デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

1編 在郷及ビ仕官時代

2部 亡命及ビ仕官時代

4章 民部大蔵両省仕官時代
■綱文

第3巻 p.670-674(DK030148k) ページ画像

明治六年癸酉三月八日(1873年)

是ヨリ先、神戸居留地在留ノ外国人等瓦斯製造所ヲ建設センコトヲ兵庫県令神田孝平ニ出願シテ許サル。大蔵省初メ其県令ノ独断許可セルニ慊ラサリシモ遂ニ之ヲ外務省ニ移牒シ正院ニ具申シテ許
 - 第3巻 p.671 -ページ画像 
可セントシ、是日栄一情ヲ具シテ之ヲ大阪滞在中ノ大蔵大輔井上馨ニ報告ス。


■資料

鉄道寮事務簿 第十七巻(DK030148k-0001)
第3巻 p.671-674 ページ画像

鉄道寮事務簿 第十七巻
  当港瓦斯灯取立一件ニ付伺書
当港居留外国人共申合結社之上、今般居留地ヘ瓦斯灯取建之企有之、右社中江加リ候者一同出金高弐百円ト定メ、内外人民ヲ募リ、有志之者ハ入社為致、入社致シ候者ハ其者欲スル所ニ随ヒ、何方江モ瓦斯ヲ引用為致、其上割金モ永々減省可致仕法ニ付、県庁ニ於テモ右社中江三口計加入致シ、落成之上差向海岸江点灯、夫ヨリ次第要用之場所引用致シ候ハヽ、往々費用ヲ省キ、方今ノ体裁ニモ可相叶と存候間、別紙新聞紙ニ出シ候仕法鈔訳取添此段相伺申候、三口加リ候共僅六百円ニ有之、若後来不用之節は望人江譲リ候迄ニテ、御損失ニは相成不申候、日限有之儀ニ付至急御下知有之度、此段相伺候也
    壬申六月二日              兵庫県
  (別紙新聞)
        兵庫ガス商会
 一元金三万弗        但 百五拾部毎部弐百弗宛
  入部之節五拾弗収納之事、残金ハ割合壱度五拾弗ニ不過、収納之儀ハ壱ケ月前ニ布告可致事
                  支配人
                    テキストル商会
                     ヱー・ボウンセン
                    フローン商会
                     ヱツチ・シト・セー・ブロン
                     ヱデワルト・パイルン
                    ムーリヤン商会
                     シ・ヱ・ヘイマン
                    ヱル・キニフル商会
                     シー・イルリース
一部持全備之上支配人夫々増加之事
                 機械指揮官
                     セー・トブリユ・ハルト
                 総代兼書記官
                     ブローンー商会
一右社ハ外国人居留地江ガス借用《(マヽ)》ニ付取建候事、又決議之上何時モ他所江拡増可致事
一総部之比較ヲ以一般之分配決議之事
一右入部願ハ千八百七拾二年第七月三十一日迄支配人江可申入事
一総部全備之上、残支配人弐人選挙之為メ、部持悉皆集会可致事
一入部願取扱及其他布告等之義ハ総代之者取扱可申事
  於兵庫 千八百七拾二年 第六月廿六日
右指令 六月廿五日
 別紙兵庫県於テ外国商人取設候瓦斯灯社中江加入之儀致勘弁候処、
 - 第3巻 p.672 -ページ画像 
瓦斯引用入費之義而已ニテ、右外国人より願出許可有無等最初より手続更ニ不相見、素ヨリ瓦斯引用之儀不容易件ニテ、道路鑿疏鉄管通架各戸分配火災消防、其外運上収税向多少方法規則も可有之ニ付顛末委詳一応御尋問之上御許可可然存候、依之御指令案相添此段相伺候也
  書面外国人瓦斯灯結社之企ニ付、其県庁江申立候始末ハ勿論、引用之規則等モ可有之候間、其書類委詳収調至急可申出候事

    瓦斯灯之儀申上書
当県在留各国人ニテ瓦斯灯結社企ニ付、入社之儀先般相伺候処、引用規則等委詳取調尚可申上様御達之処、最早期限相過候義ニ付別段取調不申上候 以上
  壬申 七月四日 兵庫県
右指令 壬申七月廿五日
 書面瓦斯灯会社之義已ニ外国人江差許候趣ニ相聞候、如何之訳ニテ其筋之許可ヲ不経、率爾之取計致し候哉、尚詮議之次第も有之候ニ付、其始末具状ヲ以迅速可申出事

壬申十一月廿四日附来翰
当港瓦斯灯之義、兼テ申上置候通、外国人等会社ヲ結、元金ヲ聚メ、当夏中ニ至リ金高既ニ相整候ニ付、居留地ノミナラス雑居地内迄モ引及ヘキ見込ニテ、鉄道ステーシヨン近傍之地一区、瓦斯製造之為メニ借受度旨掛合越候ニ付、其節取調可及挨拶旨答置、桜田元参事ヲ以テ可相成ハ御国人民ニ為被開度段伺済之上、有志之者ヲ相募候処、横浜市人内田清七ナル者募ニ応シ、右取開願出、身元モ可也且事馴候者之由ニ付、其段申上、御許可ニ相成、既ニ本人不日当地江出張之運ヒニハ御座候得共、反復情勢ヲ推考仕候ニ、横浜ハ当港十倍繁盛之地ニテ外国人居留地モ手広ク、其上官府ヨリ若干金御内助ヲ以テ取開候哉之由、夫サヘ兎角引合兼候末見込難相立趣風聞モ承及申候、況ヤ当港ハ横浜十分一之小区、殊ニ外国人居留地之制度ハ横浜ト違ヒ、外国人受持之姿ニ付、彼等会社ニテ既ニ相企居、其余運上所鉄道ステーシヨン等瓦斯灯ヲ用ユルノ地幾何モ無之、所詮横浜十倍之官助無之テハ取開相成間敷、願人心算モ可有之候得共一ト通見渡ス所ニテハ甚無覚束相見候、然ルニ右等ヲ時トシテ外国会社ヨリ之掛合及拒絶候ハヽ、万一敗算期ニ至リ、改テ外国会社ニ致依頼候様ニ成行候節、不体裁ハ申迄モ無之、品に寄り官府御厄介ヲ引出し候事ナシ共難申、甚心配仕候、右等熟考仕候得は、当港は外国人雑居地ニモ有之候間、別儀ヲ以最初ヨリ断然外国会社江打任セ候方却テ御利益ニ可有之歟ト愚考仕候、但シ右様相成候ハヽ外国人専利之論モ可有之候得共、固ヨリ不動物之義ニ付、外国人利益ハ即チ本土之利益ト相成、嘗テ御国損ニハ有之間敷且又京坂其外瓦斯灯取開之手本共相成、算盤外之御国益モ可有之ト存候、外国会社注文之瓦斯器械十四五日内ニ到着可致ニ付、夫迄ニ決答承度旨迫促罷在候間、至急御裁決有之度、奉伺候也
 但シ雑居地内江瓦斯灯差許相成候共、税金ハ難相納旨会社之者共申
 - 第3巻 p.673 -ページ画像 
聞候
               兵庫県権参事 高橋信美
   壬申 十一月廿四日   兵庫県参事 岡村義昌
               兵庫県令 神田孝平

外務省江掛合一月十九日
別紙瓦斯灯建設之義ニ付、神田兵庫県令ヨリ書面再応差出候処、右ハ過般同県申立、其節神奈川県ニ於テ取建候際之振合も有之、御省御所論縷々御申越相成、御国人江為引受度旨、同県江相達候末之義ニテ、尚夫々審案ニ及候処、地勢之模様時機之緩急も有之、神田県令申立至極允当ニ相聞候間、聴許可致見込ヲ以正院江相伺申度、此旨及御打合候間、御省御考案至急御申越有之度存候也
  追テ外国人ノミト相定候テハ不都合ト被存候間、日本人モ入社為致差支有之間敷ト相考候、右辺モ御考議御回答有之度候也

副嶋外務卿ヨリ井上大蔵大輔江之書翰
兵庫県瓦斯灯建設之義ニ付、同県令ヨリ差出候書面添、御打合之趣披見致シ候、右ハ外国人江任与建設為致候ハヽ、其運ヒ速ナル可ク候得共、元来鉄道電信瓦斯灯ノ如キ不動物ヲ法律ヲ異ニシタル外国人民ニ差許候儀ハ、良全ノ策ニモ無之、殊ニ一時之勢ニ因リ、外国人江免許ヲ与ヘ候時ハ、瓦斯灯ノ根元ハ勿論永久専利ヲ他邦之人ニ与ヘ、挽回スルニハ多少之面倒ニ可到、去リ迚居留地ハ内民市街狭小之地ヘ別ニ器械設ケ置候ハ贅費ニ墜リ候ニ付、横浜商人内田清七郎ナルモノ出願之趣モ有之、其港及ヒ近隣之商賈ヘ厚ク有益ヲ説諭シ、可成内国人民ヲシテ為致開業度事ニ候、尤港勢ハ横浜ニ比スレハ其盛栄相違モ可有之候得共、啻ニ商賈ノミナラス其地方官ニ於テ十分ノ助援ヲ与ヘ候得ハ、工事ヲ達シ難キ儀ニモ有之間敷ト存候、強テ外国人ニ任スルヲ差拒ミ候義ニハ無之、全ク我カ法律ニ服従スル迄ノ間ハ、総テ免許ヲ外国ヘハ難付与、不然ハ条約改言之目的《(正カ)》ニモ差障リヲ生シ可申候、当省見込如斯候也
  明治六年三月四日        外務卿 副嶋種臣

井上大輔殿江問合 此時井上大輔大阪出張ニ付本文之通リ出張先江申来ル
兵庫県伺瓦斯灯取建一件、昨年来紛紜之末、彼地之義ハ横浜之繁華トモ違ヒ、御国人ニテ引更候《(マヽ)》トモ其利益難見留、多少官府ノ保護ヲ要シ可申、若又其成行不宜候節ハ、自然官民共弊害相受可申ニ付、一曾外国人江委托致候方却テ弁利ニ可有之旨、神田県令見込之趣允当ニ御汲取有之、併外国人斗ニ不相限、内国人ヲモ入社合併候方事、広ク用優ニ可有之御見込モ有之、其段過ル頃外務省江再及照会候処、今般別紙之通回報有之、依テ致勘弁候処、普通之議論ニ於テハ実ニ同省見込之通可有之候得共、既ニ県令実況ニ就候考案申出モ有之、旁徒ニ条理上ニ而已拘泥致シ兼可申歟、此辺之利害得喪御出張先ニ於テ実際商量之上、尚神田県令ヘモ御推問相成、何分之御見込被仰越度、依テ外務省之書面相添、此段至急及御問合候也
  明治六年三月八日             渋沢栄一
 - 第3巻 p.674 -ページ画像 
右回答ハ無程井上大輔帰京ニ付無之ト相見申候
  ○右「鉄道寮事務簿第十七巻」所収文書ハ大蔵省所蔵ノモノヲ工部省ニテ後必要アリテ写ヲ求メタルモノニカヽル。故ニ宛名及差出人記載ナキモノハ大蔵省当局者ナリ。明治五年中此件交渉ニ栄一関係セルヤ否ヤ詳ナラズ。又明治六年五月栄一退官後ハ大蔵省事務総裁大隈重信ノ所管トナリ、五月廿日外務省トノ意見一致セザルヲ正院ニ裁定ヲ求メ、五月三十日正院ヨリ「中外人民ノ諸規則諸訴訟等、一切日本国法ヲ以テ日本裁判所ニ於テ裁判シ、此義外国人ニ於テ遵奉致候儀ニ候ハヽ結社開業差許候」条達ヲ得タレドモ、猶外務省トノ確執解ケズ。是年十二月二十四日居留地内ノミニ限リ之ヲ許スコトヽシテ解決セリ。(鉄道寮事務簿第十七巻)