書替ヲ乞フ可シ
第五節 管庁ノ公債掛ハ其証書ノ紙片ヲ添ヘ書面ニテ大蔵省ヘ申立書替証書ヲ得テ之ヲ所持人ニ下渡ス可シ
  但其書替ノ手続ハ大蔵省地方官ノ簿冊ニ詳記ス可シ
    第十一条 新旧公債証書贋造等ノ処分ヲ明ニス
第一節 何人ニ不拘公債証書ヲ私ニ剥去リ、又ハ切裂キ、又ハ塗抹シ孔ヲ穿チ糊附ニスル等ノ事ヲ為ス可ラス若シ犯ス者アレハ裁判ノ上其金高十倍以上ノ罰金ヲ命ス可シ
第二節 何人ヲ論セス此公債証書ヲ贋造シ、又ハ人ヲシテ之ヲ摸擬セシメ、又ハ人ノ贋造スルヲ助ケ、又ハ贋造ト知リテ通用セシメ、又証書ノ図画文字ヲ変換シ、又ハ人ヲシテ変換セシメ、又ハ変換セシモノト知リテ之ヲ通用シ、其他似寄ノ板版紙品雛形ノ図面文字等ヲ所持スル者ハ都テ裁判ノ上法ニ処ス可シ
    第十二条
第一節 政府ノ都合ニヨリテ要用ノ事アレハ何時ニテモ此条例ヲ増補シ又ハ之ヲ改正ス可シ
第二節 右増補改正等アレハ速ニ其由ヲ世上ニ公告スヘシ
右之通相定候事
  明治六年一月廿八日
本文第一雛形ノ儀ハ追テ可相達事
証書 譲売 渡裏書同奥書雛形第二号

図表を画像で表示証書 譲売 渡裏書同奥書雛形第二号

 一 此証書是迄拙者所持ノ処貴殿ヘ 譲売 渡候事実正也                     何府 何町                      県  村   明治 年 月 日              甲   某 印     乙 某 殿 本文之通相違無之者也                     何府                      県   明治 年 月 日          公債掛                      何      某 印 




青淵先生伝初稿 第七章三・第二九―四二頁〔大正八―一二年〕(DK030147k-0004)
第3巻 p.667-669 ページ画像

青淵先生伝初稿 第七章三・第二九―四二頁〔大正八―一二年〕
廃藩置県後の処分は、政府の深く意を致せる所なるが、就中此改革に重大なる関係を有するを大蔵省となす。財政の基礎を定め幣制・租税を統一し旧藩の内外債を整理し、家禄の処分を行ふが如き、皆此に由らざるはなし。若し施設宜しきを失はば、維新の盛業は挫折せざるを得ず、建武中興が三年にして瓦解せるも、実に経済関係の失政に本づけるなり、然るに維新政府が能く盤根錯節を剖判して、以て明治の隆治を開けるもの、三条実美・岩倉具視及び大久保利通・西郷隆盛・木戸孝允の諸公が翼賛輔弼の力によれりといへども、彼の梁山泊ノ雋才が致せる力も亦少々ならずといふべし。特に財政の諸件は孰れも先生
 - 第3巻 p.668 -ページ画像 
が伊藤・井上等と共に鞅掌せる所なれば、次に其概要を叙して以て先生等の努力を尋繹せんとす。
貨幣及び紙幣を始め、藩札の始末が先生等の手によりて行はれたることは既に述べたり、此には旧藩債の処分を述べざるべからず。旧幕府の時代、諸藩は財政の窮乏に苦しみ、藩札を発行すると共に、又屡々藩債を起し、或は租税の前納を命ずるなど、種々の手段によりて一時を弥縫せんとしたりき。而して其藩債といへるものは、金銭あり、米穀あり、其名称種類殆ど枚挙に遑あらず、且つ借入償還の方法、並に償還の年限、各藩の随意なれば、固より統一なく、頗る煩雑を極めたり。かくて版籍奉還の事ありし後、政府は同三年九月「従前藩債は一般の石高に関する事に付、其支消の法は、藩債の総額により、支消年限の目途を立、知事家禄・士卒禄・其他公廨人費等より分賦して可償却事」と規定し、各藩をして自ら藩債消却に任ぜしめたれども、其成功を期する能はざる間に、廃藩置県となりたれば、政府は自ら藩債の処分に任ずるの已むを得ざるに至り、諸県及び旧藩に命じ、藩債の総額消却の方法並に年限等を調査して、大蔵省に提出せしめたり。然るに旧藩に対する債権者は、制度変革の際、深く将来を慮り、之が弁償を旧藩主に迫り、遂に地方庁に出訴する者さへありて、為に紛擾を生ずること屡々なりしかば、先生等此処分は精密の調査研究を要するが故に、取調結了の後、更に吟味に及ぶべき旨を諸県に指令し、且つ藩債の償還を任意に行ふときは、其間に統一を欠く虞あるを以て、同年九月必ず伺の上取計ふべき旨を命せり。然るに十月に至り、諸県に於て既に消却の成算ありて其方法が政府の趣意に違はざるは、自ら消却せしむるも妨なしといふ議起りて、更に其旨を布告せり。
然れども藩債の調査は極めて困難なる上、諸県にのみ委ぬべからず、債主たる農商業者の報告を徴して公正を期せざるべからず。故に同年十一月、貸付の時日、返済の期限、利足の約定など明細に取調べ、証書の写を添へて大蔵省に提出せしめ、且つ其提出は、各庁より発令後三十日を限り、爾後申立の分は一切採用せざる旨を布告せり。かくて諸県に対しても調査報告を督促せしが、或は会計帳簿等の散逸せるが為に、或は僻遠の地方、往来不便の為等にて、届出期日を遅延する者多かりしが、大蔵省に於ても著々調査し、其成案の法規となりて世上に公布せられしは明治六年三月三日の藩債処分法と同月二十五日の新旧公債証書発行条例となりき。蓋し旧藩の負債は、悉く収めて政府の負債と為すと共に、直ちに現金を以て交付せず、欧米各国の例に傚ひ公債証書を以て交付することゝなす、即ち内国に於ける公債証書発行の嚆矢なりき。藩債処分の方法は左の如し。
 一、天保十四年以前旧藩にて借入れたる金穀の類は、公債に立てざる事。
 二、弘化元年より慶応三年までの間に藩用に借入れたる金穀の類は公債に立て、昨五年より無利息五十箇年賦にて償還の事。
 三、明治元年より五年までの間右同断の類は公債に立て、昨五年より二十五年賦、元金三年据置、年四分の利息を附して償還の事。
 四、公債は金二十五円以上は証券を以て交付し、二十五円未満の分
 - 第3巻 p.669 -ページ画像 
は明治六年より年限に応じ一割利引を以て、現金にて一時に償還の事。
 五、切替証文は総べて貸出初年を以て処分の事。
 六、土地・邸宅・船舶の類は官用となれるものゝ外、品物質入貸の類は公債に立てざる事。
 七、滞利証文並に結込利金は公債に立てざる事。
 八、明治二年六月藩々版籍奉還後、知事の借入金は、公債に立てざる事。
 九、旧藩士の借財、藩庁へ引受の証拠ある分は公債に立つる事。
 十、米穀は各地方明治五年三月の平均相場を以て金直しの事。
 さて新旧公債証書発行条例によるに、公債を分ちて新公債・旧公債の二つとなし、弘化元年より慶応三年までの間に、旧藩にて借用せるものを旧公債と称し、明治元年より明治四年七月廃藩までの間に借用せるものを新公債となす。旧公債は無利息五十箇年賦、新公債は四分利附、三箇年間据置、爾後二十二年間に抽籤を以て償却する定めなり其種類は五百円・三百円・百円・五十円・二十五円の五種ありて、記名式を用ゐたり、即ち新旧公債の区別、証券の種類、償還の年限、利子の割合、元利賦金の仕払、及び証券の取扱等、細大となく網羅せるものなるが、我国に於ける最初の公債証書条例としては、制規頗る整然たるものなりき。而して藩債の申請高総計は七千四百十三万余円なりしが、大蔵省が精細の調査を遂げて給否を弁別し、其結果公債に立つべからざるもの三千九百二十六万六千余円を除き、公債処分をなすべきものは三千四百八十六万四干余円なり、此中新旧公債証書を交付せるは二千五百四十一万余円にして、他は皆現金にて一時に償還せり。



〔参考〕藩債処分録(明治前期 財政経済史料集成 第九巻・第二八―二九頁〔昭和八年一二月〕)(DK030147k-0005)
第3巻 p.669-670 ページ画像

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