デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治11年4月（1878年）

同行代理店ヲ三井物産会社ノ上海・香港両支店ニ開設シ、我定位銀貨及貿易銀ヲ清国地方ニ流通セシメントス。十四年二月ニ至リ代理店契約ヲ改メテ為替取引約定トナス。栄一之ニ尽力ス。

第一銀行五十年史稿　第三巻・第五三―五五頁
　　　　清国代理店の開設
清国借款問題は、本行が海外発展の機会を与へたるものなるが、初め此事に関して政府と協議せる際、本行は三井物産会社と謀り、貸付の金円並に物品取扱の事務を鞅掌するに付きては、両社の事業拡張に対する何等かの恩典を付与せられんことを要求せるに、政府は貸付金の取扱を為すには、手数料を交附すべきは勿論なれども、それのみにては事業拡張の目的を達する能はざるべし、よりて此貸付金により、将来清国通商の端緒を得たれば、両社は宜しく支店を彼地に開き、彼我の融通貿易に従事すべし、若し然らば政府は相当の恩典を与へんとの旨を内諭せり。然れども両社各々支店を上海に開設することは、なほ不可なるものあるがゆゑに、両社合同出資して之を設け、其名義は三井物産会社の支店とし、本行は同店に代理を託するの形式を採り、事業の経営は両社の協議を以て施行すべしと定め、明治十年三月書を大蔵省に呈し、資本金弐拾五万円を無利足十ケ年賦にて貸与せられんこ
 - 第4巻 p.367 -ページ画像 
とを出願したれども、故ありて允可せられず。結局我国の銀銅貨を清国地方に流通せしむるが為に、其流通資本として、上海に於て壱万円香港において七万五千円貸下の許可を得たり。然るに合同経営は不可なる情実ありしにや、幾もなく之を中止して、三井物産会社は支店の設立を、本行は同支店に代理店を依頼せんことを出願し、併せて定位銀貨及貿易銀拾万円を貸与ありたき旨を請へるに、翌十一年四月に至りて許可せられ、且補助銀貨拾万円を上海領事館において交附すべき沙汰に接したれば、三井物産会社は同年直ちに支店を設立し、本行は之に託するに代理店の任を以てし、尋で三井支店を香港に置くや、更に本行の代理をも委任せり。かくて本行は上海・香港の両代理店において為替受払・荷為替事務を取扱ひ、且我が銀貨の流通を図りしが十四年二月に至り、代理店契約を改めて為替取引約定となし、顧客の便宜を図れり。然るに幾もなく本行は朝鮮方面の金融に力を用ゐることゝなり、清国の為替事務は同業者の経営漸く進みたれば、漸次に其手を収めて、専ら朝鮮の開拓に任じたり。

第一国立銀行半季実際考課状　第九回〔明治一〇年下期〕
　　　　○営業事務ノ事
一清国トノ通商ヲ盛ニ開クハ実ニ方今ノ急務タレハ之レニ随テ其為替荷為替及ヒ交換等ノ途ヲ便利ナラシムルモ是亦今日銀行営業上ノ要務ニシテ、此等ノ科業ヲ施行スヘキ為メ清国上海ニ当銀行ノ代理店ヲ開設スルコトヲ要シテ其方法ヲ条陳シ、十二月十三日大蔵省ニ稟請セリ、且此挙ハ既ニ六月中ニ在ツテ三井物産会社ト合同シテ同省ニ稟請シ、後更ニ其営業ノ途ヲ区分シ如斯ク一己ヲ以テスル所ナリ、而シテ其交換ノ一科ハ上海香港トモ猶予スヘカラサルノ急務ニシテ一タヒ此途ヲ開クトキハ、彼我ノ便益少ナカラス、因テ六月合保稟請ノ後右交換ノ為メ小銀貨及旧銅貨若干ヲ優貸セラレンコトヲ同省ニ申請シ、速ニ許可セラレテ右両地ヘ該貨ヲ輸送スルコト已ニ両回ヲ経、且交換ノ事情ハ極メテ好機会ニ出テタリ、其十二月ニ係ル代理店ノ稟請ハ追テ允准セラルヘキモノト思惟セリ

第一国立銀行第十一回株主総会要件録
議長○渋沢栄一ハ考課状中ノ緊要ナル事目ヲ詳細演説シテ間々各位ノ領諾ヲ要スルモノアリ、左ニ之ヲ詳カニス
○中略
一当銀行ハ昨年来内地処々ニ荷為替ノ法ヲ施設シ、物産運輸販売ノ途ニ媒介シ商務ヲ賛成スル少ナカラスシテ我利益モ亦応分ヲ得タリ、且此法ハ通商ノ要務ニシテ其途ノ開伸スルニ随ヒ商賈ノ業モ亦繁大ニ至ルヘキナレハ、益此ヲ広メサルヘカラスシテ、若シ海外ニ渉レハ清国上海ヲ以テ我カ通商ノ要区ト為ス、而シテ前年大蔵卿ノ命ヲ受ケ某氏ヲ遺ツテ事情ヲ探訪シ、復タ客年一月清国政府ニ貸金ノ事務アツテ躬自カラ其地ニ抵リ親シク情態ヲ目撃シテ大ニ得ル所ノ者アリ、因テ当銀行ノ代理店ヲ同地ニ於テ開設シ、為替荷為替ノ営業ヲ行ヒ及ヒ通貨ヲ交換シテ彼我ノ便利ヲ開カント欲シ、其方案ヲ条
 - 第4巻 p.368 -ページ画像 
陳シテ十二月十三日大蔵省ニ稟請セリ、且交換ノ一事ハ嘗テ上海香港共ニ傍看猶予スヘカラサルノ急情アルヲ以テ、此稟請ニ先タチ小銀貨及ヒ旧銅貨若干ヲ優貸セラレンコトヲ同省ニ申請シ、速カニ許可セラレテ該貨ヲ右両地ヘ輸送スルコト已ニ両回ヲ経ヘ、交換極メテ好機ニ出テタリ、而シテ其稟請ハ他日将ニ允准アラントス、各位予メ之ヲ領セヨ
　　　○株主総会ハ明治十一年一月十三日開催セラル。

第一国立銀行半季実際考課状
　　○第一〇回〔明治一一年上期〕
　　　　営業事務ノ事
一前回報告スル所ノ昨年十二月十三日大蔵省ニ稟スル代理店ヲ清国上海ニ開設スルノ一事ハ、爾後同省ノ批示アルニ由リ之ヲ更正シテ本年二月十五日再ヒ同省ニ申稟シ、四月九日允准セラレ及其心得方ヲ詳細指示セラレタリ

　　○第一一回〔明治一一年下期〕
　　　　営業事務ノ事
一前回三井物産会社ト結約シテ同社清国上海支店ニ当銀行代理店ノ権限ヲ委任セシコトヲ報告セシカ、今又此例ニ倣ヒ同社清国香港支店ニ同上ノ権限ヲ委任セリ
一右上海代理店流通元金トシテ大蔵省ヨリ銀貨拾万円ヲ下資スルノ特旨アリ、而シテ今貿易銀ヲ将テ下附セラルヽニ因リ七月二日大蔵省ニ上申シテ以テ流通ノ景況ヲ述ヘ、且該地ニ在テ新貿易銀ヲ下附セラレンコトヲ乞ヒ速ニ允准セラレタリ
一当銀行朝鮮国釜山浦支店及上海香港両代理店開設ニヨリ曾テ施行スル所ノ売買品受合営業規則ヲ改正シテ更ニ諸物品売買取扱規則ヲ設ケ、該地ニ送ラントスル荷物、該地ヨリ送ル荷物、及ヒ従前内地ニ在テ施行スル者等、総テ本規則ニ従テ取扱フヘキコトヲ決議セリ

上海香港商務稟候（株式会社第一銀行所蔵）
　　　　清国香港ニ於テ銀貨御下渡之儀奉願候書付
先般上海ニ於テ銀銅貨御下渡之儀ニ付其事情申陳相願候処、御許可被成下、已ニ該貨幣御下渡シ有之同地ニ於テ夫々着手可仕都合ニ御座候、然ルニ香港之儀モ是亦同情ニシテ我銀貨相用候時ハ彼我之便益甚不少実ニ今日ノ急務ト奉存候、因而上海之例ニ倣ヒ銀貨五銭及ヒ拾銭之分共計五千円同地領事館ニ於テ御下渡被成下度、此段奉懇願候也
　　明治十年十一月十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之趣聞届、五銭・拾銭銀貨共計五千円、三ケ月間貸下候条、受取方香港領事館ヘ可申出、右証書ハ国債局長宛ニ相認於当地可差出事
 - 第4巻 p.369 -ページ画像 
　　明治十年十一月廿六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　追テ本文銀貨受取方香港領事館ヘ申立之節、同館宛副翰可相渡候間国債局ヘ可申出事
　　　　○
　　清国上海江代理店開設之儀願書
清国ノ通商ヲ旺盛ニシ、彼我荷為替ノ便路ヲ開通候ハ方今ノ要務ニ有之、加之彼国貨幣ノ制度整理セサルニ付、此際我定位銀貨及貿易銀ヲ輸送シテ其流通ヲ拡伸セシメハ、更ニ彼我商業ノ便益ヲ増シ随テ国家経済ノ根理ニモ適スルヲ得、所謂正経ノ事業ニシテ緊要ノ目的ト奉存候、既ニ当銀行ニ於テハ嘗テ御省ノ高旨ヲ奉シテ彼ノ国貨幣流通ノ景状ヲ探討シ、又本年一月中同国政府ヘ貸附金ノ事務ニ付上海出張ノ際ニモ尚其実況ヲ詳悉シテ益其企望ヲ相増候間、上海ニ於テ代理店ヲ設立仕度ト起念仕候得共、其開設ノ初歩ニ於テハ未タ以テ収益ノ要費ヲ償フニ足ル可ラスシテ且其事業着手ニ於テ殊ニ官府ノ御保護ヲ仰カサレハ到底其拡充ヲ難得事ト奉存候、因テ此開店ニ付出格ノ寛典ヲ以テ左ニ条記スル要款ヲ御特許被成下度候、是敢テ自家一社ノ殖益ヲ勉メ候ノミニ無之、全般ノ通商ニ於テ幾分ノ効験ヲ顕ハシ申度奉願候也
　　　第一
上海代理店ノ業務取扱ハ本店ニ於テ之ヲ制定シ、在上海三井物産会社ニ委托シ都テ其取扱ヲ為致候事
　　　第二
此代理店ノ年限ハ明治十年ヨリ向キ五ケ年間ト《（シ脱カ）》明治十五年ノ末ニ至リ支店ヲ確立可致事
　　　第三
此代理店ニ於テハ専ラ定位銀貨及貿易銀ヲ清国地方ニ流通セシムルヲ以テ主要ト仕度候間、右流通元《（金）》トシテ該貨幣拾万円ヲ年限中御預ケ置被下、其中ニテ流通取計次第通貨ニテ交換相願、更ニ御下渡被下度候事
　　　第四
右銀貨清国地方江流通ノ為メ輸送ノ時ハ必ス其確証ヲ具シ可申ニ付、運賃危嶮受合及ヒ流通ノ手数料トシテ百円ニ付弐円五拾銭ツヽヲ御附与被下度候事
　　　第五
此代理店ヘハ年限中官行ノ諸鉱山ヨリ御開採ノ銅ニテ御入用ノ分ヲ除キ売却ニ附スル分ハ都テ其取扱ヲ御下命被下度、然ル時ハ清国内地ハ勿論常ニ英国印度等ノ価格ヲモ探討シテ精々販売方可仕、且其売却手数料ハ相当ニ御定メ御附与被下度候事
　　　第六
此代理店ヘハ年限中官府ヨリ清国ニ係ル為替金ノ事務ハ、都テ取扱方御委任被下度事
右之通御許可被下度此段奉懇願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行頭取
　　明治十年十二月十三日　　　　　　　　　　渋沢栄一
 - 第4巻 p.370 -ページ画像 
　　　　　　大蔵卿　大隈重信殿
　　　　○
　　清国上海ニ於テ旧銅貨御下附之儀ニ付第二開申
本年九月中清国上海ニ於テ為交換銀銅貨各五千円御下渡相願、御允准被成下、同処領事館ニ於テ領収致シ追々交換相開キ候処、極メテ都合能ク十分ノ目途ニ相運ヒ候景況ニ御座候間、尚又旧銅貨五千円前例ニ照シ御下附被成下度候、右ハ此程同地派出之者ヨリ事情申来候、尚又昨廿三日電報ヲ以テ前時御下附之分ハ最早悉皆交換相済引続供用益盛ニ付、至急再送可致旨申来候ニ付此段相願申候、就テハ諸事前例之通御処置被下、来ル二十七日之便船ヲ以テ同地ニ御送達御座候様仕度其交換之景況ハ三ケ月目ニ於テ具申可仕候依之奉願候也
　　明治十年十二月廿四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之趣聞届、先以旧壱厘銅貨四千円上海領事館ヘ可回漕候条、受取方並証書之儀ハ最前之通可相心得事
　　明治十年十二月廿五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　清国上海ニ於テ旧銅壱厘銭御下附之儀願書
清国上海ニ於而為交換旧銅貨五千円御貸附之儀、去ル廿四日相願候処昨廿五日御指令ヲ以テ先ツ四千円御下附可被下旨御允准被成下奉領承候、就テハ前例ニ倣ヒ在上海当支店詰上田安三郎、笹瀬元明ノ両人ヨリ領事館江申立次第該貨速ニ御下附御座候様仕度候間、其段領事館ヘ御電報被下並明廿七日出帆ノ滊船ヲ以テ該貨御送輸被下度候、依之右旧銅貨御預リ証書壱通相添此段奉願候也
　　明治十年十二月廿六日　　　　　　　三井物産会社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之通本日上海領事館ヘ及電報候条、受取方同館ヘ可申出事
　　明治十年十二月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　於清国香港銀貨旧銅貨御下付方之儀願書
於清国香港為交換銀貨五千円、旧銅貨五万円御貸渡之儀、去月十五日及ヒ去ル五日両度ニ相願候処速ニ御允准被成下奉領承候、然ル処香港表ニ於テハ未タ私共之支店相設無之、目下事務取扱之為メ派員差出置候場合ニ付、該貨一時ニ御下付相願候而ハ差支之儀も御座候間、交換ニ臨ミ供用之額丈ケ其都度右派員之書面ヲ以テ領事館より御交付御座候
 - 第4巻 p.371 -ページ画像 
様仕度、然ル時ハ御交付相成候度毎其段派員ヨリ当方ヘ報告為仕、其節当方ヨリ御省ヘ対シ御預リ証書可奉差上候間、何卒此段御允准被成下、領事館ヘも前以御通知相成候様仕度、依之派員執行弘道名印鑑相添奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十年十二月廿七日　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之趣聞届候条下渡之都度預リ証書不及差出、派員執行弘道ヨリ仮預リ証書ヲ領事館ヘ差出シ数回ニ受取可申、因テ同人印鑑ハ領事館ヘ可送付ニ付、追テ金額受取済ノ上一紙ノ預リ証書差出候ハヽ最前領事館ヘ差出候仮預リ証書ハ引換可下渡、且右印鑑ヲ以テ受取候金額ハ仮令如何様ノ事故相生シ候共屹度可返償義務相尽シ候段、連印之証書可差出事
　　明治十一年一月十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　清国上海ニ於テ旧銅貨御下付之儀ニ付第四開申
清国上海ニ於テ旧銅貨交換之儀ハ追々要務之形勢ニ至リ、已ニ去ル十日第三開申ヲ以テ壱万円御下付之儀相願置候処、右金額ニ而ハ迚モ不引足事情ニ付、尚又弐万円丈ケ御下付被下度候、且右者次便出帆之滊船ヲ以テ御差立相成候様仕度候間、前回壱万円之分共一同至急御允准可被下候、右御預リ証書之儀者御允准次例ニ照ラシ速ニ具申可仕候間上海領事館ヘ御電報之儀モ例之通御通信可被下、此段併セテ陳述本条奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年一月十六日　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
甲第八一七号
願之趣旧銅貨三万円ノ内、本月十六日三菱会社滊船ヲ以テ輸送候壱万円ハ、上海ニ於テ下付候条預リ証書可差出、残弐万円ハ荷造出来ノ上尚可申出事
　　明治十一年一月廿三日
　　　　　　　　　　国債局長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　大蔵大書記官　郷純造印
　　　　○
　　香港ニ於テ交換ノ為メ貿易銀御貸渡願書
一　銀貨五千円　但弐拾銭拾銭ノ分
一　貿易銀壱万円
右者清国香港ニ於テ為交換成例之通御貸下之儀御允准被成下、来ル廿九日出帆仏国郵船テーブル号ヘ御搭載相成候様仕度此段併テ奉願候也
 - 第4巻 p.372 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年一月廿三日　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
願之趣小銀貨五千円、貿易銀壱万円在香港領事館ニ於テ三ケ月間無利足貸下候条、受取方之儀ハ最前指令ニ及ヒ置候通リ可相心得事
　　明治十一年一月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　清国上海ニ於テ交換之為メ銀貨御下付之儀第五願書
一銀貨五千円　　　　但廿銭十銭之分
右者清国上海ニ於テ為交換成例之通御貸下之儀御允准被成下、次便之郵便ニ御搭載相成候様仕度此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
明治十一年一月廿五日　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之趣銀貨五千円上海領事館ニ於テ三ケ月間無利足貸下候条、受取方同所ヘ可申出事
　　明治十一年一月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　於清国上海銀貨御下附之儀願書
於清国上海為交換御貸渡之銀銅貨御下付之儀ハ、兼而御指揮之手続ヲ以テ取扱罷在候処、同地支店之儀ハ未タ充分之蔵場も無之故該貨一時ニ御下付相成候而ハ差支之儀も御座候間、何卒香港表ニ而御下付之手続ニ従ヒ交換ニ臨ミ御下付相願候全額丈ケ之御預リ証書ヲ派員ヨリ差出数回ニ御下付相願、追而受取済之上当地ニ而一帋之受取証書差上可申、其節派員ヨリ差出候仮証書御下附被成下度、且右金額ハ仮令如何様之儀相生シ候共私共ニ於テ担当シ証書差出可申候、右御聞届之上ハ今回御下付之銀貨五千円之分ヨリ前陳之取扱ニ被成下、且其段領事館ヘ御通達被成下度此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
明治十一年一月三十一日　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
　　追而該地派員上田安三郎笹瀬元明之印鑑ハ申遣差越次第差出可申候也
（以下朱書）
願之通聞届候条派員印鑑至急可差出、尤本年一月廿二日相達候通領事
 - 第4巻 p.373 -ページ画像 
館於テ置場所之都合有之候ニ付、彼地回着之都度可成急速受取手順可相運事
　　明治十一年二月十三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　大阪長崎両地御貯蔵旧銅貨之儀ニ付開稟
旧銅壱厘銭御貯蔵之内大坂ニ凡三万円、長崎ニ凡ソ四千円御座候分、右ハ上海交換之為メ御貸下之儀近々可願出候間、即今ヨリ荷造整頓仕候様両地ヘ御下命被成下置度候、此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年二月六日　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　郷国債局長殿
（以下朱書）
甲第九一七号
願之趣ハ大阪於テ九千円、長崎ニ弐千円ハ荷造致整頓居候ニ付、都合次第受取方可申立事
　　明治十一年二月十三日
　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　香港御回漕旧銅貨荷造方之儀ニ付願書
去月二日仏国滊船タナイス号ヘ搭載香港領事館ヘ御回漕相成候旧銅貨之儀、船中ニ於テ窃掠ニ罹リ候趣電報有之、未タ其確数ハ不相分候得共、右ハ全ク支那人夫ノ所為ニ相違無之趣報告有之候、然ル処外国郵船ノ事ニ付、此後迚モ十分取締向行届兼候間、此上ハ荷造方ヲ以テ厳重ニ致候外無之候、因テ木製之箱ニ帯金ヲ着シ、総テ釘鋲ニ而封鎖致シ候ハヽ必損害有之間敷候ニ付、其費用取調候処、凡ソ百ニ付一七五之算当ニ而即チ該貨拾万枚即百円ニ付壱円七拾五銭ノ費用相掛リ、従前ノ叭造ヨリ凡ソ二倍以上之費額相増候得共、他ニ防護之処方無之候間、今後回漕之分ヨリ右荷造方ニ取計、其費用御下渡シ被下候様仕度候、此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年二月六日　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之趣聞届候事
　但費用ハ出納局ヨリ可相渡候事
　　明治十一年二月廿七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　上申書御下附之儀奉願候書附
一清国上海ヘ代理店開設之儀願書
 - 第4巻 p.374 -ページ画像 
一清国上海ヘ支店開設之儀願書
右者昨十年十二月十三日附ヲ以テ上申仕候処、改正仕度箇条御座候ニ付、一旦御下附被下度此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年二月八日　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　大蔵卿　大隈重信殿
（以下朱書）
願之通下付候事
　　明治十一年二月十六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　大蔵卿　大隈重信印
　　　　○
　　清国香港ニ於テ為交換貿易銀及小銀貨御貸下之儀願書
清国香港ニ於テ貨幣交換ノ儀ハ其初メヨリ機会ニ投シ殊ニ貿易銀小銀貨等ハ交換十分ニ行ハレ候間、尚又今回貿易銀壱万円、小銀貨五千円御貸下之儀御允准被成下、来ル十九日出帆ノ英国郵船マラツカ号ヘ御搭載被下候様仕度候、尤小銀貨之儀目下五千円御貸下難相成候ハヽ二三千円ニテモ不苦候ニ付、此段御採納被下度候、此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
明治十一年二月十八日　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
追稟本文定位銀貨之儀者御下高之内五分ノ一程五銭銀貨御渡し奉願候也
（以下朱書）
甲第九五九号
願之趣香港ニ於テ交換ノ為メ貿易銀壱万枚、小銀貨五千円三ケ月間貸与之儀聞届候事
　　明治十一年二月二十日
　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　清国上海ニ於テ為交換旧銅貨御貸下之儀第七回願書
一旧銅壱厘銭九千円　大坂ニ御貯蔵之分
一旧銅壱厘銭弐千円　長崎ニ御貯蔵之分
合壱万千円
右者清国上海ニ於而為交換成例之通御貸下之儀御允准被成下、来ル廿日出帆之西京丸ヘ御搭載相成候様右両地ヘ御電報被下度候、此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年二月十八日　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
 - 第4巻 p.375 -ページ画像 
（以下朱書）
甲第九六〇号
旧壱釐銅壱万千円清国上海ニ於テ三ケ月間貸与之儀聞届候事
　　明治十一年二月二十日
　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　清国上海ニ於テ為交換旧銅貨御貸下之儀第八回願書
一旧銅壱厘銭五千円　　　　但大坂ニ御貯蔵之分
右者清国上海ニ於而為交換成例之通御貸下之儀御允准被成下、来ル三月二日出帆之東京丸ヘ御搭載相成候様大坂表ヘ御電報被成下度候、此段奉願候也
　　明治十一年二月廿六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝(印)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
（以下朱書）
甲九八九号
願之趣旧壱厘銭五千円無利足三ケ月間下渡シ候事
　　明治十一年二月廿六日
　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　御貸下金之内仮返納書附
一洋銀四万五千弗
　　此代金四万八千五百拾円　但六拾四匁六分八厘換
　　　内
　　弐万弗　上海交換之分
　　　　此金弐万千五百六拾円
　　弐万五千弗　香港交換之分
　　　　此金弐万六千九百五拾円
右者清国上海香港ニ於テ為交換銀銅貨御貸下之儀相願、昨十年九月初テ御允准相成候已来上海之分ハ已ニ今日迄御貸下之数八回、香港之分ハ同□《（不明）》回其度々内外滊船ヲ以テ両地領事館ヘ御回送相成候中、追々売与仕候代金書面之通為替ヲ以テ当方ヘ収受致シ、書面之相場ヲ以テ洋貨売却仕候間、右代リ金仮上納仕候、然ル上ハ両地毎回売与之計算書ヲ以テ更ニ決算申上本上納ニ取計可申候間、此段御聴用之上書面仮上納証書御下附可被下候、且最前已来呈納仕候御預リ証書之儀ハ右本上納（御貸下金返納）之節御引換可被下候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
明治十一年二月廿七日　　　　　　　　　　益田孝(印)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
 - 第4巻 p.376 -ページ画像 
　追而前書香港上海ヘ送来候金額ハ洋銀ニ而上納可致筈之処、差向洋銀相場最上之価格ト奉存候ニ付、右之通リ売払代リ金ヲ以上納仕候得共、爾後ハ相場ニ不拘都而洋銀ニ而上納可仕ニ付、何卒御聴納可被下候也
（以下朱書）
甲第一〇一四号
願之趣は不都合之次第ニ候得共、此度限リ聞届候条以来は洋銀ヲ以テ上納可致事
　　明治十一年三月二日
　　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　清国香港ニ於テ為交換銀銅貨御貨下之儀願書
清国香港ニ於テ銀銅貨交換之儀者已ニ数回御貸下相願、毎時都合好ク交換取計、尚追々該貨通用十分相開ケ候形勢ニ付、今回尚又貿易銀壱万五千円、新銅貨千円、内壱銭半銭壱厘並ニ弐銭之分モ少々取交セ以上之貨品前例之通御貸下被成下、近日出帆之米国郵船「シテーオホペキン」号ニ御搭載被下候様仕度此段奉願候也
　　明治十一年二月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
（以下朱書）
甲第一〇一三号
願之趣貿易銀壱万五千円、新銅貨千円、無利足三ケ月間貸与之儀聞届候事
　但交換代リ金者洋銀ヲ以上納可致事
　　明治十一年三月二日
　　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　貿易銀定位銀貨等御払下之儀ニ付願書
一貿易銀五万円
一定位銀貨五万円　　　　但弐拾銭以下五銭迄之分
右貨品之儀商業上都合有之、即今要用ニ御座候間、該貨平均百円ニ付三円弐拾五銭之打歩ヲ以テ御払下被下度候、右代リ金之儀者悉ク新紙幣ニ而上納可仕候、尤目下緊急之需要ニ付速ニ御允聴被成下度候此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
明治十一年二月廿八日　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
（以下朱書）
甲第一〇〇八号
 - 第4巻 p.377 -ページ画像 
願之通聞届貿易銀五万枚、定位銀貨五万円下渡候ニ付、代リ新紙幣並打歩共至急上納可致、且兼而申立之通内地於而支用候儀者不相成候条無相違清国ヘ輸送之上流融可致事
　　明治十一年三月一日
　　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　貿易銀定位銀貨御払下ニ付願書
一貿易銀五万円也
一定位銀貨五万円也　但廿銭ヨリ五銭マテノ種類ニテ
　　合計拾万円也
右ハ商業上都合ニ因リ御払下ケノ銭昨廿八日出願仕候分ニテ当地ニ於テ前書之通御取揃相成兼候ハヽ御有合丈ケヲ御下ケ渡被下、残額ハ大阪表ニテ御下附被成下候様仕度奉存候、右御聞届之上ハ同地ヘ御電報被下、第一国立銀行支店ヘ御下附被成下度此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年三月一日　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
（以下朱書）
甲第一〇三四号
願之趣貿易銀五万円、並定位銀貨五万円払下ケ大坂支局ニ於而悉皆可相渡候条、代リ金之義ハ於当地上納可致候事
　　明治十一年三月四日
　　　　　　　　　　　　国債局副長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　大蔵少書記官　斎藤次郎太印
　　　　○
　　清国香港ニ於テ為交換貿易銀御貸下之儀願書
一貿易銀壱万円也
右者清国香港ニ於テ交換要緊之趣同地派出人ヨリ申来リ候ニ付、前例之通御貸下被下度候、右御聞届御座候ハヽ該貨ハ近日大阪ヨリ出帆致スヘキ外国船ヘ同地ニ於テ御積入相成候様御電報被成下度候、此段併テ奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
明治十一年三月十三日　　　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局　郷純造殿
（以下朱書）
甲第一〇九一号
願之趣聞届候事
　　明治十一年三月十五日
　　　　　　　　　　　　国債局長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　大蔵大書記官　郷純造印
　　　　○
 - 第4巻 p.378 -ページ画像 
　　清国上海ニ於テ交換ノ為メ御貸下金之儀第九回願書
一旧銅貨壱万円也
右者清国上海ニ於テ交換之為メ例規ニ照ラシ御貸下之儀御允准被成下候上該貨ハ来ル廿日出帆之西京丸ヘ大坂表ニ於テ御搭載被下候様同地江御電報可被下候、此段奉願候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井物産会社印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　明治十一年三月十九日　　　　　　　　益田孝印
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一国立銀行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　国債局長　郷純造殿
（以下朱書）
甲第壱壱〇四号
願之趣旧壱厘銭壱万円無利足三ケ月間貸与之儀聞届候事
　　明治十一年三月十九日
　　　　　　　　　　　　国債局長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱印）
　　　　　　　　　　　　　　大蔵大書記官　郷純造印

第一国立銀行半季実際考課状
　　○第一四回〔明治一三年上期〕
　　　　諸御達並願伺之事
一四月廿二日外務省ヨリ清国上海領事館ヘ送付セラルヘキ為替金取扱御用ヲ遵行スヘキ旨ヲ諭達セラル、即チ之ヲ領承シ、併セテ其定例ヲ稟候セリ

　　○第一六回　〔明治一四年上期〕
　　　　諸御達並願伺之事
一二月四日銀行局ヨリ本行朝鮮釜山浦支店ニ在テ諸商人ノ依頼ニヨリテ物貨売買ノ事ヲ取扱フハ本務外ニ渉ルヲ以テ施行スルヲ得サル者ナレハ其方法ヲ記載シテ之ヲ告申シ、且香港上海代理店ノ如キモ其取扱ノ事務ヲ具申スヘキ旨御達アリ、依テ其十八日釜山浦ノ如キ航運不便ニシテ我商賈ノ本行支店ニ托シテ其送荷ノ代金ヲ徴収シ或ハ其荷為換ヲ経弁スルヲ以テ曩ニ其規定ヲ設有セシニ其方法或ハ該支店売買ニ従事スルノ嫌忌アルヲ恐レ、更ニ規程ヲ改正シ現ニ施弁スル所ハ実ニ荷為替ノ一法ニ在リ、又上海香港代理店ノ如キハ其代理ナリト雖トモ其実銀行ノ営業ヲ代理スル者ニアラス、為換約定店ト謂フヘキヲ以テ則更ニ為替約定ヲ結ヒ、代理ノ名称ヲ廃シ只該地ノ商情ヲ詳悉スル為メ行員一名ツヽヲ該約定店ニ派在シ常ニ通信ニ従事セシメタル趣ヲ回申シ、併セテ釜山浦支店貨物取扱規程ヲ開呈セリ

　　第二一回〔明治一六年下期〕
　　　　諸御達及願伺届之事
一同○八月廿七日、当銀行三井物産会社連署ヲ以テ在清国上海代理店流通資本返納ノ期限延長ノ事ヲ稟請セリ